会計名及び科目 | 国立学校特別会計 (項)大学附属病院 |
部局等の名称 | 九州大学 |
不適正に経理された経費の内容 | 患者の診療に使用する医薬品、検査用試薬、診療用消耗品や病院で使用する備品、事務用消耗品等の購入などに要する経費 |
不適正に経理された経費の額 | 2,642,701,995円(平成12年度〜14年度) |
1 会計経理の概要
九州大学では、医学部附属病院、歯学部附属病院及び生体防御医学研究所附属病院(平成15年10月1日に3病院を九州大学病院として統合)において、臨床医学の教育、研究を行うほか保険医療機関として患者の診療を行っている。
そして、これらに要する経費は、文部科学大臣(13年1月5日以前は文部大臣)から国立学校特別会計の(項)大学附属病院として支出負担行為計画の示達を受けた歳出予算の額(以下「示達額」という。)の範囲内で賄うこととされている。このうち、主として、患者の診療に必要な経費は(目)医療費(以下「医療費」という。)から、また、教育研究経費及び設備改修等に係る経費を含む一般管理運営経費は(目)校費(以下「病院校費」という。)からそれぞれ支出されている。
国が行う契約から支払までの会計事務は、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)等(以下「会計法令」という。)に従って処理することとなっている。
会計法令では、予算の執行を、支出の原因となる債務負担とその結果として発生する支出に区分して、支出の原因となる債務負担の段階において厳格な統制を実施し、予算の適正かつ計画的な執行を図ることを目的として支出負担行為制度が設けられている。
この支出負担行為制度は、示達額を超過して国の債務負担の原因となる行為が行われることを防止しようとするものであり、支出負担行為担当官は、支出官から当該支出負担行為が示達額を超過しないことの確認を受け、関係の帳簿に登記された後でなければ、支出負担行為をすることができないとされている。
患者の診療に使用する医薬品、検査用試薬、診療用消耗品や病院で使用する備品、事務用消耗品等(以下、これらを「医薬品等」という。)の購入、設備改修等については、会計法令の定めるところに従い、次のように契約から支払までの会計事務を処理することとなっている。
〔1〕 一定期間継続して購入する医薬品等については、年度当初などに、支出負担行為担当官が、購入の見込まれる品目を対象として単価契約を行う。そして、物品管理官は、薬剤部、各診療科等に配置された物品供用官の購入要求に基づき、支出負担行為担当官に対して取得措置請求を行う。これを受けて支出負担行為担当官は業者に発注し納品させる。その後、通常、翌月に業者から1箇月分をまとめた請求書が提出され、これを受けて、支出負担行為の決議書を作成し、支出官に送付する。
〔2〕 その他の医薬品等については、物品管理官が、物品供用官の購入要求に基づき、支出負担行為担当官に対して取得措置請求を行う。これを受けて支出負担行為担当官は、品目及び数量を取りまとめ、その都度見積書を徴し、業者と総価による契約(以下「総価契約」という。)を行い納品させる。そして、契約時に支出負担行為の決議書を作成し、支出官に送付する。
〔3〕 設備改修等についても、医薬品等の購入とおおむね同様の会計事務処理を行った上、支出負担行為の決議書を作成し、支出官に送付する。
〔4〕 支出官は、支出負担行為差引簿を備え、予算科目別に示達額を超えることなどがないよう、支出負担行為の確認を行い、予算の執行を管理するとともに、業者から提出された請求書を審査確認の上、所定の期日までに購入等の代金を支払う。
2 検査の結果
本院では、5年12月に、文部大臣に対し、国立大学の附属病院における医薬品費の予算執行に当たり、示達額を超えて購入した医薬品、検査用試薬、診療用消耗品等に係る支払が年度内に行われず、翌年度又は翌々年度の予算から支払われている事態について、是正改善の処置を要求した。これに対し、文部省では、附属病院を置く各国立大学に対して通知を発するなどして、予算執行残額を確認した上で、その範囲内で法令に従って契約・発注を行うよう指導の徹底を図るなどの処置を講じたところであるが、昨年、上記と同様の事態が1国立大学で見受けられたため、本院では平成14年度決算検査報告に掲記している。そこで、附属病院における会計経理が会計法令に従って適正に行われているかに着眼して検査した。
