会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)総務本省(平成13年1月5日以前は郵政本省) (項)総務本省 (項)情報通信格差是正事業費 |
部局等の名称 | 総務省(平成13年1月5日以前は郵政省) |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業 | 電気通信格差是正事業、情報通信格差是正事業、情報通信システム整備促進事業 |
補助事業の概要 | 地域における高度情報化社会の均衡ある発展を図るため、高度情報通信ネットワーク等先導的な情報通信基盤の施設等の設置、及び地域のインターネット導入に資する情報通信システム(ソフトウェア)を整備する事業 |
検査の対象とした補助事業数 | 549事業 |
上記に対する事業主体 | 県8、市町村等196、第三セクター63、計267事業主体 |
事業費の合計 | 932億3879万余円 | (平成8年度〜13年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 312億8642万余円 | |
補助対象経費の算定が適切でなかったり、事業効果が発現していなかったりしていた事業費 | 7億6482万余円 | (平成8年度〜13年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 2億7463万円 |
1 補助事業の概要
総務省では、地域における情報基盤を整備し高度情報化社会の均衡ある発展を図るため、IT関連施策としての電気通信格差是正事業、情報通信格差是正事業、情報通信システム整備促進事業等を行う都道府県等に対し、その事業に要する経費の一部として電気通信格差是正事業費補助金等を交付している。
上記国庫補助金の交付額は、平成8年度で78億8523万余円であったものが、毎年、大幅に増加しており、12年11月の高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)の成立を受け、13年度では449億9038万余円となっている。
これらの各事業は、都道府県、市町村、第三セクター等を事業主体として全国で実施されており、その主なものは、〔1〕電気通信格差是正事業の自治体ネットワーク施設、新世代地域ケーブルテレビ施設、地域インターネット導入促進基盤の各整備事業、〔2〕情報通信格差是正事業の地域イントラネット基盤施設整備事業、〔3〕情報通信システム整備促進事業である。
これら補助事業の実施に当たっては、事業主体は、総務省所管補助金等交付規則(平成12年総理府・郵政省・自治省令第6号。これ以前は郵政省所管補助金等交付規則(昭和62年郵政省令第27号))のほか、各事業ごとに総務省が定めている補助金交付要綱に従って事業を実施することとなっている。
各事業の交付要綱によると、補助対象となる具体的な経費は、センター施設、送受信装置、構内伝送路、双方向画像伝送装置等の施設・設備(ハードウェア)又はソフトウェアの整備に要する経費とされている。そして、事業主体は、これらの施設・設備を利用して運用する行政情報提供システム、施設予約システム、電子申請システム、図書予約システム等のそれぞれの事業内容等を記載した交付申請書を総務省に提出し、同省では、その内容を審査した上で交付決定を行うこととしている。事業主体は、補助事業の完了後、実績報告書を同省に提出し、同省では、その内容の審査及び必要に応じて現地調査等を行い、事業の実施結果が交付決定の内容・条件に適合すると認めたときは、補助金交付額を確定し、原則としてその後に補助金を交付することとしている。
2 検査の結果
上記の各補助事業については、これまでに多額の国庫補助金が交付されており、また、13年1月に決定された「e−Japan戦略」によって、今後、更に事業の推進が図られる状況となっている。そこで、各事業は適切に実施されているか、また、各事業により整備された施設・設備が所期の目的どおり利用され事業効果が発現しているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、8年度から13年度までに全国で実施された3,052事業のうち、北海道ほか17府県(注)
において実施された自治体ネットワーク施設整備事業等549事業(事業費932億3879万余円、国庫補助金312億8642万余円)を対象とした。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
ア 補助対象経費について
補助対象経費については、それぞれの補助金交付要綱により、〔1〕電気通信格差是正事業及び情報通信格差是正事業の両事業においては、事業に必要なセンター施設、送受信装置、構内伝送路等のハードウェアの整備に要する経費となっている。一方、〔2〕情報通信システム整備促進事業においては、事業に必要なソフトウェアの整備に要する経費となっている。
