科目 | (項)新空港建設費 (目)用地費 | |
部局等の名称 | 新東京国際空港公団 | |
代替地用地の概要 | 空港用地の取得に際し用地所有者が代替地を要望した場合に提供するためにあらかじめ取得し保有している土地 |
保有している代替地用地の面積、財産原簿価格 | 面積 | 26.05ha | (平成14年度末) |
財産原簿価格 | 78億4881万余円 | (平成14年度末) | |
上記のうち具体的な提供の可能性が確認できない代替地用地の面積、財産原簿価格 | 面積 | 19.50ha | |
財産原簿価格 | 30億4574万円 |
1 代替地用地の概要
新東京国際空港公団(以下「公団」という。)では、新東京国際空港(以下「成田空港」という。)の設置及び管理に必要な空港施設用地及び航空保安施設用地(以下「空港用地」という。)として土地を取得し、保有している。
成田空港の計画面積は全体で1,192haとなっており、そのうち94%に当たる1,129.4haについては昭和53年の開港時までに公団において取得していたため、未買収の空港用地(以下「未買収用地」という。)の面積は開港時では62.6haとなっていた。そして、公団では、同空港の開港後もこれらの未買収用地の取得を進めた結果、平成14年度末現在における未買収用地の面積は5.6haとなっている。
公団では、空港用地の取得の際にはその所有者(以下「用地所有者」という。)に対し適正な損失補償を実施することとしている。公団では、原則として、この損失補償は金銭補償の方法により行うこととしているが、用地所有者が金銭に代えて代替地の提供を要望する場合には、必要に応じ当該取得に係る空港用地の価格の範囲内で代替地を提供することとしている。
このため、公団では、従来から、代替地を要望する未買収用地の所有者に提供する目的であらかじめ土地(以下「代替地用地」という。)を取得し、保有している。
5年度以降に公団が取得した空港用地は計23.67haとなっているが、この間に代替地を提供した実績は計12.19haとなっており、空港用地の取得面積の5割程度となっている。一方、公団では、この間に新たに代替地用地を取得しているため、代替地用地の保有面積は増加傾向となっている。
14年度末において、公団が保有する代替地用地の面積は、計26.05ha、財産原簿価格78億4881万余円となっている。
2 検査の結果
前記のとおり、成田空港開港後二十数年を経て、未買収用地の面積は大幅に減少しているのに、その取得に際して用地所有者に提供する目的で公団が保有する代替地用地の面積は、未買収用地の面積の4倍程度となっている。そして、代替地用地を保有し続ける場合には、保有期間に応じて相応の固定資産税、維持管理費及び金利が発生することになる。
そこで、これらの代替地用地について、代替地としての提供の可能性及び保有の必要性はどのようなものとなっているかなどに着眼して検査した。
14年度末現在で公団が保有する前記の代替地用地26.05ha、財産原簿価格78億4881万余円について検査した。
検査したところ、次のとおりとなっていた。
(1) 代替地用地の保有期間
公団の保有する代替地用地の保有期間別の面積は下表のとおりとなっており、取得後15年以上の長期にわたり保有されているものの面積が全体の71.2%を占めていた。
保有期間 | 面積(ha) | 財産原簿価格(千円) |
5年未満 | 3.68 | 2,927,692 |
5年以上10年未満 | 3.80 | 2,209,717 |
10年以上15年未満 | − | − |
15年以上20年未満 | 16.15 | 2,545,867 |
20年以上25年未満 | 0.45 | 4,089 |
25年以上 | 1.97 | 161,451 |
計 | 26.05 | 7,848,818 |
(2) 代替地用地の状況等
公団の保有する代替地用地について、その取得の経緯等の相違により分類すると、次のとおりとなっていた。
(ア) 個別要望用地
個々の用地所有者の要望に基づいて特定の土地を取得した上、当該用地所有者に提供する目的で保有しているものであり、その面積は13.70ha、財産原簿価格は5,482,508千円となっていた。
(イ) 集団移転用地
あらかじめ空港周辺における適当な土地を取得し、一団の土地として造成した上、宅地又は農地として整備し、用地所有者に代替地として提供する目的で保有しているものであり、その面積は12.35ha、財産原簿価格は2,366,310千円となっていた。
