会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業改良普及対策費 |
部局等の名称 | 農林水産本省、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者(事業主体) | 北海道ほか19県 |
補助事業 | 農業改良普及推進 |
補助事業の概要 | 農業及び農村をめぐる情勢の変化に的確に対応し、新たな農政の推進に資するよう、地域の特性に応じて効率的かつ効果的に普及事業を実施していく必要があるため、普及職員の資質向上及び普及活動体制の整備を図るもの |
事業費 | 20億4543万円 | (平成12、13両年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 10億2228万円 | |
適切とは認められない事業費 | 18億2239万円 | (平成12、13両年度) |
上記に対する国庫補助金相当額 | 9億1068万円 |
1 事業の概要
農林水産省では、農業改良助長法(昭和23年法律第165号)に基づき、農業者が農業経営及び農村生活に関する有益かつ実用的な知識を取得交換し、それを有効に応用することができるように都道府県が農林水産省と協同して行う農業に関する普及事業(注1)
を助長するため、協同農業普及事業(以下「協同事業」という。)を実施する都道府県に対して、協同農業普及事業交付金(以下「交付金」という。)を交付している。
協同事業は、同法及び協同農業普及事業実施要領(昭和58年58農蚕第3621号農林水産事務次官依命通達)等に基づき、都道府県が地域農業改良普及センター(以下「普及センター」という。)を運営したり、専門技術員及び改良普及員(以下「普及職員」という。)を配置し、これらの職員が農業者に対する普及指導を行ったりなどするものである。
農林水産省では、農業改良普及推進事業実施要領(平成12年12農産第3278号農林水産事務次官依命通知。以下「要領」という。)に基づき、前記の農業に関する普及事業の推進に当たって、農業及び農村をめぐる情勢の変化に的確に対応し、新たな農政の推進に資するよう、地域の特性に応じて効率的かつ効果的に普及事業を実施していく必要があるため、普及職員の資質向上及び普及活動体制の整備を図るための農業改良普及推進事業(以下「改良事業」という。)を実施する都道府県に対して、農業改良普及推進事業費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。
改良事業は、要領に基づき、普及センター等が、担い手農業者等に対し技術・経営の両面におけるきめ細かな支援活動を行う体制を総合的に整備したり、地域ぐるみの生産・流通体制の改善等地域農業構造の変革を支援するため意向調査、座談会、先進地視察等を実施したりして、普及センター等における効率的かつ効果的な活動手法を確立するなどするものである。
改良事業は、それぞれの政策目的に従って設定された各種事業(平成12年度5事業、13年度は3事業が追加され8事業)から成っている。
そして、改良事業の実施体制は、そのうちの一つである担い手育成支援高度化事業を例に示すと次のとおりとなっている。
すなわち、同事業については、都道府県において、担い手育成普及活動推進協議会を開催し、同協議会において担い手農業者等に対する普及活動に関する「担い手育成普及活動推進基本方針」を策定する推進事業を行うこととなっている。また、上記の方針に基づき、都道府県段階で農業経営改善協議会を開催し、同協議会において担い手農業者等の経営改善に関する指導の基本方向を示した「農業経営改善総合指導指針」を作成したり、普及センター段階で地域農業経営改善協議会を開催し、同協議会において上記の指針に基づいた「農業経営改善モデル」の作成などを実施したりする活動事業を行うこととなっている。そして、本事業において活動事業を実施する場合には、上記の推進事業を実施しなければならないこととなっている。
このように、事業実施の各段階において各種協議会の開催及び各種方針等の策定が求められており、改良事業の他の各種事業においても、ほぼ同様の実施体制となっている。
交付金及び補助金の対象経費及び補助の仕組みは、次のとおりとなっている。
(ア) 協同事業における交付金の対象経費は、農業改良普及対策費補助金等交付要綱(平成12年12農産第3280号農林水産事務次官依命通知。以下「要綱」という。)に基づき、普及職員の設置費及び活動費、普及センターの運営費等、普及事業を推進する上での基礎的な経費としており、交付金の交付については、農業改良助長法施行令(昭和27年政令第148号)で定める基準に基づき、各都道府県の農業人口、耕作面積、市町村数等に応じて交付金の予算総額を配分している。
そして、その交付額は、12年度289億4582万余円、13年度283億4582万余円となっている。
(イ) 改良事業における補助金の対象経費は、要綱に基づき、例えば担い手育成支援高度化事業については、担い手育成普及活動推進基本方針を策定するために必要な経費等、政策目的に応じて設定されたそれぞれの事業の実施に要する経費としており、補助金の交付額はその2分の1以内の額となっている。そして、補助金は、改良事業の事業計画を作成した都道府県からの交付申請に基づき交付され、当該事業において実際に要した額を積み上げて実績額を算出し、精算をすることとなっている。また、要綱により、改良事業及び協同事業に係る経費は相互に流用することができないこととしている。
そして、その交付額は、12年度9億6337万余円、13年度10億6718万余円となっている。
2 検査の結果
上記のとおり、普及事業の実施に要する基礎的な経費を負担する交付金と、地域の特性に応じて効率的かつ効果的に普及事業を実施するために交付される補助金とはその交付目的を異にするものである。また、農林水産省では、普及事業の効率的・効果的実施に向け、より効率的な予算執行を図る観点から、交付金については一定の削減を図る一方で、地域の担い手農業者の育成と地域農業の重点課題の解決をより一層推進していくため、補助金については拡充を行っている。
