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  • 平成12年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況|
  • 第15 財投機関の決算分析について|
  • 2 検査の状況|
  • (4) 財投機関の資金調達構造の変化と収支改善の状況

資産の増加と対比した長期負債の増加の状況


ア 最近12年間における財務構造の変化

 分析対象の財投機関43法人56勘定について、〔1〕資産の増加と対比した長期負債の増加の状況、〔2〕内部資金の変化、〔3〕12年間の財政負担の総額、〔4〕損失の増加等に対して執られた措置の4点についてみると、次のとおりである。

〔1〕資産の増加と対比した長期負債の増加の状況

 各法人の資金収支の分析でみたとおり、投資規模又は貸付規模が拡大した過程で、多くの法人は資金不足を生じたため、外部資金が流入している。投資が一巡した後、建仮比率等の低下に伴って収益性が向上し、投下資金の回収が順調に進んで有利子負債を圧縮した法人も多いが、その一方では、収益が伸びず、資金回収も長期化して、外部資金への依存が続いている法人もある。また、繰上償還の発生によって多額の損失が生じたため、財政負担で補てんすることが必要となった法人もある。外部資金への依存が続く法人の中には、債務償還時の借換えに際して、調達額が償還額を上回り、債務が累増しているものもある。
 債務が増加しても、回収が確実な資産の増加に裏付けられているならば、債務償還は一応確実であると考えられる。表14のとおり、平成元年度からの12年間に、分析の対象とした財投機関43法人56勘定の資産は、元年度末の162兆余円から12年度末の286兆余円へ124兆余円増加し、また、長期負債(債券及び長期借入金の合計。1年以内に返済・償還期限の到来するものも含む。)は138兆余円から 236兆余円へ98兆余円増加している。資産の増加額は長期負債の増加額を25兆余円上回っており、資産の伸び率1.76倍に対し長期負債の伸び率は1.71倍となっている。このように56勘定全体でみると、この12年間における資産の伸びは長期負債の伸びを上回っており、上回った分の財源の手当は、資本金の増加、国庫補助金等の資産見返勘定の増加、あるいは償還準備金等の特別法上の引当金等の内部留保の積増しによって賄われている。
 上記の状況を個別の法人ごとにみると、資産の伸び率が長期負債の伸び率を上回っているものは34勘定、逆にこれが下回っているものは19勘定、変化のないものは2勘定となっている(この他に、元年度に設置されていなかったものが1勘定ある。)。
 個別の法人における資産の伸び率と長期負債の伸び率の関係は、グラフ18のとおりである。
 日本道路公団の場合をみると、資産の伸び率に比べて長期負債の伸び率が小さい。これは、事業資産については減価償却を行っておらず、投下資金の累計額が示されているためと考えられる。

表14 財投機関全体の債務等の増加状況
勘定名 元年度末 12年度末
資産
a
長期負債
b
資本金
c
資産
d
倍率
d/a
長期負債
e
倍率
e/b
資本金
f
倍率
f/c
日本道路公団 億円
185,196
億円
148,834
億円
6,505
億円
392,644

