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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 文部科学省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

大学病院における診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務を適切に行うよう改善させたもの


(3) 大学病院における診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 国立学校特別会計 (款)附属病院収入 (項)附属病院収入
部局等の名称 北海道大学ほか10大学(13大学病院)
事務の概要 診療報酬のうち患者から徴収する診療費について、債権の調査確認及び債権管理簿への記載、歳入の調査決定及び徴収整理簿への登記並びに納入告知書の作成及び送付を行う事務
適切な事務処理がされていなかった未納診療費の額 3億2581万円

1 事務の概要

(診療報酬に係る経理)

 文部科学省では、国立学校設置法(昭和24年法律第150号)等に基づき、国立大学の医学部等に附属する病院(以下「大学病院」という。)を設置している。大学病院では、臨床医学の教育・研究を行うほか、保険医療機関として患者の診療を行っている。そして、保険医療機関として診療を行ったときは、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号)等により、診療報酬として医療に要する費用を算定し、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬を社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に請求することとなっている。
 大学病院における収入支出は、国立学校特別会計(以下「特別会計」という。)において経理されており、上記の診療報酬に係る債権は特別会計の病院等療養費債権として管理され、また、収入は特別会計の附属病院収入に計上されることとなっている。

(診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務)

 診療報酬に係る債権管理及び歳入徴収の事務は、会計法(昭和22年法律第35号)、国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号)、文部科学省債権管理事務取扱規程(平成13年文部科学省訓令第21号。13年1月5日以前は「文部省債権管理事務取扱規程」(昭和32年文部省訓令))等の会計法令等に基づいて行うこととされている。そして、診療報酬のうち患者負担分として患者に請求する費用(以下「診療費」という。)については、次のように行うこととなっている(参考図参照)。
〔1〕 患者に対する診療が行われたときは、分任契約担当官は、診療費の額を算定し、分任歳入徴収官に対して債権発生通知を行う。
〔2〕 債権発生通知を受けた分任歳入徴収官は、患者の住所及び氏名、診療費の額等を調査、確認の上、債権管理簿にその内容を記載する。
〔3〕 分任歳入徴収官が診療費を徴収しようとするときは、その額に誤りがないかなどを調査し、適正であると認めるときは、徴収の決定を行い、徴収整理簿に徴収決定済額を登記する。また、納付すべき金額、期限及び場所等を明らかにした納入告知書を作成し、これを患者に送付する。
〔4〕 分任歳入徴収官は、診療費を収納した分任収入官吏又は日本銀行等から、領収済の報告を受けたときは、徴収整理簿に収納年月日、収納済歳入額等を登記するとともに、債権管理簿に当該債権が消滅したことを記載する。
 ただし、外来患者から診療当日に納付させる診療費については、料金算定部門から分任収入官吏に請求書等を送付し、納付を受けた分任収入官吏からの領収済の報告に基づいて、分任歳入徴収官が歳入の調査、決定を行い徴収整理簿に登記することとされていて、債権発生通知や債権管理簿への記載等の事務は要しないとされている。しかし、納付がされなかった場合は、上記〔1〕以下の事務を行うこととなっている。

(参考図)診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務の流れ

(参考図)診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務の流れ

(注)

 点線は外来患者から診療当日に納付させる場合の流れを示す。


2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務については、附属病院収入の特別会計における重要性及び不特定多数からの日々の現金収入があるという特性にかんがみ、その適正執行の確保と不正の防止が重要である。そこで、大学病院においてこれらの事務が会計法令等に従って適正に行われているかなどに着眼して、事務の基本的手続の実施状況等を、北海道大学ほか19大学の30大学病院(注1) を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、北海道大学ほか10大学の13大学病院では、分任収入官吏が収納するものとされた診療費について、債権管理簿や徴収整理簿への記載又は登記をしていなかったり、納入告知書の作成及び送付をしていなかったりしていた。
 このため、納付されていない診療費(以下「未納診療費」という。)計3億2581万余円が簿外で取り扱われているなど、債権管理及び歳入徴収の事務が適切に行われていない事態となっていた。これを態様別に示すと、次のとおりである。

(ア) 債権発生通知及び債権管理簿への記載、徴収整理簿への登記並びに納入告知書の作成及び送付を行っていなかったもの
 東北大学ほか8大学の10大学病院(注2)

