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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 財務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

中小企業者等が設備又は機械等を取得した場合等の法人税額の特別控除制度の適用が適正なものとなるよう改善させたもの


(2)中小企業者等が設備又は機械等を取得した場合等の法人税額の特別控除制度の適用が適正なものとなるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
  (項)各税受入金
部局等の名称 国税庁
課税の根拠 租税特別措置法(昭和32年法律第26号)
法人税額の特別控除制度の概要 中小企業者等が取得又は賃借して事業の用に供した一定の設備又は機械等を対象として、その取得価額又は賃借料の一定額を法人税額から控除するもの
上記特別控除制度の適用が適正でなかった納税者 26法人
徴収不足となっていた法人税額 2524万円(平成10年度〜13年度)

1 制度の概要

(設備又は機械等に係る法人税額の特別控除制度)

 所得税、法人税、消費税等の国税の賦課徴収は、法律に規定するところによって行われている。このうち法人税は、法人税法(昭和40年法律第34号)において、法人の所得に所定の税率を乗じて算定することとなっているが、特定の政策目的のために租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「特別措置法」という。)等において、税の軽減等を内容とする様々な特例が設けられている。
 この特例のうち中小企業者等を対象としたものとして、電子機器利用設備を取得した場合等の法人税額の特別控除(特別措置法第42条の6。以下「電子設備特別控除制度」という。)及び機械等を取得した場合等の法人税額の特別控除(特別措置法第42条の12。以下「機械等特別控除制度」といい、また、上記の制度と併せて「電子設備・機械等特別控除制度」という。)がある。これらの特別控除制度は、中小企業の設備投資を促進することなどを図るための措置として、それぞれ昭和59年及び平成10年に設けられたものである。

(電子設備・機械等特別控除制度の内容)

 電子設備・機械等特別控除制度は、青色申告書を提出する中小企業者等が一定の設備又は機械等を取得又は賃借(賃借期間が5年以上であるものに限る。)して、製造業等の指定事業の用に供した場合に、その事業の用に供した最初の事業年度(以下「供用開始年度」という。)において、次の金額を法人税額から控除できるものである。
〔1〕 取得した設備又は機械等については、その取得価額の100分の7に相当する金額
〔2〕 賃借した設備又は機械等については、その賃借期間中に支払うべき賃借料総額の100分の60相当額の100分の7に相当する金額
 この場合に控除できる金額(以下「控除税額」という。)は、供用開始年度における法人税の確定申告書(以下「確定申告書」という。)の法人税額の100分の20に相当する金額が限度となっており、また、このために供用開始年度において控除できなかった金額があるときは1年間に限り繰り越して控除できることとなっている。

(電子設備・機械等特別控除制度の適用対象法人)

 電子設備・機械等特別控除制度を適用できる法人は、資本又は出資の金額(以下「資本金等」という。)が1億円以下の法人等(以下「中小企業者等」という。)となっている。
 ただし、上記法人等のうち、発行済株式の総数又は出資金額の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなどの法人は、制度の対象から除かれている。また、10年から設備又は機械等を取得して事業の用に供した場合(以下「取得分」という。)の制度の適用は、資本金等が3000万円以下の法人等(以下「特定中小企業者等」という。)に限定されている。

(電子設備・機械等特別控除制度の適用手続)

 電子設備・機械等特別控除制度の適用を受けようとするときは、確定申告書にその控除税額を記載し、かつ、控除税額の計算等に関する明細書(以下「控除税額計算明細書」という。)を添付しなければならないこととなっている。
 なお、14年度の税制改正により、上記制度のうち電子設備特別控除制度は廃止されたが、同改正により拡充された機械等特別控除制度(同改正後は特別措置法第42条の11)に実質的に吸収されている。また、同改正前に取得等した電子機器利用設備については、従前の電子設備特別控除制度が適用できる経過措置が設けられている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 平成13年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額のうち法人税額は、13年度で11兆1596億余円となっている。これに対し、特別措置法の特例制度による法人税の減収試算額は4900億円で、このうち電子設備・機械等特別控除制度及び電子機器利用設備又は機械等を取得した場合等の特別償却制度による減収試算額は2020億円となっている。また、取得分の適用を特定中小企業者等に限定する制度の設置が10年度の税制改正で導入された。
 このようなことから、本院はこれまで、本件電子設備・機械等特別控除制度の適用の適否を一つの検査項目として取り上げて検査しており、その結果、制度の適用対象法人でない法人が制度を適用しているなどの事態が相当数見受けられ、検査報告に掲記してきたところである。
 そこで、14年次においても、電子設備・機械等特別控除制度の適用が適正に行われているか、その控除税額の算出が適正なものであるかなどに着眼して引き続き検査を行うとともに、国税庁や国税局等、税務署における法人税の賦課徴収事務等において改善を要する点がないか検討することとした。

