検査対象 | 国土交通省(平成13年1月5日以前は運輸省及び建設省)、北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社 |
駅のバリアフリー化の概要 | 高齢者、身体障害者等が安全かつ身体的負担の少ない方法で公共交通機関を利用することができるよう、駅にエレベーター等を整備すること |
検査の対象とした駅におけるエレベータ等の設置費用 | 247駅 | 231億9581万円
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1 検査の背景
急速な高齢化社会への移行、高齢者又は身体障害者等に対する社会的理解の深まりとその自立した社会生活の確保についての社会的要請等を踏まえ、近年、我が国においても社会全体のバリアフリー化が望まれている。そして、高齢者、身体障害者等の移動の利便性及び安全性を確保することにより、その移動手段を実質的に確保し、もってその社会生活の円滑化及び社会参加の一層の促進を図るなどのための環境整備という見地から、公共交通機関におけるバリアフリー化が強く望まれている。
このような要請が利用者又は地域社会からあったことにこたえ、新幹線等我が国の多くの鉄道路線を保有している北海道、東日本、東海、西日本、四国及び九州の各旅客鉄道株式会社(以下、これらの各社を「JR各社」という。)では、各社の駅にエレベーター又はエスカレーター(以下「エレベーター等」という。)を整備する事業を推進してきた。これらの整備事業は、JR各社において、その自己資金により又は国、地方公共団体等の支援を受けて行われてきたものである。
さらに、前記の社会的要請を踏まえ、平成12年に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号。以下「交通バリアフリー法」という。)が制定されており、交通バリアフリー法では、鉄道事業者に対し、駅の整備を推進するための措置等を講ずることなどが要請されている。このため、JR各社においても、今後、交通バリアフリー法制定の趣旨を踏まえ、駅に対する一層のバリアフリー化を推進していくことに努めることとしている。
2 駅のバリアフリー化に関する制度及びJR各社の対応
運輸省(13年1月6日以降は国土交通省)では、昭和58年に、鉄道事業者が駅におけるバリアフリー化を促進するための指針として「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」を制定した。このガイドラインは、身体障害者が安全かつ身体的負担の少ない方法で公共交通機関を利用することができるよう鉄道事業者が所要の施設整備を進める際の指針として策定されたものである。なお、このガイドラインは、我が国社会の急速な高齢化、身体障害者の自立と社会参加の要請の高まりなどの事情を踏まえ、平成6年に見直しが行われ、身体障害者に加え、高齢者等もその対象に含めるものに改訂されている。
また、このガイドラインの策定後、運輸省では、「鉄道駅におけるエスカレーターの整備指針」(3年6月制定。5年8月改訂)及び「鉄道駅におけるエレベーターの整備指針」(5年8月制定)を策定した。これは、駅におけるエレベーター等の設置に関し、新設又は大改良する駅と既設の駅の別に、鉄道事業者を指導するための指針として策定されたものである。そして、これらの整備指針によると、例えば、新設又は大改良を行う駅であって、スロープにより段差を解消できない場合、ホームと公共用通路を結ぶ通路又はホームと他の路線のホームを結ぶ通路の各々に少なくとも一のエレベーターを設置するなどとされていた。また、既設の駅については、1日当たりの利用者数が5,000人以上等の駅について、順次、計画的にエレベーター等を設置するよう努めることとされていた。
JR各社をはじめとする鉄道事業者では、上記のエレベーター等の整備指針に基づいて駅におけるエレベーター等の整備を進め、そのバリアフリー化に努めてきた。
しかし、エレベーター等の整備には多額の資金が必要であり、鉄道事業者の資金だけでその必要かつ十分な整備を進めることにはおのずから限界がある。また、高齢者、身体障害者等による公共交通機関の円滑な利用、ひいてはその社会生活の円滑化に資するなどのためには、駅のみならず、その周辺のバリアフリー化についても併せて考慮されることが望まれている。
このような状況を踏まえ、交通バリアフリー法は、駅及びその周辺の総合的・一体的なバリアフリー化の促進を図るとともに、国においては、この事業の実施に必要な資金の確保等の措置を講ずるよう努めなければならないとしている。