  未納診療費      
 外来分 発生年度 平成6年度〜13年度 11,499件 5137万余円
   入院分 発生年度 平成7年度〜13年度 1,382件 1億4239万余円  

 上記の大学病院では、入院患者に係る診療費及び外来患者から診療当日に納付がなかった診療費について、前記の会計法令等に基づく債権発生通知、債権の調査確認及び債権管理簿への記載、徴収の調査決定及び徴収整理簿への徴収決定済額の登記並びに納入告知書の作成及び送付の事務を行っておらず、分任収入官吏に納付があったときに、歳入の調査決定を行い徴収整理簿に徴収決定済額の登記をしていた。
 そして、診療費の納付がないものについては、患者から債務の確認書を徴したり、診療費の計算・請求に際して作成した請求書兼領収証書を手元の整理箱で保管したり、診療報酬請求事務を処理するためのコンピュータシステム(以下「医事会計システム」という。)から出力される未納者一覧表により納付を促す電話や督促文書の送付をしたりするにとどまっていた。そして、債権管理簿や徴収整理簿への記載又は登記等を行っていないことから、未納診療費は簿外で取り扱われることとなっていた。

(イ) 納入告知書の作成及び患者への送付等を行っていなかったもの
 北海道大学ほか1大学の3大学病院(注3)

  未納診療費      
 外来分 発生年度 平成8年度〜13年度 251件 221万余円
   入院分 発生年度 昭和56年度〜平成13年度 520件 1億2982万余円  

 上記の大学病院では、入院患者に係る診療費及び外来患者から診療当日に納付がなかった診療費について、債権発生通知があったときに、債権管理簿への記載等を行わないで、歳入の調査決定を行い、徴収整理簿に徴収決定済額の登記をしていたが、納入告知書の作成及び送付は行っていなかった。
 そして、診療費の納付がないものについては、医事会計システムから出力される未納者一覧表に基づいて未納診療費について債権の調査確認及び債権管理簿への記載を行っていたものの、患者に対しては、診療費に係る債務の確認書を徴したり、納付を促す電話や督促文書の送付をしたりするにとどまり、納入告知書の作成及び送付は行っていなかった。上記のように、会計法令等に定められた事務が行われていない事態は、大学病院の会計規律の維持及び不正な事態の防止の観点から適切とは認められず、会計法令等に従って厳正に事務を処理するよう改める要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、主として次のようなことによると認められた。
(ア) 大学病院において、診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務について、会計法令等を遵守すべきことの認識が十分でなく、その処理手順についての検討が十分でなかったこと
(イ) 文部科学省において、大学病院に対し、診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務についての指導が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省では、診療費に係る債権管理及び歳入徴収の事務が適切に行われるよう、次のような改善のための処置を講じた。
(ア) 14年5月及び9月の国立学校等経理部課長会議並びに9月の国立大学病院事務部長会議において注意喚起及び指導を行うとともに、10月に大学病院の事務担当者等を対象とした事務処理説明会を開催し、適切な事務の実施について指導を行った。
(イ) 同じく10月に大学病院を置く各国立大学の経理部長又は総務部長に対して通知を発し、事務処理体制を整備するとともに、職員の意識の向上を図るよう指導した。

 また、各大学病院では、上記文部科学省の指導及び通知を受けて、次のとおり、是正及び改善の処置を講じた。
(ア) 前記の未納診療費について、すべて債権管理簿への記載を完了し、調査決定したものから納入告知書の作成及び送付等を行っている。
(イ) 事務処理の手順等を示した事務処理要項等を制定するなどして、事務処理体制を整備した。

(注1)

北海道大学ほか19大学の30大学病院 北海道、旭川医科、弘前、東北、秋田、山形、千葉、東京、東京医科歯科、新潟、信州、名古屋、京都、大阪、岡山、広島、愛媛、九州、長崎各大学の医学部附属病院、富山医科薬科大学附属病院、北海道、東北、東京医科歯科、新潟、大阪、岡山、広島、九州各大学の歯学部附属病院、東京大学医科学研究所附属病院、九州大学生体防御医学研究所附属病院

(注2) 東北大学ほか8大学の10大学病院 東北、秋田、千葉、東京医科歯科、新潟、信州、京都、愛媛、長崎各大学の医学部附属病院、東京医科歯科大学の歯学部附属病院
(注3) 北海道大学ほか1大学の3大学病院 北海道、旭川医科両大学の医学部附属病院、北海道大学の歯学部附属病院