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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 外務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

在外公館において、その警備を強化するため、配備された爆発物探知装置を十分活用するよう改善させたもの


在外公館において、その警備を強化するため、配備された爆発物探知装置を十分活用するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)在外公館 (項)在外公館
部局等の名称 外務本省、76在外公館
爆発物探知装置の概要 在外公館の警備を強化するため、爆発物を探知する目的で配備された装置
在外公館に配備された爆発物探知装置 126台  4億6305万余円 (平成12、13両年度)
上記のうち利用されていなかった装置 56台  2億2249万円 (平成12、13両年度)

1 爆発物探知装置の配備の概要

(在外公館の警備の概要)

 我が国の大使館、総領事館等の在外公館(以下「公館」という。)の事務所及び公邸に対する脅威は、戦争、内乱などの緊急事態、公館占拠、襲撃などのテロ・ゲリラ、殺人、強盗などの一般犯罪及び抗議行動などの反日的攻撃と多岐にわたっている。そして、外務省では近年の世界各地で爆弾テロ、誘拐、凶悪犯罪、過激抗議行動等の各種事件が多発している状況を踏まえ、警備施設の強化、警備装置や装備品の配備、警備担当者の増員等の人的措置などを行って、公館警備体制の強化を図っている。

(爆発物探知装置の購入、配備)

 外務省では、爆弾テロが世界で現実のリスクとなっていることを踏まえ、爆弾テロに対する対策についても重視するようになってきている。そのため、公館の安全を強化することを目的として、平成13年3月に据置型爆発物探知装置15台、また、14年1月に卓上型爆発物探知装置37台及び携帯式爆発物探知装置54台並びに同年3月に郵便物X線探知装置20台の計126台を総額4億6305万余円で購入している。
 そして、これらの爆発物探知装置をテロ等に対する脅威度(危険度)が高いと判断した公館に配備している。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 本院が16年2月に行った1公館に対する会計実地検査の際、同公館に14年4月に配備された携帯式爆発物探知装置の利用状況について検査したところ、会計実地検査時において本装置を利用していなかった。
 そこで、爆弾テロに対する対策として公館に配備された爆発物探知装置が、適切な利用状況となっているかに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 上記会計実地検査の結果を受けて外務省が行った76公館における126台の爆発物探知装置の利用状況に関する調査結果の内容を、外務本省の会計実地検査において検査確認するとともに、76公館のうち11公館に赴き、配備された17台の爆発物探知装置の利用状況を実地に検査した。

(検査の結果)

 検査の結果、爆発物探知装置の公館における利用状況は、表のとおりであり、配備された76公館の126台のうち、45公館における56台は、調査時点である16年3月時点において利用されていないと認められた。また、実地検査を行った11公館の17台については、4公館の4台が検査時点で利用されていなかった。この4台は、上記56台の内数である。

表 爆発物探知装置の利用状況
(単位:台)

装置名 据置型爆発物探知装置 卓上型爆発物探知装置 携帯式爆発物探知装置 郵便物X線探知装置
未利用 9 18 28 1 56(45公館)
利用 6 19 26 19 70(41公館)
15 37 54 20 126(76公館)
(注)
未利用:平成16年3月時点において利用されていなかったもの

 上記45公館において利用されていなかった56台について、態様別にみると、次のとおりである。
(ア)装置が作動できず、利用できないもの(27公館32台)
 爆発物探知装置を作動させるために必要となるソフトウェアのインストール作業を行うため、メーカーと契約締結の交渉を行っていたが、メーカーの技術者が、装置が配備された公館が所在する国の査証(ビザ)を取得できないことが明らかになって契約締結に至らなかったり、インストールの契約締結はしたがビザを取得できなかったりしたため、未だ作業が行われていなかったものが20公館で24台あった。また、故障中の爆発物探知装置が、7公館で8台あった。
(イ)警備担当者が装置の利用方法を十分習得していないもの(12公館15台)
 公館の安全を図るため爆発物探知装置を利用する必要性はあると認識しているものの、操作方法が難しい、分からないなどの理由で利用していなかったものが12公館で15台あった。
(ウ)公館において爆発物探知装置の利用の重要性や必要性に対する認識が十分でないなどのもの(7公館9台)
 公館において爆発物探知の重要性や必要性についての認識が必ずしも十分でなく、爆発物探知装置を設置するのに十分なスペースが確保できないままにしていたり、警備担当者が爆発物の取扱いに関する十分な知識を持っていなかったりしていたことなどから、装置を利用していなかったものが7公館で9台あった。
 上記のように、爆弾テロが現実の脅威となっている中で、この脅威に対処するために公館に配備した爆発物探知装置126台のうち、56台(購入価格計2億2249万余円)が利用されていない事態は、公館の安全を強化する目的を十分には達していないと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。
(ア)ソフトウェアのインストールや故障した場合の修理など、配備された爆発物探知装置の特性に対応した技術的な保守管理体制が整備されていなかったこと
(イ)公館で実際に爆発物探知装置を取り扱う警備担当者に対し、装置の配備時や担当者の交替時において、装置を操作するための訓練等が十分に行われていなかったこと、また、取扱説明書が英語版となっていたり、翻訳された日本語版が難解なものとなっていたりしたこと
(ウ)公館において爆発物の探知、取扱いに係る知識が周知されていないため、配備された装置を利用して爆発物の探知を行うことについて十分な理解が得られていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、外務省では、爆発物探知装置を利用し、公館の安全を強化するため、次のような処置を講じた。
(ア)ソフトウェアのインストールが未実施の装置についてインストールを行い、故障中の装置について修理を行うための契約手続を執り、また、公館に対し故障時に修理を迅速に行うよう指示するなどの措置を執り、保守管理の体制を整えた。
(イ)警備担当者が爆発物探知装置の操作方法を十分習得するよう、実際の装置を使うなどして訓練等を行ったり日本語による分かりやすい取扱説明書を配備したりして、警備担当者に爆発物探知装置を利用するための知識を付与する体制を整えた。
(ウ)爆発物の性質を踏まえた最適な探知、取扱いを行うために必要な知識をマニュアルにして公館に配備し、爆発物探知装置を利用して爆発物の探知を行うことについて、公館に、その重要性と必要性を周知することにした。また、警備担当者に対しては、同マニュアルの配備のほかに、爆発物の探知、取扱いに関して、研修を充実させることにより、必要な知識を付与するようにした。