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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 財務省|
  • 不当事項|
  • 租税(46)−(48)

租税債権保全のための適切な措置を講じていなかったもの


(47)租税債権保全のための適切な措置を講じていなかったもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
   (項)各税受入金
部局等の名称 東京国税局
債権発生の原因となった国税の種別 消費税
納税者 1法人
保全されていなかった租税債権の額 24,340,065円

1 滞納整理事務の概要

(滞納整理事務の内容)

 国税局又は税務署では、国税徴収法(昭和34年法律第147号。以下「徴収法」という。)等に基づき、納税者がその納付すべき国税をその納付の期限(以下「法定納期限」という。)までに納付しない場合は、納付を督促したり、財産の差押えをしたりするなどの滞納整理事務を行っている。

(担保権付きの納税者の財産が譲渡された場合の取扱い)

 徴収法第22条第1項によると、納税者が他に国税に充てるべき十分な財産がない場合において、その者が国税の法定納期限後に登記した質権又は抵当権(以下「抵当権等」という。)を設定したまま財産を譲渡したときは、納税者の財産につき滞納処分を執行しても滞納税額に不足すると認められる場合に限り、その質権者又は抵当権者(以下「抵当権者等」という。)から、これらの者がその譲渡財産の強制換価手続(注) において、その抵当権等によって担保される債権につき配当を受けるべき金額のうちから国税の徴収をすることができることとなっている。
 そして、同条第3項等によると、この国税の徴収をするため、国税局長又は税務署長は、抵当権者等が抵当権等の実行をしないときは、その抵当権者等に代位して抵当権等を実行することができることとなっている。

強制換価手続 国税徴収法上、滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続及び破産手続を指すもので、債務者等の財産を売却して代金を債権者に分配することを目的とする手続をいう。

2 検査の結果

 東京国税局が不動産仲介業を営むA法人(平成15年8月28日現在の滞納額は消費税等111,818,328円)について行っている滞納整理事務について検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、A法人は法定納期限が5年3月1日以降の消費税を滞納していた。一方、A法人は、その所有する財産のうち茨城県下館市所在の土地(951.8m 。以下「本件土地」という。)を12年9月26日に売却したが、本件土地には9年11月27日に市中銀行の根抵当権が登記(極度額4500万円)されていた。また、A法人について同日より前に法定納期限が到来し滞納となっていた消費税(法定納期限が5年3月1日から8年12月2日までの分、延滞税を含む。)は24,340,065円となっていた。
 そして、本件土地の売却当時、A法人の所有する他の土地等には国税の徴収に優先する抵当権が設定されるなどしていたため、本件土地のほかに国税に充てるべき十分な財産はなく、A法人の財産につき滞納処分を執行しても滞納税額に不足する状況となっていた。
 東京国税局では、本件土地の売却後、上記のとおり徴収法第22条を適用して国税の徴収ができる状況になっており、また、市中銀行が本件土地に設定されている根抵当権を実行していないのに、本院の検査(15年2月)に至るまで、国税の徴収のため市中銀行に代位して根抵当権を実行していなかった。
 しかし、徴収法第22条は本件土地に設定されている根抵当権が消滅したときは適用できなくなること、A法人の所有する他の土地等には国税の徴収に優先する抵当権が設定されるなどしており、本件土地以外に国税の徴収が優先される財産がないことから、本件士地について、東京国税局が市中銀行に代位して根抵当権を実行していないのは適切とは認められない。
 したがって、A法人の滞納消費税等111,818,328円のうち、法定納期限が5年3月1日から8年12月2日までの分24,340,065円については、租税債権保全のための適切な措置が講じられておらず、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、東京国税局において、国税の徴収についての検討が十分でなかったことによるものと認められる。