検査対象 | 日本鉄道建設公団国鉄清算事業本部 |
特例業務における土地の処分等の概要 | 年金の給付に要する費用等の支払などの資金に充てるために清算事業団から承継した土地の処分等を行うこと |
事業本部が承継した土地 | 1273万m2 | |
平成13年度末現在の土地の売却額 | 832万m2 | 2732億円 |
平成13年度末現在の未売却の土地の時価推定額 | 427万m2 | 2600億円 |
1 特例業務の概要
昭和62年4月、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号。以下「改革法」という。)に基づき、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)は旅客部門6社、貨物部門1社(以下「JR各社」という。)等に分割され、JR各社等に承継されない資産の処分及び債務等の処理並びに国鉄職員の再就職促進に関する業務等は、日本国有鉄道清算事業団(以下「清算事業団」という。)において行われることとなった。
これにより、清算事業団は債務等の処理として、国鉄の長期借入金及び鉄道債券に係る債務等(以下「長期債務」という。)19兆8600億円の償還と国鉄の職員であった者等に係る年金追加費用等の将来費用(以下「年金の給付に要する費用」という。)5兆6600億円の支払を行うこととなった。
そして、長期債務の償還及び年金の給付に要する費用の支払に当たっては、清算事業団に帰属した土地及びJR各社の株式を処分するなどして充てることとされた。しかし、償還財源である土地等の資産処分が経済情勢の変動等により進展しなかったことなどから、多額の金利負担が生じるなどして、長期債務及び年金の給付に要する費用等の支払残高は増加することとなった。
このような事態に対処するため、「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律」(平成10年法律第136号。以下「処理法」という。)が制定され、平成10年10月、清算事業団は解散し、日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)に清算事業団の資産を承継するとともに、その業務の一部が特例業務として引き継がれることとなり、日本鉄道建設公団国鉄清算事業本部(以下「事業本部」という。)が特例業務を行うこととなった。そして、長期債務は国が承継又は免除することとなった。
事業本部が実施する特例業務の主な内容は、次のとおりである。
〔1〕 公団が負担することとされた年金の給付に要する費用等の支払を行うこと
〔2〕 年金の給付に要する費用等の支払などの資金に充てるために清算事業団より承継した土地その他の資産の処分を行うこと
〔3〕 土地その他の資産の処分を効果的に推進するため、承継した土地に係る宅地の造成及びこれに関連する施設の整備等を行うこと
処理法の施行に伴い、清算事業団が負担していた債務については、28兆2900億円のうち24兆1600億円は国が承継又は免除し、残余については、年金の給付に要する費用等の支払額4兆1000億円のうち3兆9300億円は公団の負担とするなどとされた。
そして、年金の給付に要する費用等の支払のための財源としては、土地売却収入2600億円(13年度末現在の時価推定額(注1)
)、JR各社の株式売却収入1兆2400億円(13年度末現在の時価評価額(注2)
)、運輸施設整備事業団債権収入1兆8400億円(13年度末の元本残高)等のほか、国の一般会計からの日本鉄道建設公団特例業務補助金を充当することとなっている。なお、一般会計からの国庫補助金は、13年度まで毎年度650億円が交付されている。
(注1) | 時価推定額 事業本部が公示価格又は基準地価格を参考にして算定した平成13年中の土地の評価額 |
(注2) | 13年度末現在の時価評価額 東日本、東海及び西日本各旅客鉄道株式会社の株式の時価評価額 |
土地の処分に当たっては、清算事業団の発足時から、国民負担をできるだけ軽減するという見地から、〔1〕 「できる限り多くの売却可能用地を生み出すなど自主財源を可能な限り確保してこれに充てるものとする。」(昭和60年10月閣議決定)、〔2〕 「土地、株式等の資産の適切かつ効率的な処分を進め、自主財源の増大を図り、極力国民負担の軽減に努めるものとする。」及び〔3〕 「早期処分に努めるとともに、貨物ヤード跡地等の土地については、地域整備にも配慮して資産処分審議会に諮った上で速やかに土地利用に関する計画を策定し、必要な基盤整備を行う等により資産価値を高めるよう努めるものとする。」(63年1月閣議決定)などとされている。