そして、交通バリアフリー法に基づいて、12年11月に、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律の基本方針」(国家公安委員会、運輸省、建設省、自治省告示。以下「主務大臣の基本方針」という。)が定められた。これには、駅及びその周辺の総合的・一体的なバリアフリー化を計画的に推進する際の最も基本的な方針が示されている。これによると、駅のバリアフリー化の目標として、1日当たりの平均的な利用者数が5,000人以上の既設の駅については、22年までに、高低差が5m以上ある駅にはすべてのホームにエレベーター等を設置するなどして段差を解消するなどとしている。
また、交通バリアフリー法によると、市町村は、主務大臣の基本方針に基づき、単独で又は共同して、当該市町村の区域内の重点整備地区について、移動円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本的な構想(以下「市町村の基本構想」という。)を作成することができるとしている。そして、主務大臣の基本方針によると、当該地区に最も身近な行政主体であり、その地区の特性を十分に把握している市町村が鉄道事業者等と協議を行い、事業の効果的な推進が図られることが重要であるとされている。
国及び地方公共団体では、駅のバリアフリー化を推進するため、従来から各種の支援制度を設け、バリアフリー化を推進する鉄道事業者に対する支援を行ってきている。
すなわち、運輸省では、10年度に交通施設バリアフリー化設備整備費補助金(以下「バリアフリー化補助金」という。)を創設した。これは、駅のバリアフリー化のための工事を行う鉄道事業者に対し、地方公共団体が支援を行う場合には、運輸施設整備事業団を通じ、その経費の一部(地方公共団体の補助する額以内、かつ、補助対象経費に3分の1を乗じて得た額以内の額)を補助するものである。
また、国以外の機関による公的な支援についてみると、一部の地方公共団体では、バリア・フリー化補助金が創設される以前から、駅のバリアフリー化に要する費用の一部を補助してきた。そして、バリアフリー化補助金が創設されてからは、地方公共団体は、バリアフリー化補助金により又はこれと併せてその費用の一部を補助するなどしている。
鉄道事業者のうちJR各社では、その前身である日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)当時から駅のバリアフリー化に取り組んできた。そして、JR各社では、交通バリアフリー法制定の前後においてそれぞれ次のようなバリアフリー化設備の整備方針を定めるなどして、順次、エレベーター等を駅に整備している。
(1)東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)
交通バリアフリー法の制定に先立ち、JR東日本では、10年9月、駅におけるエスカレーターの設置についての整備方針を定めた。この整備方針では、高齢化社会の到来を踏まえ、エスカレーターを駅の標準的な設備と位置付けている。そして、東京からおおむね50km圏内にある1日当たりの利用者数が3万人以上の既設の駅について、13年度までに、各ホームに最低1基のエスカレーターを設置するとしている。そして、整備に当たっては、地方公共団体等の協力も得ながら実施するとしている。
また、13年6月に第2期の整備方針を定めており、エレベーターを駅のバリアフリー化の基本設備と位置付け、原則として、22年までに、交通バリアフリー法の対象となる駅(1日当たりの利用者数が5,000人以上の駅で、高低差が5m以上となっているものなど)のすべてのホームにエレベーターを設置するとしている。さらに、1日当たりの利用者数が1万人以上の駅で、高低差が5m以上等の駅のすべてのホームにエスカレーターを設置するとしている。そして、これらの整備事業の実施に要する資金については、国及び地方公共団体の補助を受けるなどとしている。
(2)西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)
JR西日本においても、JR東日本と同様、交通バリアフリー法の制定に先立ち、11年4月、駅におけるエレベーター等の設置についての整備方針を定め、そのバリアフリー化に努めることとした。この整備方針では、京阪神地区等にある駅については利用者数の多い駅及び乗換駅、それ以外の地域については県庁所在地にある駅及び新幹線の主要な駅にエレベーター等を整備するとしている。そして、21年までには、1日当たりの利用者数が5,000人以上の駅については、おおむねすべての駅にエレベーター等を整備するとしている。
そして、これらの整備事業の実施に当たっては、地方公共団体等との間で所要の調整が図られた駅から整備するとしている。
(3)北海道、東海、四国及び九州各旅客鉄道株式会社(JR北海道、JR東海、JR四国及びJR九州)の各社
