検査対象 | 総務省(郵政事業庁)(平成13年1月5日以前は郵政省) |
郵政官署における渡切費制度の概要 | 郵政事業庁長官が特定郵便局等の事務費の全部又は一部を主任の職員に対し渡切りをもって支給するもの |
渡切費の支給額 | 911億5712万円(平成12年度) 821億6765万円(平成13年度) |
渡切費の支給対象郵便局 | 19,423局(特定郵便局18,916局及び普通郵便局507局)(平成12年度) 19,446局(特定郵便局18,934局及び普通郵便局512局)(平成13年度) |
検査対象金額 | 65億9735万円(特定郵便局63億7171万円及び普通郵便局2億2564万円)(平成12年度) 42億3667万円(特定郵便局40億2444万円及び普通郵便局2億1222万円)(平成13年度) |
1 渡切費制度の概要
郵政官署における渡切費は、会計法(昭和22年法律第35号)等の規定に基づき、郵政事業庁が、特定郵便局等の事務費の全部又は一部を特定郵便局長等に渡切りをもって支給するものである。この渡切費は、特定郵便局のような小官署において、常時必要とする少額の事務費を支出官等が支出するとした場合、個別に支出決議書等の関係書類の作成等を要し、事務が煩雑となるので、これらの書類の作成等を要しないこととしてその事務の簡素化を図るとともに、一定の額を渡切りで支給し過不足の調整を行わないことにより経費の経済的使用を図るという観点から、予算執行上、特例的取扱いを認めているものである。
平成12、13両年度の渡切費の支給対象としている郵便局(以下「渡切局」という。)の局種別等の支給額は、表1のとおりである。特定郵便局の全部及び普通郵便局1,308局(13年度末現在)の一部(以下「渡切普通局」という。)を合わせた12年度19,423局、13年度19,446局を対象に、12年度911億余円、13年度821億余円、計1733億余円の渡切費が支給されている。このうち、各特定郵便局等で使用する経費(以下「自局経費」という。)に充てるものは12年度776億余円、13年度738億余円、特定郵便局長業務推進連絡会規程(昭和31年公達第85号)に基づき設けられている特定郵便局長業務推進連絡会(以下「連絡会」という。)の会長、理事等の役員に指名された特定郵便局(以下「役員局」という。)で使用する、自局経費とは別に経理される経費(以下「連絡会経費」という。)に充てるものは、12年度135億余円、13年度83億余円となっている。
年度別等
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局種別 |
経費区分 | 12年度 | 13年度 | ||||
局数 | 支給額 | 構成率 | 局数 | 支給額 | 構成率 | ||
特定郵便局 | 自局経費 | 18,916 | 65,642 | 72 | 18,934 | 62,726 | 76 |
渡切普通局 | 自局経費 | 507 | 11,981 | 13 | 512 | 11,083 | 14 |
小計 | 19,423 | 77,623 | 85 | 19,446 | 73,810 | 90 | |
特定郵便局 | 連絡会経費 | / | 13,533 | 15 | / | 8,356 | 10 |
合計 | 19,423 | 91,157 | 100 | 19,446 | 82,167 | 100 |
渡切局全体の自局経費及び連絡会経費の12、13両年度の主な使途別内訳は表2のとおりとなっている。
経費区分、年度別
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種目 |
自局経費 | 連絡会経費 | ||
12年度 | 13年度 | 12年度 | 13年度 | |
甲類費 (ア) 一般事務費 |
37,187 |
33,669 |
4,920 |
3,459 |
電灯電力料 | 11,647 | 11,673 | — | — |
消耗品費 | 8,060 | 7,196 | 1,200 | 1,166 |
通信費 | 1,902 | 1,935 | — | — |
打合せ会開催費 | 1,746 | 825 | 1,996 | 1,073 |
(イ) 局舎小破修繕費 | 1,662 | 1,108 | — | — |
(ウ) 車両保守料 | 1,159 | 2,121 | — | — |
(エ) 区内旅費 | 1,566 | 1,819 | 282 | 418 |
(オ) 集配運送諸費 | 1,537 | 968 | — | — |
(カ) 貯金・保険販売奨励維持費営業物品購入費 | 6,370 | 6,882 | 7,560 | 5,176 |
乙類費(委託費、手数料等) (ア) 郵便配達費 |
4,098 |
4,345 |
/ | / |
(イ) 切手類販売手数料 | 24,313 | 23,901 | / | / |
2 検査の背景、着眼点及び対象
本院では、13年次に、渡切費を支給する郵政官署の範囲等渡切費制度の運用上の問題点等に着眼して検査を行い、その結果、平成12年度決算検査報告の「特定検査対象に関する検査状況」において、次のような点を掲記したところである(平成12年度決算検査報告「郵政官署における渡切費制度について」参照)
。
〔1〕 渡切費を支給する郵政官署の範囲について、普通郵便局の中に、定員が同規模の局でありながら、会計事務職員を配置し支出の原則に従った会計処理をしている普通郵便局(以下「分任普通局」という。)と、渡切費による特例的支出をしている渡切普通局が混在している。
