検査対象 | 国の機関 | 内閣府(沖縄総合事務局(平成13年1月5日以前は総理府沖縄開発庁))、農林水産省、国土交通省(北海道開発局(平成13年1月5日以前は総理府北海道開発庁)) |
都道府県 | 25道府県 | |
政令指定都市 | 6政令指定都市 | |
市町村 | 229市町村 | |
検査対象とした契約 | 契約方式 | 一般競争契約、指名競争契約及び随意契約 |
契約年度 | 平成11、12両年度 | |
契約件数 | 7,402件 | |
上記に係る契約金額 | 4032億円 |
1 検査の背景
政府は、公共工事に係る入札・契約制度に関して、平成6年に「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」(閣議了解。以下「行動計画」という。)を策定し、公共工事の発注に当たっては、透明性、客観性及び競争性を確保した調達方式を採用することとした。この行動計画は、国の機関及び公団等が実施する公共事業を対象として策定されたものであるが、都道府県及び政令指定都市が実施する公共事業についても国の機関と同様の対応が勧奨されている。
そして、行動計画と前後して建設省及び自治省(13年1月6日以降は国土交通省及び総務省)は、都道府県に対して、「地方公共団体の公共工事に係る入札・契約手続き及びその運用の改善の推進について」(平成5年12月建設省経構発第22号・自治行第114号。以下「推進通知」という。)等を通知し、公共工事に係る入札・契約手続等の改善の推進を要請するなど所要の措置を講じている。
行動計画及び推進通知の主な内容は、次のとおりである。 公共工事の発注に当たって、国の機関においては450万SDR(注1)
以上の公共工事について、また、公団等、都道府県及び政令指定都市においては1500万SDR以上の公共工事について、透明性、客観性及び競争性を確保するため、一般競争入札(注2)
(以下「一般競争」という。)による調達方式を採用することとする。そして、上記基準額未満の公共工事の発注に当たっては、従来から実施されている指名競争入札(以下「従来型指名」という。)に比べてより競争性等を高めた新しい指名競争入札方式である公募型指名競争入札(注3)
(以下「公募型」という。)や工事希望型指名競争入札(注4)
(以下「希望型」といい、一般競争、公募型、希望型を合わせて「新入札制度」という。)を活用するなどの措置を着実に推進していくこととする。
そして、推進通知等によると、市町村についても、新入札制度の採用を検討することが要請されている。
(注1) | SDR 国際通貨基金の特別引出権(Special Drawing Rights)。平成11、12両年度邦貨換算額は、次のとおりである。
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(注2) | 一般競争入札 入札に当たって、経営状況、同種の工事の施工実績・配置予定の主任技術者等の資格などに関する条件を満たす者が参加して行う入札 | ||||||||||||||||
(注3) | 公募型指名競争入札 入札に先立ち、入札参加資格の認定を受けている者のうちから公募により、施工実績、配置予定の技術者等の技術資料を提出させて審査を行い、その中から入札に参加する者を指名して行う入札 | ||||||||||||||||
(注4) | 工事希望型指名競争入札 あらかじめ、入札参加資格の申請時に受注を希望する工種を記入させ、これと工事の規模、地域的特性等を勘案して、10数者から20者程度選定し通知する。そして、選定した者の中から入札の参加を希望した者に対し、施工実績、配置予定の技術者等の技術資料を提出させて審査を行い、その中から入札に参加する者を指名して行う入札 |
公共工事の入札及び執行をめぐる国内外の動向を踏まえ、本院では、平成9年度決算検査報告において、「公共工事に関する入札・契約制度の運用について」を「特定検査対象に関する検査状況」として掲記している。この中で、本院は、運輸、建設両省(13年1月6日以降は国土交通省)等、公団等及び国の補助を受けて地方公共団体が実施する工事について、その入札・契約制度の実施状況や競争性の確保等を検査した状況を示すとともに、公共工事の一層の透明性、客観性及び競争性を確保するため、新入札制度についての所見を記述しているところである。
そして、本院としては、入札・契約制度の運用について注視してきたところ、農業農村整備事業に係る補助事業の執行に関して、北海道等一部の地方公共団体で不適切な事態が判明した。
2 検査の着眼点及び対象
農林水産省が実施する農業農村整備事業は、国土資源の総合的な開発及び保全に資するとともに国民経済の発展に果たす役割も大きく、農林水産省が行う公共工事の中でもその大宗を占めていて、予算額も多額に上っている。そこで、農業農村整備事業に係る公共工事の入札及び契約に当たり、〔1〕行動計画等に示されている新入札制度がその趣旨に沿って着実に導入・実施されているか、そして、〔2〕従来型指名を含めた入札・契約制度の実施に当たり、透明性、客観性及び競争性を確保した調達方式を採用して運営されているか、また、〔3〕北海道における公共工事の入札及び執行に関する改善状況がどのようになっているかなどに着眼して検査した。
