ページトップ
  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 財務省|
  • 不当事項|
  • 租税

租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの


(50) 租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
  (項)各税受入金
部局等の名称 札幌中税務署ほか159税務署
納税者 360人
徴収過不足額 徴収不足額 964,320,276円 (平成9年度〜13年度)
  徴収過大額 50,383,230円 (平成10年度〜13年度)

1 租税の概要

 源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告・納付の手続などが定められている。
 平成13年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は57兆6770億余円となっている。このうち源泉所得税は16兆5173億余円、申告所得税は3兆0627億余円、法人税は11兆1596億余円、相続税・贈与税は1兆9572億余円、消費税及地方消費税は15兆1330億余円となっていて、これら各税の合計額は47兆8299億余円となり、全体の82.9%を占めている。

2 検査の結果

(徽収過不足の事態)

 上記の各税に重点をおいて、課税が法令等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、札幌中税務署ほか215税務署を検査したところ、札幌中税務署ほか159税務署において、納税者360人から租税を徴収するに当たり、徴収額が不足していたものが349事項964,320,276円(9年度〜13年度)、徴収額が過大になっていたものが11事項50,383,230円(10年度〜13年度)あった。
 これを、税目別にみると次表のとおりである。

税目 徴収不足の事項数
徴収過大の事項数
徴収不足額
徴収過大額(△)

源泉所得税
申告所得税
法人税
相続税・贈与税
消費税

4

80
1
176
3
50
6
39
1

38,640,000

141,600,300
△1,490,000
509,442,900
△12,003,930
142,941,200
△35,657,800
131,695,876
△1,231,500
349
11
964,320,276
△50,383,230

 なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、前記の160税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりしたため、誤ったままにしていたことなどによるものである。

(税目ごとの態様)

 この360事項について、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税の別に、その主な態様を示すと次のとおりである。

(1) 源泉所得税に関するもの

 源泉所得税では徴収不足になっていたものが4事項あった。これらは、配当及び報酬に関するものである。
 配当及び報酬の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。また、支払が確定した日から1年を経過した日において未払となっている配当については、その日に支払があったものとみなして源泉所得税を徴収して、上記の法定納期限までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。
 この配当及び報酬に関し、徴収不足になっている事態が4事項38,640,000円あった。その主な内容は、支払が確定した日から1年を経過した日において未払となっている配当の金額や報酬の支払額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税が納付されていないのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったため、納税の告知をしていなかったものである。

 源泉所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
 <事例1> 配当に関する源泉所得税について納税の告知をしていなかったもの
 A会社は、平成11年4月決算期についての利益の配当に関する源泉所得税を納付していなかった。
 しかし、同会社から提出された10年5月から11年4月までの事業年度分の法人税の申告書等によれば、利益の配当が60,000,000円あり、11年6月30日に支払が確定している。そして、その日から未払のまま1年を経過しているので、12年7月1日に支払があったものとみなされる。したがって、同年8月10日までに同配当に対する源泉所得税が納付されていなければならないのに、上記法人税の申告書等から支払の確定した配当がある事実を把握していなかったため、納税の告知をしておらず、源泉所得税額12,000,000円が徴収不足になっていた。

(2) 申告所得税に関するもの

 申告所得税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが81事項あった。この内訳は、不動産所得に関するもの31事項、譲渡所得に関するもの16事項、事業所得に関するもの12事項、雑所得に関するもの11事項及びその他に関するもの11事項である。

ア 不動産所得に関するもの
 個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、不動産の貸付けについて、収入、経費の各項目の金額に消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)を含めて経理している場合には、経費に係る消費税等の額が収入に係る消費税等の額を超えるときに生じる消費税等の還付金は、不動産所得の計算上、総収入金額に算入することとなっている。
 この不動産所得に関し、徴収不足になっている事態が31事項51,369,200円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 収入及び経費に消費税等を含めて経理している場合の消費税等の還付金が総収入金額に算入されていないのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。
(イ) 不動産所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、課税していなかった。

イ 譲渡所得に関するもの
 個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額などを差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。
 そして、相続又は遺贈により取得した資産を一定の期間内に譲渡したものがある場合には、相続税額のうち所定の方法により計算した金額を、当該譲渡した資産に係る譲渡利益金額を超えない範囲で取得費に加算する特例を適用できることとなっている。また、優良住宅地の造成等のために土地を譲渡した場合など、一定の土地の譲渡による所得に対しては、軽減された税率を適用することとなっている。
 この譲渡所得に関し、徴収不足になっている事態が15事項32,391,400円、徴収過大になっている事態が1事項1,490,000円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 取得費に加算した相続税額に誤りがあるのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、見過ごしたりしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていた。

