科目 | 建物 |
部局等の名称 | 独立行政法人農業技術研究機構(平成15年10月1日以降は独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構)動物衛生研究所北海道支所 |
工事名 | たい肥場上屋設置工事 |
工事の概要 | 家畜排せつ物の適正な管理を図るため、平成13事業年度にたい肥場上屋を設置する工事 |
工事費 | 6,520,000円 |
請負人 | 株式会社栗虫組 |
契約 | 平成14年2月 随意契約 |
しゅん功検査 | 平成14年3月 |
支払 | 平成14年4月 |
支払金額 | 6,520,000円 |
適正を欠くと認められる金額 | 6,520,000円 |
1 たい肥場上屋設置工事の会計経理の概要
独立行政法人農業技術研究機構動物衛生研究所北海道支所(以下「支所」という。)では、平成13事業年度に、たい肥場の上屋の設置工事を工事費6,520,000円で実施している。
この工事は、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(平成11年法律第112号)等の施行により、既存のたい肥場が同法等に定める基準を満たさなくなったことに伴い、家畜排せつ物を適正に管理するため新設されたたい肥場に上屋(木造・一部鉄骨造。面積180m2
)を設置したものである。
そして、支所では、上記工事の契約、検査、代金の支払等に係る一連の会計経理を次のとおり行ったとしていた。
(1) 工事の契約に当たり、4者から見積書を徴し、このうち最低価格であった請負人と14年2月8日に6,520,000円で随意契約により締結した。
(2) 工事は、2月8日に着工し、しゅん功した3月25日にしゅん功検査を行い、検収調書を作成した。
(3) 3月28日に請負人より工事代金の請求を受け、4月26日に全額を支払った。
2 検査の結果
検査したところ、上記の会計経理について、次のとおり著しく適正を欠く事態が見受けられた。
(1) 契約について
本件契約は、独立行政法人農業技術研究機構会計規程(平成13年規程第26号)等(以下「会計規程等」という。)において、随意契約によることができるとされている予定価格が500万円を超えない工事等に該当しないものであったにもかかわらず随意契約によっていた。また、その契約に際し、原則として2者以上から徴さなければならないとされている見積書を請負人から徴したのみで、後日、見積合わせの体裁を整えるために他の3者に依頼して見積書を提出させていた。
また、会計規程等では、契約の締結と同時に、履行の確保を図るため、原則として契約保証金の納付等による契約保証を付すこととされており、本件契約においても請負人が契約保証金を納付することとされていたが、支所ではこれを徴求しておらず、契約保証の措置を講じていなかった。
(2) 工事の実施、施工監理及び検査について
支所では、本件工事の実際の着工日が翌事業年度の14年5月8日、しゅん功日が8月22日であったにもかかわらず、工事は同年2月8日に着工し、3月25日にしゅん功したとする虚偽の検収調書等を作成していた。
なお、本件工事の請負人は、工事途中の6月5日に不渡手形を出し、営業停止となったことから、工事の一部を施工していなかったが、支所によると、未施工部分については、別の業者が引き継いで施工し、しゅん功したとしている。しかし、工事の施工に関する書類が全くないため、工事は8月22日にしゅん功しているものの、着工からしゅん功までの経緯については確認ができない状況となっていた。
(3) 支払について
工事代金は、契約書上、工事のしゅん功後の検査に合格した後、請負人の請求により支払うこととされているにもかかわらず、支所では、虚偽の検収調書等に基づき実際の工事着工前に工事代金の全額を支払っていた。
また、独立行政法人会計基準では、独立行政法人の会計は、財政状態等に関して真実な報告を提供するものでなければならないとされているが、上記のような会計経理が行われていたことにより、独立行政法人農業技術研究機構が作成した13、14両事業年度の財務諸表には、着工前であったたい肥場が13事業年度中にしゅん功したこととして資産計上されるなど、事実と異なる内容が表示される結果となっていた。
上記のような事態が生じていたのは、支所において、職員の会計規程等を遵守して適正に経理を行う認識が欠如していたこと、会計経理の審査の各過程における内部審査体制が全く機能していなかったことなどによると認められる。
したがって、上記のように虚偽の書類を作成するなどして事実と異なる内容の会計経理を行っていたのは、会計規程等に違背し、著しく適正を欠いていて不当と認められる。