阪神高速道路公団は、京阪神地域の交通の円滑化を図り、都市の機能の維持及び増進を図るために、京阪神の大都市内とその周辺市街地域を結ぶ自動車専用道路の建設及び管理運営等を行っている。
基礎的資金収支は、平成5年度まで関西国際空港関連事業である湾岸線等の建設事業への大規模投資により毎年度1500億円前後のマイナスが続き、債務が累増していたが、6年度以降マイナス幅は縮小し、10年度以降はプラスに転じている。7年1月に起きた阪神・淡路大震災の災害復旧の事業資金は、6年度から8年度に財政支援で手当てしている。
この結果、12年度末の負債(債券及び長期借入金の合計)は3兆6441億余円であり、元年度の1兆5311億余円の2.38倍に増加している。
高速道路の整備には、建設資金を有償資金で調達して、供用後の利用料収入によって投下資金を回収し債務を償還する仕組みが採用されている。したがって、基礎的資金収支は、新規事業への投資段階にはマイナス傾向となるものの、道路建設後の供用開始に伴う利用料収入の増加により改善することとなる。利用料収入が年々着実に伸びている一方で、利用料収入にまだ寄与していない建設中の路線に係る事業資産も増加しているため、資産効率は、元年度からおおむね横ばいとなっている。このような中で基礎的資金収支が改善した主な要因は、6年度から10年度に建設投資が減少したことによるものである。
その結果、10年度以降、基礎的資金収支はプラスに転じている。
建設投資比率は、元年度の9.9%からほぼ横ばいで推移してきたが、6年度には湾岸線完成により4.7%と大きく低下している。その後、再び横ばいが続いたが、北神戸線の概成等により11年度には2.4%に低下し、12年度では2.4%となっている。
これに伴って、建仮比率も、元年度の44.4%からほぼ横ばいで推移してきたが、6年度には湾岸線完成により19.7%と大きく低下している。その後、再び横ばいが続いたが、大阪池田線等の完成により10年度には9.6%に低下し、12年度では12.6%となっている。
利用料収入及び資産効率についてみると、6年度の湾岸線の供用による増収を予定していたが、7年1月の阪神・淡路大震災により損傷を受けた道路施設の完全復旧に1年8箇月を要したこと及びバブル崩壊後の景気の低迷があり、利用料収入の伸びと資産効率に影響を与えている。
一方、財政負担については、阪神・淡路大震災を対象とする補助金の交付を受けたことに加え、毎年度の建設事業を対象とする国等の出資はその率の引き上げもあり、7年度から8年度に増加している(グラフ1)。
同公団における償還準備金の元年度からの推移をみると、道路価額(要償還額)に対する償還準備金の償還率は低下している。これは、3年度以降、湾岸線等の建設が順次完成し、道路資産価額が大幅に増加したこと、及びこれにより金利負担が年々増加した反面、利用料収入はそれほど伸びていないため単年度の収支差である償還準備金繰入額が減少したことによるものである。11年度からは増加に転じており、同公団では、計画どおり順調に償還が進んでいるとしている。
なお、6、7、10各年度は、阪神・淡路大震災の影響及び料金改定時期の延伸により償還準備金の取崩しを余儀なくされたことにより、償還準備金が減少している。また、道路価額のうち阪神・淡路大震災による道路の復旧費用に係る補助金相当額は、要償還額に含まれていない(グラフ2)。