(ア) 経営健全化計画の達成状況
資本増強を受けた金融機関における12年3月期から14年3月期までの業務純益及び当期利益に係る経営健全化計画の達成状況をみると、表15のとおり、多くの金融機関において、当期利益について経営健全化計画を達成していない状況となっていた。
表15 業務純益及び当期利益についての経営健全化計画の達成状況
項目
\
決算期 |
フォローアップ対象金融機関数 (注) | 計画を達成していない金融機関数 | |
業務純益 | 当期利益 | ||
12年3月期 | 19 | 3 | 9 |
13年3月期 | 21 | 5 | 13 |
14年3月期 | 22 | 6 | 15 |
この主な要因としては、表16のとおり、不良債権処理損失額の実績が、経営健全化計画の計画値に比べ、大幅に上回っていることが挙げられる。
資本増強を受けた金融機関は、経営健全化計画における不良債権の処理額について、おおむね、資本増強を実施した期に集中して処理し、その後は比較的小規模の処理に収まるなどとした計画を策定していた。しかし、不良債権処理損失額の実績は、資本増強の実施後毎年度にわたり計画値を大きく上回るなどしており、これが当期利益の実績と計画値がかい離する要因となっていた。そして、金融機関の中には、不良債権処理損失額の計画値に比べて、実績が9倍以上にもなったものもある状況である。
表16 不良債権処理損失額の実績と計画値の比較 (単位:億円)
(12年3月期)
表16 不良債権処理損失額の実績と計画値の比較 | (単位:億円) |
(12年3月期) |
\ | みずほ 3行 |
三井住友 | 大和 | UFJ各行 | あさひ | 横浜 | 住友 信託 |
中央 三井 信託 |
足利 | 北陸 | |||
さくら | 住友 | 三和 | 東海 | 東洋信託 | |||||||||
実績額(a) | 6,456 | 2,821 | 6,419 | 1,262 | 3,233 | 986 | 357 | 1,156 | 452 | 823 | 1,422 | 335 | 377 |
計画値(b) | 2,132 | 900 | 1,200 | 300 | 800 | 700 | 100 | 700 | 259 | 200 | 150 | 202 | 217 |
(c)=(a/b) | 302% | 313% | 534% | 420% | 404% | 140% | 357% | 165% | 174% | 411% | 948% | 165% | 173% |
\ | 琉球 | 広島 総合 |
|||||||||||
実績額(a) | 302 | 180 | |||||||||||
計画値(b) | 328 | 150 | |||||||||||
(c)=(a/b) | 92% | 120% |
\ | みずほ 3行 |
三井住友 | 大和 | UFJ各行 | あさひ | 横浜 | 住友 信託 |
中央 三井 信託 |
足利 | 北陸 | |||
さくら | 住友 | 三和 | 東海 | 東洋信託 | |||||||||
実績額(a) | 6,955 | 3,171 | 6,906 | 1,478 | 5,876 | 2,452 | 1,251 | 3,276 | 564 | 1,257 | 1,810 | 535 | 346 |
計画値(b) | 2,500 | 1,000 | 1,100 | 300 | 1,500 | 500 | 200 | 700 | 255 | 200 | 300 | 91 | 179 |
(c)=(a/b) | 278% | 317% | 627% | 492% | 391% | 490% | 625% | 468% | 221% | 628% | 603% | 587% | 193% |
\ | 琉球 | 広島 総合 |
熊本 ファミリー |
北海道 | 新生 | 千葉 興業 |
八千代 | あおぞら | |||||
実績額(a) | 61 | 178 | 41 | 299 | ▲59 | 123 | 215 | 958 | |||||
計画値(b) | 28 | 110 | 44 | 150 | 50 | 118 | 170 | 672 | |||||
(c)=(a/b) | 217% | 161% | 93% | 199% | — | 104% | 126% | 142% |
\ | みずほ 3行 |
三井住友 | 大和 | UFJ2行 | あさひ | 横浜 | 住友 信託 |
中央 三井 信託 |
足利 | 北陸 | |||
実績額(a) | 19,795 | 10,386 | 3,217 | 18,269 | 4,940 | 502 | 991 | 1,696 | 675 | 1,132 | |||
計画値(b) | 8,000 | 2,000 | 750 | 3,000 | 1,000 | 400 | 800 | 1,100 | 746 | 250 | |||
(c)=(a/b) | 247% | 519% | 428% | 608% | 494% | 125% | 123% | 154% | 90% | 452% | |||
\ | 琉球 | もみじ 2行 |