11、12両年度に契約を締結した農業農村整備事業に係る公共工事のうち、国の機関及び地方公共団体が実施した1件当たりの契約金額が1000万円以上の工事を対象として検査した。その事業主体及び契約金額の内訳は、表1のとおりである。
<表1> 検査の対象とした公共工事 | ||||||||||||||||||||
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(注)
国の機関については各地方支分部局にある事務所の一つを、25道府県については当該地方公共団体の各地域ごとに置かれた事務所等のうちの一つを、それぞれ対象とした。
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(注5) | 25道府県 北海道、大阪府、秋田、山形、茨城、群馬、埼玉、千葉、富山、石川、岐阜、静岡、愛知、滋賀、兵庫、鳥取、岡山、広島、山口、高知、福岡、長崎、熊本、宮崎、沖縄各県 |
(注6) | 6政令指定都市 千葉、名古屋、神戸、広島、福岡、北九州各市 |
3 検査の状況
公共工事の契約は、国の機関においては、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等に基づき、また、地方公共団体においては、地方自治法(昭和22年法律第67号)、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)等に基づいて、それぞれ締結されている。
(1)新入札制度の導入及び実施状況
ア 新入札制度の導入状況
新入札制度に関する規程等の整備状況について事業主体別にみると、13年1月1日現在、表2のとおり、国の機関では、行動計画等に示されている趣旨に沿って規程等を整備し、新入札制度を導入しているのに対し、地方公共団体では次のような状況となっていた。
<表2> 新入札制度の導入状況 | (単位:%) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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〔1〕 検査の対象とした25道府県及び6政令指定都市(以下「道府県等」という。)では、一般競争及び公募型をおおむね導入しているが、希望型は一部で導入しているにとどまっている。
〔2〕 検査の対象とした229市町村(以下「市町村」という。)では、新入札制度の導入の検討が要請されているにもかかわらず、導入が遅れている。
そして、新入札制度を導入していない地方公共団体について、その理由を調査したところ、道府県等では、希望型を導入しない理由として、類似の方式である公募型を採用していることのほか、指名資格審査を厳格に運用することにより、従来型指名でも十分対応し得ることなどを挙げている。また、市町村では、行動計画において一般競争の導入が勧奨されていないことのほか、表3のとおり、多くの市町村が、地元の中小建設業者の受注を確保したいこと、契約事務に関する人的、経済的負担が大きいこと、契約予定額が少額であることなどを挙げている。
<表3> 新入札制度を導入していない理由 | (単位:%) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注)
新入札制度を導入していない市町村(一般競争176、公募型212、希望型222の各市町村)を対象として、上記の項目を例示してアンケート調査した回答(複数回答可)を集計したものである。
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イ 入札・契約方式別の実施状況
新入札制度、従来型指名及び随意契約の実施状況は表4のとおりとなっており、国の機関では、行動計画等に示されている趣旨に沿って新入札制度への移行が着実に進んでいるのに対し、地方公共団体では、依然として従来型指名を主たる入札方式としている状況であった。
<表4> 入札・契約方式別の契約件数、割合 | (単位:件) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ウ 新入札制度の実施状況
(ア)新入札制度の入札方式別設定金額
新入札制度を導入している事業主体について、対象とする工事の予定価格の設定金額(以下「設定金額」という。)は、表5−1から表5−3のとおりとなっている。
<表5−1> 国の機関における入札方式別設定金額 | ||||||||
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(注)
設定金額の7.2億円は450万SDRの平成11年度邦貨換算額である。