しかし、事業主体がハードウェアの整備を行う補助事業に併せてソフトウェアも整備する場合に補助対象となる範囲が明確に定められていなかったため、ハードウェアを整備する上記〔1〕の事業において、ソフトウェア経費を補助対象に含めていたものが12事業(事業費49億3236万余円、うちソフトウェア経費2億1443万余円、これに対する国庫補助金相当額7322万余円)あった。
また、同様の理由から、ソフトウェアを整備する〔2〕の事業において、ハードウェアである構内伝送路の設計費を補助対象に含めていたものが1事業(事業費1466万余円、うち設計費798万円、これに対する国庫補助金相当額266万円)あった。
イ 事業効果の発現について
各補助事業により整備された施設・設備の運用状況について検査したところ、システムの主要な機能が稼働していなかったり、利用が低調となっていたりしていて、事業効果が十分発現していないと認められる事態が56事業(事業費62億6224万余円、国庫補助金22億5184万余円)において見受けられた。これらを態様別に示すと次のとおりである。
(ア) 補助事業完了後、1年以上を経過してもなおシステムの主要な機能が稼働していなかったもの
検査した549事業のうち、地域住民の利便性を高めるため、施設予約システム、電子申請システム、図書予約システムを導入整備していた事業が、地域インターネット導入促進基盤整備事業等において113事業(事業費94億3817万余円、国庫補助金36億1912万余円)あった。
しかし、これらの事業で整備した各システムの運用状況を検査したところ、施設予約システムにおいて、運動施設等の空き状況は確認できるものの、システム上で予約ができないなど、補助事業完了後、1年以上を経過してもなおシステムの主要な機能が稼働していなかったものが32事業(事業費21億8782万余円、うちシステムの設置経費1億2886万余円、これに対する国庫補助金相当額5261万余円)あった。
これは、上記の各システムの導入に当たり実施体制の整備が十分でなく、本人確認を行う個人認証方法や、施設使用料の前納に係る条例等の改正等の問題があり、これらの解消に長期間を要していたり、設備を操作できる職員を養成するための研修が十分でなかったり、必要なソフトウェアのための予算措置が遅れていたりしたことなどによるものと認められた。
(イ) テレビ会議システムの利用が低調となっているもの
検査した549事業のうち、双方向画像伝送装置等のテレビ会議システムを用いた遠隔行政相談システム、遠隔介護・医療相談システム等を整備していた事業が、自治体ネットワーク施設整備事業等において34事業(事業費69億3673万余円、国庫補助金24億3277万余円)あった。
しかし、これらの事業で整備したテレビ会議システムの利用状況を検査したところ、13年度中の利用が週平均1回以下と低調な状況になっていたものが24事業(事業費40億7441万余円、うちシステムの設置経費4億1354万余円、これに対する国庫補助金相当額1億4613万余円)あった。
これは、〔1〕市役所等に行かなくとも行政相談等が行えることを目的として設置したテレビ会議システムの端末装置を当該市役所等内に設置していたり、行政相談等をする利用者のプライバシーが確保されないオープンスペースに設置したりするなど設置場所の検討が十分でなかったこと、〔2〕ネットワーク回線の速度が遅く画像の動きがスムーズでなかったことなどによると認められた。
[ 上記各項の事態には重複している事業があり、これらを除くと、事業数は67事業となる。]
このような事態が生じていたのは、主として次のことによると認められた。
(ア) 総務省において、補助金交付要綱等における補助対象範囲が明確でなかったり、実績報告書等が事業内容を十分反映したものとなっていなかったり、補助事業の実施についての事業主体に対する指導が十分でなかったりしていたこと
(イ) 事業主体において、補助事業についての理解が十分でなかったこと、また、施設・設備が速やかに利用されるような実施体制の整備が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき総務省では、14年10月に管下の各総合通信局等及び都道府県に対し通知を発し、電気通信格差是正事業等の適切な実施を確保し、また、補助事業の事業効果が速やかに発現されるよう、次のとおり処置を講じた。
(ア) 補助事業における補助対象経費の範囲を明示し、経費の内訳を具体的に報告させるなどして、補助事業の申請及び内容の審査が適切に行える体制を整備するとともに、事業主体に対し補助事業を適切に実施するよう指導の徹底を図ることとした。
(イ) 事業主体に対し、設置された施設・設備を用いるシステムが速やかにその機能を十分発揮するよう、地域住民のニーズを的確に把握するとともに、実施体制の整備を図ることを周知徹底し、さらに、事業効果の発現の確保を図るため、事業主体からその後の利用状況を徴することなどとした。