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  • 第3節 特に掲記を要すると認めた事項

公衆電話事業の運営について


第2 公衆電話事業の運営について

検査対象 (1) 東日本電信電話株式会社
(2) 西日本電信電話株式会社
科目
営業収益
営業費用

部局等の名称 (1) 東日本電信電話株式会社本社
(2) 西日本電信電話株式会社本社
公衆電話事業の概要
該頭その他の場所に電話機及びそれに付随する設備を設置して公衆の利用に供する電話サービスを提供する事業

平成12年度における公衆電話事業の営業収益 (1) 202億円
(2) 198億円
平成12年度における公衆電話事業の営業費用 (1) 393億円
(2) 396億円
平成12年度における公衆電話事業の営業損失 (1) 191億円
(2) 198億円
389億円

1 公衆電話事業の概要

(公衆電話事業)

 東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」といい、両会社を合わせて「NTT地域会社」という。)は、日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和59年法律第85号)に基づき、国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与しなければならないこととされている。そして、NTT地域会社では、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)に基づき、電話サービス契約約款等を定め、街頭その他の場所に電話機及びそれに付随する設備を設置して公衆の利用に供する電話サービス(以下「公衆電話サービス」という。)を提供する事業を実施している。
 公衆電話は、明治33年、屋外に初めて設置されて以来、加入電話の補完的役割を果たすとともに、屋外での通信手段として広く全国に普及してきた。その後、公衆電話に係る事業は、日本電信電話公社(昭和27年8月発足。以下「公社」という。)を経て、昭和60年4月、民営化された日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)に引き継がれた。そして、平成11年7月、NTTの再編成に伴い、NTTの業務のうち地域電気通信業務を引き継いだNTT地域会社が公衆電話事業の県内通信業務を、また、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「NTTコミュニケーションズ」という。)が県間通信業務を、それぞれ運営している。
 NTT地域会社の12年度の営業損益についてみると、NTT東日本は340億余円の営業利益、NTT西日本は1003億余円の営業損失となっており、公衆電話事業については、NTT東日本は191億余円、NTT西日本は198億余円の営業損失を生じている。

(公衆電話の設置台数の推移)

 公社が発足した直後の昭和28年度末における公衆電話の設置台数は24,093台であったが、その後、増え続け、59年度末には約39倍の934,903台に達した。しかし、これをピークに、その後、図1のとおり、減少傾向となっており、平成元年度末で828,977台(59年度末を100とした場合の比率88.6%)、12年度末で707,233台(同75.6%)となっている。

図1公衆電話の設置台数の推移

(公衆電話の設置及び管理)

 NTT地域会社では、公衆電話を次のように区分して設置、管理している。

ア 第1種公衆電話と第2種公衆電話

 NTT地域会社では、公社時に定められた「公衆電話の設置について」(昭和57年電業電第39号)に基づき、公衆電話を、〔1〕公衆電話の利用度にかかわらず、専ら社会生活上の安全性及び戸外における最低限の連絡手段を確保することを目的とした第1種公衆電話と、〔2〕より多くの収益を上げることを目的とした第2種公衆電話とに区分して設置することとしている。
 このうち、第1種公衆電話は、一定の広さの地域には必ず1台を確保するとの考え方から、市街地にあっては500m四方、その他の地域にあっては1km四方の範囲内に、標準として1台設置することとし、具体的な設置箇所としては、公共施設、学校、交差点等の場所を選定することとしている。
 12年度末現在の第1種公衆電話及び第2種公衆電話の設置台数は、表1のとおりとなっており、その構成比は15.4%及び84.6%となっている。

表1 第1種公衆電話及び第2種公衆電話の設置台数(平成12年度末)

(単位:台)

区分
会社名
第1種公衆電話
(構成比)
第2種公衆電話
(構成比)
合計
NTT東日本 57,983
(16.8%)
286,778
(83.2%)
344,761
NTT西日本 50,672
(14.0%)
311,800
(86.0%)
362,472
108,655
(15.4%)
598,578
(84.6%)
707,233

