科目 | (項)業務収入 |
(本州四国連絡橋公団 (項)道路業務収入) | |
部局等の名称 | 東北、北陸、中部、関西、中国、九州各支社、東京管理局 |
通行料金別納制度の概要 | 日本道路公団が管理する高速道路及び一般有料道路のうち同公団が指定するもの又は本州四国連絡橋公団が管理する本州四国連絡道路のいずれかを1年を通じて月平均1万円以上利用することにより、それぞれの道路の1箇月分の通行料金を翌月末までに支払うことができる制度で、当該1箇月分の通行料金の合計額に応じて割引を行うもの |
通行料金別納制度の利用実績 | 1兆5895億4982万余円(平成13、14両年度) |
通行料金別納制度を利用している組合数 | 1,185組合(平成13年度) |
1,165組合(平成14年度) | |
組合員以外の者が制度を利用していた組合数及び利用者数 | 66組合、1,883社等 |
上記の1,883社等に係る高速道路等の利用額 | 52億5638万余円 | (平成13、14両年度) |
過大となっていた割引額 | 14億6387万余円 | (平成13、14両年度) |
組合員以外の者が制度を利用して本州四国連絡橋公団から割引を受けていた組合数及び利用者数 | 6組合、1,262社等 | |
上記の1,262社等に係る本州四国連絡道路の利用額 | 6310万余円 | (平成13、14両年度) |
過大となっていた割引額 | 761万余円 | (平成13、14両年度) |
過大となっていた割引額の計 | 14億7148万円 | (平成13、14両年度) |
1 通行料金別納制度の概要
日本道路公団(以下「道路公団」という。)では、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)に基づき、管理する高速道路の通行料金の額について国土交通大臣の認可を受けて決定している。
そして、高速道路の利用の促進や定着を図るため、利用者間の一定の公平が保たれる範囲で、通行料金の各種の割引制度を国土交通大臣の認可を受けて導入している。これらの割引制度には、〔1〕大量利用交通を促進し、大口利用者の定着を図るための通行料金別納制度(以下「別納制度」という。)による割引、〔2〕小口利用者に対するサービスの向上及び利用の定着を図るための回数券割引及びハイウェイカード割引、〔3〕有料道路自動料金収受システム(Electronic Toll Collection System。以下「ETC」という。)の利用者の利便性を高め、一層の利用促進を図るためのETC割引などがある。
このうち別納制度は、道路公団が管理する高速道路及び一般有料道路のうち同公団が指定するもの(以下「高速道路等」という。)又は本州四国連絡橋公団(以下「本四公団」という。)が管理する本州四国連絡道路(以下「本四道路」という。)のいずれかを1年を通じて月平均1万円以上利用することにより、それぞれの道路の1箇月分の通行料金を翌月末までに支払うことができる制度である。そして、別納制度の利用者(以下「別納利用者」という。)は、道路公団又は本四公団のいずれかが発行し貸与する「別納カード」を利用して高速道路、一般有料道路である東京湾アクアライン及び京葉道路並びに本四道路を通行することにより、表1から表4のとおり、通行料金の合計額(以下「利用額」という。)の1箇月分の金額を各部分に区分し、その部分ごとに5%から30%の割引率を乗じて得た金額の合計額の割引が受けられることになっている。
利用額の1箇月分の金額 | 割引率 | |||||||||||||||||||||
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利用額の1箇月分の金額 | 割引率 | ||||||||||||
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利用額の1箇月分の金額(注) | 割引率 | ||||||||||||||||||
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利用額の1箇月分の金額 | 割引率 | |||||||||
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別納制度は、昭和38年に路線バス及び路線トラックを運行する法人を対象とする通行料金の後納制度(割引なし)として導入されたものである。その後、41年に大量利用の促進及び大口利用者の定着を図ることを目的として、別納制度の利用対象者を個人及び法人に拡大するとともに、1箇月の利用額に応じて料金を割り引く現在の仕組み(当時の最大割引率20%)が導入され、以来、通行料金の改定に合わせて割引率等の変更が数度にわたり行われてきている。
そして、44年に、大企業と中小企業との間の利用額の差による割引率の格差を考慮して、別納制度の利用対象者に、中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号。以下「中協法」という。)に定める事業協同組合(注1)
(以下「組合」という。)の組合員を加えている。この制度改正により、組合に加入している中小企業者はその組合全体の利用額の1箇月分の金額に応じて割引が受けられることとなり、単独で制度を利用する場合より高率の割引が受けられることとなった。
