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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

道路事業の実施における公共施設等の移設補償費の算定を適切なものにするよう改善させたもの


(2) 道路事業の実施における公共施設等の移設補償費の算定を適切なものにするよう改善させたもの

会計名及び科目 道路整備特別会計  (項)道路事業費
 (項)北海道道路事業費
 (項)地方道路整備臨時交付金
部局等の名称 北海道ほか17県
補助の根拠 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)
補助事業者
(事業主体)
道1、県16、市9、町28、村6、計60事業主体
補助事業 道路事業(315事業)
補助事業の概要 道路事業の実施の際に支障となる公共施設等の移設補償を行うもの
補助対象事業費 15億5014万余円 (平成13年度)
上記に対する国庫補助金交付額 8億1081万余円  
節減できた補助対象経費 4億8421万円 (平成13年度)
上記に対する国庫補助金相当額 2億5207万円  

1 事業の概要

(補助の対象)

 国土交通省では、国庫補助事業により、一般国道又は地方道の道路事業を実施する都道府県・市町村(以下「事業主体」という。)に対し、事業の実施に要する経費の一部を補助することとしている。
 上記の事業において国庫補助の対象となる経費(以下「補助対象経費」という。)は、工事費のほか用地費及び補償費等から成っており、このうち、用地費及び補償費には、道路事業を実施する際に支障となる公共施設等の移設に要する費用が含まれている。
 そして、公共事業の施行に伴い機能の廃止等が必要となる既存の公共施設等についてその機能回復を図ることを目的とする公共補償については、「公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱」(昭和42年閣議決定)及び「公共補償基準要綱の運用申し合せ」(昭和42年用地対策連絡会)(以下、これらを「公共補償基準」という。)に基づき、事業主体がその原因者として、公共施設等の管理者に対して補償費を支払うものとされている。

(道路事業における公共補償)

 事業主体は、道路事業の実施に当たり、道路を掘削するなどの際に、その施工区域内に埋設されている水道管等の施設が支障となる場合には、その施設の管理者と協議するなどして施設の移設に関する移設補償契約を締結しており、この契約に基づき施設の管理者に補償費を支払うこととなっている。

(補償費の算定方法)

 上記の公共施設等は、その公共性から一般的にその機能を廃止したり、中断したりすることができないものであることから、公共補償基準では、公共事業の施行に伴い支障となる公共施設等に対する補償の原則として、既存の公共施設等の機能を阻害したり、低下させたりすることがないよう回復することとしている。
 そして、道路事業を実施する際に支障となる既存の公共施設等の機能を回復するために、公共施設等の管理者がこれと同等の代替施設を建設する場合には、事業主体は当該施設の建設に要する費用(以下「復成価格」という。)から、既存の公共施設等の機能廃止時までの財産価値の減耗分(以下「財産価値の減耗分」という。)等を控除して補償費を算定することとなっている。
 この財産価値の減耗分については、補償時点における対象施設の耐用年数に対する経過年数に応じた減耗分相当額を復成価格に基づき算定することとされている。ただし、国、地方公共団体又はこれらに準ずる団体によって管理されている既存の公共施設等については、やむを得ないと認められるときは、財産価値の減耗分の全部又は一部を控除しないことができることとなっている。

2 検査の結果

(検査の対象及び着眼点)

