科目 | (畜産助成勘定) (項)畜産助成事業費 |
部局等の名称 | 農畜産業振興事業団 |
補助の根拠 | 農畜産業振興事業団法(平成8年法律第53号) |
事業主体 | 社団法人家畜改良事業団 |
助成事業 | 家畜個体識別システム緊急整備 |
事業の概要 | すべての牛に生涯一つの個体識別番号を付与し、個体の移動履歴等を把握する家畜個体識別システムを構築するため、平成13年度に耳標の装着に必要な器材の購入等を行うもの |
事業費 | 3,245,725,583円 |
上記に対する事業団の補助金交付額 | 3,245,725,583円 |
不当と認める事業費 | 93,299,431円 |
不当と認める事業団の補助金交付額 | 93,299,431円 |
1 事業の概要
農畜産業振興事業団(以下「事業団」という。)では、平成13年9月10日に発生が確認された牛海綿状脳症(BSE)の関連対策の一環として、家畜個体識別システム緊急整備事業助成実施要綱(平成13年13農畜団第1898号農畜産業振興事業団理事長通知)等に基づき、社団法人家畜改良事業団(以下「改良事業団」という。)が実施している家畜個体識別システム緊急整備事業に対して13年度に補助金3,245,725,583円を交付している。
この事業は、我が国で飼養されているすべての牛に、重複のない生涯一つの個体識別番号を付与し、個体の生年月日、移動履歴等を把握する「家畜個体識別システム」を構築するため、個体識別番号が記された耳標をすべての牛に装着する活動への支援、全国の牛の個体識別番号を管理する家畜個体情報管理センターの整備等を行うものである。
このうち、耳標を装着する活動への支援に当たっては、短期間に現に飼養されているすべての牛に耳標を装着する必要があることから、畜産農家に過重な負担を強いることのないよう、都道府県の家畜保健衛生所、市町村及び農業協同組合等(以下「農協等」という。)の職員で構成する耳標装着チームを編成し、このチームにより全頭一斉に耳標を装着することとし、14年5月までにほぼ全頭の装着が完了している。
そして、今後新たに出生する牛に対しても同様に耳標を装着する必要があるため、改良事業団では、13年度に耳標及び牛に耳標を装着させるための器具(以下「耳標装着器」という。)を購入し、このうち耳標装着器については、上記の装着チームなどにより新たに出生する牛に対して耳標を装着することとなる畜産農家等に配布することとしていた。
この耳標装着器の購入数量について、改良事業団では、牛を飼養している畜産農家すべてについて耳標装着器を1個ずつ配布することを想定し、13年2月1日現在の畜産統計(農林水産省大臣官房統計情報部公表)に基づき乳用牛の飼養農家分32,200個、肉用牛の飼養農家分110,200個、計142,400個に農協等の団体分等2,600個を加えた合計145,000個と算出している。そして、1個当たり単価を1,500円から1,750円、上限数量を計145,000個とする単価契約を耳標装着器の販売会社5社と締結し、14年3月までに125,309個を総額222,269,409円で購入している。
2 検査の結果
検査したところ、改良事業団が耳標装着器の購入数量の算定の基礎とした上記の飼養農家分142,400個の中には、肉用種の子牛を購入し肥育して販売する肥育農家分15,800個及び4頭以下の少頭数の子取り用めす牛を飼養する農家(以下「少頭数の繁殖農家」という。)分56,500個、計72,300個が含まれていた。
しかし、肥育農家及び少頭数の繁殖農家については、以下のことから耳標装着器を個別に配布する必要はなく、これらの農家に係る分の耳標装着器の購入は必要ないものと認められた。
(ア) 肥育農家においては、飼養するために購入する子牛には既に当該子牛を生産した農家により耳標が装着されており、新たに耳標を装着する必要がないこと
(イ) 少頭数の繁殖農家においては、新たに生まれる子牛も年に3、4頭程度と少数で耳標を装着する頻度も小さいものであり、本件事業において耳標装着器を農協等に配布していることから、それらの耳標装着器を共用して使用することとすれば足りると認められることこのような事態が生じていたのは、畜産農家の飼養形態等によって耳標装着器の必要性が異なるのに改良事業団においてその認識が欠けていたこと、事業団において改良事業団に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、肥育農家及び少頭数の繁殖農家へ配布する分として改良事業団が当初購入することとしていた耳標装着器の数量72,300個から購入をしなかった19,691個を差し引いた52,609個の購入が過大となっており、その購入費に係る事業団の補助金相当額93,299,431円が不当と認められる。