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<表5−2> 道府県等における入札方式別設定金額 | (単位:%) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注)
国の機関において各入札制度の適用される設定金額の下限に基づいて整理した(次表も同じ)。
なお、設定金額の24.3億円は1500万SDRの平成11年度邦貨換算額である。 |
<表5−3> 市町村における入札方式別設定金額 | (単位:%) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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国の機関においては、一般競争の設定金額は、行動計画に定められた7億2000万円以上と設定されている。これに対し、地方公共団体においては、各入札方式ごとの設定金額は事業主体により区々となっているが、ほぼ1億円以上で設定されている。
そして、地方公共団体の一般競争の設定金額は、行動計画に定められた金額より低額に設定されている傾向にある。また、公募型及び希望型の設定金額については、国の機関に準じて設定されている傾向にある。
(イ)発注工事の契約状況
新入札制度の設定金額を基準にして、国の機関等における契約件数について予定価格の規模別に区分すると、表6のとおりとなっている。
<表6> 予定価格の規模別契約件数、割合(随意契約を除く。) | (単位:件、%) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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国の機関においては、新入札制度の設定金額の最下限となる1億円以上の予定価格の割合が59.3%となっていた。また、国の機関の事務所等のなかには、公募型の設定金額の下限を2億円から更に9000万円まで引き下げて試行的にその実施を拡大しているところも見受けられた。これに対し、道府県等及び市町村においては、1億円以上の予定価格の割合が、それぞれ7.5%、5.6%となっており、新入札制度の対象となる工事はわずかであった。
以上のことから、地方公共団体では、新入札制度を導入している場合であっても、予定価格が新入札制度の設定金額に満たないものが大宗を占めるため、結果的に新入札制度は極めて低い実施状況となっている。
このように地方公共団体の予定価格の規模が小さいことについては、農業農村整備事業の特殊性も要因となっており、その主なものを挙げると次のとおりである。
〔1〕 農業土木工事においては、工事の施工期間が非かんがい期に限定される場合が多いため、当該期間内に施工が可能な工事規模にする必要があること
〔2〕 地元の中小建設業者へのより一層の受注機会の確保を図るため、分離・分割発注を行う傾向があること
〔3〕 農業農村整備事業の実施に当たっては、受益者負担を伴い、事業採択時に当該受益者の同意を得た上で事業が実施されることとなるが、着工に当たっては具体的に合意が得られた地区から順次行う場合が多く、そのため、工事規模を小規模に設定する傾向があること
(2)従来型指名を含む各入札方式の実施状況
ア 競争性の確保について
(ア)新入札制度の入札参加希望者数等及び従来型指名における指名者数
新入札制度において、入札に参加を希望した者(以下「希望者」という。)及び当該入札で実際に応札した者(以下「応札者」という。)の数並びに従来型指名における指名者の数を各入札方式別にみると、表7のとおりとなっている。
<表7> 入札方式別の希望者数、応札者数及び指名者数 | (単位:者) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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新入札制度全体の希望者数と従来型指名の指名者数をそれぞれの平均で比較すると2.4者の相違であるが、新入札制度のうちの一般競争と従来型指名を比較した場合は、一般競争の平均が13.1者であるのに対して従来型指名の平均は9.1者となっていて、その差は4.0者に拡がる。
なお、国の機関において一般競争の希望者数が少ない理由は、大規模工事が多いため入札に参加できる資格者が限定されたり、入札参加資格要件として特定建設工事共同企業体を構成することとしていたりする場合が多いことなどによると思料される。
(イ)入札方式別の落札比率
落札価格の予定価格に対する割合(以下「落札比率」という。)を、年度別、各入札方式別にみると、表8−1及び表8−2のとおりとなっている。