清算事業団及び公団は、日本国有鉄道清算事業団法(昭和61年法律第90号)及び処理法により学識経験者による資産処分審議会を設置し、土地処分計画など資産処分業務に関する重要事項を審議することとされている。そして、事業本部の発足に当たり、資産処分業務の基本方針(平成10年12月。資産処分審議会了承)において「従来の清算事業団の資産処分審議会において処分方法等に関して既に了承を受けている土地等については、引き続き従来の方針に基づき処分を進める。」こととしている。
土地の処分に当たっては、前記の方針等に従い、できる限り多くの売却可能用地を生み出したり、土地の資産価値を高めたりなどするため、既存のJR各社の施設の移転・集約や不要となった鉄道施設等の撤去等の基盤整備等を行った上で処分することとしている。
そして、基盤整備等の実施に当たっては、改革法の定めるところにより、運輸大臣が定めた「日本国有鉄道の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画」(昭和61年12月閣議決定)に従って国鉄が作成した、JR各社に承継させる資産等を明示した用地区分図等を内容とする「日本国有鉄道の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する実施計画」(62年3月運輸大臣認可)等をもとに、JR各社と施行方法等を協議するなどして実施している。
平成10年10月に公団が清算事業団から承継した土地は1273万m2
(注3)
であり、その処分の状況についてみると、13年度末までに売却した土地は832万m2
(売却額2732億余円)、未処分となっている土地は427万m2
(13年度末現在の時価推定額2600億円)となっている。
また、土地の処分期限については、「日本国有鉄道清算事業団の解散に伴う日本鉄道建設公団による、特例業務の実施及び職員の再就職対策について」(10年2月閣議決定)において、特別の事情がある場合を除き、15年度末を目途に終了させることとされている。
2 検査の背景、着眼点及び対象
本院では従来から、長期債務等の償還のための土地の処分状況について検査を実施してきており、平成7年度決算検査報告の「特に掲記を要すると認めた事項」において、次のような所見を掲記するなどしている。
清算事業団による土地等の資産の処分が計画どおり進展していないことから、長期債務等の償還が進んでおらず、このまま推移すると長期債務等から発生する金利等により長期債務等残高が累増することが見込まれるので、適切な土地処分の促進を図ることが緊要である(平成7年度決算検査報告「日本国有鉄道清算事業団の保有する土地の処分について」参照)
。
そして、14年次の検査においては、10年2月の閣議決定による土地処分の終了の目標年次である15年度末まであと1年余りであること、前記のとおり、売却による収入は年金の給付に要する費用等の支払財源となっていることから、土地の処分が順調に推移し、その売却収入が確実に確保されて年金の給付に要する費用等の支払財源に充当されているかという着眼点から、土地の処分状況、特に売却による収入と売却のために要した基盤整備等の費用の状況等について検査を実施することとした。
上記により、公団が清算事業団から承継した土地1273万m2
のうち13年度末までに売却された832万m2
については、重要資産に該当する土地(注4)
で本社計画工事(注5)
に分類されている194万m2
(注6)
を、未売却の427万m2
については、重要資産に該当する土地369万m2
、計564万m2
を対象に検査した。
(注4) | 重要資産に該当する土地 処理法施行規則第2条に規定する重要な資産に該当する土地で、東京都の区域内の市街化区域では2,000m2 以上、埼玉県、千葉県、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県の区域内の市街化区域では5,000m2 以上、その他の区域では10,000m2 以上の土地 |
(注5) | 本社計画工事 基盤整備費が1億円以上のもので本社の決定により工事を行うもの |
(注6) | 194万m2 対象とした面積には、基盤整備等が一体として実施された清算事業団当時に処分した土地も一部含まれる。 |
3 検査の状況
(1) 基盤整備等の費用が売却による収入を上回っていたり、上回ると想定されたりするものについて
土地の処分に当たっては、既存の施設を撤去して更地にするなどの基盤整備等を実施した上で売却していることから、前記の土地について、売却による収入と基盤整備等の費用について調査した。その結果、売却用地内の不要となったレール、建物等の鉄道施設の撤去やJR各社が使用している営業線等の鉄道施設の移転・集約などに多額の費用を要したり、土地の資産価値が低かったりしたことや、今後予定されている基盤整備等に多額の費用を要すると見込まれることなどから、基盤整備等の費用が売却による収入を上回っていたり、上回ると想定されたりする事態が12件、198万m2
