会計名及び科目 | 空港整備特別会計 (項)空港整備事業費 |
部局等の名称 | 国土交通本省 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 | 法人1、市1 |
補助事業 | 住宅騒音防止対策事業(機能回復工事、再更新工事) |
補助事業の概要 | 航空機の騒音により生ずる障害が著しい区域に所在する住宅等について、所有者等が空気調和機器を更新する工事を行う場合に必要な経費を補助するもの |
補助対象事業費 | 20億0284万余円 | (平成13年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 15億3579万余円 | |
委託費積算額 | 7971万余円 | (平成13年度) |
低減できた委託費積算額 | 4610万円 | |
上記に対する国庫補助金相当額 | 4610万円 |
1 事業の概要
国土交通省では、「住宅騒音防止対策事業費補助金交付要綱」(昭和49年空騒第177号)等に基づき、住宅騒音防止対策事業を行う空港周辺整備機構又は地方公共団体(以下「補助事業者」という。)に対して、住宅騒音防止対策事業費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。
この補助金の交付対象となる住宅騒音防止対策事業は、航空機の騒音により生ずる障害が著しいと認めて国土交通大臣が指定する特定飛行場の周辺の区域に、当該指定の際、現に所在する住宅等の所有者等が、その障害を防止し又は軽減するため必要な騒音防止工事を行う場合に、これらの者に対して当該工事に必要な経費の全部又は一部を補助する事業となっている。
騒音防止工事には、次の3種類がある。
〔1〕 住宅の全部又は一部の室における航空機の騒音の軽減及び当該室内の有効な空気調和の確保を目的とする工事(以下「防音工事」という。)
〔2〕 防音工事において空気調和を確保するために設置された空気調和機器の所要の機能が失われている場合における当該機器の機能回復(更新)を目的とする工事(以下「機能回復工事」という。)
〔3〕 機能回復工事により設置された空気調和機器の所要の機能が失われている場合における当該機器の機能回復を目的とする工事(以下「再更新工事」という。)
このうち〔2〕の機能回復工事の対象機器は、防音工事実施後10年以上経過し、かつ、所要の機能が失われていると認められるもの、〔3〕の再更新工事の対象機器は、機能回復工事実施後10年以上経過し、かつ、所要の機能が失われていると認められるものとなっている。
補助事業者が住宅所有者等に対して機能回復工事及び再更新工事(以下「機能回復工事等」という。)に係る補助を行うに当たっては、既設の空気調和機器が上記の要件を満たしているかの判定や新たに設置する機器の仕様の調査等を行うことが必要になる。これらの事務(以下「判定調査事務」という。)の内容は、国土交通省航空局制定の「住宅防音工事の機能回復工事及び再更新工事における事務手続について」(平成元年空環第118号)等によると、次のとおりとなっている。
〔1〕 補助申請のあった空気調和機器が国の補助金により設置した機器であること及び経過年数を満たしていることの確認を行う。
〔2〕 〔1〕の確認の結果補助条件に該当するものについて現場調査を行う。その際、機能回復工事等が設計業務を必要とするか否かの判断も行う。
〔3〕 〔2〕の現場調査結果を基に故障の判定を行う。
〔4〕 故障判定の結果、取替えの必要があると認められた場合には、新たに設置すべき空気調和機器の能力等仕様の調査、故障判定報告書や工事概要書の作成等を行う。
補助事業者は必要に応じてこの判定調査事務を業者に委託できるとされ、その委託費は補助金の交付対象となっている。そして、大部分の補助事業者は、判定調査事務を業者に委託して実施している。
2 検査の結果
判定調査事務は委託できることとなっているものの、委託する場合の内容等が明確に定められていないことから、補助事業者における委託事務の内容や委託費の積算が適切なものとなっているかに着眼して検査した。
平成13年度に国土交通省から補助金の交付を受けて住宅騒音防止対策事業(機能回復工事等)を実施した17補助事業者(注1) (補助対象事業費計25億1534万余円、これに係る補助金18億8993万余円)のうち、判定調査事務を委託により実施している11補助事業者(注2) (補助対象事業費計23億5151万余円、これに係る補助金17億7223万余円)を対象として検査した。
