(ア) 概況
10年10月及び12月にそれぞれ破綻して特別公的管理銀行となった日本長期信用銀行及び株式会社日本債券信用銀行(以下「日本債券信用銀行」という。)に対しては、金融機能再生法等に基づく各種措置が表5のとおり11兆円を超える公的資金を使用して実施された。
表5 金融機能再生法等に基づき特別公的管理銀行に投入された公的資金
銀行名
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項目 |
日本長期信用銀行 | 日本債券信用銀行 | ||||||||||
不適資産の買取り |
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金銭の贈与 | (12年 2月)
3兆2350億余円
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(12年 8月)
3兆1413億余円
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適資産から発生するなどした追加損失に対する補てん | (12年 2月)
3548億余円
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(12年 8月)
951億余円
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特別公的管理銀行保有株式の買取り | 1524銘柄
2兆2688億余円
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826銘柄
6694億余円
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資本増強 | (12年 3月)
2400億円
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(12年10月)
2600億余円
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計 | 6兆8974億余円 | 4兆5471億余円 |
注(1) | 表中の( )書きは、各種措置の実施年月。 |
(2) | 「特別公的管理銀行保有株式の買取り」については、特別公的管理銀行が保有していた民間企業等の株式に対する預金保険機構による13年度末現在の買取実績。 |
(3) | 金融再生委員会(当時)は、金融機能再生法等に基づき、特別公的管理銀行の貸出債権その他の資産の内容を審査し、特別公的管理銀行が保有し続ける資産として適当か否かの判定を行っており、「不適資産」とは、特別公的管理銀行が保有する資産として不適当と判定された資産であり、「適資産」とは、適当と判定された資産である。 |
(4) | 資本増強は、特別公的管理終了後の上記の両銀行に対して実施された。 |
(イ) 特別公的管理銀行株式の売却
預金保険機構は、ニュー・LTCB・パートナーズ・C・Vとの間で日本長期信用銀行の株式に係る株式売買契約を締結して、同株式を12年3月に10億円で売却し、また、ソフトバンク株式会社、オリックス株式会社、東京海上火災保険株式会社を中心とする出資グループとの間で日本債券信用銀行の株式(以下、上記両銀行の株式を「特別公的管理銀行株式」という。)に係る株式売買契約を締結し、同株式を12年9月に10億余円で売却して、両銀行の特別公的管理が終了した。
(ウ) 預金保険機構による特別公的管理銀行保有株式の買取り
預金保険機構は、表5のとおり、前記の両銀行が特別公的管理に置かれていた時期から13年度末までに、両銀行が保有していた民間企業等の株式(以下「特別公的管理銀行保有株式」という。)のうち、特別公的管理終了後の両銀行(注8)
(以下「新銀行」という。)が営業上必要とする株式を計2兆9383億余円で買い取った。そして、特別公的管理銀行保有株式の売却益が累計で5063億余円生じた。
破綻金融機関が保有していた民間企業等の株式の売却益については、破綻処理の際、同金融機関の債務超過額の補てんに使用されるのが一般的であるが、特別公的管理銀行保有株式の売却益については、その一部(日本長期信用銀行は2500億余円、日本債券信用銀行は850億余円)が新銀行の自己資本の増強に充当された。
前記の特別公的管理銀行の株式売買契約によれば、預金保険機構は、13年度末までに買い取った新銀行が営業上必要とする株式を新銀行の信託子会社に信託し、新銀行は、特別公的管理銀行株式売却後5年間、原則として随時、同機構から買い戻すことが可能などとされている。
(エ) 瑕疵担保条項に基づく措置
前記の特別公的管理銀行の株式売買契約では、適資産に対し、金融再生委員会の判定の根拠について、変更が生じ又は真実でなくなったことが、株式売買契約に定める期限(日本長期信用銀行は特別公的管理銀行株式売却後3年以内、日本債券信用銀行は特別公的管理銀行株式売却後3年1箇月以内。)までに判明し、かつ当該資産に2割以上の減価が発生した場合に、預金保険機構は当該資産の返還と引き替えに当該資産の当初価値に相当する金額(注9)
を新銀行に払い戻すという瑕疵担保条項が定められた。
日本長期信用銀行及び日本債券信用銀行は、特別公的管理銀行株式売却日前日現在、瑕疵担保条項の適用対象となる貸出関連資産をそれぞれ8兆4328億余円、3兆2153億余円保有していた。
預金保険機構は、13年度末までに、前記の株式売買契約に定められた瑕疵担保条項に基づき、新銀行から計209件の貸出関連資産(債権額計7807億余円)の返還を受け、特別公的管理銀行株式売却日時点での貸倒引当金や特別公的管理銀行株式売却日以降の回収額を控除した額計4846億余円を新銀行に支払った。預金保険機構は、当該貸出関連資産に対して13年度に、1644億余円の貸倒引当金の繰入れを実施した。上記の貸出関連資産209件のうち4件(債権額計106億余円)は、金融再生委員会が資産の判定を行った際、債務者区分が破綻懸念先(注10)
となっていたが、特許取得や保証等の特殊事情により将来の収益や債務の履行の確保を見込めるとして適資産としていたものである。
(注9) | 資産の当初価値に相当する金額 特別公的管理銀行株式売却日前日現在の各債権の簿価から、その時点で引き当てていた引当金を控除した額であり、特別公的管理銀行株式売却後、資産の返還までの間に返済額があればその額を控除した額 |
(注10) | 破綻懸念先 現状では経営破綻の状況にないが、経営難の状態にあり、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者 |