<表8−1> 落札比率別契約の件数、割合(平成11年度) | (単位:件、%) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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<表8−2> 落札比率別契約の件数、割合(平成12年度) | (単位:件、%) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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11、12両年度の各入札方式別の落札比率の分布状況及びその平均をみると、11年度においては、従来型指名と一般競争との間に2.5%の開きはあるものの落札比率の平均にそれほど大きな差は見られない。しかし、12年度においては、従来型指名の落札比率の平均がほとんど変わらないのに対し、新入札制度の落札比率は前年度に比べかなり低下している。
また、95%以上と高い落札比率になっているものの割合については、新入札制度では11年度に86.7%となっていたものが12年度では74.5%となり12.2ポイントも低下している。これに対し、従来型指名も11年度に90.8%であったものが12年度では87.2%となり3.6ポイント減少しているものの、新入札制度との開きは顕著になっている。
なお、新入札制度による契約は従来型指名に比べて一般的に高額なことから、落札比率の低下による経済的効果はより大きいものとなる。
以上のことから、新入札制度による入札方式を採用した場合において、競争性の確保、経済的な事業の執行等について一定の効果が見受けられる。
イ 従来型指名の実施状況について
前記のとおり、農業農村整備事業については、地方公共団体において新入札制度の導入及び実施が極めて低調な状況にあり、多数の事業が従来型指名により実施されていることから、さらに、従来型指名の実施状況について分析してみると次のとおりとなっている。
(ア)指名基準等の策定状況
国の場合、従来型指名の運用に際し、会計法令に基づき、入札手続の透明性・公平性を確保するため、指名競争に参加する者を指名する場合の基準(以下「指名基準」という。)を策定するものとされ、さらに、指名基準に基づき具体化・明確化することを目的とした運用基準の策定も要請されている。これに対し、地方公共団体の場合、地方自治法等には、国の機関のような規定が明示されていないため、推進通知等により国の例を示しつつ、指名基準及び運用基準の策定を要請している。
地方公共団体における指名基準及び運用基準の策定状況は、表9のとおりとなっている。
<表9> 指名基準及び運用基準の策定状況 | (単位:%) | ||||||||||||||||||||||
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道府県等では、指名基準はすべての事業主体で策定されているが、運用基準については、6事業主体で策定されていない。また、市町村においては、指名基準は大部分の事業主体で策定されているが、運用基準については策定されている事業主体が半数以下にとどまっている。
(イ)指名基準等の内容及びその運用状況
国の機関及び地方公共団体では、おおむね次のような指名基準及び運用基準に係る事項を総合的に勘案した上で、指名業者の選定を行っている。
指名基準 | 運用基準 |
〔1〕不誠実な行為の有無、経営状況 | 請負契約に基づく措置要求に従わないなど履行が不誠実でないこと、手形交換所による取引停止処分がなく経営状況が極めて不安定でないことなど |
〔2〕工事の成績 | 事業主体が定める基準に基づく工事成績の平均数値が過去2年間連続して一定点数以上あることなど |
〔3〕当該工事に係る技術的適性 | 当該工事と同種工事について相当の施工実績を有すること、自然的条件等当該工事の作業条件と同等と認められる条件下での施工実績があることなど |
〔4〕手持ち工事の状況 | 当該地域における手持ち工事の保有状況からみて当該工事の施工能力があること |
〔5〕当該工事に対する地理的条件 | 事業所の所在地、当該地域での工事実績等からみて当該地域での工事の規模等に応じて確実・円滑に工事を実施できる体制が確保されていることなど |
〔6〕安全管理の状況、労働福祉の状況 | 過去の発注工事において過去数年間に死亡者がない等安全管理成績が優良であること、賃金不払に関する通報がないこと・労働福祉の状況が特に優良であることなど |
しかし、従来型指名における指名業者の選定に当たっては、上記のうち、特に、〔2〕の「工事の成績」と〔5〕の「当該工事に対する地理的条件」により、各事業主体に対する工事の施工実績がある業者に絞られる傾向にあるとともに、当該事業主体の事務所等の所轄する管内に営業所が所在する業者(以下「管内業者」という。)を優先して指名する傾向にある。
このため、施工実績のない新規参入業者、各事業主体の事務所等の管内に営業所がない業者は、従来型指名における指名業者に選定されにくい傾向にある。
(ウ)従来型指名における指名頻度等
従来型指名における指名業者は、おおむね事業主体の事務所等の管内業者を優先していることから、検査の対象とした国の機関や地方公共団体の事務所等の管内にある入札参加資格者登録名簿に登載されている業者(以下「登録業者」という。)のうち、「土木一式工事」の工種区分に登録された業者の指名頻度についてみると、表10のとおりとなっている。