そこで、改良事業がその目的を踏まえて要領等に従って実施されているか、また、補助金と交付金とが区分経理されているかに着眼して検査した。
北海道ほか19県(注2)
において、12、13両年度に実施された改良事業、12年度事業費9億5902万余円(これに係る国庫補助金4億7937万余円)、13年度事業費10億8641万余円(同5億4291万余円)、事業費計20億4543万余円(同10億2228万余円)を対象に検査した。
検査したところ、北海道ほか19県が実施した改良事業において、次のとおり、適切とは認められない事態(12年度事業費8億6673万余円、これに係る国庫補助金相当額4億3316万余円、13年度事業費9億5565万余円、これに係る国庫補助金相当額4億7752万余円、事業費計18億2239万余円、これに係る国庫補助金相当額計9億1068万余円)が見受けられた。
(1) 補助金と交付金を区分して経理しておらず、改良事業の実績額を確認できなかったもの | |||||||||
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これらは、道県から普及センター等への普及事業に係る予算の示達段階で補助金と交付金の全部又は一部を区分していないことから、普及センター等では改良事業と協同事業の経費を一体として支出し、国への実績報告において予算額をそのまま決算額とするなどしていた。このため、支出された経費が改良事業又は協同事業のいずれの事業に要した経費か区分できず、改良事業の実績額を確認できない状況になっていた。
(2) 補助金と交付金を区分して経理しているものの、事業の実施上、改良事業の対象経費を明確にしておらず、改良事業に要した経費であるか確認できなかったもの | |||||||||
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これらは、農業者に対する指導旅費や普及センター等における共通的経費である消耗品費、通信費等その活動内容、経費の性質からみて、改良事業又は協同事業のいずれの経費として経理すべきか判然としない経費について、そのすべてを改良事業にのみ要した経費であるなどとしていた。また、全国会議等に要する旅費、新聞、定期刊行物の購入費など、要領等に明示されていない活動に係る経費について、改良事業の経費として支出していた。このため、これらの経費は、改良事業に要した経費であるか確認できない状況となっていた。
(3) 実施した事業の内容が要領等に則したものとなっていなかったもの | |||||||||
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これらは、〔1〕担い手育成支援高度化事業等の活動事業の実施に当たり推進事業を実施していなかったり、〔2〕要領等において開催することとされている協議会等を開催していなかったり構成員が類似する他の事業で開催された会議をもって当該事業の協議会等としていたり、〔3〕要領等において策定することとされている方針等を策定していなかったり他の事業で策定された方針を代用していたためその内容が十分でなかったりなどしていて、実施した事業の内容が要領等に則したものとなっていなかった。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 道県において
改良事業と協同事業とは趣旨、目的等が異なることを十分に理解していなかったため、両事業の経理を適切に区分するという認識が欠けており、改良事業においては実施のための体制の整備が重要であるということを十分認識していなかったこと
イ 農林水産省において
(ア) 道県における事業の実施状況を的確に把握していなかったこと
(イ) 改良事業の目的、実施方法等についての道県に対する指導等が十分でなかったり、改良事業又は協同事業のいずれの経費として経理すべきか判然としない経費があるにもかかわらず、この区分を明確にしていなかったりしていたこと
(ウ) 改良事業の実施に当たり、必要とされている各種の協議会等を個別に開催したり各種の方針等を個別に策定したりすることは、事業主体の負担が大きいにもかかわらず、これらの協議会等の開催や方針等の策定を効率的かつ効果的に行うための配慮が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、14年10月に各都道府県に対して通知を発するなどして、事業の適切な実施が図られるよう次のような処置を講じた。
ア 改良事業と協同事業との趣旨、目的等が相違していることを踏まえ、両事業の経理の区分を徹底し、補助簿を備えて事業の実施に要した経費の支出内訳を明らかにすることなどにより、改良事業の実績額を確認できる体制を整備するよう指導した。
イ 改良事業又は協同事業のいずれの経費として経理すべきか判然としない経費について、その取扱いの原則を示すなどして、対象経費の明確化を図った。
ウ 効率的かつ効果的な事業の実施体制の整備を図るため、要領等に定める協議会等の設置については、必ず設置すべきものと活動を実施する場合に設置すべきものとを明確にし、方針等の策定についても、上記と同様にそれらが必要な場合を明確にした。また、協議会等の開催に当たって、構成員が重複する他の会議との同一日開催とする場合及び他の事業等で策定された方針等を当該事業における方針等とみなすことができる場合の基準を示した。
(注1) | 普及事業 専門の知識を有する者が農業技術、農業経営等に関する支援を直接農業者に接して行うもの |
(注2) | 北海道ほか19県 北海道、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、新潟、富山、福井、岐阜、愛知、兵庫、広島、山口、徳島、愛媛、福岡、佐賀各県 |