 道路事業の実施に伴う補償費が多額に上っていることから、平成13年度に北海道ほか17県(注1) において、83事業主体が締結した水道管等の移設補償契約455件、補償費計20億3776万余円(国庫補助金相当額10億6651万余円)を対象として、実際に移設に要した費用を反映した適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、移設補償契約315件、補償費計15億5014万余円(国庫補助金相当額8億1081万余円)において、次のような事態が見受けられた。
ア 設計金額を基として復成価格を算定していたもの
 北海道ほか10県(注2) の29事業主体では、移設補償契約103件、補償費計6億8472万余円(国庫補助金相当額3億6658万余円)の各件ごとの補償費の算定に当たり、公共施設等の管理者が設計図書に基づいて算出した移設工事費(以下「設計金額」という。)により復成価格を算定していた。
 一方、公共施設等の管理者は、当該移設工事を実施するに当たり、この設計金額を基に予定価格を設定して競争入札等に付し、予定価格以下の金額で契約していたため、工事請負契約金額はいずれも補償費算定の基礎とした設計金額を下回っていた。また、このうちには、補償契約を締結する以前に工事請負契約が締結されていて、事業主体は工事請負契約金額を把握することができると認められるのに、これによることなく設計金額を基として復成価格を算定しているものが多数見受けられた。
イ 財産価値の減耗分の取扱いが適切でなかったもの
(ア) 財産価値の減耗分を事業主体独自の判断により全く控除していなかったもの
 北海道ほか15県(注3) の34事業主体では、移設補償契約117件、補償費計3億7830万余円(国庫補助金相当額1億9403万余円)の各件ごとの補償費の算定に当たり、やむを得ないと認められる明確な理由もないまま、事業主体独自の判断により、財産価値の減耗分を全く控除していなかった。
(イ) 財産価値の減耗分を過小に算定していたもの
 北海道ほか13県(注4) の29事業主体では、移設補償契約134件、補償費計8億5391万余円(国庫補助金相当額4億4322万余円)の各件ごとの補償費の算定に当たり、次のとおり、財産価値の減耗分を過小に算定していた。
〔1〕 復成価格のうちの材料費のみに基づいて財産価値の減耗分を算定している。
〔2〕 既存公共施設等の減価償却累計額を財産価値の減耗分としている。

(ア、イの事態には重複しているものがある。)

 公共補償は、前記のとおり、公共事業の施行に伴い機能の廃止等が必要となる既存の公共施設等についてその機能回復を図るものであり、被補償者に財産上の利益を取得させることを目的とするものではない。したがって、事業主体が実際に移設に要した費用を上回る設計金額を復成価格としていたり、財産価値の減耗分の全部又は一部を控除しないこととしていたりなどして算定した補償費を補助対象経費としているのは適切ではなく、改善の要があると認められた。

(節減できた補償費)

 前記の移設補償契約315件に係る補助対象経費について、復成価格及び財産価値の減耗分を実際に移設に要した費用を基に適正に算定すると、前記の15億5014万余円は10億3169万余円となり、財産価値の減耗分の算定誤り等を考慮しても、補助対象経費を4億8421万余円(国庫補助金相当額2億5207万余円)節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 国土交通省において、
〔1〕 復成価格について、実際に移設に要した費用であるということを明確にしていなかったこと
〔2〕 財産価値の減耗分について、やむを得ないと認められるときに全部又は一部を控除しないこととする場合について例示などして客観的判断ができるようにしていなかったこと
〔3〕 事業主体に対し、公共補償基準の趣旨、算定方法等を理解し、適切に対応することとする指導が十分でなかったこと
イ 事業主体において、公共補償基準の趣旨、算定方法等を十分に理解しないまま補償費を算定していたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、14年10月に、都道府県等に対し通知を発し、道路事業の実施における公共施設等の移設補償費の算定に当たり、工事請負契約金額により復成価格を算定するよう明確にし、この復成価格から適正な財産価値の減耗分を控除するよう周知徹底する処置を講じた。

(注1) 北海道ほか17県 北海道、青森、宮城、秋田、福島、茨城、栃木、新潟、福井、長野、三重、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、香川、佐賀、鹿児島各県
(注2) 北海道ほか10県 北海道、青森、宮城、秋田、福島、栃木、新潟、福井、長野、滋賀、兵庫各県
(注3) 北海道ほか15県 北海道、青森、宮城、秋田、福島、茨城、栃木、新潟、福井、長野、三重、兵庫、奈良、鳥取、香川、鹿児島各県
(注4) 北海道ほか13県 北海道、青森、宮城、秋田、福島、栃木、新潟、長野、滋賀、兵庫、鳥取、香川、佐賀、鹿児島各県