<表10>登録業者の指名頻度 | (単位:件、者、%) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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各事業主体の1契約当たりの管内業者数は、国の場合で27.3者(契約件数211件に対し管内業者数5,777者)であるのに対し、地方公共団体の場合では10.5者(契約件数5,178件に対し管内業者数54,646者)となっている。
そして、指名を受けた業者の指名回数をみると、国の機関では、1回から5回までの指名回数の割合が93.3%を占めている状況となっている。一方、地方公共団体では、1回から5回までの指名回数の割合が63.9%、6回以上が36.1%を占めており、このうち21回以上が6.6%となっている。
以上のように、地方公共団体では、登録業者の指名に偏りが大きく、指名機会が均等に確保されていない状況になっている。
(3)北海道の入札・契約制度の改善内容及び浸透状況
ア 北海道の入札・契約制度の改善内容
北海道では、農業農村整備事業に係る補助事業の執行に関連して、公正取引委員会による立入り検査が実施されたことを受け、業務運営の適正化の推進を図るため、学識経験者を含めた入札制度改善委員会を設置して検討を行った。
その結果、〔1〕一般競争の対象範囲の拡大、従来型指名におけるランダム・カット方式(注7)
の採用及び新入札制度の本格実施などによる「競争性の促進」、〔2〕随意契約の厳格な適用、入札日時、入札結果等の公表及び入札執行の公開などによる「不当な関与の排除」、〔3〕入札等管理委員会の設置、設計・積算部門と入札関係業務部門の分離等による内部牽制機能の強化などによる「実効性の確保」を柱とした改善措置を講じた。
これらの改善措置を講じた後、農業農村整備事業に係る新入札制度の契約件数は、11年度における契約件数が13件(全入札件数の3.2%)であったものが、12年度では47件(同14.7%)に増加し、また、従来型指名についてみても、11年度における落札比率が平均で97.5%(全国の従来型指名の平均は96.9%)であったものが、12年度では平均で94.0%(同96.5%)に低下するなど競争性の確保等について一定の効果が現れてきている。
イ 北海道の入札・契約制度の改善内容の浸透状況
農林水産省は、12年5月、国庫補助事業に係る交付行政庁の立場から、上記の北海道における入札・契約制度の改善内容について報告を求めるとともに、農業農村整備事業に係る補助事業の執行についての指導を行っている。
このような状況の下、入札制度の運用に関する公正取引委員会の要請について、地方公共団体への浸透状況をみると、北海道を除く府県等では、30事業主体すべてにおいて認識されており、市町村では、229事業主体のうち100事業主体に認識されていたが、北海道の入札・契約制度に関する改善措置の内容までは、必ずしも把握されていなかった。
(4)入札・契約の適正化に関する新たな法律の制定
国の機関、公団等及び地方公共団体が行う公共工事の入札・契約の適正化の促進により公共工事に対する国民の信頼を確保することなどを目的として、13年4月1日、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号。以下「入札適正化法」という。)が新たに施行され、入札・契約の過程・内容の透明性の確保、入札・契約参加者の公正な競争の促進等のための措置を各発注機関が着実に実施することを求めている。
そして、農業農村整備事業に係る公共工事についても入札適正化法の適用対象となっており、今後、同法の目的に沿って公共工事の入札・契約が適正に実施されるようになると、事業主体における現在の入札・契約制度の問題の多くは改善されることが期待される。
4 本院の所見
農林水産省では、農業農村整備事業を多数実施しており、これに係る国庫補助金の交付額も多額に上っている。
そして、農業農村整備事業に係る公共工事の入札・契約方式は、特に、地方公共団体において少額の発注が多いこともあり新入札制度の導入・実施が低調であり、依然としてその大宗が従来型指名によっている状況にある。そして、従来型指名では、指名業者が特定の業者に偏っているなどの傾向が見られるとともに、落札比率も新入札制度に比べ高率なままにとどまっている状況にある。
また、今回の検査の端緒の一つとなった北海道における公共工事の入札・契約制度の改善の措置は、競争性の確保等において一定の効果が認められており、他の地方公共団体においても、これを北海道固有の問題とするのではなく、自らの入札・契約制度の見直しにつなげていくことが望まれる。
以上のような状況を踏まえ、農業農村整備事業に係る公共工事の入札・契約制度について、入札適正化法の適用などにより、今後、入札・契約の適正化が促進されるよう適切に運用されていくか引き続き注視していくこととする。