その後、別納制度については、一部の組合により不適切に利用されてきた点を是正するため、平成15年9月に道路公団において現行の制度を廃止する決定を行っており、同月末には新規受付を中止している。そして、16年度を目途に新制度を創設するとしているが、既契約者については契約の有効期間(最長16年度末まで)内は従前どおり利用でき、また、新制度が発足するまでの間は暫定措置として有効期間が経過しても引き続き契約を継続できることとされている。
なお、道路公団では、12年度末から、別納カードを料金収受員との受け渡しによる収受処理にしか対応できない従来の別納カードからETCの車載器に挿入して無線通行する収受処理にも対応できる「ETC別納カード」に切り替えてきており、組合については14年度内に切替えが終了しており、15年度内にはすべてのカードの切替えが終了するとしている。
別納制度の利用を希望する者は、道路公団及び本四公団制定の「ETC別納カード利用約款」(以下「利用約款」という。)を承諾のうえ、道路公団又は本四公団の支社又は管理局に利用申込みをすることとされている。
そして、利用約款第3条によると、別納制度の利用申込みは個人又は法人単位で行うこととされており、組合が申込みを行う場合に限り組合員の利用申込みを組合の名において一括して行うことができるとされている。すなわち、組合は組合員以外の者の利用申込みを行うことができないので、組合員以外の者が組合として別納制度を利用することはできないこととなる。
組合員の要件については、中協法第7条及び第8条により資本金、従業員数等について一定の要件が定められているほか、同法第10条によると、組合員は出資1口以上を有しなければならないこととされている。また、同法第15条によると、組合に加入しようとする者は、定款の定めるところにより、組合の承諾を得て引受出資口数に応ずる金額の払込みをしたとき又は組合員の持分を承継したときに組合員となるとされている。
道路公団では、利用約款第3条に基づき、組合から別納制度の利用申込みを受け付ける際に、利用申込書、法人登記簿、自動車検査証(写し)、決算報告書、ETC別納カードを利用する組合員の名簿(以下、この名簿を「利用者名簿」という。)等の書類を提出させることとしている。そして、提出された書類により、組合が別納制度の利用を目的として設立されたものではないか、設立後1年を経過しかつその間において定款で定める事業の実績があるかなどについて審査を行い、その結果、問題がなければ利用の承諾を行い、当該組合に所要枚数のETC別納カードを貸与している。
また、別納カードからETC別納カードに切り替える際も、組合から利用申込書、自動車検査証(写し)、利用者名簿等の書類を改めて提出させ、これにより審査を行った後、ETC別納カードに切り替えている。
さらに、既に利用の承諾を行っている組合に対しては、組合の事業実績を把握するため、毎年度、決算報告書等を提出させ、別納制度に関する事業以外の事業の実績があるか否かなどについて審査を行っている。
道路公団の13、14両年度における別納制度の利用実績は、表5のとおり、利用額は13年度7906億円、14年度7988億円で、これに対する割引額は13年度2211億円、14年度2247億円と多額に上っており、平均割引率は13年度28.0%、14年度28.1%となっている。
このうち組合の利用実績についてみると、利用者数は13年度1,185組合、14年度1,165組合となっており、利用している組合の数は利用者数全体の約15%となっているが、利用額は13年度6215億円、14年度6401億円に上っており、別納制度における利用額全体の約80%を占めている。そして、その割引額も13年度1794億円、14年度1850億円に上っており、割引額全体の約80%を占めていて、その平均割引率は両年度ともに28.9%となっている。
利用者種別 | 利用者数 | カード発行枚数 (千枚) |
利用額 (百万円) |
割引額 (百万円) |
平均割引率 (%) |
個人 (構成比) |
170 (2%) |
0.5 (0.03%) |
478 (0.1%) |
94 (0.04%) |
19.8 |
法人 (構成比) |
6,738 (83%) |
217 (12%) |
168,631 (21%) |
41,637 (19%) |
24.7 |
組合 (構成比) |
1,185 (15%) |
1,618 (88%) |
621,575 (79%) |
179,412 (81%) |
28.9 |
合計 | 8,093 | 1,835 | 790,684 | 221,144 | 28.0 |
注(1) | 本四公団が貸与したカードによる利用実績を含む。 |
注(2) | 単位以下四捨五入しているため、合計額が合わない箇所がある。 |
利用者種別 | 利用者数 | カード発行枚数 (千枚) |
利用額 (百万円) |
割引額 (百万円) |
平均割引率 (%) |
個人 (構成比) |
170 (2%) |
0.5 (0.03%) |
478 (0.1%) |
94 (0.04%) |
19.8 |
法人 (構成比) |
6,738 (83%) |
217 (12%) |
168,631 (21%) |
41,637 (19%) |
24.7 |
組合 (構成比) |
1,185 (15%) |
1,618 (88%) |
621,575 (79%) |
179,412 (81%) |
28.9 |
合計 | 8,093 | 1,835 | 790,684 | 221,144 | 28.0 |
注(1) | 本四公団が貸与したカードによる利用実績を含む。 |
