財投機関45法人の債務は、12年度末現在で306兆円に及び、国債残高にも匹敵する規模となっている。この債務は、財政投融資改革前において、政府資金が主な財源であった。今後、その相当部分が、財投機関債の発行を通じて民間資金に切り替わっていくことになる。
財投機関は、市場メカニズムに完全には委ねることのできない公共的な財貨サービスの供給を行っており、一定の財政負担を必要とする仕組みとなっている。一方、一般会計においては、歳入不足による国債発行が持続する中、景気浮揚と雇用の安定、高齢化の進展等を背景として財政需要が高まる一方であり、国民負担全体の今後の動向を展望すると、財政負担には一定の限界があり財投機関の自助努力が要請される。
本院は、このような視点から、財投機関の元年度から12年度までの12年間の決算に基づき、特に資金調達と財政負担の状況を中心に検査した。
多くの財投機関では、バブル崩壊後の経済環境の変化を背景として、調達と運用の期間ミスマッチ、繰上償還、延滞債権等の増加、資産効率の低下、市場価格の変動等による資金回収の長期化等のリスクを抱えるに至っている。そして、更なる財政負担を回避するために、これら金利リスク、信用リスク、価格変動リスク等に適切に対応し、安定的な財務基盤を構築することが喫緊の課題となっている。
したがって、財投機関が、市場の信認を得て円滑に民間資金を調達し、財政負担にできるだけ依存しないで安定的に事業を運営していくためには、先々損失を生じさせるおそれのあるリスクを的確に評価するとともに、契約における競争制の導入の推進など各種の業務改善に努めることが必要である。
本報告は、財投機関における外部資金の調達と財政負担に影響を及ぼす要因について、法人全体に共通する問題点を概括したものであり、今後更に幅広い検討を行うための手掛かりを提供するという点に主眼を置いたものである。財投機関が、新しい事業環境の下でその役割を適切に果たしていくには、このような現状分析を手掛かりの一つとして、それぞれの法人が抱える事業運営上の問題点を個々に明らかにしていくことが必要である。
本院としては、本報告で行った財投機関の財務の現状に関する分析に引き続き、更に多角的な観点からの検査を今後実施していくこととする。