見受けられ、売却による収入を上回る費用の額は200億円を超えると見込まれる。
上記の各事態について、態様別に事例を挙げて詳述すると次のとおりである。
ア 鉄道施設の移転・集約等の基盤整備等に多額の費用を要したため、その費用が土地の売却による収入を上回っていたり、上回ると想定されたりするもの
件数 9件 | ||
面積 163万1000m2 | ||
売却による収入 | 13年度末までの収入額 | 175億1217万余円 |
時価推定額 | 98億1900万円 | |
計 | 273億3117万余円 | |
基盤整備等の費用 | 13年度末までに要した費用 | 316億4289万余円 |
今後要すると見込まれる費用 | 2億円 | |
計 | 318億4289万余円 |
この事態は、売却用地を確保するために既存のJR各社の鉄道施設を移転・集約して更地化するなどの基盤整備等に多額の費用を要し、売却による収入を上回っていたり、上回ると想定されたりするものである。
「東鷲宮駅」
所在地 | 埼玉県北葛飾郡鷲宮町 |
面積 | 15万1000m2 |
売却による収入 | 13年度末までの収入額 | 3億7415万余円 |
時価推定額 | 32億5100万円 | |
計 | 36億2515万余円 | |
基盤整備等の費用 | 13年度末までに要した費用 | 48億7340万余円 |
今後要すると見込まれる費用 | 2億円 | |
計 | 50億7340万余円 |
本件土地は、東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)が使用している新幹線保守基地、検修庫等の移転・集約及び貨物ターミナルの廃止によって確保された土地である。
清算事業団では、9年度に本件土地のうち3800m2
を随意契約により鷲宮町土地開発公社に3億7415万余円で売却している。そして、未処分の土地は14万8000m2
となっており、その時価推定額は32億5100万円と見込まれている。
一方、清算事業団及び事業本部では、本件土地に所在する新幹線保守基地、検修庫等の移転・集約、廃止施設の撤去等に、昭和62年度から平成13年度までの間に計48億7340万余円を要したため、その費用が土地の売却による収入を上回ると想定される。そして、土地区画整理事業(10年度から16年度まで)の実施区域内に所在する本件土地については、今後、宅地化が見込まれていることから、宅地として造成するための地盤改良等の工事(工事費2億円)を予定しており、費用が土地の売却による収入を更に上回ると想定される。
これは、売却用地を確保するため、昭和57年度の東北新幹線の開業に併せて建設された保守基地を開業後約11年で移転することに約26億円を要したこと、地価の大幅な下落があったことなどから、費用が売却による収入を上回ると想定されるものである。
イ 資産価値が低く、廃止された鉄道施設の撤去等の基盤整備等に要した費用が土地の売却による収入を上回っているもの
件数 2件 | ||
面積 23万2000m2 | ||
売却による収入 | 13年度末までの収入額 | 3億2027万余円 |
基盤整備等の費用 | 13年度末までに要した費用 | 11億2776万余円 |
この事態は、廃止されたレール等の鉄道施設の撤去などを行っているが、土地の資産価値が低いため基盤整備等の費用が売却による収入を上回っているものである。
「呼子線」
所在地 | 佐賀県唐津市、呼子町、鎮西町 |
面積 | 13万4000m2 |
売却による収入 | 13年度末までの収入額 | 3億0079万余円 |
基盤整備等の費用 | 13年度末までに要した費用 | 10億1652万余円 |
本件土地は、昭和56年度に建設が中止され、平成元年度に建設が再開されないこととされた建設線の工事途中の跡地である。この跡地は延長約15.1kmにわたる幅約6mから10mまでの高架橋、盛土等が残された土地であったため、競争入札による売却が困難であるとして、地方公共団体に購入要請をして売却するなどしたものである。
清算事業団では、10年度に本件土地13万4000m2
(路線延長約15.1km)のうち、2万1000m2
(同約1.9km)を呼子町、1万6000m2
(同約1km)を鎮西町に、農道として整備した上、それぞれ無償で譲渡している。また、事業本部では、11年度に9万7000m2
(同約12.2km)を更地化した上、随意契約により、市道用地等として唐津市に3億0079万余円で売却している。
