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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 財務省|
  • 不当事項|
  • 租税(46)−(48)

地方税の滞納に基づく債権差押えをされていた還付金等を法人に支払ったため、差押債権者である地方公共団体に更に還付金を支払うこととなるなどして損害が生じたもの


(48)地方税の滞納に基づく債権差押えをされていた還付金等を法人に支払ったため、差押債権者である地方公共団体に更に還付金を支払うこととなるなどして損害が生じたもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)還付金
   (項)各税還付金
部局等の名称 東京国税局(支出庁)、京橋税務署(原所轄庁)
支払の根拠 法人税法(昭和40年法律第34号)、国税通則法(昭和37年法律第66号)
還付金等の内容 法人税の還付金及び還付加算金
支払の相手方 1法人及び1地方公共団体
還付金等の支払額 A法人  36,240,789円
B地方公共団体  56,132,889円
合計  92,373,678円
不当と認める還付金等の額 A法人  36,240,789円
B地方公共団体 8,424,700円
合計  44,665,489円

1 還付処理の概要

(還付金等の概要)

 税務署では、法人税法(昭和40年法律第34号)及び国税通則法(昭和37年法律第66号)の規定により、法人税に係る還付金があるときは遅滞なく還付することとなっている。そして、還付金を還付する場合には、納付の日などの翌日(以下「計算の始期」という。)から還付のための支払決定の日までの期間の日数に応じ、その金額に原則として年7.3%の割合を乗じて計算した金額を還付加算金として還付金に加算することとなっている。また、還付を受けるべき者につき納付すべきこととなっている国税があるときは、還付金及び還付加算金(以下「還付金等」という。)をその国税に充当することとなっている。
 さらに、還付の相手方は原則として納税者等であるが、その還付金請求権について滞納処分による差押えがあった場合には、差押えに係る部分に相当する額は、差押債権者に還付することとなっている。
 そして、還付処理については、原則として税務署が行うこととなっているが、還付の相手方に係る滞納処理が国税局に引き継がれている場合には、国税局が行うこととなっている。

(仮装経理による過大申告に係る還付の概要)

 仮装経理による過大申告(注) について更正がなされた場合には、法人税法第70条の規定により、当該事業年度の所得に対する法人税として納付された金額のうち当該更正により減少する部分の金額で当該仮装して経理した金額に係るものは、当該更正の日の属する事業年度開始の日から5年以内に開始する事業年度の所得に対する法人税の額から順次控除することとなっている。そして、控除しきれない金額は、最終事業年度分確定申告書の提出期限まで還付を留保する(以下、この還付を留保する期間を「還付留保期間」という。)こととなっていて、当該最終事業年度まで、控除未済税額等を記載した「仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う控除法人税額の計算」表(以下「控除税額計算表」という。)を作成することとなっている。また、この場合の還付加算金に係る計算の始期は、還付留保期間の最終事業年度分確定申告書の提出期限の翌日になる。

仮装経理による過大申告 所得を水増しして粉飾決算を行うことにより、法人税額を過大に申告すること

2 検査の結果

 東京国税局がその所管するA法人(京橋税務署管内所在)について行った還付処理について検査したところ、次のような事態が見受けられた。
〔1〕 東京国税局は、A法人が平成元年4月から3年3月まで2事業年度分の法人税について仮装経理により過大に申告し税額計128,046,000円を納付していたことから、7年1月31日に、2事業年度分の上記税額はないとする減額更正をした。
 この減額更正により還付金請求権128,046,000円が発生したが、A法人は、上記減額更正の日の属する事業年度である7年2月期(6年2月期より事業年度変更)からの5事業年度について納付すべき法人税額がなかったことから、上記の仮装経理に係る法人税額計128,046,000円の全額について、その還付が還付留保期間の最終事業年度である11年2月期分確定申告書の提出期限(11年5月31日)まで留保されていた。
〔2〕 〔1〕により発生した還付金請求権については、8年5月31日にB地方公共団体が地方税の滞納(滞納額は延滞金を含め97,881,948円)に基づき債権差押えをした。そして、これに係る債権差押通知書は、還付処理を行うこととされている京橋税務署に同年6月3日に送達された。
〔3〕 東京国税局は、控除税額計算表を作成していなかったため、留保された還付金があることを把握していなかったが、12年になってA法人から問い合わせがあり、本件還付金請求権の存在が判明した。また、A法人は7年5月以降国税を滞納し、これに係る事務処理を同国税局が京橋税務署から引き継いで行っていたため、同税務署は、12年6月13日に前記〔1〕の減額更正に係る還付処理を同国税局に引き継いだ。しかし、同税務署における上記〔2〕の債権差押通知書に係る事務処理が適切でなかったため、同通知書は同国税局への引継書類に含まれていなかった。
〔4〕 東京国税局は、12年7月26日にA法人に対して、還付金128,046,000円に滞納国税91,920,911円(納期限が12年5月31日までの分)を充当した差額36,125,089円に、同年7月1日から同日までの期間に係る還付加算金115,700円を加算した36,240,789円を支払った。
〔5〕 その後、14年12月になってB地方公共団体からの問い合わせにより、本件還付金請求権について債権差押えがなされていることが判明したため、東京国税局は改めて還付処理を行い、15年1月24日にB地方公共団体に対して、還付金128,046,000円に滞納国税80,337,811円(納期限が11年5月31日までの分)を充当した差額47,708,189円に、11年6月1日から同日までの期間に係る還付加算金8,424,700円を加算した56,132,889円を支払った。また、A法人に対しては、上記〔4〕により支払った金額を返納するよう請求しているが、A法人は解散決議をして清算中で、回収は困難な状況である。
 しかし、本件還付金請求権については差押えがなされており、差押えに係る部分に相当する額は差押債権者に還付すべきものである。そして、本件還付金請求権は仮装経理に基づく過大申告により納付された法人税に係るものであるから、還付処理は還付留保期間の最終事業年度分確定申告書の提出期限(11年5月31日)経過後遅滞なく行うべきものであり、また、還付加算金に係る計算の始期は、同提出期限の翌日の11年6月1日である。
 したがって、適正な還付処理を行っていれば、A法人に対して上記〔4〕の還付金等36,240,789円を支払う要はなかったものであり、また、B地方公共団体に対する還付金の支払に当たり上記〔5〕の還付加算金8,424,700円を加算する要もなかったものであるから、これらの合計44,665,489円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、京橋税務署において本件還付金請求権に係る債権差押通知書の取扱いが適切でなく、同通知書が東京国税局に引き継がれなかったことなどによると認められる。