会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)生涯学習振興費 |
部局等の名称 | 文部科学本省 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者(事業主体) | 府1、県9、市34、町25、村1、事務組合1 計71事業主体 |
間接補助事業者(事業主体) | 市13、町12、村2 計27事業主体 |
補助事業 | 学習活動支援設備整備事業(情報通信技術関連特別対策情報通信設備整備) |
補助事業の概要 | 公民館、図書館等の社会教育施設等に情報通信技術学習環境の整備を行う都道府県又は市町村等に対して定額を補助するもの |
事業費 | 25億2926万余円 | (平成12、13両年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 23億8621万余円 | |
補助事業の目的を十分に達成しているとは認められないなどの事業費 | 7億6550万円 | (平成12、13両年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 7億2740万円 |
1 制度の概要
文部科学省(平成13年1月5日以前は文部省)では、12年10月に政府の決定した「日本新生のための新発展政策」に基づき、総務省(13年1月5日以前は自治省)が国民に情報通信技術(以下「IT」という。)に係る基礎技能を習得させるために行った情報通信技術講習推進特例交付金事業(以下「IT基礎技能講習事業」という。)と連携協力するため、12年度に、学習活動支援設備整備事業(情報通信技術関連特別対策情報通信設備整備)を実施(一部は13年度に繰越し)している。
この事業は、社会参加促進費補助金交付要綱(平成9年文生生第130号。以下「交付要綱」という。)に基づき、人々の生涯にわたる学習活動を通じた社会参加活動を促進することを目的とした社会参加促進事業の一環として実施するもので、公民館、図書館等の社会教育施設等にITの学習環境を整備する都道府県又は市町村等(以下「事業主体」という。)に対して、その整備に要する費用の一部として、社会参加促進費補助金を交付するものである。
総務省のIT基礎技能講習事業は、国民にパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)の基本操作などのIT基礎技能を習得させるため、1講座当たり12時間程度のIT基礎技能講習を行うこととして、総務省において、これに必要な講師の謝金等の経費を12年12月に都道府県に対し情報通信技術講習推進特例交付金として交付したものである。このIT基礎技能講習事業は、都道府県又は市町村等の社会教育施設等、学校、民間施設等で12、13両年度に実施され13年度末までにその大部分が終了しているが、一部については特例的に14年12月末まで引き続き実施されている。
なお、本件IT基礎技能講習事業については、平成13年度決算検査報告にその実施状況を「特定検査対象に関する検査状況」として掲記したところである。
上記のIT基礎技能講習事業は、社会教育施設等においては約1万1000施設で実施され、延べ約290万人が受講しており、文部科学省では、事業主体がIT基礎技能講習事業を行うのに必要となるパソコン、プリンタ等のIT学習環境を整備するため、前記のとおり事業主体に対し国庫補助金を交付している。そして、その交付額は12、13両年度で計185億5517万余円となっており、これにより整備されたパソコンは、全国6,979箇所の社会教育施設等で117,296台に上っている。
文部科学省では、本件補助事業により整備されたパソコン等については、IT基礎技能講習事業終了後においても、交付要綱において、補助事業者が善良な管理者の注意をもって管理し、補助金交付の目的に従ってその効率的運用を図らなければならないとしている。そして、14年2月の事務連絡において、IT基礎技能講習事業期間中のみならず同事業終了後においても、〔1〕「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和30年法律第179号)の趣旨に沿い財産処分制限期間(5年間)内に無断で処分することのないようにするなど事業主体が責任を持って適切な管理を行うこと、〔2〕地域住民の自学自習などの社会教育事業に有効活用すること、〔3〕事務用等への転用は行わないことなどとしている。
2 検査の結果
上記のように、12、13両年度において多額の国庫補助金を投入して全国の社会教育施設等に整備されたパソコンの台数は約11万7000台と膨大であり、また、IT基礎技能講習事業終了後においても、これを適切に管理運用し、社会教育のために有効活用することが求められている。
そして、本件補助事業と連携協力して実施されたIT基礎技能講習事業の大部分が13年度において終了し、IT基礎技能講習において当該パソコンを使用することがなくなったことから、同事業がほぼ終了した14年度において、本件補助金の交付を受けて整備されたパソコンの管理が適切になされているか、パソコンが社会教育のために有効活用されているかなどに着眼して検査した。
福島県ほか17府県(注1) の182事業主体819社会教育施設等において、12、13両年度に本件事業により整備されたパソコン15,304台等(補助対象事業費25億2926万余円、国庫補助金23億8621万余円)を対象として検査した。
検査したところ、整備されたパソコンの管理が適切でなかったり、パソコンが社会教育のために有効に活用されていなかったりしていて、本件補助事業の目的を十分に達成しているとは認められないなどの事態が、福島県ほか16府県(注2)
の98事業主体276社会教育施設等において4,662台(補助対象事業費約7億6550万円、国庫補助金約7億2740万円)見受けられた。
これらを態様別に示すと次のとおりである((1)、(2)の態様には、事態が重複しているものがある。)。
(1)パソコンの管理が適切でないと認められるもの
15府県 | 34事業主体 | |
109施設 | 1,982台 |
これらは、14年度において、物品管理簿に登載されていなかったり、物品標示票が貼付されていなかったりしているもの(1,906台)や、文部科学省の承認を得ずに、パソコンが廃棄されていたり、民間の団体に対して貸し付けられていたりなどしていたもの(76台)で、事業主体において、善良な管理者の注意をもってパソコンを管理しているとは認められないものである。
