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  • 平成12年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況|
  • 第15 財投機関の決算分析について|
  • 2 検査の状況|
  • (3) 個別の法人ごとの資金収支と財政負担|
  • ウ 無償資金型法人の状況|
  • (ア) 出資型

奄美群島振興開発基金(保証勘定)


8 奄美群島振興開発基金(保証勘定)
((ア) 出資型)

 事業者に対する債務保証のための事業資金は、産投会計及び地方公共団体からの出資金等で賄われており、これを基に保証実行後に生じる代位弁済による支払を行う。支払われた代位弁済金は、被保証人等からの回収金等で回収している。

 奄美群島振興開発基金の保証勘定では、国及び地方公共団体からの出資金、利益積立金等を保証基金として、奄美群島内の事業者の金融機関からの借入れ等について債務保証を行っている。一般保証料率は、全国の信用保証協会の基本料率と同率の1.0%であり、代位弁済については中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号)の適用を受けず、代位弁済金は全額基金の負担となっている。平成12年度末における資本金は29億余円(うち政府出資金14億余円)で、元年度末の14億余円(同8億余円)の2.06倍に増加している。
 上記の保証基金は保証事業の財務基盤となるもので、一般に、保証規模の拡大と保証リスクの増大に対応して、業務基盤となる資本金を拡充する必要がある。同基金においては、近年、保証債務残高が減少しているものの同法の適用を受けていないことなどから、経営基盤強化を図るための追加出資がなされている。
 保証債務残高は、6年度をピーク(245億余円)として減少しており、12年度(217億余円)は元年度を下回る水準となっている。代位弁済金は、この12年間で、4年ごとにほぼ1億円ずつ膨らみ、9年度以降は毎年度7億円でほぼ同額となっている。代位弁済金の保証債務残高に対する割合(代位弁済率)は、元年度の2.33%から4年度に2.10%まで下がったが、群島経済の低迷及び保証債務残高の減少により増加し、12年度は3.2%に高まった。代位弁済で取得した求償権の残高は、12年度末で26億余円である。

奄美群島振興開発基金(保証勘定)の図1

 求償権は、新たな代位弁済で増加し、被保証人等からの回収によって減少するが、代位弁済後一定期間を経て回収見込みのないものは償却処理している。この求償権償却による損失の増加は、保証基金のき損につながるおそれがあり、あらかじめ引当金を積み立てている。すなわち、求償権償却引当金は、代位弁済金の総額を3年間で3分の1ずつ費用計上して繰り入れる。債務保証損失引当金は、保証基金の維持と減少防止のため、保証債務残高の1000分の6及び保証債務の請求期日を経過した保証債務額の10分の1を繰り入れる。
 引当金繰入及び損益の状況についてみると、求償権償却引当金繰入額は毎年度増加しているが、同引当金の伸びは、求償権残高の伸びを下回っている。また、債務保証損失引当金は、保証債務残高の減少を反映し、9年度以降減少している。しかし、引当金繰入額が全体として増加する一方、保証料収入は保証債務残高に比例して減少していること、近年の低金利の影響による余裕金の運用益の減少が続いていることなどから、損益が悪化している。その結果、元年度までは当期利益金を計上していたが、2年度から当期損失金を生じ、損失額は増加している。当期損失金は、翌年度に利益剰余金を取り崩して処理しているが、10年度は利益剰余金を上回って繰越欠損金を生じ、12年度は繰越欠損金が362百万余円に拡大して、資本合計で前年度を下回った。
 財政負担の状況についてみると、財務基盤強化のため、5年度までは毎年度78百万円(国30百万円、地方公共団体48百万円)の追加出資が行われていたが、6、7両年度に引き上げられ、7年度以降180百万円(国70百万円、地方公共団体110百万円)の追加出資が行われている。
 今後の保証事業収支の動向によっては、さらに追加出資の規模を引き上げる必要が生じることも考えられるが、同基金では、このような損益の悪化を受け、10年度に事務所を廃止したり、関係金融機関との連携を強化したりするなどの経営改善に努めている。