これらのJR各社についても、交通バリアフリー法の制定以前から、地方公共団体等から要望があったなどの場合には、地方公共団体等と協議を行うなどしてエレベーター等の整備を実施してきている。そして、各社とも、1日当たりの平均的な利用者数が5,000人以上の駅については、主務大臣の基本方針の定めるところに従い、22年までに、すべての駅にエレベーター等を整備し、駅のバリアフリー化を図るとしている。
3 検査の視点及び対象
上記のように、JR各社においては、交通バリアフリー法の制定以前からエレベーター等の整備を実施してきている。そして、今後22年までに駅及びその周辺のバリアフリー化を実施することが目標とされ、エレベーター等の整備が総合的かつ計画的に行われることが望まれることから、整備のための経済的な負担が、更に大きくなると認められる。また、交通バリアフリー法において市町村の主導の下に駅及びその周辺のバリアフリー化を一体的に推進することとされていることから、JR各社による取組みのみならず、国による財政的な支援及び地方公共団体による積極的な取組みなどがより一層必要になってくるものと思料される。
そこで、駅におけるバリアフリー化を実施するJR各社とその周辺のバリアフリー化を実施する地方公共団体において、高齢者や車いすを使用する身体障害者等(以下「車いす使用者等」という。)が利用するエレベーター等の整備が、車いす使用者等にとって、円滑な移動ができるように実施されてきたか、また、交通バリアフリー法の制定に伴い、今後、一層のバリアフリー化を実施するに当たり、駅及びその周辺の一体的な整備を実施するにはどのような点に留意すべきかなどの視点から検査を実施した。
また、エレベーター等が設置されていない駅について、その理由についても検査を実施した。
バリアフリー化補助金が創設される1年前の9年度から交通バリアフリー法が制定された12年度までの4年間に、JR各社においてバリアフリー化のための主要な設備であるエレベーター等を設置した下表の247駅を対象に検査した。
なお、新幹線の駅については、国鉄当時からエレベーター等を整備してきているため、上記の対象年度にかかわらず対象として検査を実施した。
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また、12年度末現在エレベーター等が設置されていない駅のうち、他の地域に比べてエレベーター等の整備が進んでいる大都市部を中心として、26駅についても検査の対象とした。
4 検査の状況
(1)エレベーター等の整備状況
上記の247駅におけるエレベーター等の設置費用及びその財源について検査したところ、次のとおりとなっていた。
(ア)JR各社において設置費用の全額を負担しているもの
JR各社における独自の施策として、JR各社がその設置費用の全額を負担してエレベーター等を設置していた駅は、武蔵浦和駅ほか86駅(JR東日本79、JR東海3、JR西日本3、JR九州2)で、その工事費は、計121億0850万余円となっていた。
(イ)JR各社においてバリアフリー化補助金の交付を受けているもの
JR各社において、バリアフリー化補助金の交付を受けてエレベーター等を設置していた駅は、石狩当別駅ほか74駅(JR北海道5、JR東日本40、JR東海10、JR西日本13、JR四国1、JR九州6)で、その工事費は、計75億0374万余円となっていた。
また、その費用負担の内訳は、JR負担32億6072万余円、国庫補助金21億1522万余円、地方公共団体負担21億2780万余円となっていた。
(ウ)JR各社及び地元市町村等においてエレベーター等の設置費用を分担しているもの
JR各社及び地元市町村等において、その設置費用を分担してエレベーター等を設置していた駅は、千歳駅ほか35駅(JR北海道2、JR東日本25、JR東海1、JR西日本6、JR九州2)で、その工事費は、計31億9542万余円となっていた。
また、その費用負担の内訳は、JR負担15億2348万余円、地元市町村等負担16億7193万余円となっていた。
(エ)全額地元市町村等が負担しているもの
地元市町村等の要望により、地元市町村等においてその設置費用の全額を負担して、JR各社がエレベーター等を設置していた駅は、北浦和駅ほか7駅(JR東日本3、JR西日本2、JR九州3)で、その工事費は、計3億8812万余円となっていた。
(2)エレベーター等が設置されている駅の状況
駅にエレベーター等を設置することにより、車いす使用者等がJR各社の鉄道を利用する際に円滑な移動ができるようになっているかについて、前記247駅のうちの191駅(在来線133駅、新幹線58駅)の駅前広場から当該駅のホームに至るまでの間の状況を検査した。