<事例1>
A町では、IT基礎技能講習を町民センターほか4施設において実施するのに必要であるとして、平成13年3月に事業費2079万円(国庫補助金2039万余円)でデスクトップパソコン84台、ノートパソコン40台、計124台等を購入し、各施設に設置している。
しかし、同町の会計規則においても保管に係る備品には物品標示票を貼付しておかなければならないとされているのに、同町では、15年5月の実地検査時においても124台すべてについてこれを貼付しておらず、このうち4台については、故障していて使用できないのに、半年以上も修理をせずに放置されていた。
(2)パソコンが社会教育のために有効に活用されていなかったと認められるもの
17府県 | 85事業主体 | |
204施設 | 3,089台 |
これらは、次のとおり、14年度において、各社会教育施設等が独自に行った講習等(以下「IT講習」という。)にパソコンが全く使用されていなかったり、その使用頻度が著しく低い状況となっていたりしていた上、地域住民の行うパソコンの自学自習や公民館のサークル活動等にも全く使用されていなかったものや、補助の目的外に使用されていたもので、社会教育のために有効に活用されていなかったと認められるものである(〔1〕、〔2〕の態様には、事態が重複しているものがある。)。
〔1〕 パソコンがIT講習に全く使用されていなかったり、その使用頻度が著しく低い状況となっていたりしていた上、地域住民の自学自習等にも全く使用されていなかったもの
17府県 | 71事業主体 | |
164施設 | 2,857台 |
これらは、パソコンがIT講習に全く使用されていなかったり、その使用頻度が著しく低い状況となっていたりしていた上、地域住民の自学自習等にも全く使用されていなかったものである。
すなわち、14年度のIT講習における各社会教育施設ごとのパソコン1台当たりの年間使用時間についてみると、15,304台の3分の2程度がIT基礎技能講習の5講座分に相当する60時間にも満たないものであり、全体的に使用頻度が低い状況となっていた。また、そのほとんどが地域住民の自学自習等にも使用されていない状況であった。
そして、このうち、パソコンがIT講習に全く使用されていなかったものが128施設で2,170台、年間使用時間が1〜11時間のものが36施設で687台となっており、これら計164施設の計2,857台(全台数の18.6%)については、IT基礎技能講習の1講座分さえも使用されておらず、パソコンが社会教育施設等の倉庫に保管されるなどしている状況であった。
<事例2>
B県では、IT基礎技能講習を県立図書館ほか8施設において実施するのに必要であるとして、平成13年3月に事業費3386万余円(国庫補助金同額)でノートパソコン216台等を購入し、各施設に設置している。
しかし、これらのパソコンのIT講習における14年度の年間使用時間についてみると、全く使用されていなかったものが2施設で45台、1〜11時間しか使用されていなかったものが3施設で67台見受けられた。そして、これらは、地域住民の行うパソコンの自学自習や公民館のサークル活動等にも全く使用されていない状況であった。
〔2〕 パソコンが補助の目的外に使用されていたもの
12府県 | 54事業主体 | |
120施設 | 1,493台 |
これらは、補助の目的外である事業主体職員の一般事務等に使用されていたもので、このうち特に、12府県39事業主体75施設の1,221台はIT講習等には使用されずに専ら一般事務等に使用されていた。
<事例3>
C村では、IT基礎技能講習を公民館分室(村立小学校内に設置)において実施するのに必要であるとして、平成13年3月に事業費514万余円(国庫補助金509万余円)でデスクトップパソコン20台、ノートパソコン11台、計31台等を購入している。
しかし、同村では、このうちノートパソコン11台については、村立小学校の職員室に移設し、専ら教職員の一般事務に使用していた。
このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。
ア 事業主体において、多額の国庫補助金により購入したパソコンをIT基礎技能講習事業終了後においても適切に管理し、地域住民の自学自習に使用するなど社会教育のために有効活用することについて十分認識していなかったこと
イ 文部科学省において、パソコンの管理を適切に行うとともに社会教育のために有効活用するなど補助事業の適切な執行を図るための事業主体に対する指導が十分でなかったこと、特にIT基礎技能講習事業終了後においてパソコンを社会教育のために有効活用するための方策について事業主体に対し周知徹底していなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省では、事業主体においてパソコン等の適切な管理及び有効活用を図るよう、15年9月に同省主催の会議において事業主体に周知させるとともに、同年10月に各都道府県教育委員会に対し通知を発し、次のような処置を講じた。
(ア)事業主体がパソコン等を目的外使用、廃棄等することのないよう、財産処分に係る承認、報告等の手続について明確化を図るなどした。
(イ)事業主体に対し、人々の社会参加活動を促進することとする本件補助金の目的を周知徹底し、パソコン等について、各事業主体の会計規則に基づき物品管理簿に登載するなどこれを適切に管理し、また、社会教育のために有効活用するよう求めた。
(ウ)事業主体に対し、パソコンの具体的な活用例を示すなどした事例集を配付して、事業主体がパソコンを社会教育のために有効活用する際の参考に資することとした。
(エ)事業主体に対し、パソコン等の現在の利用状況及び今後の利用計画を16年2月までに同省に提出させることとし、事業主体におけるパソコン等の活用状況を同省において確認することとした。
(注1) | 福島県ほか17府県 京都、大阪両府、福島、神奈川、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、島根、福岡、佐賀、鹿児島、沖縄各県 |
(注2) | 福島県ほか16府県 京都、大阪両府、福島、神奈川、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、島根、福岡、佐賀、鹿児島、沖縄各県 |