ページトップ
  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 総務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

物品の管理に当たり、取得、処分等の手続を適正に行うとともに、帳簿への記録等が物品の現況を反映した正確なものとなるよう改善させたもの


(2)物品の管理に当たり、取得、処分等の手続を適正に行うとともに、帳簿への記録等が物品の現況を反映した正確なものとなるよう改善させたもの

会計名 (1)  一般会計
(2)  交付税及び譲与税配付金特別会計(交付税及び譲与税配付金勘定)
部局等の名称 (1)  総務本省、自治大学校、情報通信政策研究所、北海道管区行政評価局ほか5行政評価局等、北海道総合通信局ほか10総合通信局等、消防庁、消防大学校
(2)  総務本省
物品の概要 総務省所管に属する取得価格が50万円以上の機械及び器具
平成14年度物品増減及び現在額報告書に記載した重要物品の数量及び価格 (1) 5,931個   688億3632万余円 (平成14年度末)
(2) 20個   2920万余円 (平成14年度末)
5,951個   688億6553万余円  
帳簿への記録等が物品の現況を反映した正確なものとなっていなかった重要物品の数量及び価格 (1) 946個   55億6059万円  
(2) 9個   2250万円  
955個   55億8310万円  
上記の結果に基づき修正した平成14年度末現在の重要物品の数量及び価格 (1) 5,658個   671億4769万余円
(2) 11個   669万余円
5,669個   671億5438万余円

1 物品管理の概要

(国の物品管理)

 国の物品については、その適正かつ効率的な供用その他良好な管理を図るため、物品管理法(昭和31年法律第113号)等に基づき、各省各庁の長が物品の取得、保管、供用及び処分(以下「管理」という。)を行い、その委任を受けた当該各省各庁所属の職員(以下「物品管理官」という。)が管理事務を行うこととなっている。
 物品管理官は、物品を適正に管理するために物品管理簿を備え、物品の異動に関する事項及びその他物品の管理上必要な事項を記録し、取得価格が50万円以上の機械及び器具(以下「重要物品」という。)については、その取得価格を記録しなければならないこととなっている。
 そして、物品管理官が交替又は廃止される場合、前任の物品管理官は、交替又は廃止日前日に物品管理簿の数量等を記載した引継書を作成し、当該引継書とともに物品管理簿を引き継ぐこととなっている。
 また、各省各庁の長は、重要物品について、毎会計年度末の物品管理簿の記録の内容に基づいて、物品増減及び現在額報告書(以下「報告書」という。)を作成することとなっており、この報告書に基づいた物品の現在額等は内閣から国会に報告されている。

(総務省の物品管理)

 中央省庁等改革関連の諸法律に基づき、国の行政機関は、平成13年1月6日以降、新たな組織体制へ移行している。総務省の場合、総理府のうち総務庁などの一部部局と郵政省、自治省(以下、これらの省庁を「旧省庁」という。)が統合し新たに設置されており、設置前に旧省庁が管理していた物品については、同省において一括で管理を行うこととなった。
 総務省では、総務省所管物品管理取扱規則(平成13年総務省訓令第53号。以下「取扱規則」という。)を制定し、これに基づき、15年度末現在、内部部局、施設等機関、地方支分部局等に計78の物品管理官を設置している。

(総務省における物品管理の取扱い)

 総務省における物品の管理については、物品管理法等のほか、取扱規則等の定めるところによることとされており、総務大臣から委任を受けた職員(以下「部局長」という。)等は、物品管理官が行う物品の管理に関する行為について必要な様式及び手続を定めることができることとなっている。
 そして、物品管理簿等への記録、主な物品管理の事務手続、物品管理官に対する検査については、次のように行うこととされている。

ア 物品管理簿等への記録

 物品管理官は、重要物品の物品管理簿(以下「重要物品管理簿」という。)とそれ以外の物品の物品管理簿に分けて、物品の分類、細分類及び品目別に、物品の異動に関する事項等を記録する。このうち、品目については、物品管理官自身が適正に管理できるように具体的な品目を定めることとなっている。また、重要物品については、別途補助簿により、物品一個ごとの価格を明らかにしておくこととなっている。

