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  • 平成12年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況|
  • 第15 財投機関の決算分析について|
  • 2 検査の状況|
  • (3) 個別の法人ごとの資金収支と財政負担|
  • イ 政策金融法人の状況|
  • (イ) 非補給金型

商工組合中央金庫


17 商工組合中央金庫
((イ) 非補給金型)

 債券等により民間市場から資金を調達し、財政投融資資金からの有償資金を加え、中小企業等協同組合その他中小企業団体及びその構成員等に対して貸付けを行い、回収元利金等を負債の償還財源に充てている。貸付利率は、一部の特別貸付を除き、調達コストを上回る利率に設定されていることから、基本的に順ざやで利息収支差が生じる。
 政府出資金を一部の特別貸付の減収補てん目的で受け入れ、その運用益を特別貸付の金利負担に充てている。

(資金収支等)

 商工組合中央金庫は、政府出資を信用の基礎とした債券等により民間市場から調達を行い、団体及びその構成員に対して、貸付け、債務保証、株式取得等による資金供給を行い、預金、為替等の機能を一体化した総合金融サービスを行っている。
 債券等の外部資金調達額の主な変動要因は、新規貸付けの増減であるが、債券残高の推移をみると、残高の伸びが次第に縮小し、平成5年度に残高がピークに達して以降、債券残高が前年度を下回る状況が続いている。これは、設備資金を中心とする資金需要の低迷により、9年度を除いて新規貸付けの伸びが鈍化していること、回収金が比較的安定していることなどにより債券発行高が低く抑えられていることによる。この結果、主な負債である商工債券及び預金(譲渡性預金を含む。)の12年度末の残高は、計12兆6003億余円で元年度の11兆8880億余円に対してほぼ同額、また、12年度の貸出金残高は10兆8865億余円で元年度末の10兆3213億余円に対してほぼ同額となっている。

商工組合中央金庫の図1

 同金庫の資金収支は、融資業務だけでなく、預金、債券、資金証券業務等を総合したものとなっており、貸出し及び回収に伴う貸付金残高の動きだけでなく、経済環境や金利情勢をにらんで機動的に実施される負債調達や資金運用上の要因が資金収支に大きく影響している。
 収益性の状況についてみると、標準的な長期貸付金利は、長期プライムレートを下限として、主な資金調達手段である利付債券の利回りに上乗せした金利としているため、順ざやである。同金庫では、利付債券による長期固定金利の調達と長期固定金利の貸出しの期間ミスマッチにより生ずる金利変動リスクを回避するため、金利スワップ等のヘッジ手段を積極的に活用している。最近の低金利情勢下で貸付金利は低下しているが、利ざやはほぼ横ばいを維持している。
 財政負担の状況についてみると、産投会計及び一般会計からの出資が行われている。産投会計からの出資は9年度まで行われ、10年度以降の追加出資はない。一般会計からの出資は、8、9両年度を除いて毎年度行われており、7年度の445億円を最高として、10、11両年度にも300億円を超える追加出資が行われている。同金庫は、バブル崩壊後、金融収縮が進む中で多くの企業が資金調達難に陥ったことから、国の追加出資を受けることにより中小企業金融の円滑化のために取り組んでいる。また、この政府出資に対する配当については、経営基盤を強化し、金融サービスの充実を図る観点から、一定の要件に達するまでは免除されている。
 繰上償還の状況についてみると、長期固定金利の貸出しの比率が高いことから、金利低下の影響を受けており、長期金利が大幅に低下した7年度をピークとして、8年度に大きく減少し、10年度以降、低い水準で推移している。
 リスク管理債権の状況についてみると、破綻先を含めた延滞債権率は年々増加傾向にあり、元年度の0.99%から12年度には4.12%となっている。貸倒引当金についてみると、同金庫は、従来から、民間金融機関と同様に回収の危険性の程度に応じた償却引当処理を行っている。9年度からは、自己査定により、回収の危険性等による債務者区分に応じ、貸倒実績又は個別に査定した見積額により引当てを行っている。その結果、12年度末の貸倒引当金は4646億余円で元年度の1232億余円の3.7倍に増加しており、延滞債権等の増加に対応して資産の健全性を確保するため、積極的に積増ししている。また、同金庫は、不良債権処理として、貸倒引当金繰入とともに、貸出金償却も実施しているが、その実績額は、個別貸倒引当金を計上していることもあり、12年度は16億余円となっている。なお、10年度からは、株式会社共同債権買取機構に売却した不動産担保付債権の将来発生する可能性のある損失に備えて、債権売却損失引当金を計上している。
 外貨建資産・負債に係るリスクヘッジの状況についてみると、資産・負債とも同一通貨による調達運用が行われており、為替リスクはない。その構成は、資産の大半が有価証券、負債の大半が外貨預金等による市場調達となっている。12年度末の外貨建資産は3710億余円、外貨建負債は3115億余円となっている。