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在外公館における会計経理が適正を欠くと認められるもの


(43)(44)在外公館における会計経理が適正を欠くと認められるもの

会計名及び科目 一般会計  (組織)在外公館 (項)在外公館
     (部)雑収入 (款)諸収入 (項)許可及手数料
部局等の名称 (1) 在ソロモン日本国大使館
  (2) 在アトランタ日本国総領事館
在外公館における経費の概要
在外公館の運営に必要となる在外公館設備整備費、在外公館等借料、渡切費等

適正を欠いていた金額 (1) 10,379,151円(平成8年度〜10年度)
  (339,112.25ソロモンドル)
(2) 18,567,871円(平成10年度〜13年度)
  (161,520.94米ドル)
28,947,022円

1 会計経理の概要

 外務省では、外国において相手国政府との交渉、邦人の保護、情報収集等の事務を行うため、大使館、総領事館等の在外公館を計189公館設置している。そして、在外公館を運営するために必要な経費については、その規模等を勘案の上、毎会計年度の初めに年間所要額を決定し、原則として四半期に分けて毎期の初めに各在外公館に配賦することとなっている。
 在外公館の歳入科目の主なものは、手数料、預託金利子収入等であり、歳出科目の主なものは、在外公館設備整備費、在外公館等借料、渡切費(平成14年度予算から廃止)等である。これらの公金は、〔1〕歳入〔2〕前渡資金〔3〕渡切費等の別に銀行口座を設けて出納管理し、その支払は原則として小切手で行い、所定の帳簿に記帳することとなっている。
 在外公館における会計機関は、在外公館会計規程(昭和27年決定)等に基づいて、在外公館の長(以下「館長」という。)が歳入徴収官、契約担当官及び物品管理官となり、館長代理(総領事館等では館長)が収入官吏、資金前渡官吏及び契約担当官となるなどしている。また、渡切費等については、館長が取扱責任者の職務を行うとともに、会計担当者に現金の出納保管の事務を行わせている。
 そして、館長等は、その在外公館における会計経理を指導監督する責務を負っている。

2 検査の結果

 検査したところ、在ソロモン日本国大使館及び在アトランタ日本国総領事館において次のような事態が見受けられた。

(1)在ソロモン日本国大使館

ア 外務省の公表内容等

 外務省は、平成7年1月から10年12月まで在ソロモン日本国大使館で会計等の業務に従事していた一等書記官が、公費で購入したテレビ等の物品を自宅で使用後、これらを後任者等に売却したり、架空の領収書を使ったりして、物品及び現金26,150.00ソロモンドルを領得していたことなどを14年8月に公表した。
 本院が上記の公表内容に関する検査の過程で大使館で保存している会計帳簿等の提出を求めたところ、外務省は渡切費出納簿の確認を行い、帳簿残高が不足していること及び同書記官が同大使館名義の公金口座から日本国内にある同書記官の個人口座に合計209,000.00ソロモンドルを送金していたことを把握した。そして、帳簿残高の不足額は確定していなかったが、外務省は、同書記官が209,000.00ソロモンドルの公金を領得していたことなどを15年8月に公表した。

イ 本院の検査結果

 本院は、7年度以前の証拠書類等は保存期間が経過していて残存していないため、8年度から10年度までの本院が保存する証拠書類及び大使館から提出を受けた会計帳簿等に基づき同大使館の会計経理全般について検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(物品等の不正領得等)

 物品の売却等に関する外務省の公表内容について検査したところ、同書記官は、事務所等で使用する目的で購入したテレビ、冷蔵庫等の物品を自宅で使用後、離任時に後任者等へ売却したり、事務所用のテレビを購入することとして架空の領収書を業者に作成させ現金を領得したりなどしていた。また、事務所で使用する目的で購入した物品が同書記官以外の職員の自宅で使用されていた。このようにして、物品及び現金が同書記官により不正に領得されるなどしたものが6件26,820.00ソロモンドルあった。

(物品の管理及び購入目的不適切)

 さらに、外務省が公表したもののほか、同書記官が在任中に公費で購入した物品について検査したところ、物品管理簿に取得等の記載がなくその所在が確認できないものや同省の内部規定では公費による購入が認められていない物品を購入しているものなどが18件83,317.00ソロモンドルあった。

(渡切費の帳簿残高不足)

 同書記官が公金を領得したとされる渡切費の出納簿等について検査を実施したところ、出納簿には虚偽の金額が記入されており、10年度末で渡切費の残額が本来の金額より228,975.25ソロモンドル少なくなっていた。
 なお、上記228,975.25ソロモンドルのうち、209,000.00ソロモンドルについては、同書記官が私的に流用するために日本に送金したことが判明しているが、残りの19,975.25ソロモンドルについては、その使途は確認できない。
 このような事態が生じていたのは、会計担当者の公金や物品管理に対する認識が著しく乏しかったり、館長の指導監督が十分でなかったりしたことなどによると認められる。
 したがって、物品等及び渡切費計339,112.25ソロモンドル(邦貨換算額10,379,151円)が不正に領得されるなどしていて、会計経理が適正を欠くと認められる。
 また、同大使館では、11年2月には同書記官の領得による物品亡失の事態を把握していたが、売却された物品と同等品を同書記官から返還させるなどしていただけで、物品管理法施行令(昭和31年政令第339号)第37条に定める外務大臣に対する物品亡失の報告をしていなかった。このため、物品管理法(昭和31年法律第113号)第32条に定める外務大臣から本院に対する通知も著しく遅滞している状況である。

