1 本院が要求した是正改善の処置
雇用保険における失業等給付金の中には、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にある者などに対して支給される求職者給付及び就職促進給付(以下「求職者給付等」という。)がある。求職者給付等は、公共職業安定所において、そめ受給資格があると決定された者から提出された失業認定申告書等に記載されている就職の有無などの事実について確認し、失業している日について失業の認定を行うなどして支給決定し、都道府県労働局が支給することとなっている。
また、労働者災害補償保険における保険給付の中には、業務上の事由又は通勤による負傷又は疾病による療養のため労働することができない者に対して支給される休業補償給付及び休業給付(以下「休業補償給付等」という。)がある。休業補償給付等は、労働基準監督署において、その保険給付を受ける権利がある者から提出された休業補償給付支給請求書等に記載されている傷病年月日、雇入年月日、療養のため労働することができなかった期間等について確認するなどして、賃金を受けていない日について支給することとなっている。
公共職業安定所では、求職者給付等の受給資格の決定及び失業の認定などに当たり、休業補償給付等の受給の有無を確認し、休業補償給付等を受けていることが判明した場合には、その間の受給資格の決定及び失業の認定を行わない取扱いとなっている。
休業補償給付等の受給者に対する求職者給付等の支給決定の適否を検査したところ、療養のため休業補償給付等を受給していて就労できる状態にないのに、その期間中に求職者給付等を支給していたり、公共職業安定所に再就職の事実を申告せず求職者給付等を受給していた者が、その後負傷するなどして休業補償給付等を受給する際に労働基準監督署に再就職の事実を届け出ているのに、求職者給付等の返還の措置が執られていなかったりしている事態が見受けられた。
このような事態が生じているのは、主として次のことによると認められた。
(ア) 公共職業安定所において、受給資格の決定及び失業の認定時における労働能力の有無の確認等の取扱いが徹底されておらず、また、休業補償給付等が支給されていることを把握できる体制が整備されていないこと
(イ) 労働基準監督署に提出された休業補償給付等の支給請求書に記載されている雇入年月日等の情報を、公共職業安定所において活用できる体制が整備されていないこと
求職者給付等の支給の適正化を図るよう、次のとおり、厚生労働大臣に対し平成13年11月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。
(ア) 公共職業安定所に対し、受給資格の決定及び失業の認定時における取扱いを徹底させること
(イ) 都道府県労働局、公共職業安定所及び労働基準監督署間の連携を図り、労働基準監督署が保有する休業補償給付等の給付履歴や請求時の雇入年月日等の情報を公共職業安定所が活用できるよう体制を整備すること
2 当局が講じた是正改善の処置
厚生労働省では、本院指摘の趣旨に沿い、14年10月に都道府県労働局に対し指示文書を発して、次のような処置を講じた。
(ア) 公共職業安定所に対し、受給資格の決定及び失業の認定時における労働能力の有無の確認等の取扱いを徹底させることとした。
(イ) 公共職業安定所が必要であると認める場合に、労働基準監督署の保有する休業補償給付、等の給付履歴や請求時の雇入年月日等の情報を活用できるよう体制を整備した。