イ 直営公衆電話と委託公衆電話

 NTT地域会社では、公衆電話を、〔1〕公衆電話ボックス等に設置して自ら管理する直営公衆電話と、〔2〕店舗等に設置して公衆電話業務委託契約(以下「委託契約」という。)を締結した者(以下「受託者」という。)にその管理を委託する委託公衆電話とに区分して管理している。
 12年度末現在の直営公衆電話及び委託公衆電話の設置台数は、表2のとおりとなっており、その構成比は19.3%及び80.7%となっている。

表2 直営公衆電話及び委託公衆電話の設置台数(平成12年度末)

(単位:台)

区分
会社名
直営公衆電話
(構成比)
委託公衆電話
(構成比)
合計
NTT東日本 72,246
(21.0%)
272,515
(79.0%)
344,761
NTT西日本 64,118
(17.7%)
298,354
(82.3%)
362,472
136,364
(19.3%)
570,869
(80.7%)
707,233

(ICカード公衆電話の導入)

 公衆電話の機種についてみると、昭和57年に、テレホンカードで通話ができる磁気カード公衆電話が、また、平成2年には、データ通信が可能なディジタル公衆電話が導入され、さらに、11年3月には、ICテレホンカードで使用する公衆電話(以下「ICカード公衆電話」という。)が導入されている。NTT地域会社では、このICカード公衆電話は、ICテレホンカードを使用して電話帳機能を利用できるなど従来の機種に比べ機能が向上しているほか、変造テレホンカードによる不正を防止できるものとなっていることから、今後、このICカード公衆電話の設置台数を増やすこととしている。
 12年度末現在のICカード公衆電話の設置台数は、34,192台(NTT東日本17,466台、NTT西日本16,726台)となっており、公衆電話の設置台数全体の4.8%となっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 近年、携帯電話等の普及が著しいことなどに伴い、公衆電話の利用環境にも大きな変化が生じている。そして、地域電気通信事業への他事業者の参入により競争が激化していることなどから、NTT地域会社の経営環境もまた厳しいものとなってきている中で、公衆電話事業の営業損失が生じている。さらに、最近、国において、国民生活に不可欠で全国どこでも利用できるなどの電話サービス、すなわち、ユニバーサルサービスの確保について検討されており、その中においても公衆電話サービスの位置付けなどについて検討が進められている。
 上記のことから、本院では、公衆電話に係る収益、費用等の状況を検査するとともに、NTT地域会社の40支店(注1) (NTT東日本の17支店中16支店、NTT西日本の30支店中24支店)における公衆電話の利用状況等について検査した。

(検査の結果)

(1)公衆電話に係る収益、費用等の状況

 公衆電話に係る収益、費用等の状況について検査したところ、以下のような状況となっていた。

 以下の記述においては、過去からの推移を連続して比較できるように、NTT再編成後の11、12両年度の金額は、NTT地域会社及びNTTコミュニケーションズの合計額を用いている。

ア 営業収益について

 公衆電話事業の営業収益(注2) について元年度以降の推移をみると、表3のとおり、元年度で2620億余円であったものが、6年度の3488億余円をピークとして急激に減少してきており、12年度には760億余円となっている。
 また、公衆電話1台当たりの月額営業収益(注3) の推移をみると表4のとおりであり、全体の営業収益と同様に、6年度の1台当たり35,868円をピークに減少してきており、12年度には1台当たり8,788円となっている。

表3 公衆電話事業の営業収益の推移
(単位:百万円)
年度 営業収益
262,050
2 300,432
3 314,932
4 316,430
5 320,629
6 348,838
7 326,191
8 219,602
9 163,533
10 128,506
11 72,962(注)
12 76,091
表4 公衆電話1台当たりの月額営業収益の推移
(単位:円)
年度 1台当たりの月額営業収益
26,371
2 30,145
3 31,577
4 31,837
5 32,457
6 35,868
7 33,976
8 22,973
9 17,348
10 13,988
11 10,884
12 8,788