(検査の対象)

 関東信越国税局ほか6国税局(沖縄国税事務所を含む。)及び札幌中税務署ほか107税務署において、電子設備・機械等特別控除制度を適用している1,357法人(1,657件)について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、大阪国税局ほか1国税局(注1) 及び佐沼税務署ほか17税務署(注2) において、下記のとおり適用対象法人に該当しない法人が制度の適用を受けるなどしていたものが26法人(30件)見受けられた。そして、これらの法人について控除税額が26,151,990円過大に算出されたため、法人税額が25,244,900円徴収不足となっていた。

〔1〕 資本金等が3000万円を超えていて特定中小企業者等に該当しないのに、取得分の制度を適用して控除税額を算出していたもの

9法人(10件) 過大に算出された控除税額
徴収不足となっていた税額
8,465,333円
7,795,400円

〔2〕 同一の大規模法人が発行済株式の総数の2分の1以上を所有していて中小企業者等に該当しないのに、制度を適用して控除税額を算出していたもの

6法人(8件) 過大に算出された控除税額 10,763,479円
  徴収不足となっていた税額 10,763,400円

〔3〕 賃借した同一の設備又は機械等について供用開始年度の翌年度以後に重複して制度を適用するなどして控除税額を算出していたもの

11法人(12件) 過大に算出された控除税額 6,923,178円
  徴収不足となっていた税額 6,686,100円

 上記のうち、特定中小企業者等に該当しないのに制度を適用していた事例を示すと次のとおりである。
 <事例>
 A税務署管内のB法人は、平成10年4月から11年3月までの事業年度分の申告に当たり、期中に取得して事業の用に供したエアコン設備等について、機械等特別控除制度を適用して、その取得価額18,023,800円に100分の7を乗じて控除税額1,261,666円を算出し、同金額を法人税額から控除していた。
 しかし、確定申告書によれば、同法人の資本金は6000万円となっており、特定中小企業者等の要件である「3000万円以下」を超えているため、同法人は制度を適用できないものである。そして、この結果、法人税額1,135,500円が徴収不足になっていた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、納税者である法人において、電子設備・機械等特別控除制度の適用要件についての理解や認識が不足していたことにもよるが、次のことによると認められた。
(ア) 次のとおり、制度の適用要件等を控除税額計算明細書に記載するなどの方途が執られていなかったため、法人がその適用を誤っていたこと
〔1〕 取得分の制度の適用は特定中小企業者等に限られる旨の記載がなかったこと
〔2〕 発行済株式の総数又は出資金額の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなどの場合は制度の適用対象である中小企業者等に該当しない旨の記載がなかったこと
(イ) 国税局等や税務署において、制度の適用対象法人や控除税額の算出などについて誤りがないよう十分に審査を行うことの周知徹底が図られていなかったこととともに、納税者等に対する適用要件等についての周知が十分なものとはなっていなかったこと
 前記のように電子設備・機械等特別控除制度の不適正な適用が引き続き見受けられる状況にかんがみ、事態の再発を防止するため、国税庁等において上記の点について改善の処置を講じる必要があると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、国税庁では、14年10月に、電子設備・機械等特別控除制度の適用が適正に行われるよう、次のような処置を講じ、各国税局等に対してその旨の通知を発した。
(ア) 法人が制度の適用を適正に行うことができるように、次のとおり、控除税額計算明細書の書式に注意書きを付記することとした。
〔1〕 取得分の制度は、資本金等が3000万円を超える法人には適用がないこと
〔2〕 発行済株式の総数又は出資金額の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなどの場合は、制度の適用がないこと
 また、控除税額計算明細書の中に、発行済株式の総数又は出資金額や大規模法人の所有する株式数等の明細などを記載する中小企業者の判定表を設けることとした。
(イ) 国税局等や税務署において、制度の適用対象法人や控除税額の算出などについて誤りがないよう十分に審査を行うことの周知徹底を図るとともに、各種説明会等の機会を通じて納税者等に対する適用要件等の周知を十分に図ることとした。

(注1)

大阪国税局ほか1国税局 大阪、熊本両国税局

(注2) 佐沼税務署ほか17税務署 佐沼、宇都宮、神田、四谷、荒川、練馬西、川崎北、鎌倉、名古屋中、上野、旭、東淀川、茨木、彦根、広島東、宇部、都城、延岡各税務署