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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 総務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

郵便切手類販売所等に対する委託販売手数料の支払を購入実績に応じた適切なものとするよう改善させたもの


(3)郵便切手類販売所等に対する委託販売手数料の支払を購入実績に応じた適切なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 郵政事業特別会計 (項)業務費 (目)需品費
部局等の名称 郵政事業庁(平成15年4月1日以降は日本郵政公社)
契約の概要 郵便切手類及び印紙を郵便局の窓口以外の場所で販売する業務を委託するもの
委託販売手数料の支払額 334億2159万余円 (平成14年度)
節減できた委託販売手数料の額 3億2000万円 (平成14年度)

1 委託販売手数料の概要

(郵便切手類及び印紙の販売業務の委託)

 郵政事業庁(平成15年4月1日に日本郵政公社に権利及び義務を承継している。)では、郵便切手類販売所等に関する法律(昭和24年法律第91号)等に基づき、郵便局の窓口以外の場所で郵便切手類及び印紙(以下「郵便切手等」という。)を販売する業務(以下「販売業務」といい、販売業務を行う場所を「販売所」という。)を個人又は法人の販売者に委託して実施している。
 この販売業務は、郵便切手類販売所等に関する省令(昭和24年逓信省令第16号。以下「省令」という。)に基づき、地域の郵便集配業務を行う集配郵便局が、販売業務に必要な資力及び信用を有する者を選定して委託契約を締結し、委託を受けた販売者があらかじめ郵便局から郵便切手等を額面により購入して顧客に販売することとなっている。
 そして、平成14年度末における販売所数は、全国で約15万箇所に上っている。

(手数料の算定基準)

 郵政事業庁では、販売者に対して郵便切手等の購入実績に応じて月額の販売手数料(以下「手数料」という。)を支払うこととしており、その額は、省令により、販売所が購入した郵便切手等の合計額について、次の区分に従い計算した額に消費税相当分を加算して算定することとしている。

〔1〕 購入がない場合 1千円(定額)
〔2〕 購入額が5千円以下の場合 2千円(定額)
〔3〕 購入額が5千円を超えた場合  

 上記の2千円(定額)に、購入額を次の各級に区分しその区分ごとに次の割合を乗じて得た金額の合計額を加えた金額

 (ア)5千円を超え20万円以下の金額 100分の10
 (イ)20万円を超え30万円以下の金額 100分の8
 (ウ)30万円を超え50万円以下の金額 100分の5
 (エ)50万円を超え100万円以下の金額 100分の1.5
 (オ)100万円を超え150万円以下の金額 100分の1
 (カ)150万円を超え300万円以下の金額 100分の0.6
 (キ)300万円を超える金額 100分の0.5

 

 

 上記のうち、購入がない場合及び購入額が5千円以下の場合の1千円又は2千円の定額の手数料については、販売準備等に要する人件費、郵便ポスターの掲示等の郵便局への協力に対する費用等を勘案して定めたものとされている。
 13、14両年度に郵政事業庁において支払った手数料の総額は、それぞれ341億7558万余円、334億2159万余円と多額に上っている。
 そして、15年4月以降は、日本郵政公社が郵政事業庁当時と同じ方法で販売者に業務委託しており、手数料についても、前記の省令と同一の内容で手数料算定基準を定めて支払うこととしている。

(販売所の実態調査)

 郵政事業庁においては、個々の販売所における郵便切手等の購入の実態を的確に把握するなどのため、3年ごとに全国の販売所の約1割を抽出して、9月から11月までの3箇月間の購入額を調査し、この調査結果を基に全販売所の購入額等を推計している。そして、直近では13年度に実態調査を実施している。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 近年の景気の低迷の影響などから既存の販売所全体における郵便切手等の購入額が減少傾向にあることから、購入額の少ない販売所に対する業務委託が経済的に行われているかなどに着眼して、北海道郵政局(現支社)ほか11郵政局等を対象に検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 郵政事業庁が実施した13年度の実態調査の結果に基づく150,930箇所(調査時点の販売所数)の3箇月間(延べ452,790月分)の購入額及び本院において同購入額から計算した手数料を、購入額の区分別に集計したところ、表1のとおりとなっていた。