(注)
 平成11年度については、NTT再編成前の4月から6月までの役務別損益が算出されていないため、11年7月から12年3月までの9箇月の金額である。

 そして、公衆電話事業の営業収益と携帯電話等の契約数との関係をみると、図2のとおり、携帯電話等の契約数が1千万件を超えた7年度から、公衆電話の営業収益は減少に転じ、さらに、同年度以降、契約数の増加と対照的に営業収益は減少している。

図2公衆電話事業の営業収益及び携帯電話等契約数の推移

イ 営業費用について

 公衆電話事業の営業費用(注2) は施設保全費、営業費、減価償却費等であり、その推移は表5のとおりであり、元年度で3036億余円であったものが、4年度の3390億余円をピークに減少してきているが、12年度で1101億余円となっている。
 また、公衆電話1台当たりの月額営業費用(注3) の推移をみると表6のとおりであり、4年度の34,116円をピークに減少してきているが、12年度で12,722円となっている。

表5 公衆電話事業の営業費用の推移
(単位:百万円)
年度 営業費用
303,639
2 321,918
3 329,728
4 339,083
5 331,071
6 324,530
7 303,011
8 259,199
9 194,423
10 184,810
11 110,447(注)
12 110,152
(単位:円)
年度 1台当たりの
月額営業費用
30,556
2 32,301
3 33,061
4 34,116
5 33,514
6 33,369
7 31,562
8 27,115
9 20,625
10 20,117
11 16,475
12 12,722

(注)
 平成11年度については、NTT再編成前の4月から6月までの役務別損益が算出されていないため、11年7月から12年3月までの9箇月の金額である。

ウ 営業損益及び収支率について

 上記ア及びイの結果、公衆電話事業の営業損益は、図3及び表7のとおりとなっており、元年度以降、公衆電話料金の値上げを実施した直後の6、7両年度を除いて毎年度営業損失を生じており、8年度以降は毎年度300億円以上の営業損失を生じている。
 の間の収支率は、6、7両年度を除いて100%を超えており、特に、10年度以降は 急激に悪化し、12年度には144,7%となっている。

図3公衆電話事業の営業損益の推移

表7 営業収益、営業費用及び収支率の推移
(単位:百万円、%)

年度
区分
2 3 4 5 6
営業収益 262,050 300,432 314,932 316,430 320,629 348,838
営業費用 303,639 321,918 329,728 339,083 331,071 324,530
収支率 115.8 107.1 104.6 107.1 103.2 93.0

年度
区分
7 8 9 10 11 12
営業収益 326,191 219,602 163,533 128,506 72,962 76,091
営業費用 303,011 259,199 194,423 184,810 110,447 110,152
収支率 92.8 118.0 118.8 143.8 151.3 144.7

 また、上記の営業収益及び営業費用から県間通信業務を行うNTTコミュニケーションズの分を差し引いて、NTT地域会社の収支率を算出すると表8のとおりとなり、11、12両年度において、NTT東日本、NTT西日本いずれも200%近い収支率となっている。
 そして、12年度におけるNTT地域会社の営業収益(NTT東日本202億余円、NTT西日本198億余円)を営業費用の内訳と対比したところ、両会社とも、営業費用のうち施設保全費及び減価償却費(NTT東日本238億余円、NTT西日本249億余円)すら賄えない状況となっている。

表8 NTT地域会社における公衆電話事業の営業収益、営業費用及び収支率
(単位:百万円、%)


年度
会社名 区分 11 12
NTT東日本 営業収益 19,017 20,266
営業費用 36,686 39,394
収支率 192.9 194.3
NTT西日本 営業収益 18,752 19,870
営業費用 37,278 39,684
収支率 198.7 199.7

 上記のような収支状況の中で、公衆電話1台当たりの営業収益もまた大幅に減少しているものの、公衆電話全体の設置台数は漸減傾向にとどまっており、その状況は図4のとおりとなっている。