イ 物品管理の事務手続

(ア)取得

 物品管理官は、物品を必要とする部署から物品取得の伺いを提出させ、取得の必要性があると判断した場合には、契約等担当職員に対し、物品の品目、数量等を示して取得のための措置を請求する。そして、契約等担当職員は、取得の措置を講じ、速やかにその物品の取得日、価格などの必要な事項を物品管理官に通知する。
 また、上記のほか、物品に係る事務又は事業を行う職員が、その職務を行うことにより国において取得する物品又は取得した物品があると認めるときは、速やかにその旨を物品管理官に通知する。

(イ)管理換

 物品管理官は、その管理する物品について他の物品管理官へ管理換をするときは、部局長の承認を受け、当該管理換を受ける物品管理官に、その物品の数量、価格などの必要な事項を通知する。

(ウ)処分

 物品管理官は、管理換等により有効利用が図れない物品については、不用の決定をする。このうち重要物品に該当する物品は、当該決定の対象となる物品の品目、規格、価格、不用とする理由等を示した上で、あらかじめ部局長の承認を受ける。
 そして、上記(ア)、(イ)、(ウ)いずれの場合も、物品管理官は、物品の異動があった都度、物品管理簿に物品の異動数量、現在高を記録し、重要物品に該当する場合にはその価格の増減も記録するとともに、補助簿に物品一個ごとの価格を新たに記録したり、減じたりする。

ウ 物品管理官に対する検査

 毎会計年度1回及び物品管理官の交替又は廃止があったときはその都度、部局長等が命ずる検査員は、物品管理官の物品の管理行為が法の規定に適合しているかどうかをその管理に係る物品及び帳簿について検査する。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 本院では、昨年次に国の物品の現状を検査し、平成14年度決算検査報告の「第6章 歳入歳出決算その他検査対象の概要」に、「国の物品の状況」について概括的に記述したところである。その検査の過程で、総務省の統計局等を除いた本省の大臣官房、各局等に属する物品の管理のため大臣官房に置かれている物品管理官(以下「本省物品管理官」という。)が旧省庁から引き継いだとしている物品について、一部その存在が確認できないものが見受けられた。
 そこで、総務省が管理する重要物品について、重要物品管理簿、旧省庁で作成された報告書の基礎資料等と、現物とを照合するなどして、旧省庁からの引継ぎ及びその後の管理が物品管理法、取扱規則等に基づいて適切に行われているかに着眼して本年次も引き続き検査した。

(検査の対象)

 総務省が15年度に所管している会計は一般会計と交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「特別会計」という。)である。14年度の報告書において、同年度末現在で同省が管理しているとされている重要物品のうちこれらの会計に係る分は、5,951個、価格688億6553万余円(うち一般会計分5,931個(同688億3632万余円)、特別会計分20個(同2920万余円))となっており、その内容について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
(1)処分や管理換が行われて、実際は管理されていないにもかかわらず重要物品管理簿にそのまま記録されているもの
 旧省庁では、物品管理官の廃止に伴う検査及び引継書の作成が行われず、本省物品管理官は、廃止日前日までの異動を記録した重要物品管理簿を受領していなかった。そのため、本省物品管理官は、それに代わるものとして、旧省庁で作成された報告書の基礎資料等を基に重要物品管理簿を新たに作成したが、これらの基礎資料等は、廃止日前日までの異動に基づくものではなく、現物とのつながりを必ずしも保証するものではないのに、現物を確認していなかった。そして、その後の物品管理官に対する検査においても、部局長等が命じた検査員は、現物確認を十分に行っていなかった。その結果、旧省庁で既に廃棄等の処分又は他の物品管理官への管理換が行われていた重要物品が、重要物品管理簿に記録されたままとなっていた。
 また、新たに作成された重要物品管理簿について、物品管理官が適正に管理できるような複写機、ファクシミリ等の具体的な品目で作成されていなかったり、旧省庁で取得した重要物品の補助簿が作成されていなかったり、補助簿に物品の規格、供用場所等の情報が記録することとされていなかったりなどしていた。そのため、総務省設置後に物品の処分を行うに当たって、当該物品が、重要物品に該当するのかも含め、物品管理簿上のどの重要物品なのかを特定することが困難な状況となっていた。その結果、一部を除き、部局長による不用決定の承認等の手続をしないまま処分が行われ、重要物品管理簿の数量、価格を減ずることなく従前のまま記録されていた。
 上記の結果、本省物品管理官の重要物品管理簿に記録されている14年度末の重要物品1,360個、価格287億5686万余円(うち一般会計分1,340個(同287億2765万余円)、特別会計分20個(同2920万余円))のうち522個、価格33億6953万余円(うち一般会計分513個(同33億4703万余円)、特別会計分9個(同2250万余円))については、既に処分等が行われており、実際は管理されていないにもかかわらず重要物品管理簿に記録されていた。
 このほか、中国総合通信局においても、処分した物品が重要物品管理簿に記録されている事態が一般会計分で9個(価格1239万余円)見受けられた。
(2)担当者間において所要の手続が執られていないため、当該物品の異動が重要物品管理簿に記録されていないもの
 本省物品管理官と他の担当者との間において、役務を主体とした契約等に伴い取得した物品に係る所要の手続が執られていないため、当該物品の異動が重要物品管理簿に記録されていない重要物品が、次のとおり、一般会計分で201個(価格16億4142万余円)見受けられた。