その結果、63駅(在来線18駅、新幹線45駅)の駅前広場から当該駅のホームに至るまでの間の状況は、次のとおりとなっていた。
(ア) 駅前広場から改札に至る自由通路に階段があり、この階段が車いす使用者等の円滑な移動の障害となっている駅が17駅あった(参考図1参照)。そして、これらの駅に係るエレベーター等の設置費用は、計19億7163万余円となっており、このうち、JR各社が18億2915万余円を負担していた。
<事例1>
A駅では、改札とホームの間は、11年度にJRの全額負担により設置した車いす対応型エスカレーターを利用することができる。しかし、駅前広場と改札の間は、階段を使用しなければならないため、車いす使用者等の円滑な移動は困難である。
この駅前広場から改札に至るまでの階段を含む通路もJRの財産であるが、当該通路は駅利用者のみならず、一般の通行人も利用する自由通路となっている。そして、当該部分のエレベーター等の設置については、設置に要する費用負担等に関してJRと地元市町村との間の協議が整わないため、部分的な整備にとどまっている。
<事例2>
B駅では、改札とホームの間は、地元市町村の要請に基づき地元市町村の補助金及びバリアフリー化補助金の交付を受け12年度にJRが設置した車いす対応型エスカレーターを利用することができる。しかし、駅前広場と改札の間(JR及び地元市町村の財産)は、階段を使用しなければならないため、車いす使用者等の円滑な移動は困難である。
これは、地元市町村の財政上の事情から駅周辺と駅のバリアフリー化を同時に整備することが困難なことから、部分的な整備にとどまっているためである。
なお、地元市町村では14年度にエレベーターの設置を予定している。
(参考図1)駅前広場から改札に至る自由通路に階段があり、この階段が車いす使用者等の円滑な移動の障害となっている駅の概念図
(イ)車いす使用者等が業務兼用エレベーターを利用する駅が、在来線で1駅、新幹線で45駅、計46駅あった(参考図2参照)。そして、これらの駅に係るエレベーター等の設置費用は、在来線1駅については計6790万余円で全額JRが負担していた。また、新幹線については、エレベーター等の設置基数合計324基のうち設置費用の判明している62基分の設置費用は、計11億0303万余円、このうちJR各社が7億2193万余円を負担していた。
上記のうち、新幹線についてみると、東海道、山陽、東北、上越各新幹線のほとんどの駅には、国鉄当時からエレベーター等が設置されており、在来線に比べその整備は進んでいる。しかし、前記の45駅のエレベーターは、JRの社員等が使用する業務用エレベーターを必要に応じ車いす使用者等も使用することとしているもので、業務上の必要を考慮して改札の外に設置されている。このため、車いす使用者等は、改札を通らずにこの業務用エレベーターで直接ホームの階に移動する構造となっている。そして、施設の管理上、エレベーター又はエレベーターホールのゲートは常時施錠されていることから、車いす使用者等がエレベーターを利用する際には、駅員が解錠し、車いす使用者等に付き添うことが必要となる。
このような方法は、国鉄当時から一般的に行われてきたものであるが、身体障害者等が自立した社会生活を営むことのできる環境を整備することが要請されている昨今の社会情勢からみると、車いす使用者等ができるだけ介助を必要とせずに円滑に移動できるよう、改札内にエレベーター等を設置することが望まれる。
そして、上記のような状況に対して、新幹線を経営する3社では次のように対処することとしている。
〔1〕 JR東日本では、前記の第2期整備方針において、車いす使用者等が自由にエレベーターを利用できるように、東北及び上越新幹線のすべての駅の改札内に新たにエレベーターを設置することとしている。
〔2〕 JR東海では、国及び地方公共団体の協力を踏まえて整備を進めていくとしており、13年度から14年度には、2駅において、改札内に新たにエレベーターを設置することとしている。
〔3〕 JR西日本では、今後、順次、新幹線駅の改良を実施していくこととしており、13年度には、1駅において、改札内に新たにエレベーターを設置することとしている。
(参考図2)車いす使用者等が業務兼用エレベーターを利用する駅の概念図
(3)エレベーター等が設置されていない駅の状況
1日当たりの利用者数の多い駅で、エレベーター等が設置されていない26駅について検査したところ、次のような状況となっていた。
この26駅のうち15駅については、1日当たりの利用者数が5万人以上に上る駅もあるが、次のような事情からエレベーター等が設置されていない状況であった。すなわち、旅客ホームや階段が狭あいであること、駅前広場がなく、駅舎が道路や商店街に隣接した狭あいな場所に所在していることなど駅の立地条件又は構造上の問題からエレベーター等を設置するスペースがないものなどが見受けられた。また、連続立体交差事業等の計画があるため、エレベーター等の設置も当該事業に合わせて整備することが予定されているものも見受けられた。
