会計名及び科目 | 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)防衛本庁 |
部局等の名称 | 陸上自衛隊中央会計隊(要求元 陸上幕僚監部) |
契約の概要 | 陸上自衛隊の各駐屯地の間でデータ通信を行うために専用回線を借り受けるもの |
契約の相手方 | エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社 |
使用料 | 2億9439万余円 | (平成14年1月〜8月) |
節減できた使用料 | 1730万円 |
1 陸上自衛隊ATM交換網の概要
陸上自衛隊では、全国各駐屯地(分屯地を含む。以下同じ。)間でデータ通信を行うために、陸上自衛隊ATM(注)
交換網(以下「ATM交換網」という。)を、平成14年2月までに整備し、同年3月から運用している。このATM交換網は、従前のデータ通信網では通信容量が不足してきたこと、構成している機器が陳腐化したことなどから、運用開始から少なくとも5年間の継続運用を前提として新たに整備されたものである。
ATM交換網は、各駐屯地に設置されたATM交換機等とこれらの間を接続する専用の電気通信回線(以下「専用回線」という。)により構成されており、この専用回線については、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社(以下、これらの会社を「NTT各社」という。)が提供するATM専用サービス等の回線を利用することとしている。
ATM交換網の整備については、陸上幕僚監部において、専用回線の区間、伝送速度等の仕様を決定しており、専用回線の伝送速度については、各区間の通信需要を考慮して区間ごとにATM専用サービスの最低伝送速度である0.5メガビット/秒(以下「Mb/s」という。)から5Mb/sとした。
そして、この各区間の伝送速度、距離等によって、NTT各社に支払う使用料のうちの基本額が定まることとなっている。
専用回線の契約には、各種の割引制度が設けられており、このうち、長期継続利用割引は、専用回線を3年間又は6年間継続して利用する旨を、あらかじめ利用者がNTT各社に申し出ることで適用され、3年間の場合は基本額の7%、6年間の場合は11%の割引を受けることができることとなっている。ただし、利用者があらかじめ申し出た期間の満了前に、基本額が減少することとなる契約変更を申し出た場合には、違約金を支払うこととなっている。
そして、陸上幕僚監部では、ATM交換網を構成する専用回線の契約が経済的となるよう使用料割引制度の適用の可否についても検討しており、長期継続利用割引については、運用開始後に専用回線の各区間の伝送速度に過不足が生じた場合に基本額が減少又は増加する契約変更を行う可能性があり、その場合には違約金を支払わなければならないものと解して、申し出ないことと決定していた。
上記の決定に基づき、陸上自衛隊中央会計隊では、NTT各社との間で利用契約を締結しており、ATM交換網運用開始前の13年12月の通信試験の段階から、順次、利用を開始していて、14年3月の運用開始時点での利用回線数は159回線、これに係る14年1月から8月までの使用料は5億6821万余円に上っている。
2 検査の結果
陸上自衛隊では、ATM交換網の構築のため新たに多数の専用回線の利用契約を締結し、その使用料も多額に上っていることから、この契約が経済的なものとなっているかという点に着眼して検査した。
検査したところ、全専用回線159回線のうち、伝送速度が最も遅い0.5Mb/sの専用回線122回線(14年1月から8月までの使用料2億9439万余円)の利用契約について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、陸上幕僚監部では、前記のとおり、長期継続利用割引については、運用開始後の契約変更に伴って違約金を支払う必要が生じることがあるものと解して、その適用を申し出ないことと決定していた。
しかし、違約金の支払が必要となる契約変更は、基本額が減少する場合であって、本件ATM交換網は少なくとも5年間の継続運用を前提に整備されており、しかも前記のとおり、ATM専用サービスの専用回線の伝送速度は0.5Mb/sが最低となっていることから、122回線については基本額を減少させるような契約変更はなく、長期継続利用割引を受けていたとしても、違約金を支払うような状況はないと認められた。
したがって、上記の122回線については、少なくとも3年間の長期継続利用割引の適用を受けて、使用料の節減を図る要があると認められた。
本件122回線について、その利用開始当初から3年間の長期継続利用割引(割引率7%)の適用を受けていたとすると、その使用料2億9439万余円は2億7709万余円となり、約1730万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、陸上幕僚監部において、専用回線の料金割引制度についての検討が十分でなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部では、14年9月に、本件専用回線122回線について、NTT各社に対して申出を行い、同月の利用に係る使用料から割引の適用を受けるとともに、関係部署に対して業務連絡を発し、今後の専用回線の整備に当たっては、個々の専用回線の具体的な利用計画等を検討して経済的な契約を行うよう周知する処置を講じた。