図2のとおり、無償資金型法人の基本的な収支構造には、(ア)出資型と(イ)支援事業型とがある。
これらの法人は、先導的な基礎研究を行う研究開発法人、ベンチャー企業への出資を行う投資事業会社、高度な研究開発のための研究施設の整備等を行う第3セクター等に対する出資事業のほか、信用力、担保力のぜい弱な事業者に対する債務保証又は信用保証協会の債務保証に対する保険事業等の信用補完事業を行っている。出資の場合の主な財源は、産投会計からの出資金である。
国からの出資は、融資とは異なり、金利負担はなく、明確な期限を定めて償還が求められているものではない。ただし、原則として、出資事業の結果剰余金を生じた場合にはその一部を国庫納付し、また、事業を終了する場合の定めがあるものについては、残余財産のうちから出資額に応じて国庫へ分配することなどとされている。
基礎研究の振興やベンチャー企業等に対する金融支援等の事業は、リスクも高く、必ずしも成果がすべて事業化され、経済的収益に結びつくわけではない。しかし、経済的収益が得られない場合においても、産業技術上の重要な発見・知見の獲得、研究ノウハウ等の民間移転、あるいは新規事業の創出及び地域の活性化といった社会的便益の観点からの評価が重要とされている。また、中小企業者を対象とした信用補完制度の運営は、収支面で景気変動に大きく影響される面はあるが、我が国経済の活性化の担い手たる中小企業者の経営の安定を確保するという重要な意義を有するとされている。
このように、高いリスクを抱える一方で、重要な意義、高い公共性を有することから、国の関与と財政支援が必要とされているが、特に出資の場合は、事業の進ちょく状況、経営状況等に応じて適切な成果判定等を行うことが必要であり、出資先の研究開発法人等における事業運営の動向を踏まえて、損失を必要以上に拡大しないよう努めることが求められている。
なお、出資型法人の中には同一勘定の中で融資事業を実施している法人もあるが、出資事業の事業規模が大きく、また、リスクも融資事業より大きいことから、「2(3)個別の法人ごとの資金収支と財政負担の状況」においては、主に出資事業について分析した。
上記の法人は、科学技術データベースを利用した情報提供サービスや衛星搭載無線設備を利用した通信サービスの提供、良質かつ高度なプログラムの普及促進、ソフトウェアの開発環境の整備等に必要な各種の支援事業、あるいは海外移住者や日系人に対する支援事業を行っている。これらの支援事業は、国の果たすべき責務として、我が国の科学技術の基盤となる基礎的なインフラを整備し、あるいは国の政策に応じて海外移住者や日系人を支援するために実施しているものであり、それぞれ重要な意義を有するとされている。
この支援事業に必要な財源には、補助金や利用料収入等の事業収入が充てられるほか、大部分は産投会計出資金や一般会計出資金等の無償資金で賄われている。国の出資の性格は出資型と同様である。
しかし、科学技術・情報関係等のインフラ整備やサービス提供については、いずれも専門的な分野で技術進歩、資産の陳腐化が急速に進む一方、利用層は限られている。そして、事業実施に伴うリスクの大部分は法人で引き受け、提供サービスの対価を低廉なものとする必要があることなどから、結果的に投下資金に見合った事業収益を得ることが容易でない場合が多い。また、海外移住支援事業についても、移住者や日系人の置かれた条件、環境等を反映して、支援事業の採算性を確保することは容易ではない。
このように、これらの支援事業はいずれも、重要な意義、高い公共性を有する一方で、リスクも大きく事業収益の確保が厳しいことから、多額の累積欠損金を抱えている法人が多い。このため、従来から一定の国の関与と財政支援が必要とされてきた。