科学技術振興事業団の文献情報提供勘定においては、科学技術振興のための基盤整備を図ることを目的として、国の内外の科学技術情報を収集、整理した上、データベースの作成、提供などの事業を行っている。
同事業団では、収集した科学技術情報に基づきデータベースの作成等を行い、これらを有料で提供して利用料収入を得ている。このためデータベースには新たな情報を常時追加している。そして、作成したデータベースは情報資産としていったん資産計上し、5年間で償却して費用化している。
これらの事業に要する費用については、データベースの利用料収入等を充てるとともに、毎年度必要に応じて産投会計から追加的な出資金を受けている。また、一般管理費のうち人件費の一部については、国庫補助金による財政支援を受けている。
したがって、データベースの利用料収入等が増加し利益が発生すれば、剰余金を国庫納付することもできるが、データベースの作成、提供に要する費用及びデータベースの償却費等を利用料収入等で賄うことができない場合には、当期損失金(欠損金)が発生することになる。
同事業団における出資金及び欠損金の状況についてみると、平成4年度は、不動産売却による特別利益が発生したため当期利益金を計上しているが、それ以外の年度は当期損失金を計上している。11年度までの欠損金508億余円に12年度の当期損失金32億余円を加えた12年度末の欠損金は541億余円で、元年度末の欠損金215億余円に対して2年度から12年度までの間に発生した当期損失金の累計は326億余円となっている。一方、12年度末の資本金は823億円で、元年度末の資本金410億円に対して、同期間に受け入れた
追加出資金は413億円であった。その結果、資本合計は、元年度末の195億余円から12年度末の 282億余円に増加しており、正味資本の増加は87億余円となっている(グラフ)。
上記のとおり、同勘定では、事業を実施するために産投会計から追加出資を毎年度必要としているが、恒常的に損失金が発生して累積欠損金が増加している。
同事業団では、このような状況を改善するため、9年度より収支改善計画を策定し、20年度までは産投会計出資金37億円の受入れを毎年度続けるものの、効率的な事業の執行に努めることによって毎期当期損失金を減少させ、21年度には産投会計出資金を受け入れることなく単年度黒字に転換する方向で事業を実施している。