帝都高速度交通営団は、東京都区部を中心として、地下鉄事業及びその関連事業を実施している。
基礎的資金収支は、平成4、6両年度はマイナスとなったが、5、7、8、10各年度は大幅なプラスとなっている(グラフ)。12年度末の負債(債券及び長期借入金の合計。1年以内返済・償還分を含む。)は9623億余円で元年度末の7767億余円の1.23倍である。
負債は、ピーク時の9年度末の1兆0162億余円を含めて、6年度以降おおむね横ばいで推移している。
4、6両年度のマイナスは、建設投資が毎年継続する中で、国の財政事情等のため、新線建設等に係る資本費補助金が事実上保留されたことによる。保留された補助金は、5、7、8、10各年度に過年度分補助金として交付され、10年度は制度変更による当年度分の交付もあり、これらの年度は大幅なプラスとなった。
建設投資額(営業線改良費を含む。)の事業用資産に対する比率である建設投資比率は、3年度から6年度にかけて10%以上の水準が続き、その後も7%から9%の間で推移している。
建設仮勘定の事業用資産に対する比率である建仮比率は、3年度に10%台に低下した後、6年度にかけて21%まで上昇し、7、9両年度にそれぞれ再び低下した後、12年度には更に11%へと大きく低下した。これは、7号線(南北線)が順次部分開業し、3年11月(駒込〜赤羽岩淵)、8年3月(四ツ谷〜駒込)、9年9月(溜池山王〜四ツ谷)の延伸を経て、12年9月に全線開業したことが主な原因である。
事業収入(営業収益及び関連事業営業収益)の事業用資産に対する比率である資産効率は、4年度から7年度にかけて多少低下したものの、おおむね25%前後で推移している。新線建設等で事業用資産が元年度の1.31倍に増加する中で、安定した採算性が確保されている。
国の財政負担は、毎年度の補助対象建設費のおおむね25%である。11年度までは、運輸施設整備事業団経由で関係地方公共団体に交付された補助金に関係地方公共団体の補助金を併せて関係地方公共団体が同営団に交付する間接補助方式を採っていたが、12年度からは、運輸施設整備事業団及び関係地方公共団体のそれぞれが直接同営団に交付する方式に変更された。
国庫補助金は、元年度から12年度に総額1185億余円が交付されたが、保留及びその解除によって年度間で大きく変動している。新線建設、バリアフリー施設整備、耐震補強工事等の大規模投資は、国及び関係地方公共団体の補助金の財源に占める割合が高い。このため、国庫補助金の交付の繰延べで生じた資金不足により、負債が増加するなど、財政事情等による国庫補助金の繰延べは、同営団の財務にも少なからぬ影響を与えている。
7年2月24日の閣議決定で、「帝都高速度交通営団については完全民営化する。その第一段階として現在建設中の7号線及び11号線が完成した時点を目途に特殊会社化を図る」こととされている。このうち7号線は12年9月に既に開業し、現在、11号線(半蔵門線、水天宮前〜押上)の工事を15年春の開業を目指して進めている。なお、特殊会社化についての具体的なスキームは、現在のところ決まっていない。
財投改革の趣旨を踏まえ、当面は、新線建設及び安全防災対策工事の一部を財政投融資資金からの借入れで調達し、残額を財投機関債の発行や民間金融市場からの借入れ等で自己調達することになる。
13年度は、439億円の財投機関債の発行を予定している。このうち150億円については、13年4月に従来と同様に公募交通債券を発行した。今後の公募交通債券発行に際しては、格付けを取得する予定としている(13年10月末現在)。