会計名及び科目 | 一般会計 (部)雑収入 (款)諸収入 (項)雑入 |
部局等の名称 | 内部部局 |
国際連合からの償還金の概要 | 国際連合平和維持活動(PKO)に部隊等を派遣した国が負担した費用について国際連合から派遣国に償還されるもの |
PKOを実施した国又は地域 | カンボディア、モザンビーク、ゴラン高原、東ティモール |
国際連合からの償還金の額 | 28億0683万余円(平成8年12月〜16年7月) (25,516,715.88米ドルの16年7月末現在の邦貨換算額) |
上記のうち平成16年7月末現在で歳入として国庫に収納されていない償還金の額 | 20億2179万円 (18,379,988.48米ドルの同邦貨換算額) |
1 国際連合からの償還金の概要
防衛庁では、「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(平成4年法律第79号)に基づき、自衛隊を海外に派遣し国際連合平和維持活動(以下「PKO」という。)を実施している。このPKOは、国際連合(以下「国連」という。)の決議に基づき、武力紛争当事者間の武力紛争再発防止に関する合意の遵守の確保その他紛争に対処して国際の平和及び安全を維持するために国連の統括の下に行われる活動とされていて、現地に置かれた国連の平和維持隊が行う平和維持活動に参加するものである。
そして、防衛庁では、平成4年9月に初めてカンボディアにおけるPKOに陸上自衛隊の部隊を派遣して以降、モザンビーク、ゴラン高原、東ティモールにおける各PKOにも同自衛隊の部隊を派遣しており、現在もゴラン高原で活動を継続している。これら派遣された部隊は、国連の平和維持隊の現地軍事司令官の指揮の下に平和維持隊の後方支援業務である施設の建設、維持補修や輸送等の業務に従事している。
PKOでは、派遣国が負担した費用は、国連が派遣国に償還することになっている。この国連からの償還金(以下「国連償還金」という。)は、実際に派遣に要した費用が全額償還されるものではなく、国連が定めた基準及び国連と派遣国との間の協定に基づいて計算される金額により償還されることになっている。そして、国連償還金の対象となる費用は、派遣期間中の人件費、装備品等に係る費用となっている。
国連償還金は、現地に派遣した部隊が、毎月国連の現地司令部に人員、活動日数等を記載した報告書を提出し、国連は、その報告書に基づいて俸給、専門家手当、個人被服等の人件費に係る償還金額を決定し、また、協定に基づいてトラック、ブルドーザ等の装備品に係る償還金額を決定することになっている。そして、国連は、我が国に対する国連償還金については、本邦所在のA銀行(日本銀行代理店。以下「銀行」という。)を送金先として、銀行の別段預金に米ドルで送金することになっている。
この別段預金は、国連償還金を受け入れるために防衛庁が指定した振込先であって、国連償還金はこの別段預金に一時的に保管されている。銀行では、国連償還金の到着の都度、防衛庁管理局会計課(以下「会計課」という。)に「外国送金到着案内」及び「領収書兼告知書」(別段預金として現金を預かっていることを証する文書で別段預金を引き出す際に銀行に提示することとされている。)を送付している。
これらの文書を受け取った会計課は、これらの文書のうち「外国送金到着案内」の写しを運用局運用課(以下「運用課」という。)に手渡すことになっている。
防衛庁では、国連償還金を歳入として国庫に収納する事務処理について、5年3月に定めた「自衛隊の部隊が行うPKO活動に要した費用の償還金の取扱について」(以下「国連償還金の取扱」という。)に基づき、次のとおり実施することとなっている。
〔1〕 国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号)の規定に基づき債権発生を通知する者に指定されている運用課長は、「外国送金到着案内」を受けたときは、遅滞なく国連償還金の内容を確認の上、債権発生通知書を作成し、「外国送金到着案内」を添付して歳入徴収官に指定されている会計課長に通知する。
〔2〕 会計課長は、運用課長から債権発生通知を受けたときは調査・確認の上、債権管理簿に記載し、直ちに徴収の決定を行う。そして、徴収の決定を行った国連償還金の債権について、納入告知書を作成し、当該納入告知書及び「領収書兼告知書」を日本銀行代理店に送付して歳入の手続を行い、国連償還金を国庫に収納する。
2 検査の結果
防衛庁がPKOに自衛隊を初めて派遣してから10年以上経過し、PKOに係る国連償還金も順次送金されてきている。そこで、国連償還金の到着から国庫に収納するまでの事務処理が適正に行われているかに着眼して検査した。