(イ) 優良住宅地の造成等のための譲渡に該当しない土地の譲渡に係る所得に対して軽減税率を適用するなど、税額の計算に誤りがあるのに、これを見過ごしたため、税額を過小のままとしていた。

ウ 事業所得に関するもの
 個人が事業を営む場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を事業所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、事業所得の計算上、事業を廃止した年には貸倒引当金勘定に繰り入れた金額があっても必要経費に算入しないこととなっている。
 この事業所得に関し、徴収不足になっている事態が12事項25,726,700円あった。その主な内容は、個人事業を廃止した年に貸倒引当金を計上するなど総収入金額から差し引く必要経費の額を過大としているのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていたものである。

エ 雑所得に関するもの
 個人が貸付金の利子(事業所得に該当するものを除く。)、租税の還付加算金などを受けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を雑所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
 この雑所得に関し、徴収不足になっている事態が11事項12,936,100円あった。その主な内容は、自らが経営する会社などへの貸付金の利子による所得があるのに、これに係る課税資料の収集・活用が的確でなかったため、課税していなかったものである。

オ その他に関するもの
 上記アからエのほか、配当所得、給与所得等に関し、徴収不足になっている事態が11事項19,176,900円あった。

 申告所得税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例2> 不動産所得に対して課税していなかったもの
 納税者Bは、平成10年分から12年分までの3年分について申告をしていなかった。
 しかし、C法人の法人税の申告書等によれば、同人に対して不動産の賃借料が10年分16,500,000円、11年分17,140,000円及び12年分17,040,000円支払われている。そして、同人にはこれらの額から各年分の必要経費5,854,656円、4,967,865円及び4,607,433円を差し引いた10,645,344円、12,172,135円及び12,432,567円の不動産所得があるのに、上記法人税の申告書等からこの事実を把握していなかったなどのため、申告所得税額3,049,400円、3,800,600円及び2,863,800円、計9,713,800円が徴収不足になっていた。
<事例3> 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の適用を誤っていたもの
 納税者Dは、平成11年分の申告に当たり、譲渡した土地のすべてが相続により取得したものであるとして、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例を適用し、相続税額のうち所定の方法により計算した金額184,462,376円全額を譲渡した土地の取得費に加算していた。そして、譲渡価額からその取得費などを差し引き、譲渡所得の金額を38,950,469円としていた。
 しかし、同人の申告書等によれば、上記の土地のうちには相続により取得したものでない部分があり、このため、取得費に加算できる相続税額は、相続した部分の土地の譲渡価額から当該土地の取得費や譲渡費用を控除した126,706,423円となる。したがって、これにより計算すると、譲渡所得の金額は96,706,422円となるのに、法令等の適用の検討が十分でなかったため、申告所得税額7,610,900円が徴収不足になっていた。

(3) 法人税に関するもの

 法人税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが179事項あった。この内訳は、法人税額の特別控除に関するもの46事項、退職給与引当金に関するもの30事項、同族会社の留保金に関するもの21事項、受取配当等の益金不算入に関するもの11事項及びその他に関するもの71事項である。

ア 法人税額の特別控除に関するもの
 青色申告書を提出する法人のうち中小企業者等が所定の電子機器利用設備等の設備を取得又は賃借(賃借期間が5年以上であるものに限る。)して事業の用に供した場合及びエネルギー需給構造改革推進設備等を取得して事業の用に供した場合には、供した最初の事業年度において、取得価額等又は賃借期間中に支払う賃借料の総額に一定割合を乗じた金額を法人税額から控除できるなどとなっている。
 そして、この中小企業者等は、資本若しくは出資の金額が1億円以下の法人(発行済株式の総数又は出資金額の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなどの法人を除く。)又は農業協同組合等となっている。ただし、資本又は出資の金額が3000万円を超える法人(農業協同組合等を除く。)が、電子機器利用設備等の設備を取得して事業の用に供した場合には、上記控除の適用はないこととなっている。また、控除金額は、確定申告書の法人税額の100分の20に相当する金額が限度となっており、最初の事業年度において控除できなかった金額がある場合には、1年間に限り繰り越して控除できることとなっている。
 この法人税額の特別控除に関し、徴収不足になっている事態が46事項79,895,300円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなど中小企業者等に該当しない法人が設備に係る特別控除をしたり、資本又は出資の金額が3000万円を超える法人が取得した電子機器利用設備等の設備について特別控除をしたりしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。 