表1 販売所の購入額の区分別延べ月数、購入額及び手数料
購入額の区分 延べ月数 購入額 購入額に係る手数料 購入額に対する手数料の比率
(D/B)
(箇所×月)
(A)
構成比 総額
(B)
構成比 1箇月当たり
(C)
総額
(A×C=D)

購入なし
5千円以下

55,398
15,096
%
12.2
3.3
千円
0
39,969
%
0.0

1,000
2,000
千円
55,398
30,192
%

75.5
小計 70,494 15.5 39,969 85,590 214.1
5千円超30万円以下
30万円超100万円〃
100万円超300万円〃
300万円超
299,799
53,826
20,943
7,722
66.2
11.9
4.6
1.7
24,436,635
29,203,845
34,708,389
382,487,703
5.2
6.2
7.4
81.2
9,570
38,139
52,365
293,661
2,869,076
2,052,870
1,096,680
2,267,650
11.7
7.0
3.2
0.6
合計 452,790 100.0 470,876,541 100.0 8,371,866 1.8
注(1)  販売所の購入額の区分別延べ月数及び購入額は、郵政事業庁の調査による3箇月間の合計である。
注(2)  購入額に係る手数料は本院において計算したものであり、消費税相当額を加算する前の金額である。

 すなわち、手数料の支払対象月延べ452,790月のうち購入がない月は延べ55,398月(構成比12.2%)、また、5千円以下の月は延べ15,096月(同3.3%)と、購入額が極めて僅少な月が多数見受けられた。
 しかし、これらの購入額が極めて僅少な月についても、販売所には前記の定額の手数料が支払われることとなっているため、これらの月の郵便切手等の購入額は39,969千円(年換算額約1億5980万円)であるのに、85,590千円(同約3億4230万円)と購入額を大幅に上回る手数料が支払われることとなっていた。
 そして、上記の実態調査は3箇月間を調査期間として実施したものであることから、本院において、年間を通じた購入の実態を調査することとして、集配郵便局22箇所を抽出して、その管内の販売所3,119箇所を対象に14年度中の月別の購入額を調査した。その結果、表2のとおり、年間の手数料の支払対象月延べ37,428月(3,119箇所×12月)のうち、購入がない月は延べ4,474月(構成比12.0%)、5千円以下の月は延べ551月(同1.5%)となっていて、年間を通じても郵政事業庁の13年度の実態調査とほぼ同様な傾向となっていた。
 また、併せて定額の手数料の理由とされている郵便局の販売所に対する協力依頼等の実態について調査したところ、販売所に対し年に2回、年賀はがき及び暑中見舞いのポスターの掲示を依頼している程度であるなど、定額の手数料を支払うほどの特段の費用が発生している状況とはなっていなかった。

表2 
本院が調査した販売所(3,119箇所)における購入額の区分別延べ月数(14年4月〜15年3月)

購入額の区分 延べ月数
(箇所×月) 構成比
購入なし
5千円以下
4,474
551
12.0%
1.5
小計 5,025 13.4
5千円超 32,403 86.6
合計 37,428 100.0

 したがって、購入がない又は購入額5千円以下の場合に支払う定額の手数料は、販売の対価として合理性を欠くものとなっており、また、このような手数料の支払額が多額に上っている事態は適切ではなく改善の要があると認められた。

(節減できた支払額)

 13年度の郵政事業庁の実態調査に基づき、14年度中に支払った手数料について、定額の手数料を廃止し、購入額が5千円以下の場合には定額に代えて直近上位の割合である100分の10を乗じて支払うこととして支払額を推計すると、購入額が5千円以下の月についてだけみても約3億2千万円節減できたこととなる。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、近年、販売所を取り巻く環境が変化してきていることなどにもよるが、郵政事業庁において、郵便切手等の販売業務の委託における定額の手数料について経済性の検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、日本郵政公社では、手数料算定基準を15年11月に改正し、定額の手数料を廃止して購入額の区分ごとに所定の割合を乗じて手数料を算定することとする方式に改めるなどの処置を講じた。