会計名及び科目 | 一般会計 (組織)地方入国管理官署 (項)地方入国管理官署 |
部局等の名称 | 仙台、名古屋、広島各入国管理局 |
契約名 | 在留資格審査事務支援システム入力業務委託契約 |
契約の概要 | 在留資格認定証明書交付申請書等に記載された情報を電子ファイル化するなどの作業を人材派遣会社に委託するもの |
契約の相手方 | 株式会社日航ビジネス |
契約 | 平成13年4月〜14年3月 |
業務委託契約の積算額 | 1億0421万余円 | (平成13年度) |
低減できた積算額 | 2480万円 |
1 契約の概要
法務省では、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)に基づき、全国の地方入国管理局(以下「地方局」という。)、その支局及び出張所において、外国人が我が国に入国するための在留資格認定証明書の交付申請に対する審査業務及び我が国における外国人の在留資格の変更申請等に対する在留審査業務(以下、これらを「審査業務」という。)を行っている。
我が国への入国又は在留を希望する外国人に係るこれらの申請は、近年、急増しており、また、その中には不法就労等を目的とした虚偽の申請も少なくないため、特に慎重な審査が必要である。このようなことから、法務省では、審査業務の迅速化及び適正化を図るため、平成7年度から在留資格審査事務支援システム(以下「審査支援システム」という。)を全国の地方局、その支局及び主要な出張所に順次導入している。
審査支援システムは、ホストコンピュータと上記の地方局等に設置した端末機を通信回線で接続し、前記の申請時に提出された各種の申請書及びその添付資料(以下「申請書等」という。)に記載された情報を電子ファイル化するなどデータベース化して管理し、審査業務に際しこの情報を提供するものである。
各地方局では、審査支援システムの運用に当たり、人材派遣会社との間で次のような作業等を委託する旨の契約(以下「業務委託契約」という。)を締結している。
〔1〕 外国人等から提出された申請書の記載事項をコード化してデータシートに転記等をする作業(以下「コーディング」という。)
〔2〕 データシートに記載された情報をコンピュータに入力する作業(以下「パンチ入力」という。)
〔3〕 申請書等の書類規格をそろえ、これをイメージ画像として光ディスクに保存する作業(以下「光ディスク入力」という。)
そして、上記の業務委託契約について、各地方局では、上記〔1〕から〔3〕までの作業(以下「入力等作業」という。)の1件当たりの単価(以下「作業単価」という。)を定め、派遣社員が実際に行った入力等作業の件数に応じ対価を支払う旨の契約(以下「作業単価契約」という。)を締結するなどしていた。
13年度において、これらの業務委託契約に基づく人材派遣会社に対する委託費の支払額は、全国の地方局で計2億8504万余円となっている。
各地方局において、作業単価契約の契約方式により業務委託する際の委託費の積算に使用する作業単価(以下「予定作業単価」という。)は、次のように算出されていた。
ア 派遣社員の入力等作業の効率が各地方局における申請件数、申請者の国籍等により異なることから、まず、次の算式により、それぞれ派遣社員1人当たりの1時間当たり処理件数(以下「時間処理件数」という。)を算出する。
時間処理件数= | 前年における入力等作業の実績処理件数 |
年間作業日数×1日当たりの作業時間×作業従事人数 |
イ アで算出された時間処理件数を基礎として、次の算式により予定作業単価を算出する。
予定作業単価= | 1時間当たりの労務単価 |
時間処理件数 |
各地方局では、業務委託契約の締結に当たり、人材派遣会社から各入力等作業に係る作業単価の見積りを徴するなどしている。
そして、各地方局において、人材派遣会社から徴した各入力等作業の作業単価に当該年度の各入力等作業の予定処理件数を乗じるなどして算出した額が、前記のア及びイにより算出された各予定作業単価に当該年度の各入力等作業の予定処理件数を乗じるなどして算出した額(以下「支払見込額」という。)を下回っていた。このため、各地方局では、人材派遣会社から徴した上記の作業単価を業務委託契約上の作業単価とするなどしていた。
2 検査の結果
前記のとおり、審査支援システムの導入から数年が経過していること、また、審査業務の急増に伴い入力等作業に係る委託費の支払額も多額に上っていることから、業務委託契約に係る予定作業単価の算出が業務の実態を反映した経済的なものとなっているかに着眼して検査した。
検査したところ、13年度において、仙台、名古屋及び広島各入国管理局(以下、それぞれ「仙台局」、「名古屋局」、「広島局」という。)が株式会社日航ビジネスとそれぞれ締結した業務委託契約(支払見込額の積算額計1億0421万余円)における予定作業単価の算出において、次のような事態が見受けられた。
(1) 時間処理件数について