検査したところ、九州大学医学部附属病院(以下「病院」という。)において、次のとおり、会計法令に違背した事態が見受けられた。
病院では、12年度から14年度までの医療費及び病院校費の会計経理において、各年度中に購入した医薬品等及び設備改修の一部などについて、当該年度内に支出負担行為等の会計事務処理を行うと示達額を超えることになるため、支出負担行為等の会計事務を翌年度に持ち越して処理していた。各年度において会計事務処理を行わなかった金額は、合計2,642,701,995円に上っている。
これらについては、それぞれ翌年度の医療費、病院校費、(項)大学附属病院(目)医療機器整備費(以下「医療機器整備費」という。)、(項)国立学校(目)校費(以下「学校校費」という。)及び(項)施設整備費(目)施設整備費(以下「施設整備費」という。)から支払われている。
そして、病院では、支出負担行為の事務処理に際し、支出負担行為の内容を記載した帳票(以下「入力帳票」という。)を作成し、そのデータをコンピュータに入力して支出負担行為・支出決議書(以下「決議書」という。)を作成しているが、翌年度に持ち越したものについては、次のような方法で、翌年度に契約・納品等が行われたかのような一連の会計事務処理を行っていた。
〔1〕 単価契約分については、翌年度に総価契約により購入したものとして処理することとし、予定価格調書の作成等を必要としない1件当たり100万円未満となるように分割して作り直した見積書・納品書・請求書を業者に提出させ、これに見合うように入力帳票を作成して、データを入力し、決議書を作成する。
〔2〕 総価契約分については、日付欄が空白の見積書・納品書・請求書等を業者に提出させ、これに翌年度、適当な日付を記入し、これに見合うように入力帳票を書き加えたり、書き換えたりして、データを入力し、決議書を作成する。
このように、医薬品等の購入、設備改修等に当たり、当該年度に行うべき会計事務処理を行わず、翌年度の支出負担行為により処理するなど、事実と異なる会計経理が行われ、年度を越えて翌年度の予算から代金が支払われている事態は、会計法令及び予算に違背し、著しく不当と認められる。
上記の事態について、年度別に件数、金額及び支出された科目を示すと次表のとおりである。
年度内に会計事務処理を行わなかったもの | 事実と異なる支出負担行為による支出の内訳 | |||
件数 | 金額 | 科目 | 件数 | 金額 |
12年度 | 13年度 | |||
573 | 188,334,029 | 医療費 病院校費 |
445 128 |
173,528,794 14,805,235 |
小計 | 573 | 188,334,029 | ||
13年度 | 14年度 | |||
1,335 | 1,117,705,281 | 医療費 病院校費 学校校費 |
1,418 324 15 |
958,914,745 156,162,629 2,627,907 |
小計 | 1,757 | 1,117,705,281 | ||
14年度 | 15年度 | |||
1,248 | 1,336,662,685 | 医療費 病院校費 学校校費 医療機器整備費 施設整備費 |
1,504 292 35 35 29 |
1,021,084,538 227,125,263 31,315,725 31,837,995 25,299,164 |
小計 | 1,895 | 1,336,662,685 | ||
3,156 | 2,642,701,995 | 合計 | 4,225 | 2,642,701,995 |
このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められる。
(ア)医薬品等の購入などに係る予算執行について、会計法令及び予算を遵守して適正に執行すべきことへの認識が欠如していたこと
(イ)予算執行の状況把握や見直しが適時適切に行われておらず、医薬品等の購入、設備改修等に係る経費の増大に対応する支出削減等の措置が執られていなかったこと