都市基盤整備公団は、平成11年10月、大都市地域等における居住環境の向上及び都市機能の増進を図るために必要な都市の基盤整備を実施する機関として、解散した住宅・都市整備公団の一切の権利及び義務を承継して設立された。
同公団の都市基盤整備勘定においては、既成市街地を中心に市街地の整備や再開発の促進、都心居住などの利便性の高い賃貸住宅の供給の促進、これまで供給してきた賃貸住宅の適切な維持管理を主な業務としている。
同公団の12年度末の資産合計17兆5440億余円のうち、事業資産は16兆9626億余円で、市街地整備改善資産2兆2145億余円(事業用資産中の構成比13.0%)、賃貸住宅資産7兆1737億余円(同42.2%)、分譲住宅特別資産6163億余円(同3.6%)、公園資産105億余円(同0.06%)、7種類の建設仮勘定計6兆9492億余円(同40.9%)及び貸倒引当金18億余円から成っている。
これらのうち市街地整備改善資産及び分譲住宅特別資産の計2兆8309億余円(同16.6%)について、これを分譲予定の棚卸資産、割賦分譲資産、賃貸資産その他に3区分すると、それぞれ棚卸資産1235億余円(同0.7%)、割賦分譲資産1兆9904億余円(同11.7%)、賃貸資産その他7170億余円(同4.2%)となっている。
基礎的資金収支は、元年度には6316億余円のプラスであったが、その後は急速に減少し、6年度には147億余円のマイナスとなった。しかし、7年度には再び4200億余円のプラスとなり、その後も年度による変動はあるもののプラスの状態が続いており、12年度には1630億余円のプラスとなっている。
その結果、外部資金収支は、12年間の累計で負債調達13兆2809億余円、元利償還(債券発行諸費を含む。)16兆4315億余円で、差し引き3兆1505億余円の支払超過となっている。しかし、外部資金の支払のうち8兆6123億余円が利子及び債券発行諸費に充てられ、元金償還は7兆8192億余円であった。
なお、12年度末の負債(債券及び長期借入金の合計)は、元年度末の9兆9287億余円の1.54倍に相当する15兆3738億余円に増加している。
建設投資額は、元年度の7681億余円から6年度の1兆2897億余円までは毎年度増加していたが、7年度以降は減少に転じ、12年度には7708億余円まで減少し、建設投資比率は徐々に下降してきている。
建仮比率は、元年度の39.5%から5年度の43.7%までは増加傾向にあったが、6年度以降はほぼ横ばいとなっており、12年度には40.9%へ低下している。
資産効率については、賃貸住宅事業を含んでいるため水準はやや低く、また、元年度の13.3%から低下傾向が続いており、12年度には6.3%となっている。これは、譲受人からの繰上償還の減少等により、譲渡収入が減少していることによるものである。
財政負担の推移については、6年度までは大きな増減はないが、その後は年度によって大きく変動し、特に10年度は4710億円に達している。これは、最近の経済情勢にかんがみ、国の経済政策において土地の流動化を促進するとともに、既成市街地内の事業用地の先行取得等を推進するための臨時土地流動化推進出資金2000億円など、総額2500億円の出資が行われたためである。同様に、11年度においても、防災公園街区整備型出資金850億円を始めとして総額1566億円の出資が行われている。12年度の出資額は366億円に減少している(グラフ1)。
市街地整備改善資産2兆2145億余円、分譲住宅特別資産6163億余円、計2兆8309億余円の中には、分譲資産に係る割賦分譲資産1兆9904億余円が含まれている。これは、公団資金で建設した個人向け宅地・住宅、企業向け社宅、民営用賃貸住宅及びその併存施設等について、最長35年の割賦払いで分譲した資産額(割賦債権)である。この割賦分譲資産のうち、12年度末現在の延滞債権額(弁済期限を6箇月以上経過して延滞となっているものの元金残高)の状況をみると、次表のとおりとなっており、その要因は主に、譲渡先企業、事業者及び個人の資金繰り悪化によるものである。
表 割賦分譲資産(割賦債権)の延滞状況(12年度末) | (単位:百万円) | ||||||||||||||||||
|
同公団では、土地・建物等の分譲に係る損益について、宅地等を市場価格の変動に対応しつつ、長期安定的に供給するため、分譲価格調整準備金を設けている。そして、損益計算上、譲渡価格が売上原価を上回った場合には、差益分を特別損失として費用計上し、分譲価格調整準備金に繰り入れている。逆に譲渡価格が売上原価を下回った場合には、差損分を特別利益として収益に戻入している。このように、土地・建物等の譲渡に伴う差損益は、分譲価格調整準備金の増減として処理されており、結果的に決算上の単年度の損益には影響を及ぼさないこととなっている。
分譲価格調整準備金の推移をみると、元年度の1755億余円から3年度の3714億余円にかけて大幅に増加したが、その後は7年度の3422億余円まで漸減傾向が続き、8、10両年度に大きく減少して、12年度には2049億余円にまで減少している(グラフ2)。