図4公衆電話1台当たりの月額営業収益及び公衆電話設置台数の推移

(2)NTT地域会社における収支改善策の実施状況

 NTT地域会社では、公衆電話事業の営業損益が悪化する中で、その収支改善のための施策を実施してきているが、今回40支店について、その実施状況を検査したところ、次のような状況となっていた。

ア 委託手数料の改定

 委託公衆電話の委託手数料引下げの改定を12年7月に実施している。そして、手数料の改定に伴い、受託者の承諾を得られず、委託契約を解約した台数は12,082台(NTT東日本4,994台、NTT西日本7,088台)となっていた。

イ 支店の運営体制の見直し

 各支店では、担当エリアを広域化し要員の削減に取り組むなど、公衆電話に係る運営体制を見直している。その結果、公衆電話業務を所掌している拠点を47箇所(NTT東日本26箇所、NTT西日本21箇所)、また、その要員を318人(NTT東日本132人、NTT西日本186人)削減していた。

ウ 設置台数の適正化

 NTT地域会社では各支店に対し、利用者の利便性に配慮しつつ、公衆電話の設置台数の適正化を図るよう指示している。
 今回、その実施状況について検査したところ、12年度中に設置台数の適正化のために撤去したものは、表9のとおり、直営公衆電話で1,283台(前年度末設置台数に対する撤去割合0.9%)、委託公衆電話で8,599台(同1.5%)、計9,882台(同1.4%)にとどまっていた。

表9 設置台数の適正化のために撤去した台数(平成12年度)
(単位:台、%)

区分
会社名
直営公衆電話 委託公衆電話 合計
前年度末
設置台数
撤去
台数
撤去
割合
前年度末
設置台数
撤去
台数
撤去
割合
前年度末
設置台数
撤去
台数
撤去
割合
NTT
東日本
73,055 783 1.0 277,148 2,804 1.0 350,203 3,587 1.0
NTT
西日本
58,101 500 0.8 281,178 5,795 2.0 339,279 6,295 1.8
131,156 1,283 0.9 558,326 8,599 1.5 689,482 9,882 1.4

 このように設置台数の適正化のための撤去が進ちょくしていないのは、利用者の利便性に対する配慮が不可欠なため早急な撤去が困難であるばかりでなく、直営公衆電話の場合は地元関係者や土地所有者に、また、委託公衆電話の場合は受託者にそれぞれ理解を求めるための折衝等に時間がかかることなどによるものと認められる。

エ ICカード公衆電話の設置拡大

 新たなサービスの提供により公衆電話の利用促進等を図ることとして、ICカード公衆電話の設置拡大を進めている。その結果、NTT地域会社全体で、その設置台数は、11年度末18,342台に対して、12年度末は34,192台と約1.9倍となっていた。

(3)公衆電話の利用状況

ア 公衆電話全体の利用状況

 今回、NTT地域会社の40支店において、管内の公衆電話661,398台について、その月平均利用金額(注4)を検査したところ、表10のとおりとなっていた。

表10 月平均利用金額別の公衆電話台数
(単位:台、%)

会社名 区分 第1種
公衆電話
構成比 第2種
公衆電話
構成比 合計
NTT
東日本
検査対象台数 56,314 281,520 337,834
1万2千円未満台数 34,396 61.0 186,510 66.2 220,906
1万円未満台数 30,842 54.7 168,914 60.0 199,756
5千円未満台数 17,636 31.3 101,387 36.0 119,023
NTT
西日本
検査対象台数 43,826 279,738 323,564
1万2千円未満台数 29,811 68.0 192,629 68.8 222,440
1万円未満台数 27,069 61.7 176,013 62.9 203,082
5千円未満台数 16,187 36.9 109,041 38.9 125,228
合計 検査対象台数 100,140 561,258 661,398
1万2千円未満台数 64,207 64.1 379,139 67.5 443,346
1万円未満台数 57,911 57.8 344,927 61.4 402,838
5千円未満台数 33,823 33.7 210,428 37.4 244,251