ア 役務契約で取得した物品について

 実験システムの開発を目的とした役務契約で試験装置等の物品の取得を伴うものについて、当該契約が役務を主体とした契約であったことから、必要とする部署から契約等担当職員に直接契約締結の伺いが提出され、物品管理官に物品取得の伺いを提出する手続が執られていなかった。このため、物品管理官は物品を取得することを承知しておらず、当該物品が重要物品管理簿に記録されていなかった。

4個
価格12億1515万余円

イ 委託契約で取得した物品について

 情報通信ネットワークの構築を目的とした委託契約の終了後、受託者から取得した物品の引渡しを当該物品に係る事務又は事業を行う職員が受けているのに、物品管理官に対する取得に関する通知の手続が執られていなかった。このため、物品管理官は物品取得の事実を承知しておらず、当該物品が重要物品管理簿に記録されていなかった。

197個
価格4億2627万余円

(3)関係書類等による確認が十分に行われていなかったため、価格等が誤っているなどして重要物品管理簿等に記録されているなどしているもの
 重要物品管理簿等の記録又は報告書の作成に当たって、契約書等の関係書類による確認が十分に行われていなかったため、価格等が誤っていたり、同一物品を二重に記録したりしているものなどが、本省物品管理官及び統計局ほか21部局(注) の物品管理官において、一般会計分で223個(価格5億5974万余円)見受けられた。
 上記(1)、(2)、(3)のとおり、処分等が行われ実際は管理されていない重要物品が重要物品管理簿にそのまま記録されていたり、物品の異動が重要物品管理簿に正確に記録されていなかったりなどして適切でないものが、一般会計分946個(価格55億6059万余円)、特別会計分9個(同2250万余円)、計955個(同55億8310万余円)あると認められた。
 上記の結果に基づき、14年度の報告書における同年度末現在の重要物品の総数量及び総額を修正すると、一般会計分が5,658個(価格671億4769万余円)、特別会計分が11個(同669万余円)となる。
 このように、物品管理法等の趣旨に沿った物品管理が行われていなかったり、毎年度の報告書が正確を欠いていたりしている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、総務省において物品管理に対する認識が十分でなかったこと、物品の状況を適正に把握できるような帳簿が作成されていなかったこと、物品の取得を伴う役務契約等における担当者間の連携、重要物品管理簿等への記録又は報告書の作成に当たっての関係書類等による確認、物品管理官に対する検査が十分に行われていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、総務省では、重要物品管理簿の記録を正確なものに修正し、その内容を15年度の報告書に反映した。そして、16年8月に各部局長に通達を発し、物品管理法等で定められた物品管理の手続を遵守するよう徹底させるとともに、次のような処置を講じた。
ア 物品の状況を適正に把握できるように、規格、供用場所等の価格以外の情報を記録できる補助簿の様式を統一的に定めた。
イ 役務契約等により取得する物品について、担当者間の連携を図り、確実に重要物品管理簿に記録し、適切な管理が行えるよう、取得手続の手順を定めた。
ウ 重要物品管理簿等への記録又は報告書の作成に当たって、価格等が正確なものとなるよう、本省及び各部局における審査の充実を図ることにした。
エ 物品管理官に対する検査の実効が上がるよう、具体的な検査項目の徹底を図った。

統計局ほか21部局 統計局、自治大学校、情報通信政策研究所、北海道、東北両管区行政評価局、石川、福井、滋賀、奈良各行政評価事務所、北海道、東北、関東、信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州各総合通信局、沖縄総合通信事務所、消防庁、消防大学校