(イ) 賃借した設備を事業の用に供した最初の事業年度において所定の額の特別控除をしていながら、その後の事業年度に重ねて控除しているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。

イ 退職給与引当金に関するもの
 退職給与規程を定めている法人が、使用人の退職給与に充てるために退職給与引当金勘定に繰り入れた金額については、原則として次のうちいずれか少ない金額を限度として損金に算入できることとなっている。
〔1〕 期末退職給与の要支給額(注1) から前期末退職給与の要支給額を差し引いた金額
〔2〕 期末退職給与の要支給額の100分の20に相当する金額(注2) から、前期から繰り越された退職給与引当金勘定の期末における金額を差し引いた金額
 また、使用人が退職した場合には、退職給与引当金勘定の金額から、当該使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額を取り崩して益金に算入することとなっている。
 そして、退職給与引当金勘定の金額などを超えて取り崩して益金に算入したときには、その超える部分の金額を前期までに所得金額に加算された退職給与引当金繰入限度超過額からの取崩しとして所得金額から減算できることとなっている。
 この退職給与引当金に関し、徴収不足になっている事態が30事項127,659,700円あった。その内容は次のとおりである。
(ア) 繰入限度額の計算に誤りがあり、限度額を超えて繰り入れた金額が損金に算入されているのに、これを見過ごしたため、損金に算入する金額を過大のままとしていた。
(イ) 退職した使用人に係る前期末退職給与の要支給額に相当する金額が、退職給与引当金勘定の金額から取り崩されず益金に算入されていないのに、これを見過ごしたため、益金に算入する金額を過小のままとしていた。
(ウ) 使用人の退職により退職給与引当金勘定の金額から取り崩して益金に算入した金額を、前期までに所得金額に加算された退職給与引当金繰入限度超過額から取り崩したものとして所得金額から減算しているのに、これを見過ごしたため、所得金額を過小のままとしていた。

(注1) 期末退職給与の要支給額 期末において在職する使用人の全員が自己の都合で退職するものと仮定した場合に、各使用人について退職給与規程により計算される退職給与の合計額をいう。
(注2) 100分の20に相当する金額 経過措置として、平成10年3月31日までに開始する事業年度については100分の40に相当する金額で、その後毎年度漸減することになっており、100分の20となるのは15年4月1日以後に開始する事業年度からである。

ウ 同族会社の留保金に関するもの
 発行済株式の総数又は出資金額の100分の50以上を3人以下の株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)並びにこれらと特殊の関係にある個人及び法人が所有している同族会社(以下「特定の同族会社」という。)については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率(注3) の法人税を課することとなっている。
 この同族会社の留保金に関し、徴収不足になっている事態が19事項73,681,400円、徴収過大になっている事態が2事項8,922,830円あった。その主な内容は、特定の同族会社に該当し課税留保金額が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかったものである。

特別税率 課税留保金額が年3000万円以下の部分については100分の10、年3000万円を超え1億円以下の部分については100分の15、年1億円を超える部分については100分の20

エ 受取配当等の益金不算入に関するもの
 法人が内国法人から受ける利益の配当等の金額、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配金のうち内国法人から受ける利益の配当等から成る部分の金額などについては、所定の方法により計算した金額を所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととなっている。
 この受取配当等の益金不算入に関し、徴収不足になっている事態が11事項18,406,700円あった。その主な内容は、益金不算入の対象にならない公社債投資信託等の収益の分配金を益金不算入の対象となる額に含めているのに、これを見過ごしたため、益金不算入額を過大のままとしていたものである。

オ その他に関するもの
 上記アからエのほか、法人税額等の損金不算入、減価償却費の計算、役員賞与の損金不算入等に関し、徴収不足になっている事態が70事項209,799,800円、徴収過大になっている事態が1事項3,081,100円あった。

 法人税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例4> エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の法人税額の特別控除の適用を誤っていたもの
 E会社は、平成11年4月から12年3月までの事業年度分の申告に当たり、エネルギー需給構造改革推進設備等に係る税額控除の特例を適用して、同事業年度に取得し事業の用に供した蓄熱式空調・給湯装置の取得価額を基に計算した金額15,225,000円のうち確定申告書の法人税額の100分の20を超えない11,821,180円を法人税額から控除していた。また、翌事業年度の申告に当たり、残額の3,403,820円を控除していた。
 しかし、申告書等によれば、同会社の発行済株式の総数の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属しているので、同会社は中小企業者に該当しない。したがって、上記税額控除の特例は適用できないのに、これを見過ごしたため、法人税額計15,225,000円が徴収不足になっていた。
<事例5> 同族会社の課税留保金額に対して特別税率の法人税を課していなかったもの
 F会社は、平成10年4月から13年3月までの3事業年度分の申告に当たり、特定の同族会社には該当しないとして、 利益のうち社内に留保した金額に対し特別税率による税額計算をしていなかった。
 しかし、申告書等によれば、同会社は各期末において、3人の株主及びこれらの親族が発行済株式の総数の100分の50.8、100分の50.0及び100分の50.0を所有する特定の同族会社である。そして、所定の計算をすれば、各期において、課税留保金額31,498,000円、65,573,000円及び142,120,000円が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課しておらず、法人税額3,224,700円、8,336,000円及び21,924,000円、計33,484,700円が徴収不足になっていた。