 上表において、より多くの収益を上げる目的で設置されている第2種公衆電話561,258台について、公衆電話1台当たりの月額営業費用(12年度の県内通信分及び県間通信分12,722円。表6参照)を賄えなかったものがどの程度あるかという観点から、月平均利用金額が1万2千円未満のものの設置台数をみたところ、379,139台、67.5%に上っていた。
 これに対し、第1種公衆電話のうち月平均利用金額が1万2千円未満となっていたものは64.1%となっており、第2種公衆電話の方がむしろ利用の低いものの割合が大きいことから、第2種公衆電話が、より多くの収益を上げているとは認められない状況であった。
 また、第2種公衆電話のうち、月平均利用金額が1万円未満(前述した委託手数料の引下げ改定の際に月額手数料100円の定額のみとした料金区分に当たる額)となっていたものは344,927台、61.4%であり、さらに、同5千円未満となっていたものは210,428台、37.4%であった。
 上記のとおり、より多くの収益を上げることを目的として設置されている第2種公衆電話において利用の低いものが多数見受けられた。

イ ICカード公衆電話の利用状況

 NTT地域会社では、ICカード公衆電話を利用状況等を踏まえながらその設置拡大を図ることとしており、これまでにそのほとんどを第2種公衆電話として設置している。
 今回、NTT地域会社の40支店において、12年度に設置されたICカード公衆電話15,037台について、その月平均利用金額を検査したところ、表11のとおりとなっていた。

表11 月平均利用金額別のICカード公衆電話台数
(単位:台、%)

会社名
会社名
NTT東日本 NTT西日本 合計
設置台数 構成比 設置台数 構成比 設置台数 構成比
検査対象 8,857 6,180 15,037
1万2千円未満 7,739 87.3 5,719 92.5 13,458 89.4
1万円未満 7,398 83.5 5,469 88.4 12,867 85.5
5千円未満 5,749 64.9 4,409 71.3 10,158 67.5

 すなわち、上記アと同様の観点から、月平均利用金額が1万2千円未満のものの設置台数をみたところ、13,458台と全体の89.4%に上っており、公衆電話全体の第2種公衆電話における構成比67.5%に比べて、更に低利用の割合が大きくなっていた。
 そして、月平均利用金額が1万円未満となっていたものが12,867台(85.5%)あり、さらに、同5千円未満となっていたものが10,158台(67.5%)あった。
 また、既設の公衆電話をICカード公衆電話に取り替えたもののうち、取替前後の利用金額が把握できた10,909台についてみると、表12のとおりとなっていた。
 すなわち、ICカード公衆電話に取替後、月平均利用金額が下回っているものが10,507台(96.3%)とそのほとんどを占め、さらにこの中には、取替前に比べ月平均利用金額が50%未満となっているものが9,421台(86.3%)、20%未満となっているものが5,221台(47.8%)あった。

表12 ICカード公衆電話の取替前後の月平均利用状況
(単位:台、%)

会社名
区分
NTT東日本 NTT西日本 合計
設置台数 構成比 設置台数 構成比 設置台数 構成比
検査対象 7,050 3,859 10,909
取替後、下回っているもの 6,793 96.3 3,714 96.2 10,507 96.3

50%未満 6,224 88.2 3,197 82.8 9,421 86.3
20%未満 3,332 47.2 1,889 48.9 5,221 47.8
取替後、上回っているもの 257 3.6 145 3.7 402 3.6

 上記のとおり、ICカード公衆電話に取替後、公衆電話の利用が著しく低下している状況となっており、さらに、NTT地域会社が実施したICカード公衆電話の利用動向等に対するアンケート調査でも、ICカード公衆電話を利用したことのある人の割合はまだ低いという結果となっている。
 このようにICカード公衆電話の利用が低調となっている理由としては、利用者の多くが従来の磁気テレホンカードは保有しているもののICテレホンカードを所持していないこと、ICカード公衆電話の設置台数がまだ少ないこと、ICカード公衆電話の認知度が低く機能等について十分に周知が図られていないことなどが挙げられる。

(基礎的電気通信役務に関する検討の状況)

