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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣府|
  • (防衛庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

データの入力等に当たり、入出力装置の借上げに代えて既存のパソコンを活用することにより、経費を節減するよう改善させたもの


 データの入力等に当たり、入出力装置の借上げに代えて既存のパソコンを活用することにより、経費を節減するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)防衛本庁
部局等の名称 契約本部(平成13年1月5日以前は調達実施本部)
  (依頼元 内部部局、要求元 海上幕僚監部)
契約名 工数集計システム入出力装置(借上)
契約の概要 陸上、海上、航空各自衛隊及び技術研究本部において、製造請負契約等における直接作業時間数(工数)の入力等の作業を行うために使用する入出力装置を借り上げるもの
契約の相手方 株式会社日立製作所
  日本電子計算機株式会社
契約 平成12年10月 一般競争後の随意契約
  平成13年4月、14年4月、15年4月 随意契約
使用料 2963万余円 (平成12年11月〜15年8月)
節減できた使用料 2720万円  

1 工数集計システム入出力装置の概要

(工数集計システムの概要)

 防衛庁では、平成12年度から、契約本部(13年1月5日以前は調達実施本部)が締結する契約(以下「中央調達」という。)並びに陸上、海上、航空各自衛隊の各部隊等及び技術研究本部の組織(以下「各自衛隊等」という。)が締結する契約(以下「地方調達」という。)のうち、原価計算方式により計算価格を算定し予定価格を定めて締結する製造請負契約等について、各契約の原価計算で用いた直接作業時間数(以下「工数」という。)を集計するなどし、マクロ的にチェックする工数集計システム(以下「システム」という。)の構築を進めている。
 このシステムは、防衛庁として工数の適正さの評価能力を高めるため、中央調達、地方調達を一元化した工数集計を行うことを目的としたものである。そして、防衛庁の内部部局では、システムを使用して、契約本部及び各自衛隊等が各企業と契約する際に原価計算で用いた工数(以下「計算工数」という。)を各企業の工場等単位に集計し、その年間の総計算工数と、各企業の工場等ごとの年間の総直接作業時間である期間工数とを比較するなどして工数の適正さをチェックすることとしている。

(入出力装置の借上げ)

 防衛庁においては、従来、中央調達について各企業の工場等ごとの期間工数に占める計算工数の割合を分析するなどしているが、システムの構築のために地方調達について新たに計算工数データの集計と蓄積が必要となることから、内部部局では、各自衛隊等に同データの入出力装置としてノート型のパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)を借上げにより、また、同データの入力に使用する工数集計支援用ソフトウェア(以下「支援ソフト」という。)を請負で製作し配布することにより導入することとした。
 そして、内部部局では、各自衛隊等における入出力装置の設置箇所及び台数の意向を調査し、陸上自衛隊に15箇所で17台(注1) 、海上自衛隊に26箇所で26台(注2) 、航空自衛隊に2箇所で2台(注3) 、技術研究本部に本部の1台、合計44箇所で46台の入出力装置の設置と、内部部局で必要なデータ蓄積のためのソフトウェア(以下「関連ソフト」という。)の導入を行うこととし、海上自衛隊の入出力装置の台数が多かったことから海上幕僚監部に契約本部に対する調達要求手続を依頼した。そして、契約本部では、海上幕僚監部から調達要求を受けて、12年11月、上記の内容の借上契約を締結している。これらの入出力装置等の借上期間は年間を通じる期間で、使用料金は月額871,500円となっており、その後、毎年度契約を継続してきている。また、支援ソフトについては、12年12月に調達し、上記の入出力装置にインストールされている。

(入力作業等の実施)

 内部部局では、計算工数データの集計対象とする企業(以下「集計対象企業」という。)を、12年度は10社とし、13、14両年度にはこれに追加して25社としている。
 そして、各自衛隊等では、この集計対象企業とされた企業との契約について、その計算工数のデータを入力し、これを直接又は幕僚監部等を通じて内部部局にディスク等で送付している。

 

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 今日、高性能のパソコンが普及し、国の事務においても多数配備、使用されている状況の中で、本件システムの構築が経済的に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
〔1〕 本件システムの入出力装置は、一般に普及している標準的な仕様のものであり、性能的に各自衛隊等が使用している既存のパソコンと同程度のものであった。
 また、支援ソフトの仕様についてみると、各自衛隊等の既存のパソコンで使用できるものであった。
〔2〕 各自衛隊等における入出力装置への計算工数データの入力状況等についてみると、入力作業は内部部局からの入力指示に基づいて行われていて、その作業期間は、年間で、指示のあったときから報告までの3箇月ないし6箇月程度となっていた。また、入力件数も、大部分の箇所では極めて少ないなどの状況となっていた。
 したがって、計算工数データの入力作業等は既存のパソコンで行うことが可能であり、本件入出力装置を借り上げる必要はないと認められた。
 現に、航空自衛隊及び技術研究本部の本件入出力装置を導入していない箇所では、支援ソフトを既存のパソコンにインストールして、計算工数データの入力作業等を実施していた。

(節減できた使用料)

 計算工数の入力作業等について、支援ソフトを使用し、既存のパソコンを活用することとしたとすれば、毎月、前記の入出力装置等の使用料金871,500円から、関連ソフトの分71,400円を差し引いた800,100円、借上げを始めた12年11月から本院が検査した15年8月まででは計約2720万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、内部部局において、各自衛隊等に対し既存のパソコンで支援ソフトの使用が可能である旨などの説明が十分でなかったこと、入力作業等について事前の把握が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、防衛庁では、15年10月に、既存のパソコンを活用して計算工数データの入力作業等を行うこととし、入出力装置等の借上契約を変更して、関連ソフトを除き同月末をもって借上げを廃止する処置を講じた。

(注1) 陸上自衛隊15箇所17台 陸上幕僚監部、北部、東北、東部、中部、西部各方面総監部、関東、北海道、東北、関西、九州各補給処、関東補給処松戸、古河、用賀各支処に各1台及び補給統制本部に3台
(注2) 海上自衛隊26箇所26台 海上幕僚監部、横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊各地方総監部、第1術科学校、東京業務隊、補給本部、艦船、航空両補給処、阪神、沖縄、下関、函館各基地隊、小松島航空隊、鹿屋、八戸、厚木、那覇、館山、大村、岩国、下総、徳島及び小月各航空基地隊に各1台
(注3) 航空自衛隊2箇所2台 航空幕僚監部及び第1補給処東京支処に各1台