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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣府|
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  • 不当事項|
  • その他

裁判所からの債権差押命令に違反して職員に給与を支払ったため、差押債権者に更に弁済金を支払う結果となり損害が生じたもの


(5) 裁判所からの債権差押命令に違反して職員に給与を支払ったため、差押債権者に更に弁済金を支払う結果となり損害が生じたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)防衛本庁
部局等の名称 海上自衛隊大湊地方隊第25護衛隊  (給与支給決定部局)
      同     大湊基地業務隊(給与支払部局)
      同     大湊地方総監部(弁済金支払部局)
弁済金の概要 裁判所から債権差押命令を受けた給与の額を職員に支払ったため、差押債権者から更に弁済を請求され支払ったもの
債権差押命令に違反して職員に支払った給与 5,846,983円
差押債権者に支払った弁済金 3,715,675円

1 給与支給事務の概要

(海上自衛隊の給与支給事務)

 海上自衛隊大湊地方隊に所属する各部隊等の職員の給与は、原則として、同地方隊の一部隊である大湊基地業務隊が他部隊等の職員の分も含めて、各職員の金融機関の口座に振り込むことにより支給している。このうち第25護衛隊の護衛艦の乗組員に対する給与の支給事務は、次のようになっている(参考図参照)。
〔1〕 第25護衛隊において、乗組員別の俸給、各種手当その他の支給額及び所得税、住民税その他の控除額並びに総支給額から控除合計額を控除した差引支給額を決定又は算定するなどし、これらを記載した基準給与簿に、各乗組員及び各控除額の支払先の金融機関の口座を記載した給与振込明細表を添え、大湊基地業務隊の分任資金前渡官吏に送付する。
〔2〕 大湊基地業務隊の分任資金前渡官吏は、大湊地方総監部の資金前渡官吏から資金の交付を受け、基準給与簿に記載された各乗組員の差引支給額及び各控除額を、給与振込明細表に記載された所定の各金融機関口座に振り込む。

(給与の差押命令があった場合の事務)

 裁判所から給与等の支払者に対して発せられる債権差押命令においては、民事執行法(昭和54年法律第4号)により、給与等の支払者は差押えを命じられた額(以下「差押債権額」という。)をその雇用する者に支払ってはならないこととされている。
 したがって、海上自衛隊において隊員の債務に関して給与その他の当該隊員に支給すべき金額について差押命令を受けた場合には、「海上自衛隊出納官吏等事務取扱要領」(昭和51年海幕経第2111号)により、資金前渡官吏は、当該隊員に支給すべき金額から差押債権額を控除し、その残額を隊員に支払わなければならないこととなっている。

2 検査の結果

 検査したところ、第25護衛隊の護衛艦「ゆうぐも」の乗組員某の給与について、平成10年3月に青森地方裁判所から第25護衛隊あてに国に対する債権差押命令があったのに、同護衛隊では、10年4月から13年9月までの間、当該乗組員の給与の総支給額から差押債権額計5,846,983円を控除しないで差引支給額を算定していた。そして、大湊基地業務隊の分任資金前渡官吏は、第25護衛隊から送付された基準給与簿及び給与振込明細表に基づき、差押債権額が控除されていない差引支給額を当該乗組員に支払っていた。
 そして、当該乗組員が上記の問に計2,131,308円を差押債権者に弁済したものの、残余の3,715,675円について、13年12月に差押債権者から大湊地方総監部あてに弁済の請求があり、同地方総監部では、14年2月に同額を差押債権者に支払っていた。
 上記の支払額については、14年2月に大湊地方総監部から本件乗組員某に対して返済を求める文書を発したが、同人は13年12月に懲戒免職処分になって以降、所在不明となっており、回収が困難な状況となっている。
 このような事態が生じていたのは、第25護衛隊において、職員の給与に対して債権差押命令を受けた場合の給与の支払事務についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
 上記のように、債権差押命令に違反して差押債権額5,846,983円を控除することなく職員に給与を支払ったことは適切でなく、このため、差押債権額のうち3,715,675円を更に支払う結果となって損害を生じていて、不当と認められる。

(参考図)

(参考図)