〔2〕 渡切費制度は、少額な事務費支払の簡素化を図る目的で特例的に認められているものであるのに、渡切普通局507局のうち75の局において年間支給額が1000万円以上であり、その平均額は2692万円、最高額は9454万円となっている。
〔3〕 渡切費の使途の把握については、従来、郵政局では監査に赴かない限り経費区分別支払額等の把握ができていなかったが、渡切経費経理システムが稼動したことにより、12年度は約1割、13年度からはすべての渡切局でその把握が可能となっている。
〔4〕 連絡会の役員局に支給する渡切費については、各郵政局の12年度の支給額を集計すると、総額135億余円が支給されていて、1局当たり平均額は71万円となっている。
〔5〕 渡切経費整理簿及び領収書等の証拠書類の保存期間は、12年9月までは3年となっていたが、それ以降は1年としていた。しかし、保存期間が1年では、会計経理上の問題があったときに過去に遡及した原因究明等が困難となる場合があり、監査上も支障がある。
そして、14年次の会計検査においては、これらの問題点を踏まえ、また、渡切経費整理簿等の保存期限が1年から3年に延長されたことから、渡切費が支給目的に沿って適正かつ効率的に使用されたかなどについて、北海道郵政局ほか11郵政局(注1)
(沖縄総合通信事務所を含む。以下同じ。)の渡切局19,446局のうち、支給額の比較的多い連絡会の役員局となっている特定郵便局を中心に、12年度分465局、支払金額65億9735万余円、13年度分472局、支払金額42億3667万余円について検査した。
3 検査の状況
(1) 本院の検査の状況
検査したところ、次のような状況が見受けられた。
ア 支払又は使途の証明について
上記の特定郵便局の物品購入等1件10万円以上の支払のうち抽出により、12年度分として198局の支払件数1,725件(支払金額7億7265万余円)、13年度分として163局の支払件数671件(支払金額2億8771万余円)、計延べ361局の支払件数2,396件(支払金額10億6037万余円)を対象として検査を実施し、必要に応じて、支払の相手方である販売業者に対しても文書照会又は実地に調査を行った。
検査の結果、支払又は使途について不明朗な事態となっているものが次のとおり見受けられた。
(ア) 領収書等を適切に徴取又は管理していなかったため使途が確認できなかったもの
年度 | 局数 | 支払件数 | 支払金額 |
件 | 千円 | ||
12 | 8 | 14 | 8,599 |
13 | 1 | 1 | 145 |
計 | 9 | 15 | 8,745 |
(イ) 営業物品の購入代金の支払に当たり、販売業者に直接支払わず第三者を経由させるなどしていたもの
年度 | 局数 | 支払件数 | 支払金額 |
件 | 千円 | ||
12 | 42 | 253 | 134,844 |
13 | 3 | 3 | 1,211 |
計 | 45 | 256 | 136,056 |
(ウ) 証拠書類を亡失していて事実確認が十分できないもの
年度 | 局数 | 支払金額 |
千円 | ||
12 | 8 | 87,457 |
上記のうち(ア)の事態について一例を示すと、次のとおりである。
<事例>
関東郵政局管内のA局の連絡会経費の渡切経費整理簿及び証拠書類によると、平成12年度に開催した会議費計約70万円及び営業物品購入費約50万円、合計約120万円については、連絡会の役員局のうち会長であるA局の連絡会経費をもって全額を支払っていた。しかし、一方で連絡会内の他の役員局の連絡会経費から、上記の会議費及び購入費に充てるための分担金として約90万円を徴収しており、これらの分担金についてA局では、会議開催後の役員間の意見交換会や営業物品の購入費に支払ったとしているが、これを証明する領収書等は証拠書類として添付されていなかった。
イ 会議費の支払について
郵政事業庁では、13年8月に各郵政局に対し「会議費の適正な支出について」(以下「部長通達」という。)を発して、部内職員同士の飲食を伴う会議については、原則として、会議費を支出しないことなどを管内の各郵便局に指導するよう、指示している。
特定郵便局のうち1局当たりの会議費支払額が比較的多い役員局について12年度分343局、13年度分335局、計延べ678局の会議費の支払状況を検査したところ、表3のとおり、会議費支払総額は、12年度は5億9829万余円であったものが、13年度は2億2191万余円と大幅に減少している。
しかし、検査した特定郵便局の中には、部長通達以降も渡切費により飲食を伴う部内職員同士の会議を行っている状況が見受けられた。そして、これらの多くは、郵政局が必要と認めたものであるが、それ以外にその後、郵政局の調査により返納の措置を講じたものが16件(60万余円)あった。
年度別
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支払件数等 |
12年度 A |
13年度 B |
対前年増減 C(B−A) |
増減率 C/A(%) |
支払件数 | 9,381 | 5,343 | △4,038 | △43 |
金額 | 598,298 | 221,918 | △376,380 | △63 |
ウ 営業物品の調達について
