会計名及び科目 | 登記特別会計 (項)事務取扱費 |
部局等の名称 | 札幌法務局ほか14法務局 |
契約名 | 電子計算機用空調機保守契約ほか37件 |
契約の概要 | 登記所等に配備したホストコンピュータを安定して運用するために設置している空気調和機の点検保守業務を行うもの |
契約の相手方 | 富士電機総設株式会社 |
契約 | 平成12年4月、8月、11月、13年4月、8月、10月 随意契約 |
点検保守費の積算額 | 1億1540万余円 | (平成12、13両年度) |
低減できた点検保守費の積算額 | 2340万円 | (平成12、13両年度) |
1 契約の概要
法務省では、不動産登記法(明治32年法律第24号)等に基づき、全国の法務局(地方法務局を含む。以下同じ。)又はその支局若しくは出張所において、不動産に関する権利についての登記事務等を処理している。そして、増大する登記事務をコンピュータを導入して迅速かつ適正に処理するために「電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律」(昭和60年法律第33号)等が制定されたのを受け、登記事務等を行う部局において、順次、登記事務をコンピュータによって処理する登記情報システム(以下「システム」という。)への転換が進められている。
このシステムを運用するため、法務省では、各法務局に設置しているバックアップセンター及びシステムを導入した上記部局(以下「登記所等」という。)に、それぞれの規模に応じたホストコンピュータを配備している。
法務省では、これらのホストコンピュータの安定した運用を図るため、それぞれの登記所等にホストコンピュータ専用の空気調和機(以下「システム用空調機」という。)を設置しており、法務局では、管内の登記所等におけるシステム用空調機の点検、調整、修理等を行う点検保守契約を締結して、以下の3種類の業務を請け負わせている。
〔1〕 定期点検 | 定期的に技術者を派遣し、システム用空調機の構成部品等の点検、調整及び補修を行うもの |
〔2〕 緊急点検 | システム用空調機が故障するなど緊急の場合に、各法務局からの通知により技術者を派遣して点検検査、応急処置等を行うもの |
〔3〕 交換修理 | 定期点検及び緊急点検において故障箇所を発見した場合などに、当該故障箇所を各法務局に報告し、その指示を受けて当該箇所の部品を交換したり修理したりするもの |
そして、点検保守費の支払については、上記3種類の業務に係る経費を一括して定額で支払うこととしていたり、定期点検に係る経費については定額で支払うこととし、緊急点検及び交換修理に係る経費については発生の都度その所要額を算定してこれを支払うこととしていたりしていた。
札幌法務局ほか14法務局(注1)
(以下「15法務局」という。)では、空気調和機の製造会社である富士電機総設株式会社(以下「会社」という。)製のシステム用空調機については、その点検保守費の支払に当たって、前記の3種類の業務に係る経費を一括して定額で支払うこととしていた。そして、点検保守費の予定価格については、次の3種類のうちのいずれかの方法により積算していた。
(1)建築保全業務積算基準(平成11年版建設大臣官房官庁営繕部監修。以下「積算基準」という。)を準用して、定期点検及び緊急点検に要する1登記所等当たりの年間所要人日数を算出し、これに点検保守業務を実施する技術者の区分に応じた労務単価を乗じて算定した額に、交換修理に要する経費を加えるなどして点検保守費を積算するもの
(2)システム用空調機の価格に一定の保守費率を乗ずることにより算定するもの
(3)会社から見積りを徴して、これをそのまま予定価格としているもの
そして、15法務局において、平成12、13両年度の点検保守費を、それぞれ5317万余円、6223万余円、計1億1540万余円と積算していた。
2 検査の結果
システム用空調機は、登記所等に配備したホストコンピュータを安定して運用するための重要なもので、点検保守費も多額に上っている。そこで、点検保守契約の予定価格の積算が作業の実態を反映した経済的なものとなっているかに着眼して検査した。
検査したところ、前記の15法務局に係る点検保守契約の予定価格の積算について、次のような事態が見受けられた。
(1)積算基準を準用して積算している法務局について
札幌法務局ほか7法務局(注2) においては、積算基準を準用して以下のように点検保守費を積算していた。
ア 年間所要人日数について