 13年6月、電気通信事業の公正な競争の促進を図るなどのための制度の整備等を定めた「電気通信事業法等の一部を改正する法律」(平成13年法律第62号)が公布された。そして、同法に基づき、基礎的電気通信役務(国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき電気通信役務)の提供を確保するために、各電気通信事業者が同役務に係る費用の一部を負担するなどの制度の整備に関する仕組みが定められた。同役務の範囲等については、総務省令で定めることとされており、同役務に含める公衆電話サービスの範囲等についても、現在、国において検討が行われている。

3 本院の所見

 公衆電話は、屋外における通信手段として国民生活に重要な役割を果たしてきたが、近年、携帯電話等が著しく普及したことなどに伴い、その利用は急激に減少している。このため、NTT地域会社では、委託公衆電話の委託手数料の見直し、支店における要員の削減、利用者の利便性に配慮した上での公衆電話設置台数の適正化等の施策を実施している。
 しかし、今回、本院において、公衆電話事業の運営の状況を検査したところ、NTT地域会社では、12年度においても、その収支率は改善されておらず、営業費用が営業収益の約2倍となっており、多額の営業損失が生じていた。そして、設置台数の適正化については、関係者への折衝等に時間がかかることなどから十分な進ちょくが図られていない状況となっており、さらに、より多くの収益を上げることを目的として設置されている公衆電話の中にも利用の低いものが多数見受けられたり、新たに導入したICカード公衆電話の利用も低調となっていたりしていた。
 ついては、NTT地域会社においては、引き続き、次のような施策を推進して、国民生活の利便に資するとともに、公衆電話事業の更なる収支の改善を図る必要があると認められる。
〔1〕 国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国に提供が確保されるべき電気通信役務とされる公衆電話については、利用者の利便性を低下させないよう設置台数の確保、適正な配置に努めること
〔2〕 収益を上げることを目的として設置されている公衆電話については、利用者のニーズ等を更に的確に把握し、低利用のものについては、移設又は撤去も視野に入れて関係者との調整等を図るなどして一層の適正配置を進めるとともに、公衆電話事業を更に効率化する方策を検討すること
〔3〕 新たに導入したICカード公衆電話については、利用方法等の周知の強化、一層の利便性の向上等に努めること
 そして、上記の施策を推進するとともに、公衆電話が今後とも屋外での重要な通信手段として提供されなければならないことにかんがみ、現在、国において行われている基礎的電気通信役務に含める公衆電話サービスの範囲等の検討結果も踏まえて、公衆電話事業の今後の在り方を多角的な観点から検討し、総合的な対策が講じられることが望まれる。

(注1) NTT地域会社の40支店 NTT東日本の東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨、長野、新潟、宮城、福島、岩手、青森、秋田、北海道各支店、NTT西日本の大阪、京都、神戸、奈良、和歌山、名古屋、静岡、三重、金沢、富山、福井、広島、鳥取、岡山、山口、愛媛、香川、高知、福岡、長崎、熊本、大分、鹿児島、沖縄各支店
(注2) 営業収益・営業費用 平成10年度からは電気通信事業会計規則(昭和60年郵政省令第26号)の改正等により、ディジタル公衆電話に係る分を含んでおり、他の電気通信事業者との相互接続に係る分は含まれていない。また、営業費用には事業税が含まれていない。
 なお、11年度については、NTT再編成前の4月から 6月までの役務別損益は算出されていないため、11年7月から12年3月までの9箇月の金額である。
(注3) 1台当たりの月額営業収益・1台当たりの月額営業費用 各年度の営業収益又は営業費用(平成11年度以降についてはNTT地域会社及びNTTコミュニケーションズの営業収益又は営業費用の合計)を各年度の平均公衆電話設置台数(前年度末と当該年度末の平均公衆電話設置台数)で除し、更に12(11年度は9)で除した金額である。
(注4) 月平均利用金額 検査時において把握可能であった期間の公衆電話ごとの月平均利用金額(県内通信分及び県間通信分)である。