一方、清算事業団及び事業本部では、売却等に当たり、高架橋、盛土等を撤去したり、農道として整備したりする工事を9年度から11年度までの間に行い、これに要した費用は10億1652万余円となっていて、費用が売却による収入を上回っている。
これは、呼子町及び鎮西町に無償で譲渡する際、農道として活用するための高架橋等の路盤舗装、取付け道路の新設等に約7000万円を要したこと、唐津市に売却する際に、高架橋、盛土等の撤去等に約7億円を要したことなどから、基盤整備等の平均単価が約7500円/m2
となったのに対し、土地の平均売却単価が約3000円/m2
と低かったことから、費用が売却による収入を上回ったものである。
ウ 鉄道施設の撤去等の基盤整備等に今後多額の費用を要すると見込まれるもの
件数 1件
面積 11万6000m2
「南方貨物線」
所在地 | 愛知県名古屋市・大府市 |
面積 | 11万6000m2 |
売却による収入 | 13年度末までの収入額 | 3億6491万余円 |
時価推定額 | 40億2500万円 | |
計 | 43億8991万余円 | |
基盤整備等の費用 | 13年度末までに要した費用 | 2億6594万余円 |
今後要すると見込まれる費用 | 197億3400万円 | |
計 | 199億9994万余円 |
本件土地は、東海道本線名古屋付近の輸送力増強策として、南方貨物線(総延長約19.5km)を建設するために取得し、昭和42年に着工したが、国鉄の設備投資抑制の方針等により58年1月に工事が凍結された。その後、平成13年に事業本部が、関係する鉄道事業者、地方公共団体に対して鉄道利用あるいは鉄道利用以外での活用及び土地・構造物の取得に係る最終的な意向確認を行ったが、要望する者がなかったため、国等との協議を行い、構造物を撤去した上で処分する方針を決定した。
事業本部では、10年度から12年度までの間に、本件土地のうち1700m2
を高架橋等とともに随意契約により名古屋臨海鉄道株式会社等に3億6491万余円で売却している。そして、未売却の土地は11万4000m2
となっており、その時価推定額は40億2500万円と見込まれている。なお、当該土地は、都心部に所在してはいるが、形状が延長約12.2kmにわたる幅約10mから15mまでの高架橋下部等の用地であり、売却に当たっては困難が予想される。
一方、事業本部では、本件土地に既に建設されている構造物のうち、劣化している高架橋の高らん部分を11年度から13年度までの間に2億6594万余円で撤去した。そして、今後、11万4000m2
の高架橋等の撤去工事に197億3400万円を予定しており、費用が売却による収入を上回ると想定される。なお、河川等を占有している橋りょう等については、河川等管理のために撤去する必要があるため、更に多額の費用の発生が見込まれている。
(2) 土地の売却による収入が基盤整備等の費用を上回ると想定されるものの、土地の処分に長期間を要すると見込まれるものについて
土地の処分は、特別の事情がある場合を除き、15年度末を目途に終了させることとされていることから、処分の見込みについて調査したところ、既に多額の基盤整備等の費用を要しているのに、関係地方公共団体等において都市計画の策定が遅れていたり、地元関係者との協議等に時間を要したりしていていることなどから、土地の処分に今後相当の期間を要する事態が7件、159万4000m2
見受けられた。したがって、これらについては土地の売却収入の確保が遅れることとなる。
「武蔵野操車場」
所在地 | 埼玉県三郷市、吉川市 |
面積 | 83万8000m2 |
売却による収入 | 13年度末までの収入額 | 2億1109万余円 |
時価推定額 | 206億1500万円 | |
計 | 208億2609万余円 | |
基盤整備等の費用 | 13年度末までに要した費用 | 80億0872万余円 |
今後要すると見込まれる費用 | 42億1900万円 | |
計 | 122億2772万余円 |
本件土地は、JR東日本が使用している営業線の移転・集約及び貨物操車場の廃止によって確保された土地である。
事業本部では、12年度から13年度にかけて、本件土地のうち1万m2
を随意契約により三郷市等へ2億1109万余円で売却している。そして、未処分の土地は82万7000m2
となっており、その時価推定額は206億1500万円と見込まれている。
一方、清算事業団及び事業本部では、昭和62年度から平成13年度までの間に、営業線の移転・集約、廃止施設の撤去等に80億0872万余円を費やしていて、今後、こ線橋の改築、基礎杭の撤去等に42億1900万円を予定している。
本件土地の利用については、基盤整備等と併行して、昭和62年度から周辺地域を含めた土地の利用計画について関係地方公共団体等との調整を行うなどして時間を要している。そして、資産処分審議会(平成10年2月)において、周辺地域を含めた土地区画整理事業等により処分するのが望ましいとの方針が決められたものの、今後、その事業に向けて都市計画の決定、農業振興地域の指定解除等が予定されており、土地の売却については16年度以降となる見込みとなっている。
