会社名 | (1) 東日本電信電話株式会社 |
(2) 西日本電信電話株式会社 | |
科目 | (1) 設備投資勘定 |
(2) 設備投資勘定 | |
部局等の名称 | (1) 東日本電信電話株式会社本社 |
(2) 西日本電信電話株式会社本社 |
購入数量 | 160心局内高密度SM型光ファイバケーブル | 光スプリッタ |
(1) 436本 | (1) 1,495個 | |
(2) 238本 | (2) 1,473個 |
購入費 | (1) 5億1363万余円 |
(2) 2億9657万余円 |
上記のうち購入の要がなかった数量 | 160心局内高密度SM型光ファイバケーブル | 光スプリッタ |
(1) 80本 | (1) 24個 | |
(2) 64本 | (2) 114個 |
節減できた購入費 | (1) 7450万円 |
(2) 6510万円 |
1 設備の概要
東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)では、不特定多数の加入者間の回線を交換機により接続して通信を提供する一般加入電話等のサービス、加入者が申し込んだ区間の回線を専用の直通回線により常時接続して通信を提供する専用サービスなどを行っている。
これらのサービスの中で、光ファイバケーブルを用いているものには、一般加入電話等のサービスとしては新光アクセスシステム(注1)
(πシステム)、専用サービスとしてはATMサービス(注2)
のうち1芯式、高速ディジタル伝送サービス(注3)
のうち伝送速度1.5メガビット/秒のエコノミークラス(以下「ディジタルアクセス1500」という。)などがある。そして、これらのサービスを提供するための通信設備の中には、PDS(Passive Double Star)方式で構築されているものがある。
PDS方式は、主な設備として、〔1〕加入者と設備センタビルとを結ぶ光ファイバケーブル、〔2〕〔1〕を設備センタビル内で接続する光配線盤、〔3〕伝送装置、〔4〕〔2〕と〔3〕の間を結ぶ局内光ファイバケーブル、〔5〕〔4〕の間に設置される光スプリッタで構成されている(図1参照)
。この方式は、〔5〕の光スプリッタを使用することにより、複数の加入者が設備センタビル内の設備を共用することができるため、低コストでのサービス提供が可能となっている。
(注1) | 新光アクセスシステム 設備センタビルから加入者宅又は電柱等に設置する光加入者線終端装置までの間を光ファイバケーブルで接続し、メタリックケーブル設備と同様に一般加入電話、専用サービス等を提供する方式 |
(注2) | ATMサービス 情報をセルと呼ばれるブロックに分割して送る技術を用いることにより、音声や映像などの様々な情報を効率的に伝送できる専用サービス |
(注3) | 高速ディジタル伝送サービス 64キロビット/秒から2.4ギガビット/秒までの高速・大容量の情報伝送が可能であり、音声、画像及びデータを統合した高度な総合通信ネットワークなど幅広い用途で利用できる専用サービス |
・PDS方式の設備構成(概念図)
a 伝送装置
伝送装置は、加入者からの光信号を交換機等に送信などする装置で、加入者回線を収容するパッケージ(以下「パッケージ」という。)を搭載している。このうち、ディジタルアクセス1500の加入者回線を収容できる伝送装置であるDSM形専用サービスノード装置(以下「DSM」という。)の場合は、搭載されるパッケージ1枚で8加入者の回線を収容できる。
b 光スプリッタ
光スプリッタは、複数の加入者からの光信号を結合させてパッケージに伝送したり、パッケージからの光信号を複数の加入者側へ分岐させて伝送したりするものである。
光スプリッタについては、両会社本社制定の「電気通信技術標準実施方法 光スプリッタ関連設備の概要・設計・工事規格・工事」(以下「光スプリッタ標準実施方法」という。)において、提供するサービス別及び分岐・結合数別に7種類のものが規定されている。
また、ディジタルアクセス1500の加入者回線を収容できるDSMとの接続に使用する光スプリッタについては、両会社本社制定の「電気通信技術標準実施方法 DSM形専用サービスノード装置」(以下「DSM標準実施方法」という。)において、π用16分岐光スプリッタ(以下「π16スプリッタ」という。)を使用することとされている。このπ16スプリッタは、16の加入者の光信号を結合させたり分岐させたりするもので、構造上、局内光ファイバケーブルを32回線分接続できるが、DSMのパッケージとは、1個当たり2枚のパッケージ(16回線分)が通信可能な接続の限度となっている。
c 160心局内高密度SM型光ファイバケーブル
光スプリッタと光配線盤との間を結ぶ局内光ファイバケーブルは、160心局内高密度SM型光ファイバケーブル(以下「160心ケーブル」という。)を使用することとなっている。
160心ケーブルの光配線盤側は接続用の160個のコネクタが付けられていて、これにより接続し、光スプリッタ側は8心を一本に束ねたテープ形(8心×20本)の構造で、光スプリッタの心線とケーブルの心線を融着して接続するものとなっている。そして、光スプリッタ標準実施方法では、1本の160心ケーブルに種類の異なる光スプリッタを混在させて接続しても技術的に問題がないことから、同ケーブルにすべてのサービスを混在収容する旨が規定されている。
設備センタビル内の設備構築は、各支店の設備部において、一般加入電話等のサービスを提供するための設備を扱う交換機系の担当部門及びディジタルアクセス1500などの専用サービスを提供するための設備を扱う専用系の担当部門に分かれて行っている。
設備構築に当たっては、交換機系の担当部門は販売部門からの販売計画又は加入者からの申込みに基づいて、また、専用系の担当部門は販売部門からの販売計画を基に専用サービスセンタにおいて算出されたパッケージ等の数量に基づいて、それぞれサービスの提供に必要な設備数量を算出している。そして、光スプリッタ及び160心ケーブルについては、既設のものに空きがなく加入者回線が収容できない場合に、新たに購入し、設置している。
2 検査の結果
両会社では、近年、PDS方式の設備を用いたサービスの種類が増加している。そこで、PDS方式の設備の構築は経済的、効率的に行われているかに着眼して検査した。