(2)在アトランタ日本国総領事館

ア 外務省の公表内容

 外務省では、10年7月から14年3月まで資金前渡官吏の事務補助者である在アトランタ日本国総領事館(以下「総領事館」という。)の会計担当者であった領事(以下「会計担当領事」という。)が、総領事館事務所の賃貸人(以下「家主」という。)から、14年3月に共益費等の過払分として、総領事館を受取人とする額面40,043.55米ドルの小切手を受領し、これを換金し、そのうちの24,301.55米ドルを領得していたことなどを、同年8月に公表した。

イ 賃貸借契約の概要

 総領事館では、総領事館事務所等を借上げるため賃貸借契約を締結している。この契約については、当初2年に契約期間を5年間とする契約を締結し、7年に契約期間を12年4月まで延長する契約を締結した。さらに12年に契約期間を同年5月から17年4月までの5年間とする契約を締結した。その後、事務所の移転により、契約は14年3月で終了した。
 そして、契約によると、共益費については、契約開始年においては共益費相当額は建物借料に含まれ、翌年以降においては契約開始年の共益費相当額を上回る経費が発生することが見込まれる場合、賃借人はこの上回る見込額を追加的な共益費(以下「追加的共益費」という。)として概算で支払い、上記支払額と実績額との間に過不足が生じた場合には精算を行うこととなっていた。

ウ 本院の検査結果

 会計担当領事が在任していた10年度から13年度について、追加的共益費を重点に、総領事館の会計経理について検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(ア)追加的共益費について

〔1〕 平成12年度の支払(外務省の公表に係るもの)

 総領事館では、13年4月20日に、12年5月から13年4月までの1年間の追加的共益費として、47,389.44米ドルを家主へ支払っていた。
 これは、会計担当領事が、13年4月に、家主が上記期間に係る追加的共益費として47,389.44米ドルを請求したとする内容の虚偽の請求書を作成し、家主から12年度の請求があったかのように装ったもので、実際は、家主からの13年の追加的共益費の概算払に係る請求額を水増ししたものであった。
 前記のように、12年に締結した賃貸借契約において、契約開始年である12年の共益費相当額は建物借料に含まれるとされたため、12年5月から同年12月までの間は追加的共益費は生じないことなどから、12年度の追加的共益費の額は、前年度以前に比べて大幅な減額が見込まれるものとなっていた。
 しかし、資金前渡官吏は、会計担当領事から追加的共益費に係る請求額が前年度とほぼ同額であるとの事実と相違した説明を受け、請求内容を十分確認しないまま、請求額どおりに家主あてに小切手を振り出し、全額を家主に支払っていた。
 その後、会計担当領事は、新事務所への移転に当たり、13年4月に支払われていた追加的共益費の概算払分について精算するよう家主に働きかけ、14年3月、この精算額40,043.55米ドルの総領事館あての小切手を家主から受け取った。そして、会計担当領事は、管理を任されていた総領事館名義の総領事の私的銀行口座に全額を入金した後、全額を引き出した。
 そして、会計担当領事は、上記の家主から受け取った40,04355米ドルのうち、15,742.00米ドルを公邸の修繕工事等公的な目的のために支払い、残りの24,301.55米ドル(邦貨換算額2,551,662円)を領得した。

〔2〕 平成11年度及び10年度の支払

i)平成11年度

 総領事館では、12年3月30日に、11年5月から12年4月までの期間に係る11年度の追加的共益費として、46,569.84米ドルを家主へ支払ったとしていた。
 しかし、この支払は、会計担当領事が、虚偽の請求書を作成し、請求額を水増ししたものであった。
 本院がこの支払について検査したところ、振り出された小切手は、資金前渡官吏ではなく、会計担当領事が自ら署名して12年3月30日に振り出したもので、あて先は家主ではなく「Cash」と記載されていた。また、小切手の裏書きとして、口座番号が記載されていた。
 これについて外務省に説明を求めたところ、会計担当領事は、12年3月30日に振り出した小切手により家主へは支払わず、前記〔1〕とは別の会計担当領事が当時管理していた総領事館名義の口座に資金を移したとのことである。
 そして、会計担当領事は家主及び駐車場会社に対して計20,169.78米ドルを支払っていた。
 このように、会計担当領事は、追加的共益費として払い出した46,569.84米ドルのうち上記の20,169.78米ドルを支払うことにより、26,400.06米ドル(邦貨換算額3,168,007円)の差額を発生させていた。