熊本 ファミリー |
北海道 | 新生 | 千葉 興業 |
八千代 | あおぞら | 関西 さわやか |
東日本 | 近畿 大阪 |
岐阜 | |
実績額(a) | 130 | 153 | 59 | 139 | 28 | 151 | 85 | 177 | — | 39 | 221 | 51 | |
計画値(b) | 70 | 148 | 44 | 190 | 60 | 98 | 113 | 60 | ▲18 | 50 | 144 | 16 | |
(c)=(a/b) | 185% | 103% | 134% | 73% | 46% | 154% | 75% | 295% | — | 78% | 153% | 318% |
注(1) | 網掛け部分は、不良債権処理損失額の実績が計画値を上回っている金融機関を示している。 |
(2) | 各期におけるフォローアップ対象金融機関で、14年3月末現在も資本増強等を受けているものについて記載している。 |
(3) | みずほ3行は、旧株式会社第一勧業、旧株式会社富士、旧株式会社日本興業各銀行の単純合算値を用いている。 |
(4) | UFJ2行は、株式会社UFJ銀行及びUFJ信託銀行株式会社の単純合算値を用いている。 |
(5) | 中央三井信託の12年3月期の計数は、旧中央、旧三井両信託銀行株式会社の単純合算値を用いている。 |
(6) | もみじ2行は、株式会社広島総合、株式会社せとうち両銀行の単純合算値を用いている。 |
(7) | 新生の13年3月期及び14年3月期の実績額と計画値は、一般貸倒引当金繰入額を含んでいる。 |
(8) | 12年3月期における不良債権処理損失額の計画が策定されていない銀行については、実績額、計画値ともに貸出金償却と個別貸倒引当金繰入額の合算額を用いている。 |
資本増強を受けた金融機関では、当期利益について経営健全化計画を達成することができず、その結果、資本増強に係る株式等の消却等に対応するための重要な財源となる剰余金の額についても、表17のとおり多くの金融機関において計画を下回っている状況となっている。
金融機関名 | 計画値 | 実績額 | 金融機関名 | 計画値 | 実績額 |
みずほホールディングス | 11,289 | 628 | 琉球 | 95 | 81 |
あさひ | 668 | ▲5,319 | 新生 | 1,167 | 1,396 |
UFJホールディングス | 4,076 | 246 | あおぞら | 223 | 229 |
三井住友 | 6,533 | 3,832 | 東日本 | 55 | 72 |
大和 | 229 | ▲4,287 | 岐阜 | 6 | ▲32 |
北海道 | 124 | 147 | 関西さわやか | 9 | 58 |
足利 | ▲945 | ▲1,125 | もみじホールディングス | 286 | 302 |
千葉興業 | 44 | 47 | 熊本ファミリー | 78 | 56 |
横浜 | 691 | 666 | 八千代 | 253 | 260 |
北陸 | 345 | ▲1,161 | 中央三井信託 | 1,324 | ▲1,750 |
近畿大阪 | 55 | ▲215 | 住友信託 | 1,908 | 1,455 |
注(1) | 網掛け部分は、剰余金の実績が計画値を下回っている金融機関を示している。 |
(2) | みずほホールディングスは、株式会社みずほホールディングス及び旧株式会社第一勧業、旧株式会社富士、旧株式会社日本興業各銀行の単純合算値を用いている。 |
(3) | UFJホールディングスは、株式会社UFJホールディングス、株式会社UFJ銀行及びUFJ信託銀行株式会社の単純合算値を用いている。 |
(4) | もみじホールディングスは、株式会社もみじホールディングス、株式会社広島総合及び株式会社せとうち両銀行の単純合算値を用いている。 |
(5) | 14年3月期決算において、法定準備金を取り崩し剰余金に振り替えた金融機関については、剰余金から法定準備金減少差益を控除した額を計上している。 |
(イ) 経営健全化計画が達成できなかった金融機関の対応状況
金融庁では、金融機関が自ら作成した経営健全化計画の履行を確保するために、その履行状況について、金融機関に報告させている。そして、自己資本に対する業務純益の水準又は当期利益の実績が計画値より3割以上下回るなどした場合には、銀行法等に基づき、当該金融機関に対して、当該計画値と実績がかい離している理由、代替措置等の報告を求め、剰余金の減少を回復するための方策等を示した経営健全化計画の見直しを行わせるなどしている。
そして、前記の優先株式が無配となった3金融機関を除き、14年3月期の当期利益について、実績が経営健全化計画の計画値より3割以上下回ったとして計画を見直した金融機関は、7金融機関(注23)
に上っている。これらの金融機関の多くが、リストラの強化等により剰余金の減少を回復することとしているが、不良債権処理損失額の計画値については見直しを行っていない金融機関もある状況となっている。これは、金融庁によれば、その時点における不良債権処理の見通しからすると重大な変更等に当たる事態は生じていないと判断したためであるとしている。