NTT東日本の東京支店ほか15支店(注4) 及びNTT西日本の大阪支店ほか29支店(注5) において、平成13年度に購入し設備センタビルに設置した160心ケーブル(NTT東日本で436本、NTT西日本で238本)及び光スプリッタ(同4種類1,495個、同4種類1,473個)を対象として、これに係る購入費NTT東日本で5億1363万余円、NTT西日本で2億9657万余円について検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
(ア) 13年度までに設置された160心ケーブルの中には、一般加入電話等のサービス及び専用サービスの別に、又は同じ専用サービスでもディジタルアクセス1500などのサービスの種類に応じた光スプリッタとしか接続させていないために、使用されていない心線が生じているものが見受けられた。
これらについて、160心ケーブルにサービスの種類に応じた光スプリッタを混在させて接続するようにしていれば、新たに160心ケーブルを購入する要がなかったと認められるものがあった(図2参照)
。
(ア)の例(概念図)
(イ) DSMでディジタルアクセス1500のサービスを提供する場合に使用されるπ16スプリッタの心線32心すべてを160心ケーブルと接続しているものが見受けられた。しかし、DSMとは1枚当たり8回線収容できるパッケージ2枚が通信可能な接続の限度となっていることから、16心分は通信機能を果たせないものである。
したがって、160心ケーブルとの接続を16心としていれば、160心ケーブルで生じた残余の16心を別のサービスに振り向けることができることから、新たに160心ケーブルを購入する要がなかったと認められるものがあった(図3参照)
。
(イ)の例(概念図)
(ウ) 設置された光スプリッタの中には、各サービスの販売計画等に基づいて算出された需要計画の数量ではなく、購入する160心ケーブルに接続可能な数量に合わせて購入して設置していたものなどが見受けられた。このため、伝送装置のパッケージと接続する予定がなく、購入の要はなかったと認められるものがあった。
本件について、次のような方法により160心ケーブル及び光スプリッタを効率的に使用するなどして設備構築が経済的になるようにすれば、NTT東日本の東京支店ほか9支店(注6)
及びNTT西日本の大阪支店ほか13支店(注7)
で、13年度に購入した160心ケーブルのうち、NTT東日本で80本、NTT西日本で64本及び光スプリッタのうちNTT東日本で2種類24個、NTT西日本で3種類114個は購入の要がなく、NTT東日本で約7450万円、NTT西日本で約6510万円節減できたと認められた。
(ア) 160心ケーブルにサービスの種類に応じた光スプリッタを混在させて接続する。
(イ) DSMによりディジタルアクセス1500のサービスを提供するため、π16スプリッタに160心ケーブルを接続する場合には、光スプリッタ1個当たり16心を接続する。
(ウ) 光スプリッタは、需要計画に基づいた数量を購入し設置する。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(ア) 前記の(ア)については、支店において、既設の160心ケーブルヘの加入者回線の収容状況を十分に把握していなかったり、同ケーブルにはサービスの種類に応じた光スプリッタを混在させて接続できるのに、交換機系及び専用系の各担当部門間でケーブルの使用状況の調整を十分に行わなかったりしたまま、設備構築を行っていたこと
(イ) 前記の(イ)については、DSM標準実施方法で、160心ケーブルとπ16スプリッタの接続は光スプリッタ内の心線32心のうち16心を使用し、残りの16心についてはこれを使用しない旨を規定しているものの、使用しない16心について160心ケーブルと接続しないように取り扱う旨を明確にしていなかったこと
(ウ) 前記の(ウ)については、支店において、光スプリッタの設置に当たり、160心ケーブルに接続可能な数量に合わせるなどして需要計画で算出された必要な数量を超えて購入し設置していたこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、両会社では14年10月に、各支店に対して次のような内容の指示文書を発し、160心ケーブル及び光スプリッタの購入及び設置について経済的、効率的な設備構築を行うことにより、その購入費の節減を図る処置を講じた。
(ア) 160心ケーブルの設置に当たっては、担当部門間においてその使用状況の情報を共有することによりサービスの種類に応じた光スプリッタを混在させて接続すること
(イ) DSMで用いるπ16スプリッタと160心ケーブルとの接続方法を明確にすること
(ウ) 光スプリッタの設置に当たっては、需要計画に見合った効率的な設備構築を行うこと
(注4) | 東京支店ほか15支店 東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、山梨、長野、新潟、宮城、福島、岩手、青森、山形、秋田、北海道各支店 |
(注5) | 大阪支店ほか29支店 大阪、京都、神戸、奈良、滋賀、和歌山、名古屋、静岡、岐阜、三重、金沢、富山、福井、広島、鳥取、島根、岡山、山口、愛媛、香川、徳島、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各支店(平成14年5月1日、神戸支店は兵庫支店に名称変更。奈良、滋賀両支店は京都支店に、和歌山支店は大阪支店に、富山、福井両支店は金沢支店に、鳥取支店は岡山支店に、島根支店は広島支店に、香川、徳島、高知各支店は愛媛支店に、佐賀、長崎両支店は福岡支店に、大分支店は熊本支店に、宮崎支店は鹿児島支店にそれぞれ統合された。(注7)においても同じ) |
(注6) | 東京支店ほか9支店 東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、長野、新潟、岩手、青森、北海道各支店 |
(注7) | 大阪支店ほか13支店 大阪、京都、神戸、名古屋、静岡、岐阜、金沢、広島、愛媛、香川、福岡、熊本、宮崎、鹿児島各支店 |