会計検査院は、平成14年次の検査に当たって、会計検査の基本方針を次のとおり定めた。
平成14年次会計検査の基本方針
(平成13年10月17日策定)
会計検査院には、内閣から独立した憲法上の機関として、国の収入支出の決算の検査を行うほか、法律に定める会計の検査を行い、これを常時実施することにより、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ、是正を図るとともに、検査の結果により、国の収入支出の決算を確認し、検査報告を作成して内閣を通じて国会に報告するという使命が課せられている。
(1) 我が国の社会経済の動向と財政の現状
近年、我が国の社会経済は、少子・高齢化の進展、グローバル化、情報通信技術の革新とその普及、環境問題による制約などにより大きく変容してきている。そして、今まで我が国の社会経済を支えてきたシステムがこうした変化に適切に対応できず、その見直しや再構築が求められている。
我が国の財政をみると、連年の公債発行により公債残高は年々憎加の一途をたどり、平成13年度末には約389兆円に達すると見込まれており、公債償還等に要する国債費は一般会計歳出の約2割を占めていて、財政の健全化が課題となっている。
また、政府は、行政改革、社会保障改革等の諸改革を推進している。
(2) 会計検査院をめぐる状況
行政改革の一環として、中央省庁等改革関連の諸法律に基づき、国の行政機関は、13年1月以降、新たな組織体制へ移行するとともにその政策について自ら評価することとなった。そして、この政策評価の客観的かつ厳格な実施を推進することなどを目的とする「行政機関が行う政策の評価に関する法律」が同年6月に成立した。また、同年4月には「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が施行された。さらに、特殊法人等の一部については13年3月期決算から行政コスト計算書が作成されることとなるなど、行政のアカウンタビリティが一層求められている。
また、政策評価の導入の発端となった行政改革会議の最終報告(平球9年12月)においては、評価は政府部内のそれとともに政府の部外からもなされることが重要であるとして、会計検査院による評価に対して期待が表明されている。さらに、会計検査院法が改正(平成9年12月)され、〔1〕国会から検査の要請があった事項について検査を行いその結果を国会に報告できること、〔2〕正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性その他会計検査上必要な観点から検査を行うことが規定されている。
このように会計検査院の役割及び機能はますます重要となり、国民の期待も増大している。
会計検査院は、従来から、業績評価を指向した検査を行うなど、社会経済の動向などを踏まえて国民の期待に応える検査に努めてきたところであるが、以上のような状況の下で今後ともその使命を的確に果たすため、国民の関心の所在や国会における審議の状況に常に注意を払い、厳正かつ公正な職務の執行に努めるとともに、次のような姿勢で検査に取り組む。
ア 我が国の社会経済の動向や財政の現状を十分踏まえ、主として次に掲げる施策の分野に重点を置いて検査を行う。
〔1〕 社会保障
〔2〕 公共事業
〔3〕 防衛
〔4〕 教育及び科学技術
〔5〕 環境保全
〔6〕 経済協力
〔7〕 農林水産業
〔8〕 中小企業
イ 不正不当な事態に対する検査を行うことはもとより、業績評価を指向した検査を行っていく。そして、必要な場合には、制度そのものの存否も視野に入れて検査を行っていく。
すなわち、これまで会計検査院は、主として次のような観点から検査を行ってきた。
(ア) 検査対象機関の決算の表示が予算執行の状況を正確に表現しているかという正確性の観点
(イ) 検査対象機関の会計経理が予算や法律、政令等に従って適正に処理されているかという合規性の観点
(ウ) 検査対象機関における事務・事業の遂行及び予算の執行が、より少ない費用で実施できないか、あるいは同じ費用でより大きな成果が得られないかという経済性・効率性の観点
(エ) 検査対象機関における事務・事業の遂行及び予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかという有効性の観点
今後も、上記の正確性や合規性の観点からの検査を十分行い、その際には、検査対象機関の内部監査を含め内部統制の状況についても注視していく。さらに、近年の厳しい経済財政状況にもかんがみ、経済性・効率性及び有効性の観点からの検査を重視し、特に有効性の観点から、事務・事業及び予算執行の効果について積極的に取り上げるよう努める。そして、事務・事業の遂行及び予算の執行に問題がある場合には、原因の究明を徹底して行い、その改善の方策についで検討する。
また、行政の透明性やアカウンタビリティの向上に資するため、検査対象機関に係る決算の分析やその評価を指向した検査を行っていくとともに、特珠法人等についてはその財務状況の検査の充実を図る。さらに、検査対象機関が自ら行う政策評価等の状況についても注視していく。
ウ 社会経済の複雑化とそれに対応した行政活動の拡大に伴い、新しい検査手法の開拓を行うなどして検査を行っていく。
すなわち、検査手法や検査領域を多様化するための調査研究、専門分野の検査に対応できる人材の育成や拡充、コンピュータ等の情報機器や検査用機器の活用などを行い、会計経理はもとよりそれに関連するあらゆる事務・事業について検査を行う。
上記の基本方針に従い、限られた人員、予算、時間などを効率的に活用して、会計検査院として課せられた使命を達成するため、検査実施部局においては、国その他の検査対象機関の事務・事業の動向などを的確に把握した上で、多種多様な検査の領域の中から本年次の検査に当たって重点的に取り組むべき事項を検査上の重要項目として設定することにより、的確な検査計画を策定し、検査を効率的・効果的に行う。