定期点検及び緊急点検を行う場合の技術者の年間所要人日数について、システム用空調機の特殊性及び作業の重要性を考慮するなどし、緊急点検が定期点検と同様に相当程度発生するものと見込むなどして、1登記所等当たり年間11.97人日から18.15人日と算定していた。
しかし、定期点検及び緊急点検について作業の実態を調査したところ、次のとおりとなっていた。
(ア)定期点検については、点検時間及び会社の営業所等と登記所等との間の移動時間の実績を用いて、15法務局における1登記所等当たりの定期点検に係る年間所要人日数を算定すると、平均で6.84人日となっていた。
(イ)緊急点検については、記録が整備されていなかった東京法務局を除く14法務局においてその実態を調査したところ、登記所等ごとにその状況は異なっており、1年間で1回も行われていない登記所等があったり、7回行われている登記所等があったりしていた。そして、これらの実績から、1登記所等当たりの緊急点検に係る年間所要人日数を算定すると、平均で0.73人日となっていた。
したがって、定期点検と緊急点検に係る年間の平均所要人日数は計7.57人日となり、上記8法務局が算定した前記11.97人日から、18.15人日は過大なものとなっていた。
イ 技術者の区分について
札幌法務局ほか5法務局(注3)
では、技術者の区分は高度な技術力及び判断力並びに作業の指導等の総合的な技術を有する者である技師B等を適用していた。
しかし、本件作業内容からみて、積算基準に示されている作業の内容判断ができる技術力及び必要な技能を有する者である技師補等を適用すれば足り、これによるのが適切であると認められた。
上記ア及びイより、札幌法務局ほか7法務局において、点検保守費の積算が過大なものとなっていた。
(2)システム用空調機の価格に一定の保守費率を乗ずることにより積算したり、会社から徴した見積金額を予定価格としたりしている法務局について
システム用空調機の価格に保守費率を乗じて予定価格を積算している名古屋法務局ほか5法務局(注4)
では、保守費率を4%から6%としており、これをシステム用空調機の価格に乗じて点検保守費を積算していた。また、大津地方法務局では、会社から徴した見積金額をそのまま予定価格としていた。
しかし、これらの積算額は、積算基準に準じて前記(1)の適正な年間所要人日数及び技術者の区分を適用するなどして算定した積算額と比較するといずれも過大なものとなっていた。
したがって、定期点検に係る点検保守費の積算に当たっては、積算基準を参考にした上で、技術者の年間所要人日数を点検業務の実態に適合したものとしたり、積算基準に則した技術者の区分を適用する要があると認められた。また、緊急点検については、あらかじめ実施回数等を確定することが困難であることから、その都度別途に算定して支払う方法によるのが適切であると認められた。
上記により、点検保守費について修正計算すると、積算額は12年度4004万余円、13年度5187万余円、計9192万余円となり、前記の積算額計1億1540万余円を約2340万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(1)15法務局において、点検保守業務の作業の実態及び内容を十分把握していなかったこと
(2)法務本省において、各法務局のシステム用空調機の点検保守契約について、その予定価格の積算を点検保守業務の実態に適合したものにするための指導が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、法務省では、15年4月に各法務局に対して事務連絡を発し、システム用空調機の点検保守契約に当たり、定期点検の予定価格の積算については、積算基準を準用した具体的な指針を作成して周知した。また、あらかじめ実施回数等を確定することが困難な緊急点検に要する費用については、実施の都度別途に算定して支払うこととするよう指導した。
(注1) | 札幌法務局ほか14法務局 札幌、東京、名古屋、大阪、福岡各法務局及び旭川、宇都宮、新潟、静岡、津、大津、京都、高知、佐賀、那覇各地方法務局 |
(注2) | 札幌法務局ほか7法務局 札幌、東京、福岡各法務局及び宇都宮、新潟、静岡、高知、那覇各地方法務局 |
(注3) | 札幌法務局ほか5法務局 札幌、東京、福岡各法務局及び静岡、高知、那覇各地方法務局 |
(注4) | 名古屋法務局ほか5法務局 名古屋、大阪両法務局及び旭川、津、京都、佐賀各地方法務局 |