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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 総務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

普通交付税の小・中学校費に係る基準財政需要額の算定において、0学級校を学校数に含めないこととするよう改善させたもの


(2)普通交付税の小・中学校費に係る基準財政需要額の算定において、0学級校を学校数に含めないこととするよう改善させたもの

会計名及び科目 交付税及び譲与税配付金特別会計(交付税及び譲与税配付金勘定) (項)地方交付税交付金
部局等の名称 総務本省
小・中学校費に係る基準財政需要額の概要 地方団体において、小・中学校について合理的かつ妥当な行政水準を維持するために必要と見込まれる一般財源所要額
学校数を測定単位とする小・中学校費の102市町村における基準財政需要額 186億0327万円 (平成14年度)
上記について0学級校を学校数に含めないこととして算定した場合の開差額 17億1246万円  

1 制度の概要

 (普通交付税の交付額)

 総務省では、地方交付税法(昭和25年法律第211号。以下「交付税法」という。)に基づき、地方団体の財源の均衡化を図り、交付基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することにより、地方団体の独立性を強化することを目的として、地方交付税交付金(以下「交付税」という。)を交付している。
 交付税は、補助金等と異なり、その使途に制限がなく、地方団体が自主的な判断で使用することのできる一般財源として交付されるものである。
 このうち、普通交付税は、一般財源が不足する地方団体に交付される。そして、その交付額は、交付税法第10条第2項の規定に基づき、地方団体ごとに以下の〔1〕の式により算定された一般財源の不足額の全地方団体の合算額が当該年度の普通交付税の総額を超える場合には更に〔2〕及び〔3〕の式による調整を行って決定することとされている。

〔1〕 一般財源の不足額 = 基準財政需要額 − 基準財政収入額

 

 (注)  計算の結果が負になるときは一般財源の不足額を0とする。
   
〔2〕 調整率=       一般財源の不足額の全地方団体の合算額−普通交付税の総額      
基準財政需要額が基準財政収入額を超える地方団体の基準財政需要額の合算額
   
 (注) 平成14年度の調整率は0.000615372
   
〔3〕 交付額 = 一般財源の不足額 − 基準財政需要額 × 調整率

(基準財政需要額の算定)

 普通交付税の交付額を算定する基礎となる基準財政需要額(以下「需要額」という。)は、地方団体の一般財源に係る財政需要を合理的に測定するために用いられるものであり、土木費、教育費、厚生労働費等の行政項目ごとに次の式により算定することとされている。

 需要額 = 測定単位の数値 × 補正係数 × 単位費用

(小・中学校費に関する需要額の算定)

 交付税法、普通交付税に関する省令(昭和37年自治省令第17号。以下「省令」という。)等の規定によると、教育費のうち、市町村における小・中学校費(経常経費)の需要額の算定上必要となる上記の算定式の各要素(測定単位、補正係数及び単位費用)はそれぞれ次のとおりであり、これにより需要額を算定することとされている。
(ア)測定単位は、各行政項目ごとの需要額を算定するために用いるものであり、小・中学校費の需要額の算定上の測定単位は、児童・生徒数、学級数及び学校数の3つである。
 そして、省令第5条第1項の規定によると、学校数は、学校基本調査規則(昭和27年文部省令第4号)による調査(統計法(昭和22年法律第18号)に基づく指定統計。以下「学校基本調査」という。)における当該年度5月1日現在の市町村立の小・中学校数を用いることとされている。
(イ)補正係数は、個別事情により生ずる市町村間の経費の差のうち、一定程度普遍的なものを需要額の計算上も反映させるために測定単位の補正を行う係数である。この補正係数には、小・中学校の廃止(以下「廃校」という。)により小・中学校数が減少した場合に需要額が急減することを緩和するため、廃校となった場合における需要額の減少がその後数年間にわたり段階的で緩やかなものとなるように補正する数値急減補正等がある。
(ウ)単位費用は、標準的な規模の小・中学校(小学校の場合、児童数720人、学級数18学級等)について合理的かつ妥当な行政水準を維持するために必要と見込まれる一測定単位当たりの一般財源所要額である。
 このうち、測定単位としての学校数の単位費用は、平成14年度で、小学校1校当たり10,825,000円、中学校1校当たり13,347,000円とされている。そして、その主な内訳は、用務員1人分賃金(小学校及び中学校のいずれも553万円)、教育用コンピュータ整備費(小学校331万余円、中学校583万余円)、光熱水料等(小学校77万余円、中学校81万余円)となっている。

(学校数を測定単位として需要額を算定する場合の算定方法)

 前記のとおり、測定単位としての学校数については、学校基本調査の結果を用いることとされている。そして、廃校となった小・中学校は学校基本調査の対象外であり、学校基本調査で集計される小・中学校数には含まれないことになる。これに対し、児童・生徒が在籍していない小・中学校であっても廃校となっていないもの(以下「0学級校」という。)は学校基本調査の対象とされており・学校基本調査で集計される小・中学校数には0学級校も含まれることになる。
 このため、小・中学校費に係る需要額の算定上、廃校となった小・中学校は測定単位としての学校数に含まれないこととなるのに対し、0学級校は、児童・生徒が在籍している一般の小・中学校と同様、測定単位としての学校数に含まれることとなる。そして、需要額は、このような0学級校を含む小・中学校数により算定されることとなっている。
 このような取扱いは、総務省において、0学級校であっても近い将来に児童・生徒が在籍して学級数を有すると見込まれることから、それまでの間の維持管理等に要する経費が必要となると想定していたためである。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 交付税は、地方団体の財源の均衡化を図るなどの目的で交付されるものであるから、その算定には合理性及び公平性が求められる。そして、小・中学校費における単位費用は他の行政項目と比較して高額なものとなっており、また、近年における少子化傾向等を反映し0学級校数は増加する傾向を示していで、その小・中学校数には地域により相当の差異が生じている。
 これらのことから、市町村における小・中学校費に係る需要額の算定上、その測定単位としての小・中学校に0学級校が含まれていることについて合理性及び公平性は保たれているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 宮城県ほか12都府県(注) において、小・中学校費に係る需要額の算定上、5年度から14年度までの間に0学級校として測定単位に含まれたことがある244校(小学校211校、中学校33校。表1参照 。)が所在する120市町村を対象として検査した。