2.12
億円
268,080

1.80
億円
19,800

3.04
首都高速道路公団 28,974 19,592 1,908 68,257 2.35 47,612 2.43 5,969 3.12
阪神高速道路公団 20,391 15,311 1,336 48,512 2.37 36,441 2.37 4,702 3.51
本州四国連絡橋公団 28,280 23,756 1,851 40,047 1.41 38,453 1.61 7,655 4.13
新東京国際空港公団 5,181 3,419 1,506 8,712 1.68 5,219 1.52 2,846 1.88
関西国際空港株式会社 4,850 3,030 1,627 15,988 3.29 10,445 3.44 5,920 3.63
都市基盤整備公団
(鉄道勘定)
91 138 9 250 2.74 434 3.14 29 3.25
帝都高速度交通営団 9,669 7,767 581 13,051 1.34 9,623 1.23 581 1.00
都市基盤整備公団
(都市基盤整備勘定)
114,107 99,287 1,022 175,440 1.53 153,738 1.54 6,850 6.69
地域振興整備公団
(地方都市開発整備等事業勘定)
2,504 2,124 50 3,734 1.49 3,374 1,58 88 1.76
地域振興整備公団
(工業再配置等事業勘定)
2,324 1,407 252 2,960 1.27 1,808 1.28 661 2.62
地域振興整備公団
(産炭地域振興事業勘定)
1,666 748 525 1,514 0.90 629 0.84 608 1.15
水資源開発公団 27,322 21,366 18 46,800 1.71 21,456 1.00 23 1.29
緑資源公団
(林道勘定)
2,025 1,979 3,117 1.53 3,075 1.55
緑資源公団
(農用地整備勘定)
2,602 2,386 14 3,152 1.21 2,945 1.23 14 1.00
日本鉄道建設公団
(一般勘定)
28,233 18,863 1,347 56,546 2.00 32,973 1.74 641 0.47
環境事業団
(一般業務勘定)
3,561 3,378 4 4,190 1.17 4,048 1.19 67 16.75
運輸施設整備事業団
(船舶勘定)
3,137 3,099 24 5,183 1.65 4,967 1.60 159 6.64
日本下水道事業団
(建設業務勘定)
597 457 1,605 2.68 1,179 2.58
電源開発株式会社 14,348 12,854 706 23,568 1.64 20,480 1.59 706 1.00
石油公団
(石油備蓄勘定)
24,172 19,838 2,809 26,096 1.07 22,215 1.11 3,650 1.29
金属鉱業事業団
(一般勘定)
933 593 232 671 0.71 409 0.69 237 1.01
緑資源公団
(造林勘定)
4,405 1,527 2,817 9,129 2.07 2,311 1.51 6,744 2.39
国民生活金融公庫 73,346 69,434 383 109,857 1.49 105,620 1.52 3,218 8.40
住宅金融公庫 378,838 371,420 972 777,446 2.05 766,509 2,06 1,662 1.70
農林漁業金融公庫 55,319 52,359 1,682 41,313 0.74 36,405 0.69 3,111 1.84
中小企業金融公庫 67,290 62,494 682 77,001 1.14 72,105 1.15 4,109 6.02
沖縄振興開発金融公庫 9,694 8,965 280 17,886 1.84 16,315 1.81 631 2.25
国際協力銀行
(海外経済協力勘定)
55,467 31,662 24,305 110,098 1.98 48,083 1.51 60,007 2.46
労働福祉事業団
(融資勘定)
711 707 273 0.38 268 0.37
社会福祉・医療事業団
(一般勘定のうちの一般経理)
8,827 7,606 825 28,838 3.26 27,390 3.60 125 0.15
日本育英会
(特別勘定)
1,356 1,354 6,653 4.90 6,612 4.88 37
雇用・能力開発機構
(雇用促進融資勘定)
780 755 496 0.63 495 0.65
雇用・能力開発機構
(勤労者財産形成促進事業勘定)
1,221 1,149 15 6,240 5.11 6,421 5.58 15 1.00
公営企業金融公庫 131,098 123,357 166 249,699 1.90 223,628 1.81 166 1.00
日本政策投資銀行 101,250 90,048 2,848 185,424 1.83 162,460 1.80 10,393 3.64
国際協力銀行
(国際金融等勘定のうちの一般勘定)
59,297 46,044 9,673 115,399 1.94 93,976 2.04 9,855 1.01
日本私立学校振興・共済事業団
(助成勘定のうちの一般経理)
6,383 5,961 392 7,256 1.13 6,736 1.13 487 1,23
中小企業総合事業団
(高度化、新事業開拓促進及び指導研修勘定のうちの高度化融資経理)
12,808 2,121 9,484 13,443 1.04 1,687 0.79 11,407 1.20
奄美群島振興開発基金
(融資出資勘定)
139 97 44 142 1.02 57 0.59 84 1.89
商工組合中央金庫 130,928 92,412 2,515 140,129 1.07 102,593 1.11 4,939 1.96
基盤技術研究促進センター 1,169 280 887 3,158 2.69 233 0.83 3,148 3.54
医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(研究振興勘定) 86 13 71 307 3.57 15 1.17 288 4.02
生物系特定産業技術研究推進機構
(民間研究促進業務勘定)
196 72 124 412 2.09 63 0.87 351 2.82
情報処理振興事業協会
(地域事業出資業務勘定)
12 12 80 6.66 80 6.66
通信・放送機構
(研究開発出資勘定)
48 53
新エネルギー・産業技術総合開発機構(産業技術研究基盤出資勘定) 56 47 105 1.87 95 2.02
中小企業総合事業団信用保険部門
(中小企業信用保険事業・融資事業)
8,108 5,820 18,851 2.32 22,211 3.81
奄美群島振興開発基金
(保証勘定)
24 14 33 1.35 29 2.06
産業基盤整備基金
(出資特別勘定)
54 50 228 4.19 220 4.40
科学技術振興事業団
(文献情報提供勘定)
213 410 308 1.44 823 2.00
国際協力事業団 1,197 909 1,662 1.38 1,326 1.45
通信・放送機構
(衛星所有勘定)
40 40 31 0.77 75 1.87
情報処理振興事業協会
(振興業務勘定)
62 83 2,432 39.13 2,907 34.83
情報処理振興事業協会
(技術事業勘定)
152 31 174 47 0.31 0.00 197 1.13
情報処理振興事業協会
(地域事業推進業務勘定)
4 0 4 11 2.42 0.00 17 4.37
合計 1,620,722 1,380,115 88,070 2,866,499 1.76 2,369,604 1.71 210,036 2.38
注(1) 本表は法人の財務諸表に基づいて作成している。
上記の金額は、百万円単位で計算し、億円未満は切り捨てている。
また、倍率は百万円単位で計算し、小数第2位未満を切り捨てている。
注(2) 日本道路公団の長期負債には、東京湾横断道路の引継ぎに伴う割賦元金を含む。表15も同様である。
注(3) 奄美群島振興開発基金(保証勘定)は、資産から保証債務見返を、負債・資本から保証債務をそれぞれ除いている。
注(4) 負担金等収入型のうち水資源開発公団、緑資源公団(林道勘定)、同(農用地整備勘定)、日本鉄道建設公団(一般勘定)、環境事業団(一般業務勘定)は、長期前受金を長期負債に加えている。表15も同様である。
注(5) 以下の勘定は次のような処理をした。表15も同様である。
金属鉱業事業団(一般勘定)の平成元年度の数値は(一般勘定)と(鉱害防止勘定)の数値を合算している。
国民生活金融公庫の元年度の数値は、国民金融公庫と環境衛生金融公庫の数値を合算している。
国際協力銀行(海外経済協力勘定)の元年度の数値は、海外経済協力基金の数値である。
社会福祉・医療事業団(一般勘定のうちの一般経理)の元年度の数値は、(一般勘定のうちの一般経理)と(医療勘定)の数値を合算している。
日本政策投資銀行の元年度の数値は、日本開発銀行と北海道東北開発公庫の数値を合算している。
国際協力銀行(国際金融等勘定のうちの一般勘定)の元年度の数値は、日本輸出入銀行の数値である。
科学技術振興事業団(文献情報提供勘定)の元年度の数値は、日本科学技術情報センターの数値である。

グラフ18 資産の伸び率と長期負債の伸び率の関係

グラフ18資産の伸び率と長期負債の伸び率の関係