科目 | (項)建設費 |
部局等の名称 | 日本鉄道建設公団(平成15年10月1日以降は「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」)盛岡支社ほか2支社及び九州新幹線建設局 |
工事名 | 東北幹、八戸電留基地検修庫他工事ほか19工事 |
工事の概要 | 新幹線及び都市鉄道線等建設工事の一環として駅、電車の車庫等を建築する工事 |
工事費 | 237億5666万余円 | |
請負人 | 日本国土・矢作・穂積東北幹、八戸電留基地検修庫他特定建設工事共同企業体ほか19共同企業体 | |
契約 | 平成13年2月〜15年3月 一般競争契約、公募型指名競争契約 | |
アルミ製建具の材料費の積算額 | 2億1999万余円 | |
低減できたアルミ製建具の材料費の積算額 | 3880万円 |
1 工事の概要
日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)では、盛岡支社ほか2支社(注)
及び九州新幹線建設局(以下「支社等」という。)において、平成14年度に、新幹線及び都市鉄道線等建設工事の一環として駅、電車の車庫等(以下「駅等」という。)を建築する工事を20工事(工事費総額237億5666万余円)施行している。
これらの工事では、駅等の出入口や窓などに多量のアルミ製建具を使用している。
公団では、アルミ製建具の材料費については、公団制定の「建築関係工事等予定価格積算標準」(以下「積算標準」という。)に基づいて積算している。そして、積算標準によれば、材料価格等は、原則として積算時の最新の現場渡し価格として、物価資料等の掲載価格、製造業者の見積価格等を参考にするなどして算定することとなっている。
このうち製造業者の見積価格による場合については、公団本社が発した事務連絡「建築関係の業者の見積りによる積算について」(以下「事務連絡」という。)により、見積価格に査定率0.81を乗じるなどして材料費を積算することとされている。
2 検査の結果
公団で実施している駅等の建築工事で使用しているアルミ製建具の材料費は多額に上っている。また、アルミ製建具の材料費については、実際の取引において見積価格と販売価格に大きなかい離がある状況となっている。
このため、前記の各工事において、アルミ製建具の材料費の積算が適切に行われているかに着眼して検査した。
検査したところ、駅等の建築工事におけるアルミ製建具の材料費の積算が次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、公団では、前記の駅等の建築工事におけるアルミ製建具の材料費の積算に当たり、刊行物である積算参考資料には当該工事に使用するアルミ製建具と高さ、幅が同じものがほとんど掲載されていないなどとして、すべて製造業者の見積価格によるものとし、徴取した複数の製造業者の見積書のうちの最低価格に前記事務連絡の査定率0.81を乗じてアルミ製建具の材料費を総額2億1999万余円と積算していた。
しかし、アルミ製建具については、積算参考資料に本件各工事で使用するものと同じ高さ、幅のものが掲載されていなくても高さ、幅だけが異なる同一製品(以下「類似品」という。)の調査価格が掲載されており、これと見積書の価格との比較により、本件各工事で使用するものについても、その調査価格を参考とした価格の把握は可能であると認められる。
そして、公団が実際に契約した建築工事の積算に用いた見積書の中から積算参考資料に掲載されているものとほとんど同じ高さ、幅のものを抽出し、それらの積算時点での材料価格を比較したところ、積算参考資料の掲載価格は見積書の価格の55%程度となっており、公団が積算に用いた0.81の査定率ではアルミ製建具の材料費の積算が割高になっていると認められる。
したがって、公団において、アルミ製建具の材料費の積算に当たり、一律の査定率により積算しているのは適切とは認められず、適正な材料価格で積算を行う要があると認められた。
現に、建築工事でアルミ製建具を使用している他機関等の見積りによる材料費の積算方法について調査したところ、徴取した見積書のうちの最低価格を積算参考資料に掲載されている類似品の調査価格と比較するなどして査定し、材料価格を算定している状況である。
上記により、本件各工事におけるアルミ製建具の材料費について、支社等が徴取した見積価格と積算参考資料に掲載されている類似品の調査価格を比較するなどして修正計算すると、1億8113万余円となり、前記の積算額を約3880万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、主として次のことによると認められた。
(ア)アルミ製建具について、積算参考資料に掲載されている高さ、幅のものは標準品であり、それ以外のものは割高な特注品に当たると理解していたこと
(イ)アルミ製建具の取引については、見積価格と販売価格に大きなかい離があるという認識が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、15年10月に公団の事業を引き継いだ独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構では、アルミ製建具の材料費の積算を適正に行うため、同年10月に支社等に通達を発し、アルミ製建具の材料費の積算については、積算参考資料から得られる類似品の掲載価格等と比較するなどして査定したり、必要により物価調査機関等に調査を依頼して得られた価格等により査定したりなどすることとし、同年12月以降に契約する工事から適用することとする処置を講じた。