 

表1 0学級校数(都府県別内訳)
(単位:校)

都道府県名 小学校(市町村立) 中学校(市町村立)
14年度の学校数   5年度から13年度までの間に0学級校であった学校数 14年度の学校数   5年度から13年度までの間に0学級校であった学校数
左のうち0学級校数 左のうち0学級校数
宮城県 464 0 2 224 0 0
福島県 584 16 3 243 1 0
群馬県 352 0 3 179 0 2
東京都 1,354 0 1 653 0 0
滋賀県 235 5 6 99 1 1
京都府 450 9 4 180 3 1
鳥取県 179 10 3 60 0 0
広島県 639 22 3 254 2 0
徳島県 279 44 6 95 2 1
愛媛県 376 4 6(注) 152 1 1
高知県 325 41 8 135 8 2
福岡県 783 2 2 346 0 0
鹿児島県 606 9 3 274 1 6
合計 6,626 162 50 2,894 19 14
 6校のうち、14年度に再び0学級校となっているものが1校ある。

(検査の結果)

 検査したところ、測定単位に含まれる0学級校について次のような状況等が見受けられ、0学級校の実態は廃校に近いものとなっていた。

(1)0学級校の状況

 14年5月1日現在で0学級校となっていた小・中学校は181校(小学校162校、中学校19校)あった。
 このほか、5年5月1日から14年4月末日までの間に0学級校となったことがある小・中学校64校(小学校50校、中学校14校)のうち、14年4月末日までに廃校となった小・中学校は54校(小学校46校、中学校8校)となっていた。そして、この64校で、14年4月末日までに児童・生徒が在籍して学級数を有した学校は10校(小学校4校、中学校6校。14年5月1日現在で再び0学級校となっていた1校を含む。)にとどまっていた。また、この10校では、0学級校となってから平均2年程度で児童・生徒が在籍して学級数を有しており、6年以上経過してから児童・生徒が在籍して学級数を有したものはなかった。
 また、14年度に0学級校となっていた181校(小学校162校、中学校19校)について、0学級校となった後の経過年数を調査したところ、平均9年程度となっていた。そして、0学級校となって11年以上を経過している小・中学校数は65校(小学校54校、中学校11校)、また、そのうち0学級校となって20年以上を経過している小・中学校数は16校(小学校13校、中学校3校)となっていた(表2参照)

 

表2 0学級校数(経過年数別内訳)
(単位:校)

0学級校となっている年数 3年以下 4〜6年 7〜10年 11年以上   合計
うち20年以上
小学校数 52 31 25 54 13 162
中学校数 5 2 1 11 3 19
合計 57 33 26 65 16 181

(2)0学級校に係る維持管理経費

 10年度から14年度までの間において、上記の181校が0学級校となって以降に市町村が負担した維持管理経費については、次のとおりとなっていた。
 すなわち、0学級校の維持管理経費については、地域住民が負担していて市町村ではこれを負担していない例がある一方で、市町村で年間100万円程度の警備費用を負担している例もあり、区々となっていたものの、1校当たりの年間維持管理経費の平均額は約53万円となっていた。

 したがって、需要額の算定に当たり、0学級校の実態が廃校に近いものであるのに児童・生徒が在籍している小・中学校と同様に取り扱い、小・中学校費に係る需要額の算定上の測定単位である学校数に含めることは、児童・生徒が在籍しない小・中学校が廃校となった場合との均衡を失し、市町村間の公平を欠くことになると認められる。よって、これについては、需要額の算定における合理性及び公平性の確保の観点から、改善の要があると認められた。

(0学級校を測定単位としての学校数には含めないこととした場合の開差額)

 需要額の算定上、0学級校については測定単位としての学校数には含めないこととして改めて計算したところ、14年度において、前記120市町村のうち102市町村(学校数を測定単位とする小・中学校費の需要額計186億6327万円)における小学校費14億8410万円、中学校費2億2836万余円、計17億1246万余円の開差が生じることとなる。なお、この102市町村のうち不交付団体の3市町を除く99市町村における需要額の開差額は計16億5942万余円となり、これらの団体については、ほぼ同額の交付税額が減少することとなる。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、需要額の算定に当たり、学校基本調査による学校数をそのまま測定単位として用いていたことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、総務省では、16年度の小・中学校費に係る需要額の算定から、測定単位である学校数に0学級校を含めないこととし、また、15年10月に都道府県に対して通知を発し、この旨を市町村に対して周知させる処置を講じた。

宮城県ほか12都府県 東京都、京都府、宮城、福島、群馬、滋賀、鳥取、広島、徳島、愛媛、高知、福岡、鹿児島各県