検査したところ、本件補助事業の大半を実施している2補助事業者(注3)
(補助対象事業費計20億0284万余円、これに係る補助金15億3579万余円)が委託により実施した判定調査事務(委託費積算額計7971万余円)において、次のとおり、必要のない事務を委託して行わせていたり、委託費の積算が適切でない事態が見受けられた。
(1) 委託事務の内容について
検査した11補助事業者ではいずれも、委託事務として、既設機器の故障判定、新たに設置する機器の仕様調査、故障判定報告書及び更新工事概要書の作成等の事務を業者に行わせていたが、うち2補助事業者ではこのほかに、住宅の建築平面図及び電気系統図の作成を行わせていた。
このうち建築平面図は、当該機能回復工事等で設置する空気調和機器の位置等を記録するものであるが、この用途には、当該住宅の防音工事の際に補助事業者が作成して保管している既存の建築平面図を活用すれば足り、また、電気系統図は、住宅の改造工事を併せて行う防音工事の際は必要であっても空気調和機器の取替えのみを行う機能回復工事等には必要でないことから、これらはいずれも作成させる必要はないと認められた。
現に、他の補助事業者では、建築平面図及び電気系統図を作成させていなかった。
(2) 委託費の積算について
判定調査事務の委託費の積算に当たり、1補助事業者では、事務に従事する委託先の調査員の編成について、「空港請負工事積算基準(参考資料)」(国土交通省航空局制定。以下「積算基準」という。)における技術者の職種の中の「技師C」1人及び「技術員」1人の2人編成とし、その労務単価については、平成13年度設計業務委託等技術者単価(国土交通省制定)によりそれぞれ27,100円、22,500円としていた。また、別の1補助事業者では、調査員の編成を「技師C」1人とし、その労務単価は同様に27,100円としていた。
積算基準によると、「技師C」は大学卒5年以上の経歴者で構造計算等の業務に従事する者、「技術員」は大学卒2年以上の経歴者で設計計算等の業務に従事する者とされており、これらの職種は土木建築工事の設計業務を行う場合などに適用するものとなっている。
しかし、本件判定調査事務の内容は、前記(1)の建築平面図等の作成を除けば、故障判定については設置後10年以上経過した機器の運転状況、腐食状況の確認等であり、新たに設置する機器の仕様は居室の広さ等から容易に決定されるものである。そして、このような事務の内容の場合、調査員としては、平成13年度公共工事設計労務単価(農林水産省、国土交通省制定)において、電気工事について相当程度の技能及び必要な資格を有し、建物並びに屋外における受電設備、配電線路等の工事に関する作業について主体的業務を行うものとされている「電工」1人とすれば十分であり、この労務単価は本件2補助事業者の所在地では19,500円、17,500円とされているので、これによることができたと認められた。
現に、他の補助事業者では、調査員は1人とし、その労務単価については「電工」を採用していた。
判定調査事務の委託に当たり、建築平面図及び電気系統図を作成させず、また、調査員を「電工」1人とするなどして、委託費を積算すると、2補助事業者で計3354万余円となり、積算額を約4610万円(これに対する国庫補助金相当額約4610万円)低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において判定調査事務の委託内容の範囲、調査員の編成人員、労務単価等について、明確に示していなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では14年10月に、判定調査事務の委託内容の範囲、調査員の編成人員、労務単価等についての基準を定め、これに基づいて算出される金額を補助対象の上限とし、15年4月以降から適用することとする処置を講じた。
(注1) | 17補助事業者 空港周辺整備機構、函館市、名取市、大田区、新潟市、名古屋市、小牧市、春日井市、豊山町、松山市、南国市、安岐町、宮崎市、清武町、隼人町、那覇市、豊見城村 |
(注2) | 11補助事業者 空港周辺整備機構、函館市、名取市、大田区、新潟市、名古屋市、春日井市、松山市、安岐町、宮崎市、清武町 |
(注3) | 2補助事業者 空港周辺整備機構及び春日井市 |