注(2) | 単位以下四捨五入しているため、合計額が合わない箇所がある。 |
2 検査の結果
道路公団における別納制度は、大量利用の促進及び大口利用者の定着を図ることを目的とした制度であるが、現在は、組合が利用額の大半を占めており、割引額も多額に上っている。このことから、組合による別納制度の利用が適切に行われているかなどの点に着眼して検査した。
道路公団北海道支社ほか7支社(注2) 及び東京管理局(以下「各支社・局」という。)が利用の承諾を行った組合のうち、15年8月現在において別納制度を利用している1,071組合について検査した。
別納制度の利用申込み受付の際及び別納カードからETC別納カードへの切替えの際に、各支社・局において、組合から利用者名簿を提出させていたが、その名簿に記載されている者がその組合の組合員であることを確認していなかった。
一方、中協法第39条において、組合の理事は各組合員について、〔1〕氏名又は名称及び住所、〔2〕加入の年月日、〔3〕出資口数、払込済金額及びその払込みの年月日を記載した組合員名簿(以下、この名簿を「法定名簿」という。)を主たる事務所に備え付けなければならないこととされている。そして、組合の債権者は、何時でも、理事に対して法定名簿の閲覧又は謄写を求めることができることとされている。
そこで、道路公団に、別納制度を利用しているすべての組合から法定名簿の提出を受け、法定名簿と利用申込みの際などに提出されている利用者名簿や直近の決算報告書等と比べるよう求めたところ、東北支社ほか5支社(注3)
及び東京管理局が利用の承諾を行った66組合(別納利用者13,461組合員)において組合に対して出資を行っていない者が1,883社等見受けられた。
しかし、前記のとおり、中協法において組合員は出資1口以上を有しなければならないこととされていることから、これらの者は組合員とは認められない。また、道路公団では、利用約款において、組合が組合の名で一括して別納制度の利用申込みができる者を当該組合の組合員に限定している。
したがって、上記66組合の1,883社等に対してETC別納カード10,830枚(15年8月現在、以下同じ。)を貸与して高速道路等を通行させていたこと(これに係る13、14両年度の高速道路等の利用額は計52億5638万余円)は適切とは認められず、66組合(13、14両年度に組合員以外の者の利用実績がなかった1組合を含む。)に対して13、14両年度の高速道路等の利用額を計14億6387万余円過大に割り引いていると認められた。
また、これらのうち関西支社及び中国支社が利用の承諾を行った6組合の1,262社等が、道路公団から貸与されたETC別納カードで本四道路を通行したため(これに係る13、14両年度の本四道路の利用額は計6310万余円)、本四公団が6組合に対して13、14両年度の本四道路の利用額を計761万余円過大に割り引いていると認められた。
なお、本四公団が利用の承諾を行った47組合のうち5組合(別納利用者2,032組合員)の123社等(ETC別納カード295枚)についても同様の事態があり、これらの者が本四公団から貸与されたETC別納カードで高速道路等を通行したため(これに係る13、14両年度の高速道路等の利用額は計2億2061万余円)、道路公団が5組合に対して13、14両年度の高速道路等の利用額を計5919万余円過大に割り引いていると認められた。(後掲「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」
)
以上により、組合員以外の者に別納制度を利用させていた組合に対して是正の処置を講ずるとともに、別納制度による通行料金の割引に当たり、適時に法定名簿を提出させるなどして別納利用者が組合員であることを確認することなどにより、別納制度の運用の適正化を図る要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、組合において制度を利用することができる者の範囲について十分に理解していなかったことにもよるが、道路公団において、次のことなどによると認められた。
(ア) 別納制度を利用することができる者の範囲についての組合に対する周知が十分でなかったこと
(イ) 利用申込みの際などに法定名簿の提出を求めていないなど、別納利用者が組合員であることを確認するなどの審査が十分に行われていなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、道路公団では、前記のとおり、15年9月に別納制度の新規受付は中止しているが、組合を脱退した者が別納制度を引き続き利用することなどを防止する必要があるため、同年10月に、別納制度の運用の適正化が図られるよう次のような処置を講じた。
(ア) 組合に対して通知を発し、別納制度を利用することができる者の範囲を周知徹底した。
(イ) 組合の事業年度終了後に法定名簿を提出させ、別納利用者が組合員であることを確認することなどを内容とする審査要領を作成し、各支社・局に通知した。
(ウ) 本四公団と担当者会議を開催するなど情報交換を密にし、別納制度の不適切な利用をさせないようにした。
また、同年11月までに、組合員以外の者が別納制度を利用していた組合に対して、過大となっていた割引額の返還請求を行うとともに、利用約款に基づく割引の停止などの措置を講じた。
(注2) | 北海道支社ほか7支社 北海道、東北、北陸、中部、関西、中国、四国、九州各支社 |
(注3) | 東北支社ほか5支社 東北、北陸、中部、関西、中国、九州各支社 |