(4) 相続税・贈与税に関するもの

 相続税・贈与税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが56事項あった。この内訳は、相続税については土地建物等の価額に関するもの28事項、有価証券の価額に関するもの10事項、相次相続控除に関するもの6事項及びその他に関するもの6事項、贈与税については株式の低額譲渡に関するものなど6事項である。

ア 相続税に関するもの
(ア) 土地建物等の価額に関するもの
 個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し相続税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得したときの時価とされていて、土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。ただし、被相続人等が事業又は居住の用に供していた宅地等のうち一定の面積までの部分については、小規模宅地等として、次に掲げる区分に応じ、土地等の価額にその割合を乗じた額を減額できることとなっている。

〔1〕 被相続人等が発行済株式の総数又は出資金額の10分の5以上を有する法人の事業(不動産貸付業、駐車場業等を除く。)の用に供していた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得した者のうちに、一定の要件に該当する親族がいる場合の宅地等(以下「特定同族会社事業用宅地等」という。)などに該当するもの
  100分の80
〔2〕 上記以外のもの 100分の50

 この土地建物等の価額に関し、徴収不足になっている事態が27事項59,734,900円、徴収過大になっている事態が1事項2,324,700円あった。その主な内容は、土地の価額の計算において、特定同族会社事業用宅地等などに該当しない宅地等について、減額割合を誤って100分の80としているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、見過ごしたりしたため、土地の価額を過小のままとしていたものである。

(イ) 有価証券の価額に関するもの
 個人が相続又は遺贈により取得した有価証券のうち取引相場のない株式又は出資の価額については、株式を発行した会社等の各資産の価額の合計額から各負債の金額の合計額を差し引いた純資産価額等を基にして計算することとなっている。
 この有価証券の価額に関し、徴収不足になっている事態が10事項40,217,900円あった。その内容は、取引相場のない同族会社の株式の価額の計算を誤っているのに、これを見過ごしたため、株式の価額を過小のままとしていたものである。
(ウ) 相次相続控除に関するもの
 個人が相続により財産を取得した場合において、被相続人が今回の相続の開始前10年以内に相続により財産を取得していたときは、前回の相続の相続税額のうち今回の被相続人に係る相続税額を基に算出された金額を、今回の相続の相続税額から相次相続控除額として差し引くこととなっている。そして、この場合の前回の相続の相続税額は、今回の相続の相続税の申告期限までに確定した税額によることとなっている。
 この相次相続控除に関し、徴収不足になっている事態が4事項12,505,200円、徴収過大になっている事態が2事項31,365,400円あった。その主な内容は、徴収不足の事態については、前回の相続の際の相続税額がないにもかかわらず相次相続控除額を算定したり、前回の相続の相続税額を今回の相続の相続税の申告期限の後に修正申告により確定した税額としたりしているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、見過ごしたりしたため、相続税額を過小のままとしていたものである。また、徴収過大の事態については、相続税額から控除する相次相続控除額があるのに、同控除額の算定をしていないのを見過ごしたため、相続税額を過大のままとしていたものである。
(エ) その他に関するもの
 上記(ア)から(ウ)のほか、相続税額の加算等に関し、徴収不足になっている事態が3事項25,185,600円、徴収過大になっている事態が3事項1,967,700円あった。

イ 贈与税に関するもの
 個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。そして、著しく低い対価で財産の譲渡を受けた場合は、当該財産の時価との差額に相当する金額を贈与により取得したものとみなすこととなっている。
 この贈与税に関し、徴収不足になっている事態が6事項5,297,600円あった。その主な内容は、親族から時価より著しく低い対価で株式の譲渡を受けているのに、これを見過ごしたため、贈与税を課していなかったものである。