「梅田駅・吹田信号場」
所在地 | 梅田駅 | 大阪府大阪市 |
吹田信号場 | 大阪府吹田市、摂津市 | |
面積 | 梅田駅 | 21万3000m2 |
吹田信号場 | 14万4000m2 | |
計 | 35万7000m2 |
売却による収入 | 13年度末までの収入額 | 60億1477万余円(梅田) |
8億8908万余円(吹田) | ||
時価推定額 | 未定 | |
基盤整備等の費用 | 13年度末までに要した費用 | 55億6228万余円 |
今後要すると見込まれる費用 | 未定 |
本件土地は、日本貨物鉄道株式会社(以下「JR貨物」という。)の梅田駅の貨物施設を分割して、約10km離れた吹田市、摂津市の両市にまたがるJR貨物の吹田信号場と大阪市内とに移転することにより確保される土地及び吹田信号場内でJR貨物が使用している営業線を移転・集約して確保される土地である。
清算事業団では、元年度に本件土地のうち梅田駅の500m2
を随意契約により阪神高速道路公団に60億1477万余円で売却するなどしている。そして、未売却の土地は21万2000m2
となっている。また、清算事業団及び事業本部では、10年度までに吹田信号場の3000m2
を吹田市等へ8億8908万余円で売却し、未売却の土地は14万m2
となっている。
一方、清算事業団及び事業本部では、元年度から13年度までの間に、貨物施設や軌道の撤去等に55億6228万余円の費用を要しており、今後、更に梅田駅の貨物施設を吹田信号場及び大阪市内に移転したり、吹田信号場に建設予定の貨物ターミナルに接続する貨物専用道路の建設等を予定している。
本件土地については、国鉄改革に基づく承継計画では梅田駅を吹田信号場に全面移転させることとされていて、清算事業団は、昭和62年から平成9年まで吹田市及び摂津市と協議を重ねた。しかし、貨物ターミナルはトラック輸送による公害を招くなどとする地元の理解が得られないため、吹田信号場への全面移転については、他箇所も含めて分散して移転するという新たな案により協議が進められた結果、11年1月、事業本部と両市等との間で移転に関する基本協定を締結したものの、事態は進展しておらず、本件土地の処分の見通しは立っていない状況である。
(3) 事態の背景について
上記のような状況となっているのは、主として次のような背景があることによると認められる。
(ア) 清算事業団の承継時より現在まで、できる限り多くの売却可能用地を生み出し、基盤整備等を行うことにより資産価値を高めることを方針としていたことから、経済情勢の変化等により土地価格が当初計画時より下落したりなどしていても、当初の処分計画を見直すことなく、既存のJR各社の鉄道施設等を移転・集約したり、不要の鉄道施設を撤去したりして更地化していること
(イ) 土地の早期処分を図るため、関連する土地区画整理事業等に先行して基盤整備等を実施していること
(ウ) 高架橋等の構造物があるため、これらを撤去するには、多額の費用を要すること
(エ) 関係地方公共団体等において都市計画の策定等が遅れていたり、売却対象地にある鉄道施設の移転予定地について、地元関係者との協議等に時間を要していたりしていること
4 本院の所見
事業本部では、土地の処分等を推進してきており、清算事業団より承継した土地1273万m2
のうち832万m2
については13年度末までに処分を終了している。
しかし、前記(1)のとおり、年金の給付に要する費用等の支払のための財源である土地処分については、基盤整備等の費用が土地の売却による収入を上回っていたり、上回ると想定されたりしている場合もあることから、必ずしも、その財源としての効果を十分に果たさない場合も見受けられる状況である。また、(2)のとおり、土地の処分に長期間を要すると見込まれているものについては、今後とも多額の基盤整備等の費用を要することが見込まれるとともに、現状のまま推移すると土地売却収入を確保するまでには、なお相当の期間を要することになる。
このような事態は、前記(3)のような背景があることによると認められるが、このまま推移すれば、一般会計からの国庫補助金の支出が今後とも継続することになると見込まれる。
したがって、多額の基盤整備等の費用を要するものについては、関係機関等と更に協議するなどした上、土地売却の収支等も十分考慮しつつ、基盤整備等の内容を検討するなどして効率的な処分に努めていくとともに、土地の処分に長期間を要すると見込まれるものについては、関係機関等との交渉を進めるなどして適切な土地処分の促進を図ることが望まれる。