特定郵便局では、郵政三事業(郵便、為替貯金及び簡易保険の業務)の営業推進用のタオル、洗剤等の営業物品の調達を渡切費により行っており、購入額は、12、13両年度で自局経費により計132億余円、連絡会経費により計127億余円と多額に上っており、渡切費の使途の中では大きな割合を占めている。
そこで、役員局延べ678局の営業物品の調達状況について検査するとともに、比較のため、分任普通局19局及び12郵政局の13年度における需品費による営業物品の調達状況を検査したところ、次のような状況が見受けられた。
すなわち延べ678局の連絡会経費による営業物品の調達額は、12年度29億4585万余円(契約件数7,853件)、13年度13億8360万余円(同5,082件)、計43億2946万余円(同12,935件)となっており、その契約方式はすべて随意契約となっていた。これらの1局当たりの年平均調達額は638万余円、1件当たりの平均調達額は33万余円となっていて少額な契約が大半を占めているが、中には、1件当たり100万円を超えるような比較的高額なものが計653件あった。
また、各役員局が購入契約を行った業者のうち、取引額の多い上位2者の当該局の契約額に占める割合が50%を超えているものは延べ448局(66%)となっていて、一部の業者に契約が集中する結果となっている。そして、これらの業者の中には、郵政事業庁及び各郵政局所管の公益法人も見受けられた。
また、調達件数の多いタオル、洗剤等4品目について、特定郵便局、分任普通局及び郵政局別に、調達価格を定価で除して得た割合(以下「掛率」という。)を調査したところ、4品目の平均の掛率は、郵政局が46%、分任普通局が50%、特定郵便局が55%となっており、1契約当たりの調達数量が多く、一般競争契約等の比率が高い郵政局において最も掛率が低くなっていた。
(2) 郵政事業庁における内部監査の結果
郵政事業庁においては、東北郵政局管内の連絡会に支給された渡切費の使途が不透明であるなどの一連の報道等を踏まえ、連絡会の役員局のうち会長である局に支給された連絡会経費について調査を行い、14年3月に、領収書の水増し又は架空領収書による経費捻出を行うなどの不適正な経理が判明したものが16局、支払件数75件、支払額3872万円であったとするなどの調査結果を公表している。
上記の調査結果について説明を徴したところ、前記(1)の本院の検査結果と一部重複している事態があった。
(3) 渡切費制度の廃止
総務省は、郵政官署における渡切費について、その使途の透明性等をめぐる世論の動向等を踏まえ、13年10月、渡切費を15年の郵政公社の設立に合わせて廃止するとしていた方針を改め、14年度予算から廃止する方針を発表した。
そして、これまで渡切費で支弁していた経費については、14年度以降、同じ郵政事業特別会計(項)業務費のうちの(目)需品費として計上し、その支出負担行為に関する事務は、特定郵便局長等を分任支出負担行為担当官に任命して行わせ、その支出は集中処理局(注2)
の分任支出官等の所掌とした。また、特定郵便局長等は、当該支出の調査決定及び支払命令に関する事務を代理し、自局の出納官吏等に命じて現金の支払を行わせ、その事後整理は、集中処理局の分任支出官等が処理することとし、その処理に伴う領収書等の証拠書類は計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき本院に提出されることとなっている。
4 本院の所見
渡切費制度は、主に特定郵便局において、常時必要とする少額の事務費を支弁するに当たり、事務の簡素化を図るための制度として一定の役割を果たしてきたが、平成12年度決算検査報告に掲記したとおり、制度の運用についていくつかの問題点が見受けられた。そして、本年の本院の検査及び郵政事業庁の内部監査において、前記(1)及び(2)のとおり、渡切費の経理について不明朗な事態などが多数見受けられ、これらの中には既に返還等の措置が講じられたものもあるが、郵政事業庁による今後の措置を待つものもある。
そして、14年度以降、渡切費制度が廃止され、これまで支出の特例として渡切費で支弁されていた経費は、前記(3)のとおり支出の原則に従い引き続き需品費により支弁されることとなっており、これらの支出に当たっても、会計法令及び通達等に従って適正かつ経済的・効率的に執行する要がある。また、営業物品の調達においては透明性の確保及び経済的な調達を図る観点から、各特定郵便局の自主性も考慮しつつ、一般競争契約方式の導入、調達の一元化等の方策について検討することが望まれる。
したがって、前記の検査結果を踏まえ、郵政事業庁の内部監査においてこれら特定郵便局における需品費の支出の適否等についても引き続き監査を行う要があり、本院においても、新たに送付を受けることとなった証拠書類の検査を行い、必要に応じて実地検査を行うなどして、引き続き適正かつ経済的・効率的な支出が行われているかどうか注視していくこととする。
(注1) | 北海道郵政局ほか11郵政局 北海道、東北、関東、東京、信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州各郵政局及び沖縄総合通信事務所 |
(注2) | 集中処理局 郵便局組織規程(平成元年公達第31号)第15条に掲げる共通事務センターを置く郵便局であり、共通事務センターは、沖縄総合通信事務所を除く11郵政局管内の歳入の徴収、歳出の支出に関する事務等を行っており、札幌中央、仙台中央、横浜中央、東京中央、長野中央、金沢中央、名古屋中、大阪中央、広島東、松山中央及び熊本中央の11郵便局に置かれている。 |