検査に当たっては、防衛庁が陸上自衛隊の部隊を派遣したカンボディア、モザンビーク、ゴラン高原、東ティモールにおけるPKOに係る国連償還金を対象として検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
(1)国連償還金の別段預金への到着状況
防衛庁において会計書類等が保存され、本院が確認できた8年12月19日から16年7月末までに銀行の別段預金に到着した国連償還金は、60件、25,516,715.88米ドル(16年7月末現在の邦貨換算額2,806,838,740円)となっていた。
そして、国連償還金の状況をPKOの別にみると、次のとおりとなっていた。
〔1〕 カンボディアに係る国連償還金については、3件、4,876,305.21米ドル(同536,393,572円)が到着していた。そして、装備品に係る費用の大半は国連から償還されているが、財源となる加盟国の国連への分担金の拠出が遅延しているため、我が国への償還が一部遅延しており、今後も引き続き償還が行われることになっていた。
〔2〕 モザンビークに係る国連償還金については、3件、114,027.96米ドル(同12,543,074円)が到着し、償還は終了していた。
〔3〕 ゴラン高原に係る国連償還金については、45件、4,324,938.71米ドル(同475,743,254円)が到着していた。そして、人件費は16年4月までの分、装備品に係る費用は16年3月までの分がそれぞれ償還されていた。
〔4〕 東ティモールに係る国連償還金については、9件、16,201,444.00米ドル(同1,782,158,840円)が到着していた。そして、人件費は16年7月までの分が償還されていたが、装備品に係る費用については、個別協定を締結するべく我が国と国連との間で調整中であるので償還されていなかった。
(2)国連償還金の国庫収納の状況
銀行の別段預金に到着した上記の国連償還金60件のうち、9年3月7日から16年7月末までに歳入として国庫に収納されたものは、28件、7,136,727.40米ドル(国庫収納時の邦貨換算額での計792,410,699円)と、件数で47%、金額で28%となっていた。この中には、国連償還金の到着から国庫収納までに要した期間が1年以上2年未満のものが3件、2年以上のものが11件あり、最長のものは1,093日間となっていて、国連償還金を歳入として国庫に収納するまでの事務処理に長期間を要している状況となっていた。
(3)国庫に収納されていない国連償還金の状況
銀行の別段預金に到着した国連償還金のうち、国庫に収納されていないものは、16年7月末現在で32件、18,379,988.48米ドル(16年7月末現在の邦貨換算額2,021,798,728円)と、件数で53%、金額で72%となっていたが、この中には、銀行の別段預金に滞留している期間が1年以上2年未満のものが10件、2年以上のものが6件あり、最長のものは1,032日間滞留していた。また、14年7月から16年7月までに到着した東ティモールに係る国連償還金9件は、16年7月末現在いずれも国庫に収納されていなかった。
(4)国連償還金の取扱状況
運用課では、国連償還金の銀行の別段預金への到着を、会計課から受領する「外国送金到着案内」の写し及び国連から外務省を通じて受領する国連償還金の送金及び内訳を通知する公文書により把握していた。そして、国連償還金の到着を把握した後、その内容を確認するために、PKOに派遣した陸上自衛隊の部隊が国連の現地司令部に提出した報告書と同様の実績報告書が陸上幕僚監部に提出されていることからこれを陸上幕僚監部から徴し、実績報告書と国連からの公文書に記載された償還金の内訳を照合、精査することにより、国連償還金の内容を確認することとなっていた。
しかし、運用課では派遣部隊の実績報告書を陸上幕僚監部から徴することに日時を費やすなどしていて、国連償還金の取扱に定められている遅滞なく会計課長に債権発生通知を行う体制とはなっていなかった。
以上のように、国連償還金を遅滞なく歳入として国庫に収納していなかったのは適切とは認められず、改善の要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、国連償還金の内容の確認に当たり、国連償還金の到着を待って、現地派遣部隊が陸上幕僚監部に提出した実績報告書を陸上幕僚監部から徴することとしているなど、国連償還金を遅滞なく歳入として国庫に収納する体制が整備されていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、防衛庁では、16年10月に通知を発し、国連償還金の国庫への収納に係る事務を迅速に行えるよう、現地派遣部隊が国連の現地司令部に報告書を提出した際に、当該報告書と同様の実績報告書を各幕僚監部から徴することとし、国連償還金を遅滞なく歳入として国庫に収納する体制を整備する処置を講じた。