 相続税・贈与税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例6> 小規模宅地等の特例の適用を誤っていたもの
 納税者Gは、平成11年7月相続分の申告に当たり、相続により取得した土地のうち104.20m について小規模宅地等の特例を適用し、特定同族会社事業用宅地等に該当するとして、その土地の価額から100分の80に相当する金額86,038,316円を減額していた。
 しかし、申告書等によれば、上記の土地は不動産貸付業を営む同族会社の事業の用に供されているため、特定同族会社事業用宅地等には該当せず、小規模宅地等として減額される割合は100分の50である。したがって、これにより計算すると、減額される金額は53,773,948円となり、その他取引相場のない株式価額の計算誤り2,328,400円を含め課税価格が34,592,768円過小となっているのに、これを見過ごしたため、相続税額9,470,300円が徴収不足になっていた。
 なお、上記のとおり課税価格が過小となっていたことから、Gの共同相続人H及びIについても相続税額1,326,400円及び1,292,900円が徴収不足になっていた。

(5) 消費税に関するもの

 消費税では徴収不足及び徴収過大になっていたものが40事項あった。この内訳は、課税仕入れに係る消費税額の控除に関するもの14事項、簡易課税制度の適用に関するもの14事項及びその他に関するもの12事項である。

ア 課税仕入れに係る消費税額の控除に関するもの
 事業者は、課税期間(納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、個人事業者は暦年、法人は事業年度)における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除した額を消費税として納付することとなっている。この課税仕入れに係る消費税額の控除額は、課税期間における課税売上割合(課税売上高を総売上高で除した割合をいう。)が100分の95以上のときは、課税仕入れに係る消費税額の全額、100分の95未満のときは課税売上高に対応する部分の金額となっている。
 そして、国や地方公共団体の特別会計等における課税仕入れに係る消費税額の計算においては、消費税の対象となる資産の譲渡等の対価に該当しない補助金、他会計からの繰入金等の収入のうち給料、賃金等の支払など課税仕入れ以外の支出に使途が特定されたものなどを除いた収入(以下「特定収入」という。)を、総売上高にその特定収入を加えた額で除した割合が100分の5を超える場合には、特定収入によって賄われる課税仕入れ消費税額を課税仕入れに係る消費税額から控除することとなっている。
 この課税仕入れに係る消費税額の控除に関し、徴収不足になっている事態が13事項79,435,876円、徴収過大になっている事態が1事項1,231,500円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア) 地方公共団体の特別会計等において、特定収入の額の算出を誤るなどして、特定収入によって賄われる課税仕入れ消費税額を過小としているのに、これを見過ごしたため、課税売上高に対する消費税額から控除される税額を過大のままとしていた。
(イ) 課税売上割合の計算を誤り、同割合が100分の95未満であるにもかかわらず、商品の仕入れや建物の取得等に係る消費税額の全額を課税仕入れに係る消費税額としているのに、これを見過ごしたため、消費税額を過小のままとしていた。

イ 簡易課税制度の適用に関するもの
 事業者は、課税期間の基準期間(個人事業者については前々年、法人については前々事業年度)における課税売上高が2億円以下であるときは、課税売上高に対する消費税額に事業の種類ごとに定められている次の率を乗じて得られる金額を課税仕入れに係る消費税額とみなして納付税額を計算する簡易課税制度を適用することができることとなっている。

第一種事業(卸売業) 100分の90
第二種事業(小売業) 100分の80
第三種事業(製造業等) 100分の70
第四種事業(他の種の事業以外の事業) 100分の60
第五種事業(飲食店業を除くサービス業等) 100分の50

 この簡易課税制度の適用に関し、徴収不足になっている事態が14事項14,201,300円あった。その内容は、事業の種類の判定を誤って第五種事業に該当する事業を第四種事業に該当するなどとし、課税仕入れに係る消費税額とみなされる金額を過大に計算しているのに、法令等の適用の検討が十分でなかったり、見過ごしたりしたため、消費税額を過小のままとしていたものである。

ウ その他に関するもの
 上記ア、イのほか、課税売上高の計上、納税義務の免除規定の適用等に関し、徴収不足になっている事態が12事項38,058,700円あった。

 消費税に関する徴収不足の事例を示すと次のとおりである。
<事例7> 建物の譲渡収入を課税売上高としていなかったもの
 納税者Jは、個人事業者で、平成11年1月から同年12月までの課税期間分の申告に当たり、課税売上高はないとしていた。
 しかし、同人の申告所得税の申告書等によれば、事業の用に供していた建物の譲渡に係る収入金額が582,964,094円あった。したがって、この譲渡は事業用資産の譲渡に該当することから、課税売上高に計上すべきであるのに、これを見過ごしたため、消費税額8,883,200円が徴収不足になっていた。

(国税局等別の徴収過不足額)

 これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。