特定住専に係る譲受債権等の回収状況
(特定住専に係る譲受債権等の回収状況)
住管機構(当時)は、8年10月に特定住専から譲受債権等6兆1129億余円を承継している。そして、住専法の規定に基づき、譲受債権等の回収、処分等を、譲受け後15年以内を目途として完了するとした処理計画を作成し、預金保険機構の承認を受けている。
整理回収機構(11年3月31日以前は「住管機構」)は、譲受債権等の回収等を行い、個別の譲受債権等ごとにその回収金額と取得価額とを比較して、回収金額が取得価額を下回ったことなどにより同機構に生じた損失(以下「二次損失」という。)、及び回収金額が取得価額を上回ったことなどにより同機構に生じた利益(以下「回収益」という。)を算定する。そして、上記二次損失の2分の1に相当する金額の各年度の合計額に対して、預金保険機構は、関係金融機関等が拠出し預金保険機構の住専勘定に設置された金融安定化拠出基金9070億円の運用益を助成金として交付することとなっている。
また、上記二次損失の残りの2分の1に相当する金額の各年度の合計額が回収益の合計額を上回る場合、国は、預金保険機構に対し、二次損失の金額の2分の1に相当する額の合計額から回収益の合計額を控除した金額の補助金を交付することができる。そして、預金保険機構は、この補助金の額の範囲内で整理回収機構に対し、助成金(以下「損失補てん助成金」という。)を交付することができる。
また、逆に回収益の各年度の合計額が二次損失の2分の1に相当する金額の合計額を上回る場合、整理回収機構は回収益の合計額から二次損失の2分の1に相当する額の合計額を控除した額を預金保険機構に納付し、預金保険機構はこの納付金(以下「回収益納付金」という。)に相当する金額を、国庫へ納付する。
譲受債権等の回収状況等は、表7のとおりである。
表7 譲受債権等の回収状況等 |
(単位:億円) |
年度 |
回収計画額 (A) |
回収額 (B) |
回収累計額 (C) |
回収率 (C/D) |
貸倒引当金繰入額 |
8 |
2,743 |
2,756 |
2,756 |
5.9% |
386 |
9 |
6,309 |
6,405 |
9,161 |
19.6% |
409 |
10 |
6,072 |
6,340 |
15,501 |
33.2% |
378 |
11 |
4,250 |
4,305 |
19,806 |
42.5% |
693 |
12 |
3,050 |
3,172 |
22,978 |
49.3% |
1,907 |
13 |
2,250 |
2,508 |
25,486 |
54.7% |
1,732 |
|
譲受債権等の債権元本金額…………10兆0478億余円
譲受債権等の譲受簿価ベース金額…4兆6558億余円:(D)
回収を開始してから5年間で譲受債権等の譲受簿価ベース金額4兆6558億余円の5割を既に回収している。しかし、回収を開始して3年が経過した後から回収額が年々減少しており、また、回収が困難であるとして貸倒引当金繰入額が増加する傾向にある。
8年度以降の回収益納付金の納付状況は、表8のとおりである。
表8 回収益、二次損失の発生状況 |
(単位:千円) |
年度 |
回収益(A) |
二次損失(B) |
(B)×1/2:(C) |
回収益納付金 (A)−(C) |
8 |
911,300 |
— |
— |
911,300 |
9 |
12,580,370 |
25,158,916 |
12,579,458 |
912 |
10 |
26,066,454 |
52,131,413 |
26,065,706 |
747 |
11 |
43,119,401 |
85,314,675 |
42,657,337 |
462,063 |
12 |
48,473,114 |
96,791,867 |
48,395,933 |
77,180 |
13 |
38,675,205 |
77,052,075 |
38,526,037 |
149,167 |
|
(注)
回収益と二次損失の2分の1に相当する額の相殺は、9年度分から行われている。
回収益納付金が毎年度納付されており、預金保険機構は13年度まで損失補てん助成金を交付していない。しかし、二次損失の額が回収益のほぼ2倍を占める状況が続いている。
これは、住管機構が特定住専から譲受債権等を承継してから、既に5年以上が経過して、長期返済計画を立てている個人向けの住宅ローン債権などを除いて、回収が比較的容易な債権については既に処理が完結し、一方回収が困難な債権については、近年の景気低迷、資産デフレの進行等に伴い債権及びその担保不動産等の劣化が進行して、より一層回収が困難な状況となっているものと考えられる。13年度末の整理回収機構の譲受債権等に係る貸出金1兆9812億余円のうち、破綻先債権(注15)
は1164億余円、延滞債権(注16)
は9599億余円となっている。
また、14年3月期の整理回収機構の決算(住専勘定)では、貸倒引当金繰入額、貸出金償却等の回収経費からなる経常費用2463億余円が、回収益等からなる経常収益1324億余円を上回り、当期損失が1135億余円となっている状況である。
(注15)
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破綻先債権 銀行法で定められた、破産等の事由に該当する債務者への貸出金 |
(注16)
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延滞債権 銀行法で定められた、元本又は利息の支払が6箇月以上延滞しているなどの貸出金 |