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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 阪神高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

道路保全工事等における機械足場工費及びパイプ吊り足場工事の積算を適切なものとするよう改善させたもの


道路保全工事等における機械足場工費及びパイプ吊り足場工事の積算を適切なものとするよう改善させたもの

科目 (項)高速道路改築事業費
(項)負担金等受入建設費
(項)維持修繕費
(項)業務管理費
部局等の名称 大阪、湾岸、神戸各管理部、大阪建設局
工事名 裏面化粧板設置工事(13−1−環)ほか35工事
工事の概要
高速道路の道路保全工事等の一環として、高所作業車を使用して高架橋の点検等を行う工事

工事費 116億3833万余円  
請負人 株式会社泉建設工業ほか34会社等
契約 平成12年9月〜14年11月
公募型指名競争契約、指名競争契約、随意契約
機械足場工費及びパイプ吊り足場工費の積算額 4億7926万余円  
低減できた機械足場工費及びパイプ吊り足場工費の積算額 2990万円  

1 工事の概要

(工事の内容)

 阪神高速道路公団(以下「公団」という。)大阪管理部ほか3管理部等(注1) では、平成13、14両年度に、高速道路の高架橋等を良好な状態に保つため、高架橋等の点検、桁の塗替え等の道路保全工事及び橋りょう上部の耐震補強工事(以下、これらの工事を「道路保全工事等」という。)を36工事(工事費総額116億3833万余円)施行している。

(機械足場工及びパイプ吊り足場工の概要)

 上記の各工事では、作業場所が高所であるため、作業を行うための足場として高所作業車(注2) が使用されている。そして、高所作業車にはブーム等の先端に作業床が取り付けられており、その作業床を足場として高架橋等の点検等を行う作業(以下、この作業を「機械足場工」という。)、又は、その作業床を足場として高架橋等の側方及び下方に単管パイプの吊り足場を組み立てる作業(以下、この作業を「パイプ吊り足場工」という。)が行われている(参考図参照)

(機械足場工事及びパイプ吊り足場工事の積算)

 公団では、道路保全工事等の工事費については、公団制定の「土木補修工事積算基準」(以下「積算基準」という。)に基づき積算することとしており、機械足場工及びパイプ吊り足場工において使用される高所作業車の機械経費については、次のように積算することとされている。
 公団制定の「機械器具損料表」(以下「損料表」という。)から工事に使用する高所作業車の規格に該当する機械損料を選定する。その規格に該当する機械損料が損料表にない場合は、レンタル業者から借りて使用することが多い機械の賃料を定めた公団制定の「機械賃料表」(以下「賃料表」という。)等から、使用する高所作業車の規格に該当する機械賃料を選定する。
 また、高所作業車の運転に携わる職種については、運転に相当程度の技能を要するため特殊運転手とし、上記機械損料又は機械賃料に特殊運転手の運転労務費等を加える。
 そして、公団では、機械足場工費及びパイプ吊り足場工費の積算を次のように行っていた。
〔1〕 機械足場工では、作業床高3.2m級から40m級計11種類の高所作業車のうち、作業床高がそれぞれ13m級、20m級及び30m級の3種類の高所作業車については、損料表からその規格に該当する機械損料を選定することとし、これらの規格以外の8種類の高所作業車については、該当する機械損料が損料表にはないことから、賃料表等から機械賃料を選定し、その賃料をそのまま1日当たりの機械賃料とする。
〔2〕 パイプ吊り足場工では、作業場所の高さに関係なく一律に作業床高13m級の規格の高所作業車を使用することとし、損料表からその規格に該当する機械損料を選定し、これにより1日当たりの機械損料を算定する。
〔3〕 高所作業車の運転に携わる職種については、機械足場工、パイプ吊り足場工とも特殊運転手とする。
 これらにより、機械足場工については、高所作業車の1日当たりの機械損料又は機械賃料に運転労務費等を加えるなどして、また、パイプ吊り足場工については、高所作業車の1日当たりの機械損料に運転労務費、足場材料、足場設置労務費等を加えるなどして、総額4億7926万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 公団においては、高速道路の供用延長の増加に伴い、高所作業車を使用して実施する道路保全工事等が増加していることから、その機械経費の積算が適切なものとなっているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、道路保全工事等において使用する高所作業車の機械経費の積算に関して、次のような事態が見受けられた。
〔1〕 機械足場工において使用する高所作業車については、公団が施行する道路保全工事等は工期が通常1年以上と長いことから、請負業者は高所作業車を長期にわたり使用している状況であった。そして、このように長期にわたり使用する建設機械については、その機械賃料は割り引かれるのが一般的であり、機械賃料の市場価格を掲載した積算参考資料によると、賃貸期間が1箇月以上の場合、賃料は15%の長期割引による補正をすることとされていて、前記8種類の高所作業車の機械賃料についてもこれを適用するべきであると認められた。
現に、公団と同様に道路保全工事等を多数実施している他団体においても、機械賃料により高所作業車の機械経費を積算する場合は、市場価格による長期割引を適用した機械賃料により積算している状況であった。
〔2〕 パイプ吊り足場工において使用する高所作業車については、パイプ吊り足場の設置高さが9m以下の工事は、作業床高13m級と同様に損料表に機械損料がある9m級の高所作業車で十分作業できたと認められた。
 現に、他団体においては、足場の設置高さが9m以下のパイプ吊り足場を設置する工事については、作業床高9m級の高所作業車を使用することとして機械経費を積算している状況であった。
〔3〕 高所作業車の運転に携わる職種については、高所作業車の作業床高が10m以上の場合は、労働安全衛生法施行令(平成4年政令第246号)により、特殊運転手とされているものの、作業床高が10m未満の場合は一般運転手でよいとされている。
 現に、他団体においては、高所作業車の運転労務費の算定に当たって、作業床高が10m未満である高所作業車の運転に携わる職種を一般運転手として積算している状況であった。
 したがって、道路保全工事等の積算に当たっては、高所作業車の機械賃料に長期割引を適用したり、作業内容に適合した規格の高所作業車を選択したり、高所作業車の規格に適合する運転に携わる職種を適用したりして、適切な積算を行う要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、本件各工事における機械足場工費及びパイプ吊り足場工費を修正計算すると、計4億4929万余円となり、前記の積算額を約2990万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、積算基準において、道路保全工事等で使用する高所作業車の機械経費の積算に当たって、機械賃料への長期割引の適用などについての検討が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、15年11月に道路保全工事等において使用する高所作業車の機械経費の積算が適切なものとなるよう機械賃料への長期割引の適用、適切な規格の選定及び規格に適合した運転に携わる職種の適用について積算基準等を改正し、同年同月以降に契約する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1) 大阪管理部ほか3管理部等 大阪管理部、湾岸管理部、神戸管理部、大阪建設局
(注2) 高所作業車 作業床が昇降して任意の位置に移動できる自走式の作業車。その種類として、ブーム式高所作業車、シザース式高所作業車、オーバーフェンス車等がある。

(参考図)

(参考図)