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  • 平成12年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況|
  • 第15 財投機関の決算分析について|
  • 2 検査の状況|
  • (2) 債務償還リスクと財政負担の状況|
  • イ 社会資本整備法人の財務

基本的な償還システム


〔1〕 基本的な償還システム

 図2のとおり、社会資本整備法人は、その基本的な償還システムにより、(ア)利用料収入型、(イ)譲渡収入型、(ウ)負担金等収入型、(エ)借換型及び出資金置換型の4つのタイプに分類できる。これらのタイプ別の特徴は以下のとおりである。

 (ア)利用料収入型

日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団、新東京国際空港公団、関西国際空港株式会社、都市基盤整備公団(鉄道勘定)、帝都高速度交通営団

 これらの法人は、高速道路、空港、鉄道施設等の建設資金を財政投融資資金等の有償資金で調達して、施設供用後の利用料金収入によって管理運営費や利息を賄いつつ、計画された期間内に投下資金を回収し、債務を償還する仕組みとなっている。
 また、利用料金は、利用者の負担の公平と受益のバランスに配慮して設定されており、資金コスト低減等のため、政府及び地方公共団体から出資金、補給金、事業費補助等の財政支援を受け入れている法人が多い。なお、有料道路等の整備を行う法人(以下「道路関係法人」という。)では、建設資金に充てられた出資金についても料金収入による資金回収の対象となっている。
 これらの法人の償還計画等では、将来の収入及び費用が予測需要量や予測金利等に基づき計画されているため、資金回収はある程度の不確定要素を伴う。

 (イ)譲渡収入型

都市基盤整備公団(都市基盤整備勘定)、地域振興整備公団(地方都市開発整備等事業勘定、工業再配置等事業勘定、産炭地域振興事業勘定)

 これらの法人は、住宅・宅地政策や地域開発等の政策的な要請を受けて、国から認可された事業計画等に基づき、土地を取得して住宅団地や工業団地等を造成整備し、工事完了後、入居希望者や取得希望企業等に対し、公募等の方法でそれらの譲渡等を行っている。
 これらの法人が譲渡等を予定している土地等の購入者又は企業等は、あらかじめ特定されていない場合がほとんどであり、社会経済情勢の変化等により、当初期待された購入又は取得意欲が減退するなどして、譲渡等が予定どおり進まない場合がある。また、土地取得費、造成工事費、金利等からなる取得原価に対して、地価の動向等によっては、譲渡価格が上下する可能性もある。
 なお、都市基盤整備公団では、経営管理手法がそれぞれ異なる宅地等の譲渡系事業と住宅等の賃貸系事業とを行っているが、過年度において譲渡系事業のウエイトが高かったこと、また、地域振興整備公団でも、譲渡系事業のほか、工場等を建設しこれらを賃貸する賃貸系事業を行っているが、譲渡系事業のウエイトが高いことから、両公団とも譲渡収入型に分類した。

 (ウ)負担金等収入型

水資源開発公団、緑資源公団(林道勘定、農用地整備勘定)、日本鉄道建設公団(一般勘定)、環境事業団(一般業務勘定)、運輸施設整備事業団(船舶勘定)、日本下水道事業団(建設業務勘定)、電源開発株式会社

 これらの法人は、受益者等が負担すべき施設等の建設資金のうち、国、地方公共団体等の財政負担で賄われるものを除いて有償資金で調達し、施設等の整備を行っている。受益者等の同意等の法的手続や協定等に基づいて整備を行うことから、受益者等はあらかじめ特定されており、これらの法人が調達した資金及びこれに要する利息は、施設の完成後に受益者等から徴収する負担金等の収入で回収することとなっている。したがって、他のタイプの財投機関に比べると、相対的に債務償還のリスクが少ない仕組みとなっている。しかし、一部の法人においては、割賦債権の回収が延滞するなどしているものも見受けられる。

 (エ)借換型及び出資金置換型

石油公団(石油備蓄勘定)、金属鉱業事業団(一般勘定)、緑資源公団(造林勘定)

 石油備蓄事業や希少金属鉱産物備蓄事業は、輸入に依存する重要資源の輸入量及び価格の変動による混乱等を未然に回避するという国家的な要請に基づき、石油、希少金属鉱産物等を購入し、緊急時に備えて備蓄するものである。
 これらの備蓄事業は、緊急時に備えて備蓄資産を保有し続けることを主たる目的とし、備蓄資産等の売却によって収入を得ることを直接の目的とするものではない。備蓄資産を緊急放出し、その売却収入によって投下資金を回収した場合も、資金は再び備蓄資産の購入に充てられる。したがって、現状の備蓄体制を将来にわたって維持していく場合、備蓄費用を賄うべき事業収入はなく、長期間にわたって巨額の資金を要することになる。このため、これらの備蓄事業を継続していくため、資金の借換えと利払い及び備蓄費用に対する財政負担が行われている。
 一方、水源林造成事業は、国土保全、水源かん養等の達成という公共の目的のため、国が指定する地域における無立木地等において急速かつ計画的に森林造成を行うものである。
 この事業は、分収造林契約に基づき実施されるが、木材の伐採により収入が得られるまでにはおおむね50年以上の期間を要し、計画的な水源林造成事業を続けていく場合には、長期間にわたって巨額の資金を要することとなる。この事業の目的を達成するのに必要な事業資金は、出資金のほかに、国の財政事情により一部を借入金で賄っている。そして、借入金の償還に際し、その償還原資の一部について新たに出資金を受け入れることにより、事業資金に充てた借入金を出資金で置き換えている。
 上記の各事業は、いずれも長期間にわたる事業であり、事業目的に必要な範囲で毎年度財政負担を要するものであるが、前記の備蓄資産の入替え、市場放出又は木材の売却に際し、原価と売却収入とがかい離する可能性がある。