また、これらの代替地用地の取得に当たっては、公団において費用を負担してその周辺に道路、調整池等を整備した上、これを地方公共団体に譲渡しているものも見受けられた。
(3) 代替地用地の提供の可能性ないし保有の必要性
上記の個別要望用地のうち、6.54ha(財産原簿価格4,803,069千円)については、14年度末現在までの用地交渉の経過を考慮すると、今後代替地として提供する可能性があるものとなっていた。
しかし、公団の保有する代替地用地26.05haのうち、この個別要望用地6.54haを除いた個別要望用地及び集団移転用地の計19.50ha(財産原簿価格3,045,749千円)の代替地としての提供の可能性については、次のとおりとなっていた。
(ア) 個別要望用地について
個別要望用地のうち、上記の6.54haを除く5地区の土地7.15ha(財産原簿価格679,438千円)は、次のような経緯等により保有されていたものであり、現在までの用地交渉の経過を考慮すると、代替地としての具体的な提供の可能性は確認できないものとなっていた。
〔1〕 公団が取得した後、個別要望用地を要望した用地所有者が転居先を変更するなどし、当該個別要望用地を必要としなくなったため、代替地として提供されることのないまま現在に至ったものである。
〔2〕 用地所有者にその一部を代替地として提供した後の残地をそのまま保有しているものである。
これについて事例を示すと、次のとおりである。
所在地 | 面積 | 財産原簿価格 | 保有期間 |
八街市 | 3.95ha | 301,042千円 | 19年 |
上記の代替地用地は、用地所有者の要望により、その居住用の宅地、営農のための耕作地及び山林として取得したものである。しかし、その後、用地所有者がこの代替地用地とは別の土地に転居することとなったことから、代替地としては提供されないまま、昭和58年以降長期にわたり保有しているものである。
(イ) 集団移転用地3地区の土地12.35ha(財産原簿価格2,366,310千円)については、代替地として提供されないまま、取得から相当期間が経過していて、現在までの用地交渉の経過を考慮すると、代替地としての具体的な提供の可能性は確認できないものとなっていた。
これについて事例を示すと、次のとおりである。
所在地 | 面積 | 財産原簿価格 | 造成後の保有期間 |
成田市 | 8.6ha | 1,366,976千円 | 15年 |
上記の代替地用地は、集団移転用地として昭和59年に取得し、62年に農地として造成を完了したものであるが、平成10年8月に代替地として提供された部分(0.2ha)を除き、代替地として提供されることのないまま、現在まで長期にわたり保有されているものである。
このように、(ア)及び(イ)の代替地用地(財産原簿価格3,045,749千円)は、いずれも代替地としての具体的な提供の可能性が確認できないものである。したがって、公団においては、用地所有者の要望等を的確に把握し、用地交渉の進ちょく状況、今後の代替地の需要等に留意するとともに、代替地の保有に伴う固定資産税、維持管理費及び金利についても十分考慮しつつ、今後の代替地としての提供の可能性及び保有の必要性について速やかに検討する要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、用地交渉の進ちょくにより未買収用地が減少し、空港用地の取得に伴う損失補償のために保有を必要とする代替地用地の規模等が限られたものとなっているのに、公団において、その保有する代替地用地の提供の可能性及び保有の必要性について十分に検討していなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、公団では、15年4月、具体的な提供の可能性が確認できない前記の代替地用地8地区の土地のうち、今後とも代替地として提供する見込みのないことが明らかな2地区の土地については処分する方針を決定するとともに、15年10月に代替地用地に関する事務処理要領を定め、代替地用地の保有と処分が適切なものとなるよう次のような処置を講じた。
(ア) 用地所有者の要望等を的確に把握し、用地交渉の進ちょく状況等に応じて今後必要となる代替地の規模等に留意するとともに、代替地用地の保有に伴う維持管理費用等を十分考慮しつつ、保有している代替地用地の提供の可能性及び保有の必要性について速やかに検討することとした。
(イ) 上記の検討の結果、今後とも代替地としての提供が見込まれないと判断した代替地用地については、処分計画を定めるなどして速やかに処分することとした。