(ア) 仙台局では、過去において他の地方局が締結していた派遣社員の人数に応じて対価を支払う旨の契約(以下「人員派遣契約」という。)における実績の処理件数を派遣社員の人数などで除し、時間処理件数を算出した上で、予定作業単価を算出していた。しかし、10年度の審査支援システムの導入以降、業務委託契約を作業単価契約の契約方式により締結していたことから、前記アの算式により、前年までの自局の派遣社員の入力等作業の実績に基づき時間処理件数を算出した上で、予定作業単価を算出することが可能となっていた。
(イ) 名古屋局では、自局における人員派遣契約当時の派遣社員の人数を作業従事人数として、前記アの算式により時間処理件数を算出していた。しかし、11年度に業務委託契約の契約方式を人員派遣契約から作業単価契約に変更していたことから、上記の仙台局と同様、前記アの算式により、前年までの自局の派遣社員の入力等作業の実績に基づき時間処理件数を算出した上で、予定作業単価を算出することが可能となっていた。
(ウ) 広島局では、審査支援システムの導入当初における派遣社員の登録人数を作業従事人数として、前記アの算式により時間処理件数を算出していた。しかし、上記の積算で用いられた派遣社員の登録人数は審査支援システム導入当初のものであり、この登録人数は11年中に減員されていた。また、入力等作業の実態として、登録された派遣社員は休暇等を取得することもあることなどから、全員が毎日出勤して入力等作業を行っていたわけではなかった。
このように、上記の3地方局(以下「3地方局」という。)における13年度の作業単価契約に当たり算出した時間処理件数は、前年までの自局における派遣社員の入力等作業の実績が反映されたものとなっていなかった。
そこで、3地方局について、それぞれ11年及び12年の入力等作業の実績に基づく派遣社員の時間処理件数(以下「平均時間処理件数」という。)を各作業ごとに算出したところ、次表のとおり、広島局の光ディスク入力を除き、予定作業単価の算出の基礎とした時間処理件数を上回っていた。
<表> 時間処理件数の比較
(単位:件)
地方局 | 入力等作業 | 当局が算出の基礎とした時間処理件数 | 本院が修正計算した平均時間処理件数 |
仙台局 | コーディング | 11.77 | 15.22 |
パンチ入力 | 16.87 | 18.53 | |
光ディスク入力 | 12.72 | 15.07 | |
名古屋局 | コーディング | 12.13 | 13.59 |
パンチ入力 | 19.15 | 28.59 | |
光ディスク入力 | 17.60 | 21.42 | |
広島局 | コーディング | 14.40 | 20.02 |
パンチ入力 | 15.29 | 25.37 | |
光ディスク入力 | 15.73 | 8.21 |
(2) 労務単価について
(ア) コディングについて、3地方局では、派遣社員がOA機器を使用することを想定していた。このため、3地方局では、いずれも一般に公表されている積算参考資料における人材派遣料金の業務区分のうちの「事務用機器操作」に記載された時間単価をその積算上の労務単価としていた。
しかし、実際のコーディングの作業ではOA機器をほとんど使用していないことなどから、上記の業務区分のうち、電子ファイルの分類・管理等に適用される「ファイリング」に記載された時間単価をその労務単価とするのが業務の実態に即していると認められた。
(イ) 光ディスク入力について、名古屋局及び広島局では、上記の「事務用機器操作」等に記載された3段階の時間単価のうちの最も高額のものをその労務単価としていた。
しかし、実際の光ディスク入力は、申請書の記載内容にかかわらずその規格をそろえて機械に読み込ませるだけの比較的単純な作業であることから、このような業務の実態に即した時間単価を労務単価とすべきであったと認められた。
したがって、上記(1)及び(2)のことなどから、3地方局における業務委託契約に係る予定作業単価の算出が、それぞれ自局における派遣社員の実績に基づく時間処理件数、作業内容等業務の実態を反映した経済的なものとなるよう改善の要があると認められた。
上記により実態を踏まえた適切な予定作業単価を用いて修正計算すると、3地方局における作業単価契約に係る支払見込額の積算額は計7932万余円となり、前記の支払見込額の積算額を約2480万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(ア) 各地方局において、業務委託契約に係る予定作業単価の算出に当たり、自局における派遣社員の業務の実態について十分に把握していなかったこと
(イ) 法務本省において、各地方局における業務委託契約に係る予定作業単価の算出について指導及び監督が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、法務省では、14年10月に各地方局に対して通知を発し、業務委託契約に係る予定作業単価の算出に当たっては、自局における派遣社員の業務の実態を反映した経済的なものとなるよう周知するとともに、業務委託契約に係る予定作業単価の算出について見直しを行わせることとする処置を講じた。