ii)平成10年度

 総領事館では、11年4月14日及び15日に、10年5月から11年4月までの期間に係る10年度の追加的共益費として、計37,609.00米ドルを家主へ支払ったとしていた。
 しかし、この支払は、会計担当領事が虚偽の請求書を作成し、請求額を水増ししたものであった。
 本院がこの支払について検査したところ、支払のために振り出された小切手については、保存期間中であるにもかかわらず、紛失したとのことで本院への提出がなく、支払の相手方、小切手のあて先、署名、日付等を確認することができなかった。
 一方、渡切費口座には、前渡資金口座から前記の37,609.00米ドルが払い出された11年4月28日の同日に、この金額と同額が入金され、同年5月19日にこれと同額が払い出されていた。そして、この渡切費の受払いについては、現金出納簿への記載はなかったが、渡切費の支払のために振り出された小切手には、振出人として会計担当領事の署名があり、あて先には総領事館と記載され、小切手の裏書きとして、前記の11年度の支払に係る小切手に裏書きとして記載されていたものと同じ口座番号が記載されていた。
 これについて外務省に説明を求めたところ、会計担当領事は、11年4月14日及び15日に、前渡資金、計37,609.00米ドルを支払うため小切手を振り出し、支払った資金の流れは会計書類がないため確認できないものの、同額を渡切費口座に入金し、渡切費口座から会計担当領事が管理していた11年度と同じ総領事館名義の口座に移したものとみられるとのことである。
 そして、会計担当領事は家主に対して追加的共益費及び現地職員用の駐車場代として16,686.60米ドルを支払っていた。
 このように、会計担当領事は、追加的共益費として払い出した37,609.00米ドルのうち上記の16,686.60米ドルを支払うことにより、20,922.40米ドル(邦貨換算額2,468,843円)の差額を発生させていた。

iii)差額の使途等

 外務省の説明によれば、会計担当領事は、11年度26,400.06米ドル及び10年度20,922.40米ドル、計47,322.46米ドルの差額については、総領事館のために使用したものもあるが、約3万ドルは飲食費等で私的に流用したとしているとのことである。
 しかし、会計担当領事が当時管理していたとする上記の口座については、12年6月に同領事が閉鎖し、同年7月あるいは8月頃に同口座の帳簿等を処分したとのことであり、外務省においてその入出金状況について不明としているため、本院ではその使途等が確認できない。
 以上のとおり、12年度に24,301.55米ドル(邦貨換算額2,551,662円)が不正に領得され、11年度26,400.06米ドル(同3,168,007円)、10年度20,922.40米ドル(同2,468,843円)、計47,322.46米ドル(同5,636,850円)について使途が確認できなくなっている。

(イ)総領事館における経理について

 在外公館における現金等の取扱いについては、収入官吏が手数料などの歳入金を、資金前渡官吏が職員諸手当等の前渡資金を、また、取扱責任者である総領事が渡切費や報償費を、それぞれ別個に管理することとなっている。
 しかし、総領事館において、本来使途に応じて前渡資金、渡切費、報償費の口座から支払うべきものを、手数料に係る収入金として領収した手元保管中の現金から支払い、本来支払うべき資金の口座から同額を、収入金を管理する歳入金口座へ別途入金しているものが10年度から13年度に58件81,796.93米ドル(邦貨換算額9,407,359円)見受けられた。
 このような会計経理は、収入は国庫に納めなければならず、直ちにこれを使用することができないと定めている会計法(昭和22年法律第35号)の規定に違反している。
 また、報償費について、領収書の日付及び出納簿の払出しの日付より後に小切手を振り出しているものが3件8,100.00米ドル(邦貨換算額972,000円)あった。
 以上のとおり、収入金として手元に保管している現金を支払に充てていたり、領収書の日付及び出納簿の払出しの日付より後に小切手を振り出していたりしていて、適正とは認められない。
 上記のほか、小切手の署名は緊急時に対処する場合以外は資金前渡官吏等が行わなければならないのに、一部を除き会計担当領事が署名していたり、小切手のあて先について、原則債主あてでなければならないのに、債主あてでなく「Cash」と記載しているものが多数見受けられたりするなど、総領事館における経理について適切とは認められない事態が見受けられた。
 このような事態が生じていたのは、会計担当領事の公金に対する認識が著しく乏しかったり、総領事館名義の総領事の私的銀行口座の資金を会計担当領事に保管させるなどしていたり、内部統制機能が働いていなかったり、総領事及び資金前渡官吏の指導監督が十分でなかったりしたことなどによると認められる。
 したがって、会計担当領事が領得した追加的共益費24,301.55米ドル(邦貨換算額2,551,662円)及び使途が確認できない追加的共益費47,322.46米ドル(同5,636,850円)、計71,624.01米ドル(同8,188,512円)並びに会計法令に違反した取扱いをするなどしていた収入金等89,896.93米ドル(同10,379,359円)、合計161,520.94米ドル(同18,567,871円)に係る会計経理が適正を欠くと認められる。