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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

開削トンネル工事における水替工費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


 開削トンネル工事における水替工費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路建設事業費
(項)社会資本整備事業費
(項)負担金等受入建設費
(項)受託関連街路建設費
部局等の名称 東京建設局、神奈川建設局(平成13年5月19日以前は湾岸線建設局)
工事名 SJ35工区(1)トンネルエ事ほか18工事
工事の概要 高速道路の建設工事の一環として、開削工法により地中にトンネル構造の高速道路を築造するなどの工事
工事費 599億7862万余円
請負人 鴻池・西武・佐伯SJ35(1)トンネル特定建設工事共同企業体ほか17特定建設工事共同企業体及び大木建設株式会社
契約 平成12年2月〜14年3月 一般競争契約、公募型指名競争契約、随意契約
水替工費の積算額   9006万余円
低減できた水替工費の積算額 4330万円

1 工事の概要

(工事の内容)

 首都高速道路公団(以下「公団」という。)東京建設局及び神奈川建設局(平成13年5月19日以前は湾岸線建設局)では、13年度に、高速道路の建設工事の一環として、開削工法により地中にトンネル構造の高速道路を築造するなどの工事を19工事(工事費総額599億7862万余円)施行している。

(開削トンネル工事の水替工)

 上記の各工事では、山留壁として施工された連続地中壁の内側の土砂を深さ30m程度まで掘削し、所定の位置に鉄筋コンクリート製のトンネルを築造するなどしている。そして、これらの工事の実施に当たっては、施工中に現場内に生じる地下水、雨水等をポンプで排除する作業(以下、この作業を「水替工」という。)を行っており、各工事の施工期間が長いため、このポンプの運転期間は124日から850日と長期間となっている。

(水替工費の積算)

 公団では、水替工費の積算に当たっては、公団制定の工事設計積算基準(以下「積算基準」という。)に基づき、使用するポンプを口径100mm、定格出力5.5kWのもの1台とし、運転時間については、1日当たり8時間として、ポンプに係るリース料、動力源に係る費用及び労務費を計上することとしている。そして、ポンプの動力源には発動発電機からの電力を使用することとして、1日当たりの動力源に係る費用を4,271円から5,022円とし、これに上記のリース料等を加えた水替工費の1日当たりの単価を7,154円から8,292円と算定し、前記各工事のポンプの延べ運転日数11,835日に係る水替工費を総額9006万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 公団の高速道路建設事業は、環境保全や土地問題、地下空間の有劫利用等の観点から、その主体が高架橋から地下トンネルヘ移行してきており、開削トンネル工事が多数施工されている。そして、これに伴い水替工費も増加していることから、水替工費の積算が適切に行われているかなどの点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、前記19工事のすべてで、水替工におけるポンプの動力源に電力会社が供給する電力(以下「購入電力」という。)を使用している状況であった。
 これは、水替工で使用している定格出力5.5kW程度の小型ポンプの動力源としては、電力会社との電気需給契約の中では比較的低額な低圧電力を選択することが可能で、また、分電盤等に要する電力設備費についても設備の規模が小さいことから少額で済むなど購入電力を使用する方が経済的であるためと認められた。
 そこで、電力会社が定めた「電気供給約款」等により、購入電力を使用することとした場合のポンプの動力源に係る1日当たりの費用を算定すると、681円から1,398円程度となり、発動発電機を使用することとした場合の4,271円から5,022円に比べて大幅に低額となる。
 さらに、公団の高速道路建設事業は、人口が集中する首都圏において施工されるものであり、購入電力を使用すれば、発動発電機のように騒音等が発生することもなく、商業地又は住宅密集地での工事に適したものとなる。
 したがって、本件開削トンネル工事の水替工のように定格出力5.5kW程度の小型のポンプを使用する場合の動力源については、購入電力を使用することとして積算すべきであると認められた。
 現に、他団体においても、ポンプ等を連続して運転する場合の動力源として、経済的でかつ騒音等が発生しない購入電力により積算している状況であった。

(低減できた積算額)

 上記により、本件各工事における水替工費について、ポンプの動力源には購入電力を使用することとするなどして修正計算すると、4667万余円となり、前記の積算額9006万余円を約4330万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、公団において、開削トンネル工事における水替工について、動力源の調査、検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、開削トンネル工事の水替工費の積算が適切なものとなるよう、14年11月に購入電力を標準とすることとする事務連絡を発し、同月以降契約する工事から適用することとするなどの処置を講じた。