上記のほか、駅前広場から改札までの間の移動には、地元市町村により設置されたエレベーター等を利用することができるものの、地元市町村の財政上の事情等から支援が得られないため、改札とホームの間にはJRによるエレベーター等の設置は行われておらず、その間の移動についてはエレベーター等を利用することができないものが2駅見受けられた。
なお、JR各社では、これらのエレベーター等が設置されていない駅についても、22年までにはエレベーター等を設置することとしている。
上記のような状況となっているのは、JR及び地方公共団体において駅にエレベーター等の整備を実施するに当たり、以下のことなどの背景があることによると認められる。
(ア)JRと地元市町村の間において、エレベーター等の整備についての協議が整わないこと、地方公共団体における財政上の事情等から、駅及びその周辺のバリアフリー化の総合的・一体的な整備が実施されていない場合があること
特に、自由通路部については、駅によって、鉄道施設である場合と都市施設である場合などがあるため、JR又は地元市町村のいずれがバリアフリー化設備を整備するかについての意見が一致せず、このため、その調整に時間を要している場合があること
(イ)バリアフリー化補助金制度を利用するためには、地方公共団体において支援を行うことが条件とされているが、地方公共団体の財政上の事情等から支援が得られない場合には、JR各社において当該制度を利用できず、このため、整備が促進されない場合があること
(ウ)駅の立地条件、駅舎の構造上の問題等からエレベーター等の設置が困難で、これを解消するためには多大な費用と時間が必要になる場合があること
また、エレベーター等の設置について、地方公共団体の要望等による連続立体交差事業、自由通路の架け替えなどの計画との調整が必要な場合があること
5 本院の所見
前記のとおり、国、JR各社を含む鉄道事業者及び地方公共団体では、従来からエレベーター等を整備することにより、駅及びその周辺のバリアフリー化を図ってきている。そして、近年、国及び地方公共団体では、各種の支援制度を設け、駅にエレベーター等を設置する鉄道事業者に対する支援を行ってきている。
一方で、我が国においては、今後、更なる高齢化の進行が予測されていることに加え、身体障害者等の社会進出をより一層容易なものとすることが要請されている。そして、交通バリアフリー法及び主務大臣の基本方針では、今後、22年までに、1日当たりの平均的な利用者数が5,000人以上であるすべての駅で、また、その他の駅についても可能な限り、バリアフリー化を実施することが目標とされている。また、交通バリアフリー法が制定されたことに伴い、今後の駅及びその周辺のバリアフリー化に当たっては、国、鉄道事業者及び地方公共団体が連携して、その総合的・一体的な整備を計画的に行うことが期待され、また、要請されている。
したがって、今後、このようなバリアフリー化を着実に実施していくためには、これまでに実施されてきた前記のような駅のバリアフリー化の実施状況にかんがみ、以下のような点に留意することが望まれる。
(1)国において、
〔1〕 交通バリアフリー法の目的である高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用する際の移動の利便性、安全性の向上の促進のため、鉄道事業者側の施設と地方公共団体側の施設とを一体としてバリアフリー化を図ることができるよう指導・助言等を行う。
〔2〕 地方公共団体の財政事情により整備がなされていない駅、駅の立地条件、駅舎の構造上の問題等からバリアフリー化のためには多大な費用を要する駅などがあることから、これらの駅についてもバリアフリー化のための整備が促進されるよう、より一層の財政支援が可能となる制度などを充実させる。
(2)JR各社を含む鉄道事業者において、
〔1〕 エレベーター等の設置に当たって、駅前広場からホームに至るまでの一体的なバリアフリー化を計画的に実施することができるよう、地方公共団体と緊密に連携して取り組んでいく。
〔2〕 エレベーター等の設置に当たって、車いす使用者等が容易に利用できるよう、その利便性についても十分配慮する。
(3)地方公共団体において、
バリアフリー化を効果的かつ総合的・一体的に推進するため、市町村の基本構想を作成することができるとされていることから、駅の周辺施設が鉄道事業者側の施設と総合的・一体的に整備されるよう、鉄道事業者側との調整を図るとともに、必要な措置を講じ、バリアフリー化の推進に努める。